23話 パワーレベリングと孤児院の出来栄え
読んで下さっている皆様の御蔭で200話に到達する事が出来ました。本当にありがとうございます。
もう少し話が続く予定ですのでこれからもお付き合い頂ければ幸いです。
沢山の感想、アドバイスを頂き、耳が痛い事もございましたが、文章を書いた事も無い素人の私にとって、とても為になる事を沢山教えて頂けました。
その事を生かせて素晴らしい文章を書けるようになったと胸は張れませんが、少しは進歩出来たんじゃ無いかと信じて、これからも頑張りますので、よろしくお願い致します。
カミーユさん、マウロさん、ドナテッラさんのパワーレベリングが始まった。ドナテッラさん以外は戦闘経験があり、普通に乗船拒否された魔物に攻撃を叩き込んでいる。
カミーユさんは剣、マウロさんは槍なんだが2人とも明らかに僕より上手だ。ドナテッラさんの石投げが僕をホッとさせてくれるな。
毎朝ルト号でキャッスル号の周りに集まった魔物を討伐して、その後は派手な音を立てたり、討伐した魔物をロープで縛り、血の臭いでおびき寄せながら魔物を集める。
考えたら酷い事しているよな。パワーレベリングをする前は、襲って来た魔物を討伐するだけだったけど、おびき寄せると、驚くほど大量に魔物が集まって来る。
新しく来た3人だけではなく、リム達も張り切ってレベル上げをしているので、魔物が討伐されるペースは異常そのものだ。
有り得ないとは分かっているが、海の魔物が壊滅しそうな勢いで、最初の頃は石を投げているだけのドナテッラさんも疲れ果てて、軽く石を当てるだけなのに腕が上がらなくなって、休憩なんて事も度々あった。
新しく来た3人は日々上がっていくレベルによって余裕が出て来た。その日のパワーレベリングが終わってからも休まず、キャッスル号を見てまわり何を契約するのか、何処に人員を配置するのか積極的に話し合っている。
「ふー、ゴムボートが足りなくなったので、購入するまで倒すのを待ってください」
「分かったわ。皆休憩しましょう」
アレシアさんの言葉でみんなが思い思いの場所で休憩する。その間にゴムボートを追加で購入して次の獲物に備える。
「マウロさんの言う通り、シーサーペントは回収していますが、本当に捌けるんですか? かなりの量になりますよ?」
「問題無いわい。シーサーペントに地竜じゃぞ、どうやったって捌けるわい」
「そうですか」
最近と言うか地竜を討伐する結構前から、海の魔物は討伐しても回収しなくなっていた。シーサーペントも魔石だけは抜き取っていたが、後はそのまま海に沈めていた。
だって捌く当てもなく、ひたすら増えて行くシーサーペントの素材。海から引き上げるのも手間が掛かるし大変だ。
僕達はその光景に慣れて、普通にスルーしていたが、新しく来た3人は驚き猛抗議して来た。特にマウロさんの勢いは凄く血管が切れそうな勢いだ。
僕が捌く当てもなく、スペースだけ取って意味が無い事、地竜も大量に確保していてどうしようもないと伝えると、ワシがキャッスル号で全部捌くから確保するんじゃっと絶叫していた。レベルが上がって増えた寿命分が削られて行きそうだな。
元々もボート1艘で入りきらなかった部分は切り取って捨てていたが、全部を回収する事になった。全部しっかりと売り捌いてくれるそうなので、頑張るか。
ある程度3人のレベルが上がり、ガレット号に分乗してレベル上げをしてみたが、シーサーペントが回収できない事が辛いらしく、ルト号でのパワーレベリングに戻った。
3人にはワガママを言って申し訳ないが、目の前で白金貨の素材が沈んでいくのが、商人として耐えられないと涙ながらに言われてしまった。ちゃんとした商人なら精神的に追い込まれるらしい。自分がエセ商人だと自覚させられるな。
効率は落ちるが毎日ルト号でレベル上げをして、終わってからは食事を取りながらキャッスル号の運営のしかたと孤児院の人員について話し合う。
孤児院については中途半端に人を集めて、素行が悪いひとが紛れ込むと子供が食い物にされるらしい。契約で縛ると人を集めるのが難しいらしいので、全部を奴隷に頼る事にした。
知識を教える事が出来る奴隷も、値段は高いがいるそうなので、問題無いだろうとの事だ。
忙しくなる可能性を考えて延期にしていた神様方の降臨も、レベル上げをしているだけなので実施した。
今回も美食神様の耳かきはゲットできなかったが、森の女神様とデートしてじっくりと耳かきをして貰えたから、満足だ。美食神様とのデートと耳かきは次、もしくは次の次でゲット出来るだろう。娯楽神様の計算通りなんだろうけど、楽しみが先にあるとそれはそれでやる気が起きるな。
他の神様方は相変わらずで、戦神様はお酒、魔神様は図書室、女神様方はスパとお風呂。創造神様、娯楽神様は気の向くままにキャッスル号の中を走り回っていた。
酔っ払いに絡まれる以外は、概ね問題無く降臨イベントを過ごす事が出来た。何となく傾向も読めて来たし、突然無茶を言われない限り大丈夫だと思うんだが、突然無茶を言いそうな神様方がいるのが辛い所だ。
神様降臨イベントを乗り越え、毎日のパワーレベリングを続けて、孤児院完成予定日が近づいて来たので、カリャリの街に向かう。
「カミーユさん、そろそろカリャリの街に着きますよ。レベルアップした体には慣れましたか?」
「そうですね。レベル200を超えるなんて昔では考えられなかったんですが、普段の生活ではあまり変わらないのが驚きです。とっさの時や戦闘の時に違いを感じて驚いてしまいます」
「カミーユさんもそうですか。僕も普段は変わらないので、レベルアップした事を忘れそうになりますよ」
僕だけかと思っていたけど、カミーユさんもマウロさんもドナテッラさんも同じような感覚だ。パワーレベリングだと、とっさの時の力の使い方に慣れないんだろうな。
ちゃんと戦闘を経験しているジラソーレやイネス、フェリシアはレベルアップでの感覚の違いが、理解出来るそうだし、本職との違いが出てるみたいだ。
「ワタルさんもそうなんですか。私は机から落ちかけたコップをとっさに掴んで、握りつぶしてしまいました」
可愛い笑顔で物騒な事を言うな。僕は結構時間を掛けてレベルアップしたからそんな事は無かったけど、3ヶ月ちょっとで急激にレベルを上げるとそんな事になるのか。うっかり驚かせたら命の危機も有り得そうだ。
「あはは……まあ。あれですね。慣れないと危険なので、落ち着いてゆっくり力に慣れて行きましょう」
「ふふ、そうですね」
マウロさんも、体に張りがっとか言って元気だし、ドナテッラさんも力には慣れないようだけど、簡単な体術を覚えた。パワーレベリングは成功だという事にしておこう。
カリャリの街に到着して商業ギルドに向かう。総勢12人とプラス3人の頭の上にはスライムが待機している。キャッスル号を開放したら3人とは別れるとは言え、大所帯になったな。
商業ギルドに入ると、さっそくおっさんが声を掛けて来る。もう1人のお姉さんとは殆ど話せてないな。
「おう、ずいぶん遅かったな。孤児院は完成してるぞ」
「そうなんですか? 最初にいわれた予定通りに戻って来たんですが」
勘違いしてたか?
「資材も十分、ギャラもたっぷりだったからな。人数も沢山集まって、かれこれ……8日前には完成したぞ」
「そうなんですか。問題なく出来ていれば大丈夫ですが、どうでしたか?」
「依頼を受けたからな、しっかり確認しておいた。手抜きもしてねえし、きっちり予定通りに作られてるから安心しろ。建物を3つ建てたから、最終的に6白金貨分の資材を使った。残りの14白金貨分はこっちで定価で買い取ったが問題無いよな?」
「ええ、約束通りなので構いません。確認しに行きたいのですが良いですか?」
意外と高かったな。6白金貨分の資材ってかなりの量だぞ? どんな建物が出来たのか気になるな。
「おう、案内してやる。行くぞ」
おっさんに連れられて孤児院に向かう。
「意外と立派な塀が出来てますね」
「そうか? 石材で塀を作れって言ったのはワタルだろ?」
おっさんが何を言ってるんだこいつって目で見て来る。確かに石で塀を作ったら安全そうだよねって、注文したけどこんなにゴツイとは思わなかったんだよ。なんか砦とか要塞とかの雰囲気だ。孤児院としてどうなんだろう?
孤児院の正面に到着すると、分厚くて大きな鉄の扉が……確かに安全な方が良いよねって鉄の扉にしたけど、誰も孤児院って思わないと思う。マジで要塞みたいだ。子供達が怖がりそうな予感がするな。
何となく想像で注文したけど、想像と現実は違うな。大工さんに孤児院を作るんだよな? って何度も確認されたのはこういう事だったのか。プロには完成した姿がちゃんと想像出来ていたんだな。
「大きくて、迫力がある建物ですね」
クラレッタさんがポツンとつぶやく。
「ええ、子供達の安全が第一ですからね。これならチョッカイを出す事も躊躇うはずです」
「そうですよね。孤児院らしくなくても、子供達の安全が第一ですよね」
クラレッタさんが賛同してくれた。このまま僕の想像通りの建物が出来たていで突き進もう。孤児院を作るつもりが要塞になったとかちょっと恥ずかしい。
「ほれ、これがカギだ。1人で開けられるか?」
「えっ、ああ、大丈夫です」
大きなカギをゴツイ鉄の扉のカギ穴に差し込み捻る。ガチャリ……いやガッチャンという大きな音と共にカギが開き、力を込めて大きな鉄の扉を押すと軋むような音を立てて扉が開いて行く。
護衛の為に戦闘が出来る奴隷を買おうかと思ってたけど、力持ちの門番も買った方が良さそうだな。子供達には開けられないだろう。
「へー、見た目はひょろいが力はあるんだな。見直したぜ」
僕は中肉中背だと言いたい。おっさんがムキムキなだけだ。中に入ると土がむき出しだが広い広場があり、正面に武骨でゴツイ要塞……孤児院が建っている。
「正面が孤児院、右側にあるのが職員寮、左側にあるのが倉庫だな。どれから見る?」
「倉庫、職員寮を見てから孤児院を見ます。構いませんか?」
「おう、これが3つの建物のカギだ。スペアも渡しておくから無くすなよ」
「はい、ありがとうございます」
鍵の束だけでかなりの重さだ。安全を重視し過ぎて、使いやすさを無視してしまったのは完全な失敗だな。扉は全部鉄でなんて言うんじゃなかった。
だって家の扉ってガラスはハマってたりするけど、大体が金属製だよね? こんな西洋のお城についているゴツイ鉄の扉がつくなんて予想外だよね?
倉庫の扉を開き中を見る。石造りの大きな空間に木の棚が幾つも作り付けてある。
「うん、棚も沢山付けてありますし、注文通りですね」
「この倉庫だけで籠城ができそうね」
アレシアさん、僕もそう思うけど目を逸らしているんだから、言わないで欲しい。
「そうですね。何か危険があったら避難できそうで良かったですよね」
「ええ、見た感じ孤児院の方が頑丈そうだけどね」
そうだよね。孤児院はとにかく頑丈にって注文したよね。倉庫でこのレベルだと孤児院を見るのが怖いな。
倉庫と職員寮を確認した結果、頑丈そうだ。たぶん孤児院を確認したらとても頑丈そうだと思うんだろうな。
「じゃあ、孤児院に向かいましょうか」
全員を引き連れ、孤児院の扉に到着する。
「そう、ワタル、一つ言っても良いかの?」
「言いたい事は分かるので言わないでください」
「そうか? なら孤児院にどうしてこんな扉を付ける必要があるのか疑問じゃが、聞かん事にしておこう」
マウロさん、全部言ってますよ。
「あのー、ワタルさん、子供達が出入り出来ませんよね?」
「ええ、でも大丈夫です。扉を開け閉めする人も雇いますから。僕の立場だと安全を優先させた方が正しいと思いますからね」
「そうですか。まあ、開け閉めをしてくれる人がいるのなら安全な方が良いですね」
クラレッタさんが何とか無理やり納得したような表情で頷いた。なんかごめんなさいって言いたくなるな。
鉄の扉を押し開け中に入る。真っ暗だな。ガラスは設置されてないし全部頑丈に作られているから、光が一切入って来ない。
光の魔法で明かりを作り、木の窓を外して明かりを取り入れる。
「ねえ、ワタルさん。頑丈な木の窓で、窓自体も小さめって要塞の作りよね? 注文の時に私もいたけどこんな風に作るように頼んでた?」
アレシアさんの質問に、注文した時の様子を思い出す。こんな風に作るようには頼んでないけど心当たりなら有るな。
「窓を作る時に、普通に作るのか、安全に作るのか尋ねられたので、安全に作るように頼んだ記憶はあります」
「そう……」
言葉を発するのをやめないで欲しいな。一通り孤児院の中を見て回る。感想としては武骨で頑丈だな。大部屋も小部屋も食堂も教室も大浴場も作ってある。問題は無いはずなのに要塞にしか思えない。
「これは、あれですね。内装に力を入れましょう。明るい色の家具や絨毯を入れて、花を飾りましょう。内装を何とかすれば、何とかなるはずです」
「分かったわ。考えてみるわね。ワタルさんは人員の事とか考えておいて」
なんかしれっと戦力外通告をもらった。女性陣とマウロさんがおっさんと内装について話し出した。ちょっと寂しい。
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読んで頂いてありがとうございます。




