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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十章
216/610

5話 島が見えた

遅れて申し訳ありません。予約投稿したと勘違いしていました。

 昨晩のパジャマパーティーは、カーラさんとクラレッタさんのめずらしい姿が見れて、なかなか有意義な時間が過ごせた。偶にはああいうダラダライベントを企画するのもいいな。全員参加のパジャマパーティーも楽しそうだ。


 今朝は朝食を一緒に食べる約束をしてなかったので、僕とリムはメインダイニングで朝食を取り、のんびりと船内を散歩する。アレシアさん達はまだレースの途中だけど、あと数時間で到着しそうだな。こっちに戻ってくるときには進路を合わせないと駄目だから、忘れないようにしよう。


 ふらふらと散歩していると、カフェでお茶をしているカーラさんとクラレッタさんを発見。僕もお茶に交ぜてもらおう。


「おはようございます」


「おはよう」


「お、おはようございます。ワタルさん」


 カーラさん、クラレッタさんと朝の挨拶を交わし、ポヨンと飛びついてきたふうちゃんと、べにちゃんを撫でる。しかし……クラレッタさんが赤い顔をしてこちらをチラチラと見ている。あの様子だと、昨日の記憶がハッキリ残ってるんだろう。


 ここはそっとしておいた方が、気が利く男を演出できそうだな。でも、そのままにしておくと、次からクラレッタさんは自重するだろうから、昨日の楽しい光景が見られなくなる。少しフォローをしておきたいが、匙加減が難しい。


「昨日は楽しかったですね」


「楽しかった」


 僕が話をふるとカーラさんはニコニコと頷いた。どうやらカーラさんは何も気にしてないようだ。


「え、ええ。……ワタルさん、昨日はお恥ずかしいところをお見せしてすみません」


 クラレッタさんは予想通り昨日の事を気にしていた。なんとか上手に話をまとめたい。


「お酒を飲んで陽気に騒いだだけですし、恥ずかしい事なんて何もなかったですよ。クラレッタさんは真面目過ぎる気がしますね。昨日の事は人間なら普通の事です」


 実際に酒癖としてはかなりいい部類だ。暴れたり絡んだりするよりも百倍マシだよな。


「でも、気持ちが抑えきれませんでしたし、はしゃいでしまいました」


 僕としてはもっとはしゃいでほしかったけどね。最後は飲み過ぎたので部屋に戻りますって、カーラさんを連れて普通に帰っていっちゃったし……。


「いやいや、それを言ったら僕もカーラさんも、リム達もはしゃいでましたよ。謝った方がいいですか?」


 クラレッタさんが謝れとか言うはずないから卑怯な質問だけど、楽しい飲み会のためだから許してほしい。


「い、いえ、ワタルさん達が謝る事はありません」


 予想通りの反応だ。これがイルマさんやイネスだったら、困るような答えが返ってくるんだろうな。


「僕達に謝る事がないのなら、クラレッタさんも謝る事はないですよ。ああやって騒ぐ事は普通の事です。アレシアさん達も沢山騒いでいるのに、クラレッタさんが騒がない方が、逆に場の空気を壊す悪い事ですよ」


 飲み会で冷静な人がいないと、あとが大変なのは分かっているんだけど、はしゃぐクラレッタさんが見たいがために、ものすごい暴論を吐いてしまった。


「そうなんですか?」


「そうなんです。だってみんなで騒いだ方が楽しいじゃないですか。違いますか?」


「……違いま……せん」


 クラレッタさんが首を傾げながらも頷いた。なんとか説得成功かな? まあ、これで次からの飲み会でも少しは飲みやすくなったはずだ。たぶん。


「そういう訳で、気にしないでいいんです。じゃあ今日は何をします? 昨日はまったりしましたし、運動するためにテニスでもどうですか?」


 カーラさんもクラレッタさんも問題ないそうなので、テニスコートに移動する。運動して気分転換すれば完璧だろう。


 おっ、アレシアさん達が外海に出てこっちに向かってくる。無事にレースが終わったみたいだな。この調子なら夕方には合流できそうだ。


 ***


 ……異世界人のテニスってアレだよね。なんかどこぞの王子様が活躍するテニス漫画を再現できそうな動きをするよね。たぶん、テニス道具にも不壊の効果が及んでなかったら、ラケットが折れたりテニスボールが破裂したりしていそうだ。


 ただ、僕はカーラさんやクラレッタさんの動きに、ある程度ついていけるようになった。レベルアップの効果だろう。2人に手加減してもらいながらの打ち合いは結構いい感じだ。


 試合になると後衛のクラレッタさんにも勝てないが、一応試合の形にはなる。カーラさんとまともな試合をするには、僕とクラレッタさん対カーラさんでちょうどいい感じだ。


「くはーー。運動したあとのビールは最高ですね!」


 久しぶりにスポーツで汗をかき、最後の方は水分を少し我慢した結果、ビールがものすごく美味しい。水分を我慢するのは体に悪いが、この美味しさのためならついつい無理をしてしまう。


「ふふ、ワタルさん。お風呂のあとも同じ事を言ってましたよ」


「お風呂のあとも運動のあとも、ビールは最高ですからね。同じ事を言っても間違いじゃないんですよ。2人ともビールを飲みませんか?」


「ビールよりもご飯食べたい」


「今日はやめておきます。ちょうどお昼ですし、シャワーを浴びたあとに昼食にしませんか?」


 くっ、アレシアさんやイルマさんなら、僕が言わなくても飲んでるんだけど、なかなか手強いよな。1人で飲むと少し寂しい。シャワーを浴びて昼食にする事に賛成し、イタリアンレストランで待ち合わせする事にして2人と別れる。昼食を食べて、のんびりしていればアレシアさん達も戻ってくるだろう。


 なんでレースなんだって思いもしたが、のんびりで刺激が少ない船旅ではある意味いいイベントだったな。


 ***


「……ねえ、クラレッタさん。なんだかアレシアさん達って荒れていませんか?」


「そうですね。まるでウップンを晴らしているようにも見えます。でも、イネスとフェリシアも同じ感じですよ?」


「そうですね。マリーナさん達は普通ですし、勝ったのはマリーナさん達なんでしょうね」


 眼下ではクリス号の周辺に集まった魔物達を、八つ当たりのように狩りたてる2艘のパワーボートが……まあ、八つ当たりで気分がスッキリすれば、上がってきてからの雰囲気もよくなるだろうし、魔物達には生贄になってもらおう。


 ただ、アレシアさん達が出発する前に、クリス号の周りの魔物を一掃したから数が少ないんだよな。アレシアさん達の気分が復活するまで、魔物が持ちこたえるかが心配だ。


「お帰りなさい。楽しかったですか?」


 帰ってきたアレシアさん達を出迎えて、レースの感想を聞いてみる。


「ええ、楽しかったのは楽しかったのだけど、負けちゃったから悔しいわね」


 チラっとマリーナさんとイルマさんを見ながらアレシアさんが言う。なるほど、予想通り勝ったのはあの2人みたいだな。


「まあ、あとで話を聞かせてください。とりあえず疲れてるでしょうし、お風呂にでも入ってサッパリしてください。夕食はどうします? 寝ていないのなら辛いですよね?」


「今から寝ちゃうと生活が崩れちゃうから、夕食も一緒に食べるわ。飲みたい気分だし……」


 アレシアさんが徹夜で爆走してきた割にまともな事を言う。でも、生活のリズムうんぬんは建前で、飲みたい気分ってのが本音なんだろう。ふー、今夜は荒れそうだぜ!


 アレシアさん達と別れて、僕はイネス達の話を聞きながら自分の部屋に戻る。うーん、アレシア・ドロテア組とイネス・フェリシア組が激しく争っている間に、マリーナ・イルマ組が勝利をかっさらったのか。見事に漁夫の利って言葉を体現しているな。


「それで負けちゃったんだ。完全にイルマさんの作戦勝ちだね。ルール違反はしてないんだし、文句は言えないね」


「分かっているけど悔しいのよ。抜きつ抜かれつ、神経と体力をギリギリまで使った熱い勝負。私達はアレシア達に頭を抑えられて最後は負けちゃったけど、満足していたのよ。ゴールでのんびりと休憩しているマリーナとイルマを発見するまでは……」


 いつからイネスにスポ根が宿ったんだろう。レース中とか熱血漫画の主人公バリに目に炎が灯ってそうだ。


「はいはい、とりあえず二人ともお風呂に入っておいで」


 イネスとフェリシアをお風呂に行かせて、ベッドに寝っ転がる。


『わたる、おふろいかない?』


 プルンとお腹に乗ったリムが、不思議そうに思念を飛ばしてくる。基本的にイネスとフェリシアがお風呂に入る時は一緒に入ってたから不思議なんだろう。でも、今一緒に入ったら愚痴に付き合わされそうだから嫌だ。君子危うきに近寄らずって奴だな。


 ……漁夫の利といい、君子危うきに近寄らずといい、今日は普段めったに使わない言葉を使う日だ。ムニュムニュとリムを揉みしだきながら、さっきお風呂に入ったからと言い訳をする。




 …………夕食の席では面白がって勝ち誇るイルマさん。歯ぎしりをする勢いで悔しがる敗北者達の構図が出来上がり、荒れた……。


 ***


「イネス、あの島がアクアマリン王国でいいの?」


 アクアマリン王国の近くまで到着したので、ルト号に乗り換えて島を探していると、目の前に大きな島が見えてきた。想像していたよりもずいぶん大きな島だ。


「……そうよ」


 レースが終わってから数日、ついにアクアマリン王国がある島が見える。あの荒れた夕食会から以外は、のんびりとした平穏な船旅だった。人間って少し刺激が足りないくらいの方が、ちょうどいいのかもしれない。前と言ってる事が違うかもしれないが、今の素直な気持ちだ。


「イネス、そんなに嫌そうな声を出さないでよ。両親に顔を見せるのはいい事なんだから、あきらめるんだ」


「嫌よ!」


 プイっと顔を逸らすイネス。いまだに両親と会うのは嫌らしい。途中までは平気だったんだけど、アクアマリン王国に近づくにつれて、気が重そうになってたからな。目の前にアクアマリン王国が見えて、完全に機嫌が悪くなってしまった。


 まあ、自業自得なんだけど、奴隷になって故郷に戻るのは嫌だろうから気持ちは分かる。自分の故郷が魅力的な場所だったのが、運の尽きだと思ってほしい。沈没都市とか言われたら、見たくなるのが人というものだ。


「えーっとイネス、王都ってどっちに行けばいいの?」


「……」


 プイっと横を向いたままこっちを見ないイネス。最後の抵抗のようだ。


「ふふ、ワタルさん、王都は外海の方に面しているって聞いた事があるわ。大陸側にも大きな都市があるそうだけど、沈没都市があるのは王都の方よ」


 しょうがないわねっと笑いながら、アレシアさんが王都の方向を教えてくれた。イネス、舌打ちしないの。しかし王都に行きたがらないって事は、イネスの実家は王都にありそうだな。ちょっと、緊張してきた。

読んでくださってありがとうございます。

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