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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第九章
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19話 フェリーの移動と建設計画

 3日の時間が経って商業ギルドに行くと、おっさんが自慢気な視線で見て来る。ちゃんと許可が出たんだろうけど、ムキムキのおっさんのドヤ顔か……頑張ってくれたんだろうから流すべきなんだが、軽くイラッっとする。


「こんにちは。どうなりましたか?」


「おう、問題無いぞ。人材の貸し出しと、荷下ろしも船が来たら海軍でやってくれるそうだ。その代わりに孤児院の建設で使う資材以外は、こっちに定価で卸してもらうって事で良いんだよな?」


「はい、問題ありません。では、魔導士様をお迎えに行ってきますので、夕方には船が来ると思います。荷下ろしは明日からお願い出来ますか?」


「おう、伝えておく。船を停泊させる位置は船の出入りが邪魔にならんところで頼む」


「分かりました」


 うん、順調だ。さっさと面倒な事を終わらせて、気持ち的に楽になりたい。商業ギルドから出てルト号に乗って外海に向かう。


「ワタルさん、2隻とも港近くに浮かべるって言ってたけど、どうするの? あんまり移動していると目立たない?」


 確かにアレシアさんの言う通り目立つな……どうしよう。


「フォートレス号は夕方に港に運んで、ストロングホールド号は夜中に移動させましょうか」


「夜なら目立たないかしら? 監視はついてそうだけど、その位はしておいた方が良いわよね」


 本当にやらない方がマシってレベルだよね。少しはタガを外そうって思ってたけど、適当になり過ぎてる気がする。気楽と言えば気楽だから良いか。


「そう言えば、木造船のように船偽装したままですが、このままで良いですかね?」


「あー、そうだったわね。キャッスル号は木造に偽装したままにするの? 偽装しないのなら、フェリーも偽装してない方が後々騒ぎは小さそうね」


 うーん、どうしよう? 船内に入れるんだから異常なのは直ぐに分かる。それなら外観を偽装する必要も無さそうなんだけど……金属の船とか沈みそうで誰も乗ってくれないかも。


「木造の方が受け入れてくれそうですから、偽装しておきます」


「その方が無難かもね」


 アレシアさんもそう思うか。でも無難って言われると意表を突きたくなる自分が居るな。つまらない自分から変わりたいのかもしれない。フォートレス号に乗り換えて夕方に到着するようにカリャリの街に向かう。


「ワタルさん、街の方が騒ぎになってるけど大丈夫なの?」


 マリーナさんの言葉で外を見てみる。……良く分からない。遠目に海軍本部が見えるだけだし、視力が違うな。


「マリーナさん、よく分からないんですが騒ぎになってます?」


「ええ、騒ぎになってるわ。見えない?」


 海軍本部にも商業ギルドにも話を通してるんだけど、なんでだ?


「まったく見えません。どうなってます?」


 マリーナさんが街の方を確認しながら教えてくれる。それにつられたのかマリーナさんの頭の上に乗っているふうちゃんも街の方に体を伸ばしている。僕の頭の上にいるリムも体重移動が感じられるからつられているな。


「えーっと、うーん、騒ぎと言うより歓迎? 門から人が出て来て旗や手を振ってくれてる」


「一応この街を占拠した帝国海軍を沈めたからですかね?」


「たぶん? 警戒はされてないと思う」


 まあ、そんな事言われても判断出来ないよね。


「警戒されていないのなら、このまま行きましょうか」


「分かった」


 魔導士様は表に出ないって設定だから着替える必要は無いよね。船の出入りが邪魔にならない場所ギリギリで停泊する。ちょっと距離があるが僕でも街の人達の様子が見える。


「歓迎されてるわね。ワタルさん、どうするの?」


 確かにアレシアさんの言う通りだ。人数は多くないが、街の人達が船の見学がてら歓迎してくれているようだ。


「……魔導士様が出て来たらおかしいので、アレシアさん達が手を振って貰えます?」

   

「私達が? 昼間まであの街にいたのに?」


 ジラソーレのメンバーも微妙な顔で頷いている。気持ちは分かる。


「でも、歓迎されているのに無視するのも気まずいですよね」

 

 ちょっと悩んだが取り敢えずジラソーレに手を振って貰った。街の人達から歓声があがったから、多分これで良かったんだろう。何となく気まずい思いを抱えながら船内に戻る。


「微妙ね。あれで良かったのかしら?」


 ドロテアさんが首をかしげながら聞いて来る。べにちゃんが落ちてしまわないか、心配な首の傾げ具合だ。


「どうしようも無いので、良かったと思いましょう」


 微妙な雰囲気を忘れる為に、久しぶりに自販機コーナーでお酒を飲みながら夕食を取る。


「久しぶりだけど、この雰囲気も良いわね。落ち着くわ」


 アレシアさんが唐揚げに噛り付き、缶ビールを流しこみながら言う。気楽な感じはあるよね。味的にはクリス号の方が上だと思うんだけど、リラックスできるのは自販機コーナーだな。


 騒がしい飲み会が始まり、夜中までたらふくお酒を飲んだ後、ルト号で外海に出発する。


「ご主人様、大丈夫ですか?」


「んー、大丈夫だとは思うけど、ちょっと飲み過ぎちゃったかも。危なそうだったら声を掛けてね」


「分かりました」


 イネスは撃沈しているけどフェリシアはしっかりしているから大丈夫だろう。ちょっとだけふらつく頭でストロングホールド号に乗り換え自動操縦でカリャリの街に向かう。


 意外と規則正しい生活をしていたから、もう既に眠い。偶にフェリシアに声を掛けて貰いながらフォートレス号の隣にストロングホールド号を停泊させる。


「うー、結構疲れたからフォートレス号に戻ってもう寝ようか。フェリシアはイネスをお願い出来る? 僕はそこで寝ているリムを連れて行くから」


「分かりました」


 男の僕がイネスを運ぶべきかもしれないけど、冷静に考えるとフェリシアが適任なんだよね。僕でも楽勝で運べるんだけど、うっかり転んだりしそうだ。



 ………………



 翌朝、商業ギルドに向かいおっさんと話す。


「おはようございます」


「おう、おはよう……じゃねえよ! なんであの馬鹿でかい船が2隻になってるんだよ。聞いてねえぞ」


「え? ……沢山の資材を積んで来たので、2隻になったんですけど、言ってませんでしたか?」


「聞いてねえよ」


 ……ああ、初めは1隻ずつのつもりだったけど、チョッカイを出してきそうな人をビビらすつもりで2隻並べる事にしたんだったな。まあ戦争で2隻とも見せているんだから、そこまで驚かなくても良いと思うんだが。


「言い忘れていたんですね。すみません」


 取り合えず頭を下げておく。おっさんはブツブツと朝から連絡が来て大変だったとか、海軍のお偉いさんがっとか愚痴っている。話を続けると藪蛇になりそうだから放っておこう。


「それで、このチケットが船に乗る為の許可証のような物です。取り敢えず300枚を魔導士様に用意して頂きました。持ち歩いていないと船から弾き出されるそうなので気を付けてください」


「300枚もいらねえだろ。それより船から弾き出されるってどういう事だ?」


「僕に聞かれても分かりませんよ。魔導士様に聞いてください」


 実際に仕組みは全く分からない。創造神様に聞かないと分かんないよね。


「魔導士様に会えるのか?」


「無理だと思いますよ。殆ど人と会いませんから」


「じゃあ、無理だろ。聞けねえじゃねえか」


「それを僕に言われても困りますよ。頑張ってくださいとしか言えません」


 ありゃ、またブツブツ文句を言い出した。面倒だ。


「それで、荷下ろしはいつから始まるのか、紹介してくれる大工さん達といつ会えますか?」


「ん? ああ、荷下ろしと大工は午後からだな。このチケットがあれば入れるのなら、荷下ろしは勝手に始めても良いか?」


「搬入口は開けておいてもらいますから、勝手に始めても問題ありません。ですがそのチケットでは積み荷がある場所しか入れませんので、注意しておいてくださいね」


「おう、でも、余計なチョッカイを出して来る奴らがいても責任は持てねえぞ。その辺は大丈夫か?」


「ええ、指定したところ以外には入れないらしいので、何も出来ないと思います」


「魔導士様ってのはたいした者だな。まあ、問題ねえならいいか。大工達は昼過ぎに呼んどくから、その時にまた来てくれ」


「分かりました」



 おっさんと別れてフォートレス号に戻り、搬入口を開けておく。あとは海軍の方でやってくれるだろう。


「ワタルさん、午後から大工さんに会うんですよね。どんな建物を建てるつもりなんですか?」


 クラレッタさんが珍しく料理とぬいぐるみ以外の事で質問して来た。ちょっと驚きだ。いや、南方都市でもパレルモでも孤児院に関わっていたから当然と言えば当然なのか。


「そうですね。大工さんとの話し合い次第ですが、敷地の半分ぐらいに3階建ての建物を建ててもらって、大きな部屋を沢山作って貰う予定です。大きなお風呂と食堂。それに大きな厨房も欲しいですね。あとは職員が泊まる建物も別棟で作って貰う予定です」


「大きな部屋を沢山ですか?」


「はい、集団生活をして貰おうと思っています。小さな部屋を沢山作ったら、職員の目が届きにくそうですから。他に何か必要な施設がありますか?」


「そうですね。孤児が集まって来ますので、心に傷がある子もいます。大部屋だけだと対応できないので、小部屋で落ち着いて対応する必要も出て来ます」


 子供を集めてワイワイ共同生活って訳にもいかないか。戦争の影響で辛い目に遭った子供達も来るんだろうし……改めて大変な事に手を出してしまったな。異世界=慈善事業で孤児院としか思いつかない自分の脳ミソが憎い。


 僕に出来るのは資金に余裕を持たせて、職員を多めに配置するぐらいか? 


「分かりました。孤児院自体にも職員の部屋を作って、その周りに小部屋を作りましょう。対策しやすそうです」


「それが良いですね。あとはトイレも多めに必要だと思います」


 トイレか、人数が多くてトイレが少なかったら地獄だな。忘れないように頼んでおかないと。色々と必要な事も多そうだし、クラレッタさんの意見を聞いてまとめておこう。


「分かりました。他にも必要な事があれば教えてください」


 どうせ作るなら使いやすい方が良いよね。大工さんに丸投げするつもりだったけど、忙しい現状なので丸投げしたら手抜きされそうだ。


「分かりました。あると良い施設で言えば、勉強部屋ですね。大き目の部屋で、文字の読み書き計算を教える事が出来れば、孤児達の将来に必ず役に立ちます。教会では神官が教えていますが、私設の孤児院では教師を雇わないといけないのでその点が大変だと思います」


 うーん、読み書き計算か。大事だよね。教師を雇うのも大変そうだし、高くても教育をおこなえる奴隷を探した方が早そうだ。


「クラレッタさん、今更なんですが、孤児院の職員は奴隷を買って働いてもらうつもりなんですが、問題になりませんか?」


「うーん、代表者まで奴隷だと問題が出るかもしれません。ワタルさんは寄付金を募るつもりはありますか?」


 お金を使う為に孤児院を作るんだから、寄付金は要らないよね。問題は僕の資金が尽きたりした場合だけど、当面は尽きることは無いだろう。


「いえ、当面は自己資金だけで賄うつもりです」


「それなら、形だけの代表にワタルさんかカミーユさんがなって、奴隷を取り仕切る者にはある程度の権限を渡せば奴隷だけでも問題無いと思います。寄付を募らなければ、買い物以外は外と関係はありませんからね。ただ、孤児達の就職等は人脈が必要になります。その点を考えると強い人脈を持つ方がいると助かると思います」

   

 奴隷に権限を与えるって、奴隷頭みたいな物かな? まあ、自己資金でやるとそういう所は便利だよね。


「分かりました。人脈についてはカミーユさんとマウロさんに聞いてみます。いざとなったら豪華客船で働いてもらう事を考えれば、何とでもなりそうです」


 ある程度クラレッタさんと孤児院に必要な施設を纏めて、昼食を済ませて商業ギルドに向かう。


「おう、来たか。こっちだ」


 おっさんに案内された部屋には3人の大工さんが待っていた。この人達が孤児院を作ってくれるんだな。


「こいつが施主……施主は魔導士様になるのか? まあ責任者のワタルだ」


「ワタル、こいつらが大工や石工の責任者達だ」


 商業ギルドの職員とは思えないほどの大雑把なおっさんだよな。おそらく商業ギルドのマスターだと思うんだけど、それで良いのか?


 お互いに挨拶をして打ち合わせを始める。忙しいのにこっちに回されて不機嫌かもと心配していたが、魔導士様の肝いり事業って事で職人達のやる気も十分らしい。魔導士様人気に感謝だな。目線がジラソーレに向いていたのは気が付かなかった事にしよう。気持ちは十分に分かる。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます

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