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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十一章 海の中の公爵城
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9話 ペント

書籍発売記念の特別更新です。

8/9日に『目指せ豪華客船!』の1巻が宝島社様から発売されますので、よろしくお願いいたします。

 シーサーペントの赤ちゃんが卵から産まれ、速攻でリムに襲い掛かったが、逆にリムがボコボコにし返して弟にすると言い出した。どうしてこういうことになっちゃうのかな?


「シャッ!」


 うん、順調に牙をむいているな。そのままその気持ちを強く持っていてくれ。あっ、リム……リムがシーサーペントの赤ちゃんに近づくと、シーサーペントの赤ちゃんが怯えたように退いた。駄目だ。リムに対する牙が完全に折られている。

    

『わたる』


 テイムスキルを発動してって要求のようだ。リムはシーサーペントの赤ちゃんを逃がすつもりが無いようだ。


 脅して仲間にするのは可哀想だと思うけど、仲間にしなければ始末されてしまう。極論を言えばリムがシーサーペントの赤ちゃんの唯一の味方ってことだけど、その唯一の味方に怯えるシーサーペントの赤ちゃん。複雑な関係だ。


『わたる』


 できるだけ引き伸ばしたかったけど、リムから早くって意思が届いてしまった。祈りを込めてテイムスキルを発動すると、シーサーペントの赤ちゃんの前に魔法陣が現れる。


「キシャッ!」


 急に現れた魔法陣に怯えながら牙をむくシーサーペントの赤ちゃん。ジリジリと後退していたが、ぷよんとリムがジャンプをして、シーサーペントの赤ちゃんの背後に回り込む。


 うーん、僕達が背後以外を囲んでいたから、リムの行動で完全に逃げ道が塞がれている。こうなったら僕達に襲い掛かるか、魔法陣を受け入れるかの2択しかないよね。テイムスキルを発動する前に包囲網を緩めておくべきだった。いや、まだ遅くない。


「みなさん。シーサーペントの赤ちゃんが怯えていますので、離れて見ていてください」


「囲むのをやめたら逃げちゃうわよ?」


 アレシアさん。僕はもう逃げ出しちゃってもいいかなって思っています。


 逃がして他人に迷惑を掛けたらどうするって問題もあるけど、迷惑を掛けるかどうかも分からないんだし、シーサーペントの巣を壊滅状態にしたんだから、1匹くらい逃がしたとしても文句を言われる筋合いは無いはずだ。


「まあ、その時はその時です」


 むしろ逃げてほしいんだけど、あれ? 素直に逃がしましょうって言った方が早い気がしてきた。


 あぁ、無意味な抵抗だったな。隙間が空いたことでシーサーペントの赤ちゃんが動こうとしたが、リムが素早く逃げ道を塞いでしまう。もはや死ぬか魔法陣を受け入れるしか、シーサーペントの赤ちゃんに道はないようだ。


「リム。無理矢理は駄目だよ」


 そして海に返してあげた方がいい。


『……だいじょうぶ……』


 何が大丈夫か分からないが、リムの逃がすつもりが無い確固たる意思が伝わってきた。


「シャー……」


 何度か逃げ出そうとしたが、すべての初動をリムに止められてしまい、完全にうなだれてしまった。まるで達人を前に何もさせてもらえなかった素人って感じだな。


 ……嫌々な様子を隠さずにシーサーペントの赤ちゃんが魔法陣を受け入れた。気持ちは分かるんだけど、僕だって嫌なんだよ。


 ……まあ、テイムしちゃったんだから僕が否定を続けても、関係がギクシャクしてしまってろくなことにならない。下手をしたらリムとの関係にまでヒビが入ってしまう可能性がある。気持ちを切り替えて、シーサーペントの赤ちゃんと、いい関係が築けるように頑張ろう。


『……みず……』


 おうふ。テイムして最初のコンタクトがこれか。やっぱりシーサーペントは水の中で生活する生き物なんだな。


 えーっと、水っていっても真水と海水、どっちがいいんだろう? ……両方用意するか。


「イネス。悪いけど海水を汲んできて」


 イネスに水汲みを頼み、僕は真水を用意する。


「どっちが好きか分からないけど、好きにしていいよ」


 シーサーペントの赤ちゃんの前に、真水と海水を入れたバケツを並べると、返事もせずに海水を飲み干し、続いて真水も飲み干してしまった。海水も淡水もいけるってことかな?


『……たりない……』


 足りないそうだ。そもそも地上に居るのが辛いんじゃないかな? ジャ〇ジーに、いや、お湯に入れてもいいかまだ分からないな。海に放すか? ……まだ赤ちゃんなんだし、水以外にも食べ物が必要になるかもしれない。話は聞いておきたいな。


 久しぶりにお風呂船を召喚して、みんなに手伝ってもらいながら海水で満たす。


「入っていいよ」


 僕が言うとシーサーペントの赤ちゃんが、スルリと海水のお風呂に入った。海水が気持ちいいのか、お風呂の中でグルグル泳ぎ回っている。産まれたばかりでも、泳ぎ方とか簡単な知識を持っているようだ。


 嬉しそうだし、ひとまず落ち着いたと考えてよさそうだな。ふぅ、リムが弟にするって言いだした時からそうなる気がしていたけど、結局テイムしちゃったな。スライム以外をテイムする気なんてなかったから、これからどうすればいいのか分からなくて不安だ。


 まあ、リムがお風呂の縁で、楽しそうにシーサーペントの赤ちゃんを見守っているし、悪いことにならないと信じよう。


「ご主人様。この子の名前はどうするんですか?」


 あー、フェリシアの言う通り、テイムしたんだから名前を付けないといけないよね。うーん、リムに任せちゃうか?


 いや、いい名前だったら問題無いけど、ぶっ飛んだ名前を付けられたりしたら、登録の時とか恥ずかしい。自分で考えた方が無難だな。


「ちょっと名前を考えてみるよ」


 …………色々と考えてみたけど、思いっきり単純な名前が頭にこびりついて離れない。これが分かりやすくていいってことにしておこう。


「君の名前はペントだ。よろしくね」


 お風呂の中で泳ぎ回っているシーサーペントの赤ちゃんに話しかける。背後でイネスがプッ、単純とか言っているけど気にしない。


『……ぺんと?……』


 話しかけたのが分かったのか、海水から顔を出して意思を飛ばしてくるペント。お風呂の縁で見守っているリムに気づいてビクッと体が反応しているから、若干トラウマになっている様子だ。


「そう。君の名前だよ」


『……わかった……』


 産まれたばかりだからか、とんでくる言葉もたどたどしい感じだな。この子が大きくなったら、どんな風になるのかがちょっと不安だ。重低音で意思が送られてきそうな気がする。


 ああ、そうだ。ペントのステータスを確認しておこう。 


 名前  ペント

 種族  シーサーペント

 年齢  0

 職業  ワタルの従魔 

 レベル 1

 体力  68

 魔力  60

 力   35

 知力  20

 器用  5

 運   8 


 スキル 水属性魔法 レベル1

     ウオーターブレス


 うーん。リムと比べると平均的にステータスが高い。低いのは器用と運か。器用はともかくとして、運が僕よりも低いのが涙を誘う。産まれた途端にボコボコにされただけあるな。


 でも、他のシーサーペント達は皆殺しになっているんだから、生き残ったこの子は運がいいと思うんだけど……もしかして、僕にテイムされたことが、殺されるよりも運が悪いってこと? そう考えると、この運のステータスって失礼だな。


 さて、名前も付けたしステータスも確認した。ゆっくり休憩でも『……おなかすいた……』。


 そっか、お腹が空いちゃったか。何を食べさせたらいいんだ? 産まれたばかりだし、ミルク?


 ***


 色々あったけど休憩も終わり、ようやく探索を再開した。ペントの食べ物に関しては、ミルクから料理まで色々と出して選ばせたら、生肉に噛り付いた。


 ミルクや料理には一切目もくれなかったので、純粋に生肉が好きなんだろう。大きくなったらそこら辺の魔物を勝手に食べそうだけど、成長するまではお肉を用意した方がいいだろう。まあ、外海に出れば魔物は勝手に寄ってくるから、食材の調達は問題無いな。


「ふふ。ご主人様。あの子、楽しそうに泳いでいるわね」


「ペントのこと? たしかに楽しそうだけど、大丈夫なのかな?」


 泳ぎたいって言うから泳がせてはいるけど、まだシーサーペントが残っている可能性があるのに、戦いに巻き込まれたり食べられたりしないかな? 同族だから襲われない可能性もあるけど、テイムされているから敵って認識される可能性もある。


「テイムしたくなさそうだったのに心配性なのね。エッグ1号から離れないように教えたんだし、緊急時にはここに逃げ込む時間くらいあるわよ」


「シーサーペントだもん。どれだけ大きくなるか分かっているのに、気軽にテイムできないよ。でもまあ、テイムしちゃったからには責任があるし、何かあったらリムが悲しむんだから、僕が心配するのも当然だよ」


 そのリムだけど、ペントに近寄ろうとして怯えられている。あきらめずにコミュニケーションを続けているから、いずれは慣れると思うけど、産まれた瞬間に刻まれたトラウマ……苦戦しそうだ。


 ついでに、ふうちゃんとべにちゃんも近寄ろうとしたら怯えられていたから、スライム自体がトラウマになっている可能性が高い。まあ、ふうちゃんとべにちゃんの方が圧倒的に強いから、警戒するのは間違ってないけどね。


「ふふ。素直じゃないわね」


 あれ? なんでフェリシアまで生暖かい目で僕を見るの? イネス、素直じゃないって僕がツンデレみたいに思ってない?


「ご主人様。エッグ3号が曲がりました」


 おっと、ちゃんと前を見ていなかった。まずは曲がってから誤解を……。


『こちらエッグ3号、ドロテア。宝物庫らしき扉を発見しました』


 いやん。吉報なのにタイミングが悪く感じる。男のツンデレ疑惑とか誰得なので誤解は早く解きたいのに……。


『こちらエッグ1号。了解しました。ん? 扉? 扉がまだ残っているんですか?』


 今まで通ってきた公爵城の中の扉は全部朽ち果てていたよね?


『扉は綺麗な状態で残っています。おそらく重要な場所なので扉自体も保護されているのだと思います』


 そういえば発掘された魔導船とかは、魔法で保護されていたから現存しているんだったよね。お城の重要な場所なら保護されていてもおかしくないか。


「ご主人様。聞くよりも見た方が早いと思います」


 続けて質問しようとした僕に、フェリシアがごもっともな意見を言う。たしかにそうだ。急ごう……こういう時にスピードが出ないと、ちょっとじれったいな。


 角を曲がると通路の少し先にエッグ3号のライトの光が見え、そのライトの光には立派な扉が照らされて輝いている。あの立派さを考えると、宝物庫の可能性がかなり高いな。


 ……あれ? あの扉ってどうやって開けるんだろう? さすがに鍵が掛かっているよね?


読んでくださってありがとうございます。

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