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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十一章 海の中の公爵城
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4話 試行錯誤

お待たせいたしました。

 公爵城に潜入し、お留守番していたシーサーペントとエッグ号で一戦交えた。水流に悩まされながらもなんとか撃退すると、追加で2匹のシーサーペントが現れ、クリス号を送還してハイダウェイ号を召喚した。


「ワタルさん、少し休憩しない?」


 方針が決まったので殲滅戦を開始しようとしたら、アレシアさんから休憩の要望が入った。


「クリス号も送還したので時間制限もなくなったので休憩しても問題ないですけど、シーサーペントがウロウロしていると、気になりませんか?」


 ハイダウェイ号の大きさなら水流にも負けないだろうし、衝撃を与える面が減るからシーサーペントを気にしなければ問題は無いけど、ちょっと落ち着かないよね。


「魔の森の虫の大群に比べたらずいぶんマシだし、今の2匹を倒しても後から続々と増えるんだから、気にしてもしょうがないわ」


 たしかに魔の森の虫達に比べたら100倍マシだな。それにシーサーペントの群れが戻ってくるなら、先に2匹を倒しても焼け石に水なのは確かだ。まとまっている方が攻撃しやすそうだし、群れが戻ってくるまで休憩するか。


「分かりました。少し休憩しましょうか。デッキだと落ち着かないので、中でお茶でもしましょう」


 お茶菓子を期待したであろうカーラさんと、リム、ふうちゃん、べにちゃんが、いそいそと船内に入っていく。今日は早起きだったから、お腹が空いているんだろうな。


 ***


「んー、思っていた程には集まっていませんね」


 荒ぶった数匹のシーサーペントが、ハイダウェイ号の周りを威嚇するように泳いでいるが、クリス号に集まっていたシーサーペントの十分の一もいないように見える。


 荒ぶっているのは巣に異物が鎮座しているんだから当然だけど、数が少ないのは……まだ全部戻ってきてないのか?


「ご主人様。数が少ないのは、城内に入りきらないからだと思います」


 僕が首をひねっていると、フェリシアが疑問の答えをくれた。僕の中の蛇のイメージって、狭い場所にみっちり詰まっているイメージなんだけど……なるほど、あれは映画の中で罠として使われている蛇だから、人の手が加わっているのか。敵がいるのに、動きにくくなるほど密集したりしないよね。


「そうなると、倒したそばから追加が入ってくるってことだよね?」


「すでに邪魔にならない通路から、こちらを見ているシーサーペントが居ます」


 戦う順番まで決まっていそうだな。


「ワタルさん。考え込んでもしょうがないわ。こうなったらシーサーペントが居なくなるまで倒してしまえばいいのよ」


「アレシアの言う通りよ。地道に減らせばいずれ終わるわ」


「そうですね。じゃあ始めましょうか」


 アレシアさんとイネスもやる気満々だし、もとから殲滅戦に切り替えるつもりだったから、ごちゃごちゃ考えずに倒してしまおう。


 ***


「もう! チョロチョロしないで掛かってきなさいよ!」


 アレシアさんの不満が爆発してしまったか。まあ、無理もない。今、僕達の中でまともにシーサーペントと戦えているのは、クラレッタさんとリムくらいだもんな。


 最初はハイダウェイ号の縁に姿を見せるだけでシーサーペントが襲い掛かってきたから、みんなでボコボコにできた。


 その時にやり過ぎたのか、後続として現れたシーサーペント達は警戒してなかなか近寄ってこなくなってしまった。クリス号には群がっていたし、海上だと逃げても追いかけて襲ってきたのに、巣の中だと警戒心が高くなるようだ。


 次はイルマさんの幻惑魔法でシーサーペントをおびき寄せたんだけど、これも何度も繰り返していると、警戒されてしまい近寄ってこなくなってしまう。


 魔の森の魔物の暴走状態は、戦うのなら倒すだけでよかったから、ある意味楽だったんだな。遠距離攻撃手段が少ない場合、警戒して距離を取られると膠着状態になってしまう。


 ちなみに、戦っているのは攻撃手段があるリムとクラレッタさんで、戦おうとしているのはアレシアさんとイネスだけになっている。残りはお茶を飲みながらの観戦状態だ。


「ふふ。アレシアが癇癪を起しちゃったわ。ねえ、ワタルさん。何か戦える方法は無いのかしら? このままだとリムちゃんとクラレッタだけに負担がかかるし、時間もかかるわ」


 優雅に紅茶をたしなんでいたイルマさんが、難しい質問をしてきた。


「僕も何か方法がないかと考えてはいるんですが、シーサーペントもすっかり警戒しているので、なかなか難しいですね」


 釣りはどうかなって考えたが、竿や糸は船召喚のオールやロープで代用するにしても、シーサーペントに引っかかる釣り針が無い。撒き餌でおびき寄せるにしても、数匹倒したらまた警戒されるよね。


「そうよね。そう簡単にはいかないわよね」


 ちょっと憂鬱そうなイルマさんは色っぽいな。


「イルマさん。敵を引き付ける技とか魔法はないんですか?」


 ゲームだと、魔物が襲い掛かってくる技とか魔法があるよね。まあ、あるのなら使っているだろうから望み薄だけど……。


「そういう技もあるらしいけど、使える人はほとんどいないんじゃないかしら? わざわざ魔物を引き寄せる必要なんて、ほとんどないのよね」


「なるほど」


 あるにはあるんだ。ゲームだとタンクの必須技だけど、現実だと魔物を引き寄せるのは危険なんだろうな。まあ、誰も使えないのならしょうがない。とりあえず撒き餌を試して、警戒されたら次を考えよう。


 ***


「ふー。ようやく終わったわね」


 アレシアさんがダルさを隠そうともせずにつぶやいた言葉に、全員が心底同意するように頷いた。


「思った以上に時間が掛かって大変でしたね」


 簡単に殲滅戦とか言ったけど、想像以上に苦労してしまった。しかも倒したら追加でシーサーペントが補充されるから、先が見えなくて辛さが倍増するのが厄介だった。


 撒き餌は、血の匂いに反応したシーサーペントを数匹討伐したところで効果を失った。


 音をガンガンに鳴らしたらシーサーペントが遠ざかった。


 ハイダウェイ号の電気をすべて消して真っ暗にしたら、興味を引けたのか数匹討伐できた。


 釣りではないが、ハイダウェイ号の備え付けロープにマーマンを結び付けて放り出したら、食いついたので喜んだが、ロープごとハイダウェイ号を引きずりだしたので、慌ててクラレッタさんとリムに魔法で倒してもらい、ロープは回収した。


 他にもエサを変えたり、船偽装で船体を変化させたり、ハイダウェイ号の電気をチカチカさせてみたりとあの手この手でシーサーペントをおびき寄せた。こんなに頑張ったのは久しぶりだ。


「ご主人様。もう夜中ですから一旦休みますか?」


 満足感に浸っていると、フェリシアが質問してきた。かなり時間が掛かったからもう寝たいけど、どうしたものか。殲滅戦とか言ったけど、群れの数を考えると全部倒しきれたとは思えない。


「外で積みあがっているシーサーペントって、放置して大丈夫なのかな?」


 1匹1億円なんだよね。公爵城に眠っているであろうお宝よりも高価な可能性があって、放置して素材を痛めたり、生きているシーサーペントに食べられたりしたらもったいない。


「ワタルさん。ジラソーレとしても、資金に余裕があるわけではないので、回収できる分だけでもお願いしたいです」


 少しだけ気まずそうにドロテアさんがお願いしてきた。そういえば戦争の時に、ジラソーレの全財産を貰っちゃったから、資金的には厳しいままなのか。ある程度、僕の方でも護衛料を支払ったりしたけど、完全には回復していないだろう。


「分かりました。できるだけ回収しましょう」


 財宝が発見できなくても無報酬は避けられるし、胡椒の代わりの商品にもなる。商売の神様との約束があるから、商品を捌いている時間があるか疑問だけど、まあ、買い取ってくれるところに卸せばいい。


 あぁ、カミーユさんにお願いして、キャッスル号で地竜と並べるのもいいかもしれない。キャッスル号のオープンセレモニーの時に、地竜の評判が良かったから、シーサーペントでも喜ばれそうだ。


「それでワタルさん、どうやって回収すればいいのかしら?」


 アレシアさんがハイダウェイ号の外を見ながら言う。たしかに海中に沈んで積み重なっているシーサーペントの巨体を、どうやって引き上げるのかは疑問だろう。でも、そこら辺は、手間がかかるけど船召喚でなんとかなる気がする。


「とりあえず方法は思いついたので、試してみましょうか。まずはエッグ号の発射台を作るので手伝ってください」


「分かったわ。クリス号と同じでいいのよね?」


「柵の高さが違いますから微妙に違いますけど、ほぼ同じ方法ですね」


 一度クリス号で作ったから、アレシアさん達もすぐに理解して動き出した。僕もさっさとシーサーペントの切り身を召喚しよう。




「じゃあ出発しますので、ロープの方はお願いします」


「分かりました」


 発射台が完成し、エッグ1号には僕とクラレッタさんが乗っている。普段はここにカーラさんが一緒のことが多いから、ちょっとだけドキドキする。


 クラレッタさんって、優しくて癒しの雰囲気が満載なんだけど、ジラソーレの中でもトップクラスに母性の象徴が豊かだから、邪な心がむくりと首をもたげる。でも、神聖な雰囲気も満載だから、罪悪感も同時に刺激されて、どうしたらいいか分からなくなって困る。


「どうかしましたか?」


 キョトンとした顔でこちらを見るクラレッタさん。僕の邪な考えなんてみじんも感じていないようだ。イネスとかイルマさんが相手だったら、もう少しエロを表に出せるんだけどな。


「いえ、じゃあ行きましょうか。アレシアさんお願いします」


 くだらない考えを振り払い、アレシアさん達にエッグ号を押してもらって海に入る。


「ふふ」


 ドプンと海に入るとクラレッタさんが楽しそうに笑った。


「どうかしましたか?」


「いえ、何度も体験しているのですが、船で海に入る感覚って不思議で面白いですね。ワタルさんはそう思いませんか?」


「なるほど。僕もそう思います。楽しいですよね」


 本当は真っ暗な水に落ちるのは怖いんだけど、クラレッタさんがそう思うのなら合わせることもやぶさかではない。むしろ積極的に合わせよう。動作や気持ちをシンクロさせることは、仲良くなるために大切なことだ。


 うん? そう考えるとこの面倒な作業も、クラレッタさんと更に仲良くなるためのチャンスな気がしてきた。よし! 頑張るぞ!


沢山の励ましのお言葉をいただき、本当にありがとうございます。


読んでくださってありがとうございます。

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