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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第九章
203/572

26話 侯爵様の視察と買い物

 騎士団長様の視察が終わった翌日には、侯爵様からの使者が来て、侯爵様の訪問を伝えて来た。しかも奥様同伴で宿泊希望だ。


 総勢30人。侯爵様のご宿泊なんだから多いとは言えないんだろうけど、ルト号には乗り切れない。船を用意して頂けるのならという条件で引き受ける事にした。


 視察をしたとしても簡単過ぎる気がするな。お土産が原因な気がするが、上手く行ったのなら良いだろう。


「カミーユさん、明後日に侯爵様が来るそうなので、準備をお願いします。宿泊を希望されていますので、どうせなら骨の髄までキャッスル号を楽しんで貰いましょう」


「分かりました。宿泊部屋はどうしますか?」


「うーん、僕の部屋を使って貰った方が、印象は良いですよね?」


「はい、それにキャッスル号が開放された後は目玉になる部屋です。後で知られてランクが低い部屋に案内されたと思われるのも、悪印象を与えてしまいますね」


 貴族ってプライドが高そうだからな。魔導士様の部屋だったと言えば納得してもらえるとは思うけど、わざわざ誤解を与える必要も無いか。


「分かりました。侯爵様はロイヤルロフトスイートに案内してください。好印象を与えて、王太子様にも上手く話を通して貰いましょう」


「分かりました。おつきの方々にも良い部屋を使って貰いますか? ジラソーレの方達に部屋を移動してもらわなければいけませんが」


「構わないわよ。十分にあの部屋は堪能したし、ランクが落ちても私達には十分に贅沢な部屋だもの」


「アレシアさんありがとうございます。カミーユさん、そういう事ですからいらっしゃる方全員に最高のおもてなしをお願いします」


「分かりました」


 カリャリの街から一番近い大都市だからな。ここで宣伝しておけば、お客さんには困らないだろう。これで文句なしに美食神様とのデートと耳かきをゲットだな。


 細々とした打ち合わせを終えて、商人組はイルマさんとカーラさんを連れて孤児院の人材の為にルッカに入って行った。働くなー。過労とか大丈夫なんだろうか?


「ご主人様、私達はどうしますか?」


「んー、アレシアさん孤児院の内装は大体注文したんですよね?」


「ええ、明るめで子供達が怖がらないような物を発注してあるわ」


 うん、悪気は無いんだろうけど、責められている気がするな。


「小物なんかはどうですか? 花も飾りたいですし、花瓶とか。あっ庭に花壇を作るのも良いですね」


 花壇を作って花が咲けば、あの武骨な空間もマシになるよね。他に何か無いかな?


「ワタルさん。私が持っている沢山のぬいぐるみを孤児院に寄付しますね」


「クラレッタさん、良いんですか? 大切にしていましたよね?」


「良いんです。沢山のぬいぐるみがあれば孤児達も過ごしやすくなります。それにまた取れば良いんですから楽しみが増えます」


 うーん、同じぬいぐるみってクレーンゲームで出てきたかな? まあ沢山のぬいぐるみがあればファンシーな雰囲気で暗い雰囲気を打ち破ってくれるかもしれない。お言葉に甘えておこう。


「クラレッタさん、ありがとうございます。そういう訳でぬいぐるみのような子供達が喜びそうな小物を、街で探してきてもらえますか?」


 出来るだけ手を打っておかないと、子供達が入って来て泣きだしたら気まずい。


「分かったわ。可愛い物や面白そうな物を買ってくれば良いのよね。任せて」


 取り合えず1金貨を渡して、良さそうな物を集めて来て貰う。楽しそうに買い物に出かける女性陣を見送る。


「別にフェリシアも一緒に行って良いのに。船から出ないよ?」


「お客様がいらっしゃるかもしれません。ご主人様だけで対応されるのも大変ですよね」


 居留守を使うから問題無いんだけどね。まあ、良いか。


 リムと戯れながらのんびりしていると、フェリシアが声を掛けて来た。


「ご主人様、お客様ですよ。どうします?」


「どうしますって誰なんですか?」


「サヴェリオさん達です」


「……うん、コッソリ部屋に戻って気が付かなかった事にしよう。アレシアさんがいない時に会うと面倒な気がする」


「……そうですね」


 30分位経つが、いっこうに帰らない。


「ねえ、フェリシア。僕達がいるのがバレてるのかな?」


「いえ、門の方を向いていますから、アレシアさん達が戻って来るのを待ってるんだと思います」


 迷惑な。ここで粘られたら、アレシアさんが帰ってきた時に僕が中に居る事がバレてしまう。諦めてくれないかな。


 それから一時間ほど経ってやっと帰って行った。アレシアさん達は実家に泊まってるんだから、夜になれば会えるのに、待ちきれないのか? どんだけなんだよ。


「ふー、ようやく帰ったね。アレシアさんが帰って来るまで粘るかと思ったよ」


「そうですね。会っていないと言った方が楽だったかもしれませんね」


 うーん、面倒な事を言われて困る事になりそうだから、微妙な所だ。関わらないのが一番だな。


「会ったら会ったで疲れそうだから、これで良かったと考えるよ」


「そうかもしれませんね」


 商人組が戻って来て、日が暮れる前に残りの女性陣が戻って来た。


 奴隷は子供達を相手にするので慎重に選別しているが、あと何日か通えばある程度集める事が出来るそうだ。


 しかし、孤児院の護衛の選別だけが難航しているらしい。ごつくて怖い冒険者が多くて、子供の相手をさせるのが不安だと言っている。護衛なんだから性格と腕さえ良ければ、ごつくて怖い方が良いと伝える。


 アレシアさん達は沢山の荷物を抱えて戻って来た。花壇と家庭菜園も教育に良いだろうと道具を揃えて来たらしい。


 カミーユさんに農業に詳しい奴隷も追加で2人、お願いした。これで家畜を飼えば、孤児院で籠城できるな。増々要塞みたいになった気もするが、気のせいだと思おう。


 全員で夕食を取って、ジラソーレは実家に戻っていく。サヴェリオさんの事を何も言ってないけど大丈夫かな?


 明日は侯爵様が来るから今日の内に商人組をキャッスル号に送っておくか。そのままキャッスル号に泊まればジラソーレは帰らなくて良かったんじゃ? 帰らなかったら明日もサヴェリオさんが訪ねて来そうだ。帰って貰った方が都合が良いか。



 ………………



 朝食を済ませ、ジラソーレもやって来たので、着替えて侯爵様が来るのを外で待つ。


「そう言えばワタルさん。昨日、サヴェリオがルト号を訪ねたらしいけど、誰もいなかったって言ってたわ。出かけてたの?」


「そうなんですか? ああ、皆さんが出かけた後、眠ってしまったので気が付かなかったんだと思います」

   

 完璧な言い訳なはずなのに、ジラソーレは疑わしそうに僕を見ている。


「ワタルさん、何で嘘をつくの?」


 アレシアさんが完全にウソだと見抜いて聞いて来た。気が付いていても流して欲しかった。


「あー、すみません。アレシアさんがいない時にサヴェリオさんに絡まれたら面倒だなって、居留守を使いました」


「そう、まあ、サヴェリオの態度が悪かったからしょうがないわね。迷惑を掛けてごめんなさいね」


 素直に言って良かったのか。それよりなにより嘘が簡単にバレるのが問題だな。レベルアップで知力が上がっているはずなんだが、嘘をつく事と関係がないのか?


「いえ、ちょっと会うのが面倒だと思っただけで、こちらこそすみませんでした」


「ご主人様、侯爵様がいらっしゃいました」


 もう少し早く来てくれれば問い詰められなかったのにね。


「侯爵様、奥方様、ようこそ御出で下さいました」


「うむ、今日は世話になる。妻も騎士団長の変わりようを見てどうしても来たいと言ってな。面倒を見てやってくれ」


 なるほど、団長様もだいぶ変わってたからな。女性の目から見ると試してみたくなったんだろうな。団長様も奥様を連れてきている。根掘り葉掘り聞かれたんだろうな。


「私はご案内するだけですが、責任者の方は出来る限りのおもてなしを準備されていると思います」


「そうか。楽しみにしている」


 挨拶を済ませ、ルト号に戻り、教えられた船を誘導しながらキャッスル号に向かう。タラップの前に船をつけるように誘導して、侯爵様がキャッスル号に乗り移るのを待つ。


 なかなか乗り移らないな。ビックリしてるんだろう。少し待つか。数分経ってようやく侯爵様達がタラップから船内に入って行く。


 侯爵様の船を移動してもらい中に入る。中に入るとカミーユさん、マウロさん、ドナテッラさんが侯爵様達とロビーのソファーに座って談笑している。


「お待たせしました」


「いや、問題無い。妻達がデュムンの変身ぶりをみて、はやくスパに行きたがっておったから、案内を頼んでいた。待ってなどいないぞ」


「はあ、それなら良かったです?」


 ああ、今回の視察について来たのは団長様の変化を見てだもんね。まあ、宣伝になるんだろうし、問題無いよね。


「では、私がご案内させて頂きます」


 ドナテッラさんとイルマさんが、4人の女性と護衛の騎士5人を連れて先にスパに向かう。侯爵様達を案内するのはカミーユさん、マウロさん、アレシアさん僕で、残りのメンバーは魔導士様で挨拶して貰う為に別行動だな。


 団長様を案内した同じようなコースをもう一度案内する。団長様を案内した時も思ったけど、美女に船を自慢しながら案内するのと、偉い人に失礼の無いように案内するのでは、当たり前だけど楽しさが天と地ほど違うな。


 いくつかの施設を簡単に体験しながら船内を回る。今のところ侯爵様が興味を示したのは、バーに酒屋にカジノだ。酒にギャンブルか……不安な組み合わせだな。


 特に酒屋では、団長様のお土産で飲んだお酒を侯爵様が見つけて、店内にあるお酒を買い占めようとしだした。マウロさんが、この船のルールで酒類は1人5本までしか持ち帰れない事を伝える。


 購入制限を考えておいて良かったな。いきなり全部買い取ろうとするなんて。貴族様恐るべしだ。購入制限が無かったら、酒の面ではバーがあるとはいえ魅力が薄れる事になっていただろう。マウロさんグッジョブだ。


 どのお酒が美味しいのか聞かれたので、カミーユさんの代わりに僕が説明する。


「私もお酒の種類ぐらいしか分かりませんが、こちらにあるウイスキーとブランデーというお酒は値段が高い物ほど、長い年月を寝かせて貴重な物になっているようです。その分値段が高いですね。


 僕は飲んだ事が無いので味を保証する事は出来ません。今夜はお泊りになられるのですから、色々なお酒を楽しまれてから購入されるのが良いかと思われます」


 出しゃばっちゃったな。マウロさんがお酒をかなり確認してたのを忘れていた。任せておけば良かったんだ。


「なるほど、5本しか持ち帰れぬのであれば、気に入った物を選びたいな。ワタル殿、夜は付き合って頂けるのかな?」


 聞きようによっては卑猥な事を言われた気がする。


「お部屋でもお酒を楽しんで頂きたいので、夕食の後、マウロさんと少しでしたらご案内します。その後はお部屋でゆっくりと楽しんで頂ければ、この船の良さがお分かりいただけるかと」


「部屋でゆっくりと飲むのも良いか。楽しみだな」


 ニコニコと頷いているから問題無いだろう。


 スパに行っていた奥方様達と合流する。すかさず奥様達を褒める侯爵様と団長様。上流階級の人達は照れずに自然と女性を褒めるんだな。見習いたい。


 奥様達の機嫌も上昇して再び船内を見て回る。船内にある街並みを見て騒いでいた奥様達が急に静かになる。何だろうと視線を追うと、ジュエリーショップだ。


「カミーユさん、あそこは宝飾品が売っているのかしら?」


 侯爵様の奥様の興味が凄いな。ジラソーレも少しは騒いでいたけど、熱量が違う。


「はい、奥方様の仰る通りです。ご覧になりますか?」


「ええ、是非ともお願いするわ」


「畏まりました」


 僕達男は何も言わずに後に続く。ジュエリーショップに入ると、今までに見た事も無い装飾も多いらしく、このデザインがとか、繊細なのねとか好意的な感想が聞こえて来る。


 ちらっと侯爵様と団長様を見ると、侯爵様は鷹揚に構えていて、団長様はちょっと引きつった笑顔だ。何だか申し訳なく思うが。謝るより心の中で感謝しよう。お買い上げありがとうございます。


「ふふ、何時もは商人が装飾品を持ってくるのだけど、こうやって選ぶのも楽しいわね」


「そうですね。洗練された物が多く、ドキドキします」


 奥様達が楽しそうに会話をしながら気に入った物を選んでいく。お買い上げの際に何も言わずに支払いをする侯爵様と団長様。男の度量を見たな。


 侯爵様は自分がお金を払う事が楽しそうに見えた。従者っぽい人が払おうとしたのを止めて自分で払っていたし、普段と違う状況を楽しんでいるみたいだ。


 奥様も普段は商人が来ると言ってたし、お店を巡るのが楽しいのかも。何となくだけどキャッスル号の開放が成功する気がして来た。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 上級国民はデパートの外商部とかブランド店は特別室での販売かカバンに入れてお宅訪問パターンだからね、店頭で商品を選ぶ楽しみは無いのは確か。
[一言] 知力(計算能力とか)が上がっても知性や品性は成長してないから仕方ないね! むしろ使いこなす努力すら必要様無いチートのおかげで驕ってる分、地球時代より劣化してそう
[一言] そもそも知力なんてないだろこの主人公.....
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