6話 美人パーティーと島生活
朝か……昨日の朝まではのんびり荒稼ぎだ!とか夢のような事を考えてたのに、翌日には命の危機が……人生って何があるか分からないな。まあ、異世界に来ちゃったんだ。今更だな。
よし、切り替えよう。いつまでも暗くなってもしょうがない。危険な分稼がないと割に合わないから、ガンガン稼ぐぞ。それはそうと、身支度をしてここで待っていればいいのか?
コンコン
「はい、どうぞ」
「おはようございます。ワタルさん」
おお、朝一にキツネミミの美女の降臨。なんか幸せです。
「おはようございます。カミーユさん」
「朝食をお持ちしました。こちらは島での食料ですね。1週間分ご用意しました。食後に出発になりますが大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。支払いはどうすれば?」
「今回は商業ギルドの都合も関わっておりますので、費用は商業ギルドで負担します」
ちょっと儲けた?
「ありがとうございます」
朝食を終えて、しばらくするとカミーユさんが戻ってきた。
「目立たないように、ワタルさんの魔導船に集合する事になっていますので、そろそろ出発します。魔導船までの安全は確保されていますのでご安心ください」
「はい、ありがとうございます」
朝日が昇りはじめた街中をカミーユさんと和船に向かう。なんだかデートみたいだ。軽口を叩こうとしてカミーユさんの方を見ると、真剣に周りを注意しているカミーユさんがいる。……僕ってそこまで危険な立場なの? 危険を認識していたけど、まだまだ甘かった?
「冒険者の方達はもういらしてますね」
「ジラソーレのみなさん、おはようございます。こちらが魔導船の持ち主のワタルさんです」
「「「「おはよう」」」」
六人の女性が一斉に挨拶してくれる。なんか華やかだな。
「ワタルさん、こちらがAランクパーティーのジラソーレのみなさんです」
「おはようございます。ワタルと言います、よろしくお願いします」
彼女達を見て驚き混乱した……あれ? 夢? 目の前に自分の欲望をすべて形にしたような、最高のパーティーがいるんだけど。こんな美人の集団とかあり得るの? 本当に夢?
「こちらこそよろしくね。私がジラソーレのリーダーのアレシア。あの子がサブリーダーのドロテアで、盾を持ってるのがカーラね。弓を持ってるのがマリーナで魔術師がイルマ、神官がクラレッタよ」
紹介される人全員がとっても美人です。異世界万歳。
「みなさん、港に人が増えてきたので、自己紹介はここまでにして出発してください」
おっと、当初の目的を完全に忘れてた。そうだよな、美人も大切だけど、まずは自分の命だ。
「カミーユさん、色々お手数お掛けしてしまってすみません。本当にありがとうございます」
「いえいえ、戻っていらっしゃる頃には護衛の準備もできていると思います。お気を付けて」
「はい、いってきます」
カミーユさんに別れを告げて、ジラソーレのメンバーに乗船許可を出し和船に乗ってもらう。
「みなさん、木箱の中に毛布が入っていますので、自由に使ってください。木箱も椅子代わりに使ってもらって結構です」
「分かったわ、何か気を付ける事はあるかしら?」
「落ちないように気を付けて頂ければ、楽になさって結構です。出発してもいいですか?」
「ええ」
「では、出発します」
ふー、何とか普通に出発できた。彼女達を見てると土下座して、下僕にしてくださいって言いたくなる。何なんだろうこの美人集団は。仲良くなりたいけど美人集団すぎて逆に怖くなってきた。
この人達に迂闊に話しかけたら、ファンクラブの人達とかに絶対にボコられるな。異世界なんだから本当に殺されるかもしれない。これ以上、死亡フラグは立てたくない。
「ねえ、あなた、私達と会った事がないかしら? なんだか声に聞き覚えがあるのよね」
「そうですか? 僕は覚えがないですが」
こんな美人集団、一度会ったら忘れないよ。
「ドロテアも声に聞き覚えがない?」
「たぶんだけど、川辺で盗賊の事を教えてくれた声に似てるわ」
「ああ、そうねその時の声よ。ワタルさん、あなた船で川辺にいる冒険者に盗賊の事忠告したでしょ。あれ、私達よ」
「うん? あー、あの時のガラの悪い男達が20人ぐらい上流にいますよってやつですか? 暗かったのでハッキリ顔までは分からなかったのですが、ジラソーレのみなさんでしたか」
あの時の人達だったのか。焚火の光でもたしかに美人だと思ったけど、日の光の下だと美人って言葉じゃ足りないな……物凄い美人だ。
「そうなの、約束通りに島から帰ったら奢るわよ。楽しみにしててね」
気づかない間に死亡フラグを立てていたらしい。ぜひとも奢ってほしいが、そんな事になったらまた敵が増える。残念だけど断らないとな。
「いえいえ、ただの忠告だけですから。あの時も言ったように忠告があってもなくても、あなた方ならどうにでもなったでしょうし、お気持ちだけで十分ですよ」
「そうもいかないわ。あの時、どこかで会ったら奢るって言ったんだもの。会ったのなら奢るわよ。受けてね」
そんなに都合よく会うとは思わなかったんだもん。ついでにここまで美人の集団とか、想定外すぎて困る。とりあえず、ジラソーレの評判とか人気とかを確認しないと、迂闊に近づけない。まずは時間稼ぎだな。
「えーっとですね、現在この船が島に行けるって分かってから、護衛を雇うとか色々あるので。落ち着いてタイミングが合ったらでお願いします」
「そうなの? 忙しいならしょうがないわね。落ち着いたらご飯に行きましょう」
「その時はよろしくお願いします」
とりあえず先送りにはできた。本当に強い護衛を紹介してもらわないと危険だな。しかし本当にみんな美人だよね。
リーダーのアレシアさんは、輝く金髪に白い肌の美人でお胸が大きい。元気が良さそうで太陽みたいな人だ。
サブリーダーのドロテアさんはダークブラウンの髪で褐色な肌の美人でお胸が大きい。穏やかな雰囲気で、皆のまとめ役みたいにみえる。
マリーナさんは黒髪で短髪、真っ白い肌の美人でお胸が大きい。あまり変わらない表情と肌の白さがあいまって妖精のようにみえる。
カーラさんはクマミミかな? 黒髪で背が高い美人でお胸が大きい。表情が優しそうで大きな盾を持っているのにスラっとしている。なんか不思議だ。
イルマさんはキツネミミで金髪な美人でお胸が大きい。この人こそ妖艶の言葉が相応しいね。怪しい魅力が満載だ。
クラレッタさんはイヌミミで茶髪の美人でお胸が大きい。ゆるふわ系って言うのかな? ニコニコ笑顔で癒しがすごいな。
みんな凄い美人でお胸が大きい。僕好みの特徴が満載な美人パーティーだ。今でも夢かと思う、絶対にファンクラブがあるな、危険がなければ僕も入りたい。
***
……おっ、島が見えてきたから、そろそろ揺れだす海域だな。
「みなさん、そろそろ揺れが酷くなりますので、注意してください」
「分かったわ」
無事に難関を通り抜けて砂浜にたどり着いた。冒険者を乗せてもそこまで遅くなった感じはしないな。
「無事に到着しました。みなさん、休憩されて出発されるのなら紅茶をお出ししますが、どうされます?」
「いいの? じゃあ、ご馳走になろうかしら」
「少々お待ちください」
リーダーのアレシアさんが、代表して答えてくれた。気合を入れて紅茶を淹れないとな。
「ねえ、この魔導船、速いし揺れも少ないしいい船ね」
「そうですか? 嬉しいですね。ありがとうございます」
和船、意外と高評価だ。この島にくる許可を持っているジラソーレなら、当然他の小舟の魔導船に乗った事があるだろうし、お世辞部分を差し引いたとしても、自信を持ってよさそうだな。お湯を沸かして紅茶を淹れる。お茶請けは……ないな。今度は用意しておこう。
「どうぞ」
全員に紅茶を配る。そこまで美味しいとは言えないが、野外って事で我慢してもらおう。
「ありがとう」
しかし、冒険者ってゴツイ男がイメージだったからな。ジラソーレみたいな人達が護衛だったら最高なんだけど……無理だ緊張で身が持たない気がする。
「御馳走様でした。じゃあ私達は森に入るわね。何事もなければ5日後に戻る予定だからお願いね。それとあなたも魔物に気をつけて、島の奥には入らないようにしてね」
「はい、気を付けます。みなさんもお気をつけて」
ジラソーレが森に入っていくのを見送る。ふー、美人と話せるのは嬉しいんだけど、緊張して疲れるな。さてと魔導船が3艘停泊してるし、挨拶しておくか。
「グイドさん、こんにちは、ご挨拶させて頂いてもいいですか?」
「おう、さっそく来たか。こいつはカルロだ。うんでこっちがダニエル」
「カルロさん、ダニエルさん。ワタルって言います。よろしくお願いします」
「「よろしくな」」
「しかし初仕事がジラソーレって運がいいなワタル」
グイドさんが茶化すように問いかけてくる。
「ジラソーレってやっぱり有名なんですか? みなさん美人過ぎて、初仕事の緊張が、美人と一緒の船に乗ってる緊張に変わってしまいましたよ」
「物凄く有名だな。俺もジラソーレを乗せると緊張する」
やっぱり緊張するのか。あれだけの美人だもんね。ついでにジラソーレのファンクラブの存在の可能性も高まった気がする。まあいいや。今はグイドさん達に聞きたい事を聞いておこう。
「あのー、みなさんに聞きたい事があるんですが、いいですか?」
「なんだ?」
「実は島にたどり着いた事を報告したら、護衛を雇わないと危険だとか、話が大事になって戸惑ってます。みなさんも危険な目に遭いましたか?」
「ワタルは危険の事知らずに、この島にきたのか?」
「はい、南方都市に着いて間もないですし、魔導船が手に入ったので、儲かるって聞いて挑戦しただけです」
「そうだったのか。俺も危険な目にもあったし、面倒事にも巻き込まれたな。カルロとダニエルもそうだっただろ?」
「「そうだったな」」
「だからワタルも護衛はしっかり雇えよ。あと面倒な勧誘もあるから、商業ギルドを通してからしか依頼は受けないって言っておけ。個人で依頼を受けると罠に嵌めたり、いちゃもんをつけてくるからな」
「本当に狙われるんですね。護衛は商業ギルドが紹介してくれるそうなので、しっかり雇います」
商業ギルドが大げさな事を言っている可能性を、少しだけ期待していたんだけど、危険は事実だったみたいだな。実際の経験者の話には重みがある。
「そうしておけ。あと商業ギルドが付いているなら、契約や勧誘も全部商業ギルドを通すようにな。それを嫌がる奴は騙しにきてると思え」
「はい、ありがとうございました」
「おう、頑張れよ」
グイドさん達と別れ、船に戻って荷物を整理する。ジラソーレのメンバーはちゃんと毛布を畳んで、木箱にしまってくれているな。商業ギルドからもらった食料は……パン、干し肉、野菜、小麦粉か。十分な量がある。カミーユさんに感謝だ。
これでやる事がなくなったし、鳥ガラスープを作ってみるか。熾した炭火の上に鍋を載せて、沸騰しない火加減で鳥ガラを煮て灰汁を取る。どのくらい煮ればいいんだろう? 味見しながら試すしかないか。
暇なので鍋を横目に海中を観察する。あれ? 昆布じゃね? でも、昆布って寒い海に生えてるんじゃなかったっけ? 和船で近づき槍で回収してみる。昆布にしか見えないな。グイドさんに聞いてみるか。
「グイドさん、すみません。この海藻って食べられるか分かりますか?」
「うん? ああその海藻は食えるが美味くはないぞ。食料を持ってこなかったのか?」
「いえ、食料は十分にあります。この海藻に似たのを故郷で食べていたので、これも食べられるなら色々試してみます。ありがとうございました」
「おう」
昆布をいくつか採取して砂浜に並べる。たしか乾燥させればいいはずだから、偶に引っ繰り返しながら様子をみよう。偶に鍋の様子をみながら、武器の訓練をする。訓練が終わったらスライムを探そう。
残高 1金貨 47銀貨 80銅貨
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読んで頂いてありがとうございます。