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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十章
213/576

2話 スタート

 イネスを除いて、満場一致で次の目的地が決まった。まあ、イネスも家族に会うのは気まずいだろうけど、会わないよりも会った方が、後々いいはずだ。僕も一緒に怒られるから、勘弁してほしい。


「おはようございます、ご主人様」


「おはようフェリシア」


 朝の日課をすませ……ん?


「イネスは?」


 フェリシアが視線を隣のベッドに向ける。……ベッドには目が覚めてはいるようだが、うんうんと唸っているイネスがいた。


「二日酔い?」


「相当酷いようです」


 昨日の別れ際は軽く自暴自棄になってたみたいだし、やけ酒一直線だったんだろうな。


『おはよ』


「リム、おはよう」


 ポヨンっと飛びついてきたリムを抱っこして、朝一から撫でくり回す。至福だよね。


「イネス、今日は移動だけだから寝ていていいよ。フェリシア、悪いけど朝食はルームサービスで済ませて、イネスの面倒をみてやってくれる? 僕はアレシアさん達と出発の打ち合わせをしてくるよ」


 まあ、アレシアさん達も飲んでいたから、起きてくるか分からないけど、ドロテアさんとはメインダイニングで朝食を食べるように、キッズルームで約束したから大丈夫なはずだ。


「分かりました」


 イネスをフェリシアに任せて、リムを頭に乗せて部屋をでる。ドロテアさん、マリーナさん、カーラさん、クラレッタさんは、早めに部屋に戻ったから集まってるよね。イネスのやけ酒に付き合ったアレシアさんとイルマさんは……たぶんいないな。


「おはようございます」


 メインダイニングに集まっていたジラソーレのメンバーと朝の挨拶を交わす。予想通りアレシアさんとイルマさんはいない。


「アレシアさんとイルマさんは二日酔いですか? イネスに付き合ってもらってすみません」


「いえ、ただアレシアとイルマも飲みたかっただけですから、気にしないでください」


 苦笑い気味のドロテアさんに促されて椅子に座る。ポヨンっとリムが頭の上から飛び降り、もっちもっちと移動して、ふうちゃんとべにちゃんに朝のご挨拶をしだした。空を飛べるようになっても、こういう時は飛ばないんだよな。何か拘りがあるんだろうか?


 全員でその様子を優しく見守ると、微妙な空気が取り払われる。リム達って素晴らしい癒し効果を持っているよね。




「じゃあ、ここからアクアマリンに行くには、帝国側を回った方が近いんですね?」


 朝からがっつりステーキを食べながら話をする。昨晩はお寿司だったし、今日は新たな旅に出発なんだ。お肉を食べて力を付けないとな。


「ええ、パレルモから二つ国を越えたところにありますから、帝国側の海を通った方が断然早いですね」


 パレルモのまだ先の国なのか。それなら南方都市側を行くのは、たしかに遠回りだな。


「あれ? 帝国から近いのなら、人族至上主義は大丈夫なんですか?」


「ええ、アクアマリン王国は人族至上主義ではありません。切り離された大地は海に囲まれ、海に関連した種族がいなければ大変なんです。人魚とも繋がりがあるくらいですから、獣人にも寛大なんですよ。それに、海を得意とする種族が沢山住む島ですから、帝国も手が出せませんでした。その利点から獣人が避難しているくらいです」


 なるほど、島で周りは海で海戦のエキスパートが沢山……帝国もちょっかいをかけ辛いよね……あれ? 人魚って言った? 前にちょこっと話を聞いたから存在は知ってたけど、ついに会えるんですか? 元から楽しみだったけど、本気で楽しみになってきた。


「ちょっと疑問なんですけど、人魚がいるなら沈没都市は隅々まで探索されているんじゃ?」


「探索をされている人魚や魚人の方もいらっしゃいますよ。ですが、いくら人魚でも死角が多い沈没都市の中で、魔物と戦うのは大変なんだそうです。建物内を探索している時に襲われたりしたら大変ですからね」


 海の中なら人魚は無敵っぽいとか思ってたんだけど、違うんだな。


「なんとなく分かりました。海の中で自由に行動できるだけで、陸で自由に動ける僕達と基本的にあまり変わらないんですね」


「ワタルさんの言った状況に近いみたいです。まあ、アクアマリン王国でさえ人魚は少なく、主に活躍されているのは魚人の方達だそうですけど」


 人魚って少ないんだ。ちょっと残念だな。でも、いないって訳じゃないし、探せば会えるよね。貝殻ビキニだったりしたらどうしよう。写真撮りたい。


「そういえば、魚人ってどんな人達なんですか?」


 人魚に意識が集中しすぎて、初めて聞いた種族なのに意識が向かなかったよ。


「魚人ですか? 獣人と同じで様々な海の生き物の特徴を持つ種族ですよ。私達とあまり見ためが変わらない人が大半ですが、海の生き物の特徴を強く受け継いだ魚人もいるそうです。でも、そういう方は普通の都市では生活し辛いらしく、理解があるアクアマリン王国に沢山住んでいるそうです」


 ん? 見た目があまり変わらないって事は、僕も魚人を見た事があるのかな? 自分の人間関係が希薄すぎて、普通に魚人との出会いをスルーしていそうだ。


「アクアマリン王国って面白そうな国ですね」


「ええ、私達も昔から興味があったんですよ。ですが、行き辛い場所にあるのも確かですから、私達も楽しみです」


 ドロテアさんがニコニコと笑う。こっちからだと帝国を縦断するし、逆回りでもパレルモに行く事すら厳しい感じだったから、ジラソーレには行き辛い国だったんだろう。聞いただけでも魅力的な場所だから、悔しかっただろうな。


 ん? イネスは獣人なのに、どうやって厳しいルートを通り抜けたんだろう? なんか、無茶な事をやっていそうな気がするな。


『わたる、もっとたべる』


 おっと、話し込んでいる間に、リムが食べ終わってしまったらしい。アクアマリン王国がどんなところか、まだまだ興味はあるが、先に出発時間やルートなんかの話を詰めないとな。リムの朝食を追加で頼み、再びドロテアさん達と話を詰める。




「では、出発は今からでも問題ないんですね。じゃあ帝国までは自動操縦ですし、さっそく出発する事にします。アレシアさんとイルマさんにも伝えておいてくださいね」


 僕も朝食を食べ終わり、リム、ふうちゃん、べにちゃんのおすそ分け行脚も終わったので、軽く話し合った内容を再確認して別れる。まあ、全員特にやる事も無かったので、自動操縦でさっそく出発するだけなんだけど。


 ***


「なんでこうなったんでしょう?」


「ふふ、ワタルさんがボートレースの話をしたからですね」


 思わずポツンと呟いた言葉に、クラレッタさんが面白そうに答えてくれた。僕が行った事がある帝国の連合軍基地まで残り約2日。さっきの昼食までは何事もない楽しい船旅だったんだけど、ボートレースの話をしたのが不味かった。


 アレシアさん、マリーナさん、イネスの目が爛々と輝きだした事に気がつかず、のんびり話していた結果、操船大好き組の心に火がついてしまったらしい。


 ただ、船の購入画面で競艇用のボートが売ってたのを見たから、好きだった競艇漫画の話をしただけなんだけどな。


「たしかに話しましたけど、だからっていきなりレースを始めようとします?」


 競艇用のボートでレースがしたいって言いだしたから却下したら、なんでガレット号でレースって話になるんだろう? しかも長距離レース。燃料もあらかじめボートから抜き取り、保存したものを大量に確保。交代要員と携帯食料まで用意してやる事なのか? ついでにレースのために、クリス号の周りに集まっていた魔物も壊滅させたし……やる気がハンパない。


「私には分かりませんが、操船が好きな人には魅力的な話だったかもしれませんね。見てください、みんな凄く楽しそうですよ」


「たしかに、楽しそうではありますね。勝負師顔をしてますけど。あと、フェリシアはともかくドロテアさんと、イルマさんは完全に巻き込まれてますし……」


 ガレット1号 アレシア ドロテア組


 ガレット2号 マリーナ イルマ組

  

 ガレット3号 イネス フェリシア組


「じゃあワタルさんが合図したら出発よ。ゴールは帝国の連合軍基地の一つ手前の入り江、大きな岩が目印よ。ただし、私達にはマップがないんだから、陸地が見えない場所には行っちゃ駄目。それと他の船が見える位置では高速移動は禁止。少し早いスピードで引き離して見えなくなるまでは追い抜きも禁止。それ以外にルールはないわ」


 高々とルールを大声で叫ぶアレシアさん。クリス号で残り2日の距離……ガレット号がクリス号よりも圧倒的に速いとはいえ、夜中はスピードを落とさないと危険だ。そう考えると結局丸一日くらいかかるレースになるよな。


 初めてのレースなんだから、もっと近場で済ませればいいのに、簡単なのは面白くないとか自分で難易度を上げる気持ちが分からない。


 まあ、ボートが壊れる事も沈む事もないし合流方法も決めた。それに、みんな高レベルで体力もあるから迷子にならなければ大丈夫だろう。


 キャッスル号で船召喚枠が一つ潰れていなければ、ルト号で迎えに行けるから更に安心だったんだけどな。でも、美食神様とデートで膝枕で耳かきが報酬なんだ。多少の不便は許容しよう。


 おっと、アレシアさん達からまだかと強い視線が送られてくる。早くスタートの合図をしろって事だな。右手を高々と掲げ一気に振り下ろすと、三艘のパワーボートが一斉にかっ飛んでいく。


「行っちゃいましたね。さて、僕達はどうしましょうか?」


「おやつ食べたい。ケーキがいい」


 ふうちゃんを頭の上に乗せて、べにちゃんを抱っこしたカーラさんが素早くリクエストしてきた。ふうちゃんもべにちゃんも嬉しそうに体を大きく震わせているし、僕の頭の上のリムもプルプルしているからケーキに決定だな。


 ちなみにドロテアさんとマリーナさんは、ふうちゃんとべにちゃんを一緒に連れて行こうとしていたが、レース内容を理解していたふうちゃんとべにちゃんは、カーラさんにしがみついて離れなかった。


 話を聞くと丸一日も携帯食料は嫌だったらしい。結構本気で落ち込むドロテアさんとマリーナさん。まあ、ふうちゃんとべにちゃんも食べる事が大好きだからしょうがないのかな?


「じゃあカフェに行きましょうか。クラレッタさんもそれで構いませんか?」


「うん」


「私もカフェで構いませんよ。行きましょうか」


 レースの行方も気になると言えば気になるけど、どこら辺を走っているかくらいはだいたい分かるし、僕達はのんびり船旅を満喫しよう。それにカーラさんとクラレッタさんと更に仲良くなるチャンスでもある。せっかくの機会だし僕も楽しもう。

読んでくださってありがとうございます。

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