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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十一章 海の中の公爵城
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14話 宴会

 堆積物の中からお宝を探す作業に飽きて、最後に公爵の部屋を探索して終わりにすることにした。公爵城の部屋では、他の家具がボロボロになっているにもかかわらず、1つだけ新品同然な状態の、地味な木製のチェストを手に入れた。罠まで仕掛けられていたので、期待大の品物だ。さて、そろそろ帰るか。


「ここまでは何事もなく戻ってこられたね。シーサーペントは全滅したのかな?」


 公爵城からエントランスホールまでの間、一度もシーサーペントの襲撃は無かった。行きの、執拗に進路を妨害される状況と大違いだ。


「どうかしら? かなりの数を倒したのはたしかだけれど、シーサーペントの卵や子供達を全部始末しちゃったし、逃げちゃったのかもしれないわよ」


 逃げるか。たしかに城内に居たシーサーペントは、卵の部屋に到着するまでは執拗に妨害してきたけど、その後は姿すら見かけていない。イネスの言う通り、守るべきものが無くなったから、逃げたのかもしれないな。


「たしかに外にも1匹も居ないね。逃げたとしたらアクアマリン王国の人達に迷惑が掛かっちゃうかな?」


 そうなったら、僕達が責任を取らないと駄目なのかな? 倒すのは問題ないけど、広い海でシーサーペントを探すのは厄介そうで、気が進まない。


「いえ、人にあれだけ一方的に殺されたので、逃げたとしても人が居る場所には向かわないと思います」


 フェリシアの言い方だと、僕達がかなりの危険人物に聞こえるな。シーサーペント側からすれば間違いじゃないけど。まあ、他人に迷惑を掛けないのであれば問題ないか。


『こちらエッグ2号、アレシア。ワタルさん、このままエッグ号で城の外に出るのかしら?』


 んー、乗り換えるのも面倒だし、時間的にも外は真っ暗だ。エッグ号でのんびり海上にでて、ルト号に乗り換えればいいか。無線でアレシアさん達に伝えて、公爵城から脱出しよう。


 ***


「これからどうします? 王都に戻りますか?」


 とくに何事もなく海上に出て、ルト号に乗り換えることができた。暗い海の中での移動だから、エッグ号の光が目立って魔物が近寄ってきそうなものだけど、一切近寄ってくることがなかった。


 おそらく、公爵城の異変が周囲に伝わって、魔物が警戒しているんだろう。船召喚のチートがあるから平気だけど、シーサーペントはごく一部を除いた、海での食物連鎖の頂点だ。その根城が潰された影響は大きそうだ。


「今から戻っても宿は取れないわね。ルト号で1泊でも構わないのだけど、ペントが少し可哀想だし、もっと外海に移動してクリス号で1泊しましょう」


 ペントか。一緒にルト号に連れ込んだんだけど、リム達スライムトリオに怯えて隅っこで縮こまっている。


 いつまでもこのままでは困るから、いずれは無理矢理にでも慣れてもらう必要はあるけど、産まれたばかりでスパルタ教育は可哀想だ。クリス号ならプールもあるし、水の中なら落ち着けるだろう。


「では、クリス号で1泊ということで、移動しましょうか」


 途中、ハイダウェイ号を利用したとはいえ、大部分は狭いエッグ号の中だった。体も凝っているし、泡の出るお風呂でゆったり体を解そう。


 ***


「リム、ふうちゃん、べにちゃん。ペントはまだ僕達に慣れてないから、そっとしておいてあげようね」


 クリス号に移動して速攻でペントに近づきたがるリム達を止め、ペントをプールに放すと楽しそうに泳ぎ始めた。やっぱり陸よりも水の中の方が好きなんだな。


『なんで?』


 リムがとっても不満そうだ。僕としても同じ従魔契約をしたんだから、すぐに仲よくなってくれれば助かるんだけど、産まれたばかりでトラウマを植え付けられてしまうと、そう簡単にいかない。


 ペントもリムのことを仲間だとは理解しているんだけど、とてつもなく怖いお兄ちゃんポジションにリムを据えているから、距離が縮まらないんだよね。


「まだ産まれたばかりだから、ちょっとだけ警戒しているんだ。ほら、僕達もお風呂に入ろう。アレシアさん、色々と話すことはありますが、お風呂に入ってからでいいですか?」


「ええ、私達もお風呂に入りたいわ。その後は宴会ね!」


 ……宴会なのか。冒険の後はってやつかな? 財宝を発見したんだし、それはそれで楽しそうだ。でも、海、船、財宝、宴会……冒険者っていうよりも、海賊って感じだね。





「「「カンパーイ!」」」


 まったりとお風呂を堪能し、プールサイドに集まって全員で乾杯をする。


 お風呂上がりだからみんなリラックスした格好で、揺れて弾む母性がまぶしい。


「ふいー。今回の冒険は大成功ね!」


 一気飲みしたビールのジョッキを、ダンッとテーブルに置いて満面の笑みを浮かべるアレシアさん。ブルンって弾む母性はこの上なく女性をアピールしているのに、仕草がおっさん臭いのが残念だ。でも、見てしまう。


 サポラビにビールのお代わりを頼み、ステーキを口の中に放り込む。普通の宴会は何度か体験したことがあるけど、財宝を発見しての宴会は格別だな。


『……おなかすいた……』


 ステーキを飲み込み、次の料理に手を付けようとしたら、ペントから悲しみの意思が届いた。振り返るとプールから顔を出したペントが、ジッと僕を見ている。


 ペントが居るからプールサイドで宴会をすることにしたのに、ご飯を食べさせるのを忘れていた。 


「ペント、ごめんね。生肉がいいのかな?」


『……うん……』


 目の前に御馳走が並んでいても、人間の料理には興味が薄いようだ。ゴムボートを召喚し、グラトニーシャークの切り身をペントの前に置くと、ガツガツと一心不乱に食べ始めるペント。


 まだ産まれたばかりだから興味が薄いだけで、大きくなったら人間の料理に興味を持つんだろうか? そうなったら沢山食べそうだな。豪華客船が食べ放題で助かったかも。


「それでワタルさん。今日手に入れた財宝はどうするのかしら?」


 ペントに食事をあげて席に戻ると、お風呂上りにお酒が入って艶っぽさが増したイルマさんが話しかけてきた。財宝すべてを貢ぎたくなる。


「普通の財宝はそれぞれで分配するとして、問題は海神の神器と水龍の鱗ですね。海神の神器は秘匿してダークエルフの島で使う予定ですけど、水龍の鱗も隠したほうがいいですよね? それ以前に、公爵城の探索が成功したことも隠したほうがいいですか?」


 イネスの実家での立場を上げる目的もあるから公表したい気持ちもあるけど、発見した財宝が財宝だから悩ましい。


「うーん。公爵の宝物庫に何が残っていたなんて記録はないでしょうし、たとえ記録があったとしてもシラを切りとおせるから、海神の神器や水龍の鱗を内緒にしても問題はないわね。普通の財宝を隠す方が面倒が増えるかもしれないわ」


「どういうことですか?」


 内緒にしていれば面倒が起こりようがない気がするけど……。


「まず、財宝の換金が面倒になるでしょ。できるだけひっそりと換金しても、財宝が世間に出回ると情報を隠しきれないものなの。そうなったら情報や利益を得たい連中が群がってくるわ」


「それなら、公表しても群がってくるんじゃないですか?」


「情報を出して誘導するのよ。ワタルさんには魔導師様が居るんだから、色々と方法があるでしょ?」


「魔導師様ですか?」


「そう。海中の公爵城なんだもの。魔導師様の特別な船じゃないと行けないことを公表すればいいのよ。あとは魔導師様に船の使用料を払ったことにしたり、財産を預けていることにしたりすれば、手は出されづらいわ。ああ、アクアマリン王国の国王様に、発見した財宝の一部を献上して、そこで情報を流したほうが確実ね」


 魔導師様、フル活用だね。僕が魔導師様って分かっている人もいるけど、黙ってくれているし、恐れられてもいる。完全に手を出されないのは無理だろうけど、そっちの方が安全っぽい。


 あっ、そういえば、商売の神様との約束。財宝を商売の神様から預かった白金貨で僕が換金をすれば、とりあえず白金貨がアレシアさん達に移るし……ダメだ。慈善事業って縛りがある。許可してくれないだろうな。


 創造神様が相手なら、とりあえずの一時しのぎですって言えば許可をもらえそうだけど、商売の神様に言ったら理詰めで怒られそうだ。


「じゃあ、その方向で進めましょうか」


 王様への献上品は……公爵城のミニチュアでいいか。あれは派手だから、インパクト抜群だ。


「ワタルさん。あのチェスト、開けちゃいましょうよ!」


 僕がイルマさんと話している間にガンガン飲んだのか、テンションが高めのアレシアさんが絡んできた。


「えーっと、あのチェストって罠がありましたけど、開けても大丈夫なんですか?」


「大丈夫!」


「大丈夫じゃない。駄目!」


 自信をもって断言したアレシアさんを、マリーナさんがバッサリ切り捨てた。そうだよね。罠がある物を酔っぱらって扱うのは自殺行為だ。


「じゃあ、海神の神器」


「それは駄目です」


 水流を操る神器なんて物騒な物を、酔っぱらって扱うなんてありえないことは僕にでも分かる。アレシアさん、冒険終わりで気分が絶好調なんだろうな。このままだと危険な気がするから、隔離した方がいいな。


「まあ、まあ、アレシアさん。せっかくの宴会なんですから危ないことはやめておきましょう。今日は大盤振る舞いですよ」


 秘蔵のゴムボートを召喚し、ズラッと銘酒を取り出す。このお酒は王侯貴族がキャッスル号の酒屋でこぞって買い集めている逸品揃いだ。


 普段、豪華客船で普通に生活していると、タダ酒があふれているから、なかなかお酒を買って飲もうって発想にはならないんだよね。


 ……アレシアさん以外の酒飲み達も集まってきた。度数が高いお酒が勢ぞろいしているから、ちょっとこの後の展開が不安になってきた。まあ、きつめのお酒だから、早々に酔い潰れるだろう。


 僕はリム達と戯れるか。ペントに構っていたし、エッグ号では別行動だったからコミュニケーションが足りない。存分にモチモチしよう。


『目指せ豪華客船!』の1巻が発売していますので、よろしくお願いいたします。


読んでくださってありがとうございます。

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