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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十章
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19話 ホワイトドルフィン号

 潜水艇を購入した翌朝、イネスの実家に今後の予定を伝えに行くとベラさんが変身していた。しかもまだまだ満足していないらしく、イネスを肉食獣のように追い詰めていた。それだけお土産のことを気に入ってくれたんだから、良かったんだよね?


(ご主人様。こう言ってはなんなんだけど、私の美貌の秘密を聞き出さない限りあきらめないと思うわ)


 自分で美貌とか言えるメンタルが羨ましい。まあ、実際にイネスは美人だから何も言えないけど。


(えーっと、イネスをしつけるって気合を入れていたのはどうなったの?)


 イネスをベラさんに預けた目的は、おしとやかなイネスが見てみたいってのが大半なんですけど……。


(そのせいで私のしつけも厳しくなっているわ。あれは明らかにしつけを厳しくして私に口を割らせる目的もあるわね。いえ、そちらの方が本命になっているわ)


 結局イネスに対する教育は緩和されていなかったのか。まあ、僕としてはちゃんとしつけが継続されているのなら問題ない。


 ただ、イネスがあんまり変わっているように見えないのが問題なんだよな。三つ子の魂百までって言うけど、イネスのおしとやか計画は夢のまた夢ってことになりそうだ。


(誤魔化せないの?)


(難しいわ。あの母親、しつけるって約束を最大限に利用しながら、着実に私の心を削りに来ているもの。強敵よ)


 なんで娘と母の話を聞いていて、心を削るとか強敵とか、穏やかじゃない言葉が出てくるんだろう? 心底疑問だ。今思うと、フェリシアの家族の再会と、再会後の関係は素晴らしかったんだな。


 しかし、そこまで興味津々なのか……女性の美に対する執念って凄いらしいし、下手な対応をすれば僕が被害を受けそうな気がする。


(分かった。商売の神様との契約を条件に船に招待すればいいかな?)


 逃げるのも有りだけど、イネスの家での立場ももう少し向上させてあげたいし、招待するのが一番無難だよね。


(それならなんの問題もないわ。手間を掛けちゃってごめんね)


(どういたしまして。じゃあ戻ろうか)


 リビングの隅から戻ると、ベラさんが美しい微笑みで僕を見ている。イネスいわく、肉食獣の微笑らしいけど、僕は教えてもらってもよく分からない。ベラさんが凄いのか、僕の見る目がないのかどっちなんだろう?


「ベラさん、えーっとですね、イネスさんが是非とも家族を招待したいと言っていまして、ですが、色々と秘密があるので、招待先の出来事を秘密にする契約を結んでもらう必要があるんです。どうされますか?」


 ここで断られるのなら、それはそれで都合がいい。


「ワタルさん。それはイネスちゃん、いえ、ワタルさんの周りにいる方達の美容に関係がある秘密ですか?」


 周りにいる方達ってフェリシアとジラソーレのメンバーだよね。元から綺麗だったけど、豪華客船で手入れをしてから更に綺麗になったのは間違いないな。


「それも秘密の中に入っていますね。だからイネスさんはベラさんの質問に答えられなかったんです」


「まあ、そうだったんですか。イネスちゃん、色々と質問してごめんなさいね。ワタルさん、契約になんの問題もありませんので、是非ともお願い致します」


 とても丁寧にお願いされてしまった。普通ならもう少しためらってもいいはずなんだけど、僕が信用されているのか、美容に対するあくなき執念なのか……美容だな。そこまで信用されることをした覚えはないもん。


「分かりました。探索の後になりますが必ずご招待しますので、ダリオ君とイネスさんのお父さんも含めて、お休みの調整をお願いします」


「ご主人様。フローラは駄目かしら? 別に無理なら構わないんだけど、聞いておかないと文句を言われちゃうのよ」


 そういえばフローラさんもベラさんの変わりようを気にしていたんだったな。イネスと仲がいいみたいだし、美人に恨まれるのは辛いから一緒に招待しておくか。


「商売の神様の契約を結ぶなら構わないよ」


「ありがとう、ご主人様」


 なんかイネスの好感度が結構上がった気がする。これだけでアクアマリン王国に来た甲斐があったかもしれない。さて、話も終わったし、アレシアさん達も待っている。そろそろお暇して潜水艇の訓練をしよう。


 ……あっ、本来の目的をイネスに伝えてなかった。


 ***


「ワタルさん、結構時間が掛かったみたいだけど、何かあったの?」


「いえ、まあ、ちょっと予想してなかった方向に話が進んでしまって、時間が掛かっちゃいました。すみません」


 イネスに予定を伝えたらすぐに宿に戻るつもりだったのに、ベラさん達を招待する話が終わってイネスに予定を伝えたら、イネスがゴネだして更に時間が掛かった。明日の夜には合流できるんだから、少しくらい我慢してほしいよね。


 まあ、ご機嫌になったベラさんが、ワタルさんにご迷惑をお掛けしないようにしっかりとイネスを教育しますって、気合を入れたのが原因なんだけどね。


「謝らなくていいのよ。それで、何があったの?」


 アレシアさんも、その背後で話を聞いているメンバーも興味津々だな。出会った頃のジラソーレって、こんなに噂好きのおばちゃんみたいな性格だったかな?


「何があったかはルト号で話しますから、とりあえず移動しましょうか」


「そうだったわね。じゃあさっそく行きましょうか」


 潜水艇の訓練も楽しみにしていたし、面白そうな話が聞けると思ったのか、アレシアさん達はかなりご機嫌だ。落ち着いているのはリム達と、一緒にイネスの実家に行ったフェリシアとクラレッタさんくらいだな。いや、カーラさんはのんびりしたままか。あの人も食べ物以外ではブレない性格だな。




 ルト号に移動し、イネスの実家での出来事を説明しながら船を走らせる。外海に出れば強い魔物が現れるから、魚人や人魚が沢山いるアクアマリン王国でも人目に付くことはないだろう。安心して潜水艇の訓練ができるはずだ。ちなみに、イネスの家族を豪華客船に招待する話は、特に問題なく受け入れられた。


「じゃあまずはメインの潜水艇を召喚します」


 ジラソーレとフェリシア、リム達が見守る中で潜水艇を召喚する。うーん、新しい船を召喚するんだからワクワクするはずなんだけど、現れた光の魔法陣がショボく見える。


 まあ、しょうがないか。豪華客船やフェリーを召喚する魔法陣と、20メートル程度の潜水艇を召喚する魔法陣なら、規模的に前者に軍配が上がるのは当然の事だ。


 魔法陣から現れた潜水艇は真っ白な船体で、胴体部分には何か所も窓が設置されている。船の形も独特で、翼の小さな飛行機のようにも見える。


「ワタルさん、これが海に潜る船なんですね? なんとなくグラトニーシャークに形が似ていますが、魚を参考にして作られているんでしょうか?」


 ドロテアさんが真面目な顔をして質問してきた。うーん、僕には飛行機っぽく見えたけど、飛行機を知らない人は魚に見えるのか。そう言われると魚に見えない事もないな。でも、僕は潜水艇が何を参考に作られたかなんて知らないよね。


「えーっと、海に潜る船ですから、魚を参考にした可能性もありますね。僕は詳しく知りませんが、共通する部分は多そうです」


 自分で言っていて苦しい説明なのが分かる。こういう時にこっそりネット検索ができれば、インテリジェンスな僕を演出できるのに……残念だ。創造神様にお願いしたら、どうにかならないんだろうか?


「なるほど。あの部分がヒレで、あの部分が尾ビレと背ビレと考えれば、たしかに共通する部分は多いですね。魚を参考にした船。どんな動きをするのか、とても楽しみです」


 ドロテアさんの眩しい笑顔に罪悪感を覚える。……まあ、飛行機だって最初は鳥を参考にしていたんだし、まったくの間違いとは言い切れないはずだ。大丈夫、ドロテアさんが納得すれば、この世界ではそれが真実なんだ。


「ワタルさん、この船の名前はなんにするの?」


 ちょうどいいタイミングでアレシアさんが話題を変更してくれた。でも船の名前か。考えてなかったな。ドロテアさんがグラトニーシャークに似ているって言っていたから、シャーク号とかグラトニー号とかどうだろう?


 ……ないな。どこまでも貪欲に追いかけてきて、延々と壊せない結界や船に攻撃を続けるサメから名前を取るのは嫌だ。でもまあ、魚から名前を取るのはいい案かもな。


 サメは却下として、鯨……ホエール号? なんだか違うな。大きさ的には十分なんだけど、鯨はもう少し雄大なタイプの船に似合う気がする。この潜水艇は雄大というよりも、スポーティーさを感じさせるフォルムなんだよね。


「……この船の名前はホワイトドルフィン号にします」


 なんとなくハッチ部分が背ビレに見えるし、サメじゃなければイルカだよね。そして船体が白いからホワイトをつけておけば、なんとなくカッコいい気がする。気になるのはイルカは魚類じゃなくて哺乳類な点だけど、そこらへんは厳密に考えなくてもいいだろう。


「うーん、いいんじゃないの?」


 アレシアさん達の反応は微妙な感じだな。……まあ、名前なんて使っていれば違和感はなくなる。新しく名前を考えるのは大変だし、ホワイトドルフィン号に決定だ。


「ありがとうございます。じゃあ、まずは船内を確認してみましょうか」


 とりあえず全員に乗船許可をだして、ホワイトドルフィン号に飛び乗る。あとで乗船チケットを更新しておこう。ハッチ部分を確認すると、思った以上に頑丈そうなハッチが見える。水圧を考えるとこれくらいの頑丈さは必要なんだろう。


 ハッチを開くと梯子が備え付けられているが、これを伝って中に入るのか? 潜水艇なら当然な気もするが、高級なお金持ち用の潜水艇と考えると違和感がある。僕の貧困な想像力だと、お金持ちは梯子なんて使わないよね。


「ワタルさん、どうしたの? 早く入りましょうよ」


「あっ、はい。今入ります。あっ、リム」


 アレシアさんに返事をしていると、頭の上に乗っていたリムが、パタパタと潜水艇内に飛んでいってしまった。どうやらリムも、早く中を見たかったようだ。僕もさっさと中に入るか。


 梯子を伝い下に降りる。ふむ、左右に扉があるけど、たぶん尻尾の方は機関室だよな。最初は機関室よりもリビングを見るべきだろう。リムも同じ考えなのか、リビングに通じる扉の前でパタパタと待機している。さて、20億の潜水艇のリビング。どんな感じなのかとても楽しみだ。


潜水艇の値段は、参考にした潜水艇の値段が決まっていないのでなんとなくで値段設定しています。

それと、潜水艇の内部情報もよく分からないので、想像で書いています。違和感がありましたらご容赦ください。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] イネスがここで母親と幼馴染の彼女に教えてあげようと思う事が違和感でした。 いびられてて秘密があるけど言えない位言えばいいけどそれも言ってない様子に見えるのに、何で教えない限り絶対に納得しない…
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