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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十章
215/576

4話 こうなるのか

令和最初の投稿です。これからもよろしくお願い致します。

 突然始まったボートレース。不参加の僕とカーラさんとクラレッタさん。そしてリム、ふうちゃん、べにちゃんという、なんとなく珍しい組み合わせが船に残ったので、いつもと違う事をする事にした。基本的に真面目なクラレッタさんとカーラさんの、ダラダラした時間をプロデュースだ。


「うーん、スッキリしました。ワタルさん、次は何をするんですか?」


 ゆったり飲みながらジェットバスに浸かり、そのあとマッサージとエステでしっかり体のメンテナンスをした。なかなか気持ちがよかったようで、うーんと破壊力抜群の背伸びをするクラレッタさん。素敵です。


「そうですね。じゃあまずは寝間着に着替えましょうか」


「えっ? まだ夕方ですよ?」


「寝るの? ごはんは?」


 驚くクラレッタさんと、ご飯の心配をするカーラさん。


「俗にいうパジャマパーティーと言うやつを開催します」


 基本的に女の子同士でやるイメージだけど、ここは異世界、僕が混じってもいいはずだ。


「パジャマパーティー?」


「ごはん食べる?」


「簡単に言うと、寝間着に着替えてのんびりダラダラしながら、部屋で目的もなくおしゃべりしたり美味しい物を食べたりする事です。僕達は大人ですからお酒も飲みますね。ですからカーラさん、当然ご飯も食べるので安心してください。今日はパーティーですから、お部屋でルームサービスが食べ放題です」


「のんびりダラダラ寝間着でご飯ですか。両親に怒られそうな行動ですね」


「たべほうだい!」


 クラレッタさんはいいのかしらと首を傾げ、カーラさんは食べ放題の言葉に瞳を輝かせている。前にフェリーでお説教してから、カーラさんも一応節制しているからな。一応なので僕達からしたら相当食べてるけど。


 あと、クラレッタさんとカーラさんの頭の上に鎮座する、ふうちゃんとべにちゃんも興奮気味にプルプルしている。僕の頭の上のリムも振動してるし、スライム達も食べる気満々だな。


「クラレッタさん、普段からそんな事をしていたら怒られますが、今日は堕落した一日を過ごすんですから大丈夫なんです」


「大丈夫なんですか?」


「大丈夫なんです」


「だいじょうぶ」


 食べ放題が利いたのか、カーラさんも僕の味方についた。2対1でグイグイ押すと戸惑っていたクラレッタさんも折れた。よし、パジャマパーティーだ。パジャマ持ってないけど。


「じゃあルームサービスだけだと寂しいので、僕はクリス号を回って料理を集めてきます。30分後に僕の部屋に集合って事で」


「ワタルさん、料理を集めるなら手伝いますよ」


「手伝う」


「そうですか? じゃあ、手分けして好きな料理を集めましょうか。では、30分後に」


 3人で手分けして料理を集めるのか。注文してからのタイムロスがないから、相当な料理が集まりそうだけど食べきれるか? ……カーラさんとリム達がいると、料理が余る気がしないから大丈夫だな。よし、まずはお寿司を確保しよう。


 ***


「……違和感がありますね」


 クラレッタさんがTシャツ短パン姿でもじもじしている。すごく可愛い。でも残念なのが全員がTシャツ短パン姿で、パジャマパーティーなのにパジャマが一人もいない事だ。


 フォートレス号を買った時に、みんなTシャツに慣れたのが駄目だったんだろうな。クリス号でもパジャマを売っているから勧めてもいいんだけど、Tシャツ短パンも捨てがたいから、結構な難題だ。


「僕は特になにも思いませんけど、カーラさんはどうですか?」


「よくわからないけど、楽なのは好き」


 カーラさんは気にしてないようで、すでにソファーに座ってリム達と一緒に3人で集めた料理に狙いを絞っている。さっさと乾杯してパジャマパーティーを開催するか。


 一応パーティーだし乾杯くらい……だらけるためのパジャマパーティーだし、乾杯はいらないか。適当に始めて限界になるまでダラダラしよう。


 *** 


 …………そっか、カーラさんとクラレッタさんって酔うとこんなになっちゃうんだね。いつもカーラさんは食べる方に重点をおいてたし、クラレッタさんは適度なところで引き上げてたから知らなかったよ。


「うふふー、うふふー、うふふふふー」


「ふふふー、ふふふー、ふふふふふー」


 2人とも超絶ご機嫌で適当にハミングしながらクルクル回っている。泣き上戸とか絡み酒とか急に怒りだすとか、悪い感じじゃないのは幸いだけど、ここまで上機嫌だと少し怖い。


 たしか途中まではいい感じだったんだよな。のんびり集めた料理とルームサービスを摘みながらお酒を飲み、目的もない会話を楽しんでいた。


 カーラさんはリム達と一緒に料理をたらふく食べて、クラレッタさんはアレシアさん達の昔の話を聞かせてくれた。うん、そうだ、ここら辺からおかしくなったんだよな。


 冒険者になった頃に、コツコツと頑張った時間が楽しかったのか、度数の高いカクテルをカパカパと空にしながら話し、急激にクラレッタさんのテンションが上がった。


 それで、自分が気に入ったカクテルを、僕やカーラさんに勧めだした事で、更に場が混沌としだしたんだ。甘くて美味しいとクラレッタさんに勧められて、カーラさんも一緒にカクテルをカパカパと空にしだして危険度がガンガンに増す。


 饒舌に話すクラレッタさん。料理を食べながらもクラレッタさんに勧められるままに、カクテルを飲むカーラさん。気がついたら2人はなぜか楽しそうに踊りだしていた。その周りをリム、ふうちゃん、べにちゃんも一緒にポヨンポヨン飛び跳ねている。


 リム達だけでもポヨンポヨンのプルンプルンなのに、はしゃぐカーラさんとクラレッタさんまで……幸せって身近なところにあるのかもしれない。


 ***


「食らいつくわよ!」


「ええ、ここで離されたら追いつけないわ。アレシア、ボートの引き波に注意するのよ。斜め後ろを走って!」


「任せなさい!」


 ふぅ、大声で会話をするのを何回も繰り返すと辛いわね。休憩もできるだけ削って昼間にめいいっぱい飛ばしたんだけど、リードを守り切れなかった。でも、暗くなって追いつかれるまで3時間は粘ったわ。暗闇の中、ライトを頼りに先行する船に食らいつく時間が、それだけ減ったんだもの。無駄じゃなかったわ。


「ねえ、ドロテア、前にいるのはイネスとフェリシアよね? マリーナとイルマは?」


「後ろから光は見えないわ。たぶんまだ離れてるんだと思う」


 どうしたのかしら? 暗くなってだいぶたつのに、一番強敵だと思ってたマリーナとイルマがこないなんて。まあいいわ。事故の可能性は限りなく低いんだから、今は目の前のイネス達に集中よ。


「ああもう! フェリシア、性格が悪いわよ! まっすぐ走りなさい!」


「アレシア、叫んでもこの轟音で聞こえるはずないでしょ。落ち着きなさい。フェリシアは私達の体力を削りにきているの。冷静にならないと明るくなる頃には疲れ切っちゃうわよ」


 ドロテアのいう事はもっともなんだけど、あれだけ左右に動かれると、それだけで神経も体力も削られちゃうわ。


「ドロテア、隙をついて前に出るわよ!」


「ちょっと、今前に出てもすぐに抜き返されるだけよ!」


「分かってるわ。だからブロックするのよ。いい、船が前に出たらドロテアが進路を指示して。引き波を利用して頭を抑えるわ!」


 ふふ、振り回されるのはしょうに合わないわ。頭を押さえてフェリシアに目にもの見せてあげるわ。


 ***


「明るくなってきたわね」


「ええ、ふふ、燃料補給のタイミングも私達に有利に働いたおかげで、イネス、フェリシアを抑え切ったわ。明るくなったらもう負けないわ。勝つのは私達よ! ドロテア、操船交代よ」


「アレシア、あなたもうヘトヘトでしょ。大丈夫なの?」


「余裕に決まってるじゃない」


 揺れる船の上で素早く操船を交代する。このまま最後まで抑えきってトップでゴールするわ。


 ……………………


「アレシア、あの大岩の向こうが、ゴールの入り江よ。あと少しなんだから油断しないでね!」


「大丈夫よ。ここまで抑え切ったんですもの。最後まできっちり押さえつけるわ!」


 ふふ、ゴールが見えたわ。イネスがどうにか追い抜こうとしているけど無駄よ。勝つのは私達ね。目印の大岩を越えて、一気に入り江にゴール……なんで!


「ちょっとドロテア、なんでマリーナとイルマが先にゴールしているのよ。私達、抜かれてないわよね?」


「ええ、そのはずなんだけど……実際に目の前にいるわね」


 そうよね……どうしてなのかしら? 分からないのなら聞いてみるしかないわ。私がマリーナ達の船に自分の船を寄せると、後ろのイネス達も少し混乱した顔で同じように船を寄せる。あの2人も混乱しているようね。


「お疲れ様。2艘とも結構時間がかかったのね。少し心配したわよ」


 イルマが嫌味を……嫌味じゃないわね。全然得意げな顔をしてないもの。


「遅かったって、どうしてイルマとマリーナが先にゴールしているのよ。私達は抜かれた覚えがないわよ」


「私達も見てないわね。一体何をしたの!」


 私が問い詰めるとイネスも同じように問い詰める。やっぱりイネスとフェリシアも抜かれた覚えがないようね。


「何って……気付いてなかったのね。まあ、そういう風に行動したからしょうがないわ。あのね、私達があなた達に追いついた時、2艘で激しく争っていたわ」


「じゃあ暗くなってから、かなり時間が経って追いついたのね」


「ええ、思った以上に引き離されていて、私もマリーナもビックリしたわ。それで、追いついてからあなた達のバトルに参加したがるマリーナを説得して、ライトを消して大回りして追い抜いたの。あなた達は左右に蛇行していたから結構簡単に追い抜けたわね。それであとは普通にゴールしたわ」


 ……イネス達の船をガードする事に集中している間に、こっそり抜かれちゃったって事?


「そこは競争に参加しなさいよ! せっかくのレースなのよ!」


「私もそう思う。あの競争は楽しそうだった」


 私がイルマに文句を言うと、イルマと同じチームのマリーナも賛同する。マリーナはバトルに参加したかったそうだから、ちょっと不満なのね。


「嫌よ。あんなに激しく動いたら疲れるじゃない。だいたいレースは一番にゴールしたら勝ちなのよ」


 ……うーん、そういう事じゃないのって言いたいけど、イルマはレースにそこまで乗り気じゃなかったのを巻き込んだから、言い辛いわね。


「みんなそんなにむくれないの。今回は私達の作戦勝ち。それでいいでしょ。次からは交代要員を使わない個人で勝負しなさい。それならみんな好きに勝負できるんだから」


 苦笑いしながらイルマが言う。まあ、確かにその通りね。どうせなら長く楽しみたいからって長距離レースにしたけど、次からは個人でちょうどいい距離のレースを考えましょう。


「分かったわ。今回はあなた達の勝ちよ。じゃあそろそろ戻りましょうか。外海に出て、クリス号の方にだいたいで走ればワタルさんが進路を合わせてくれるわ。のんびり戻りましょう」


 一瞬、クリス号までレースをしようかと思ったけど、さすがに疲れたしやめておきましょう。

読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] モンキーターンか競艇少女(笑)
[一言] 競艇のボートで客船の周りを周回するレースだったら気軽に出来そう
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