15話 2回目の神様来訪と水着
なんか昨日は幸せな一日だったな。簡単な事で幸せになれるんだ、単純な性格も悪い事ばかりじゃない。
朝食の為にクリスタルダイニングに向かう。昨日は飲みに行ってたから何人か起きて来てないかもな。
クリスタルダイニングに入ると……おぉ、全員揃ってる。まあ、数名体調が悪そうだけどなかなかの進歩だよね。
「皆さんおはようございます」
朝の挨拶を交わすと体調の悪そうな数名が頭を押さえた。進歩したんじゃなくて気合で起きて来ただけみたいだな。
大量のパンとデニッシュ、ステーキに目玉焼き……朝からステーキか……有りなのか? 自分の腹具合を考えると食べられるのは食べられる。そう考えると有りなんだろう。ならば食べるべきだな。肉は好きだ。
ステーキを注文してサポラビが運んで来る間にいくつかのパンを選ぶ。朝食らしくはないけど美味しそうだ。
「ワタルさん、朝から重いのを食べるのね。私には無理よ」
「アレシアさん、無理なのは二日酔いだからですよね?」
そっと目を逸らすアレシアさん。冒険者なんだから朝食はしっかり食べないとって言って、ジラソーレの女性陣が朝から肉を食べるのは普通だ。今更、か弱さを演出されても困る。
特定の女性陣の体調が悪いので、軽めの朝食を済ませてキャッスル号に移動する。神様方が遊びに来るまでは、のんびりキャッスル号を楽しもう。
………………
クラレッタさんの協力を得て、毎日店を変えながら美味しい料理をストックする。合間を見つけて豪華客船を開放するまで沢山の料理をストックしておこう。
偶に討伐をしたり、お酒を飲んだり、とのんびりした時間を過ごして神様を迎える日が来た。女性陣はクリス号に移動してもらい、僕はルト号でクリス号から離れる。
神様方が遊びに来る事も話してあるので、離れないでも良い気がするがクラレッタさんの暴走と、神様達の暴走が怖い。用心の為にも見えなくなる位までは離れておこう。
創造神様との約束の時間の少し前まで船を走らせ、キャッスル号を召喚して教会に向かう。暫く待つと創造神様と光の神様が現れた。この簡単に現れる感じは未だに納得できないな。
「やあ、航君おはよう。これから3日間よろしくね」
「おはようございます。たいしたことは出来ませんが、楽しんで頂けると幸いです」
「うん、楽しませてもらうよ。初めて来る神達は前に来た神達が適当に案内するから、航君はスタッフ任命を望む神達をよろしくね。僕は今日は映画を観るんだ。11人のおっさんが泥棒をする奴。じゃあね」
言うだけ言って去っていく創造神様を見送る。……自由だよね。光の神様を見ると、申し訳なさそうに頭を下げられた。光の神様の苦労が偲ばれるな。
「光の神様、気にしないでください。それでこの後の行動はこの前と同じで良いんですか?」
「ええ、同じで大丈夫です」
次々と現れる、神様方を見送る。朝からお酒を飲みに行く戦神様。挨拶だけで図書室に足早に去っていく魔神様。じゃあねーっという言葉だけ残して走り去っていく娯楽神様。
沢山の神様方を見送り、最後に現れた美食神様達とスパに向かう。ぞろぞろと付いて来る女神様……凄い人数だな。欲望より怖さを感じる。
「えーっと、どのぐらいスパのスタッフに任命すれば良いですか?」
「あちらの25柱にスタッフ任命をお願いします」
「25柱もですか? 多過ぎる気がするんですが」
「説明やネイルアートにも手を出したいそうなので、大丈夫です」
女神様のネイルアートか……あまりピンとこないな。まあ良い、女神様方の望みは全力で応えておこう。次は美食神様のレストランか。
「美食神様、今回はどのレストランに行きますか? あっ、その前に美食神様、森の女神様、デートと耳かきは今回から大丈夫なんですか?」
ちゃんと聞いておかないと、タイミングを逃すといつの間にか最終日とかなってそうだからな。
「私は大丈夫です。もう既に一つの村を移住させて貰っていますから、問題ありません」
よし、森の女神様にはオッケーを貰えた。
「そうだったわね。……航さんも解放の為の準備をしてくれているんだし、私も約束「ちょっとまった!」 を……」
「あら、娯楽神、いきなりどうしたの?」
そうだよ。いま、いい感じだったのに。だいたい、来て直ぐ走り去っていったのに、何故この場にこのタイミングで現れる。
「美食神がご褒美をあげようとしてたから止めに来たんだ」
しかも迷惑な事を言い出した。
「でも、約束をしているんだから、当然の事でしょ?」
「約束は豪華客船の開放なんだから、開放準備の段階だとまだ早いよ。異世界人君はこの段階で報酬が貰えるのなら、のんびり開放すれば良いやとか考えるタイプだよ。開放するまでは駄目」
……娯楽神様は僕に何か恨みでもあるのかな? いや、性格が読まれているのか。
「んー、航さん、娯楽神がこう言ってるんだけど、行動が遅くなるの?」
ちょっと困った顔で聞いて来る美食神様。お美しい。でも否定はできないな、この段階でご褒美が貰えるのなら、無理はしなくなるだろうな。
「新しい豪華客船を買ったので、後は孤児院が出来上がればキャッスル号を開放する予定です。25日後に資材を受け取ってから、建設を任せるので、僕のやる気はあまり関係ないと思います」
「それは外側の話だよね。キャッスル号にも孤児院にも、人を集めたりと色々やる事があるんだから、異世界人君のやる気は重要だよ。のんびりしてると、外側は出来てもスタッフが足りないから開放が遅れるなんて事もありそうだもん」
うう、否定が出来ない。
「娯楽神、言い過ぎよ。私達がお願いしているの。そこを間違えないで」
「でも、美食神、僕は間違った事を言ってないよ?」
「娯楽神、私もはやく開放してもらえれば嬉しいけど、それは私達の都合でしょ。期限を決めていないんだから航さんのペースで進める事なの」
「分かってる。だから美食神のご褒美をお預けにして、やる気を出して貰えば、はやく開放されるよ」
目の前にニンジンをぶら下げる発想だな。馬扱いをされているが、美食神様とのデートと耳かきがエサなら、頑張って走る事は否定できない。
「あのー、目の前でそういう会話をされると困るんですが。それと美食神様達は何故そんなに急がれているんですか? 神様なら時間はたっぷりあるんですから、数ヶ月のズレなんて誤差の範囲だと思いますが」
「あら、航さん、ごめんなさい。……そうね、急いでいると言うより待ちきれないの。文明が滅ぼされて以降、この世界は長く停滞しているわ。
特に食事と娯楽は殆どが前の文明の劣化したもので、進歩も少ないの。私達は直接関わることが出来ないから見守る事しか出来なかったのだけど。創造神様が航さんに与えた能力で、状況が変わりそうだから嬉しくなっちゃったのよ」
「あー、そう言えば今までの異世界人の殆どが戦闘関連の能力を貰ったんでしたね」
「そうなの。今まで来た異世界人も、自分の世界の文化を伝えてはくれたんだけど、大きく動く子は目立っちゃって碌な事にならなかったし、注意深い子は少しずつしか情報を流さないから広まり辛いのよね」
「それでも、僕みたいに簡単な料理を広める事は出来たのでは? プリンやリバーシは結構な人気になりましたよ?」
「そう、それがこの世界の問題なのよね。教えて貰ったものをそのまま受け入れる。そこからの発展が無いのよ。その点、航さんがシエーナ村で広めたピザは良かったわね。教え方が中途半端だったから、村の人達が試行錯誤しているわ。村興しと相まって楽しく見ていられるわね」
美食神様、何気に毒を吐いたな。でもそうかアラビアータに似た料理や、何となく知っている料理が出て来たのは、誰かが教えた料理がそのまま残っていた可能性があるのか。
「美食神様、パレルモのジーノさんは新しい料理を開発するって張り切っていたんですが、それでは駄目なのですか?」
「そうね、良い物が出来るかもしれないわ。でも大勢の人間の意識が変わらないと、停滞した文明を進める事が出来ないの。キャッスル号は裕福な大勢の人間にショックを与える力があるわ。裕福な者達はその文化を取り入れようと研究してモノにしようとするでしょう。たぶん大騒ぎになるわね」
いや、そんな事を嬉しそうに言われても困るんだけど。まあ、大騒ぎにはなるんだろうな。カミーユさんが上手に捌く事を期待しよう。しかし文明の進歩の為の起爆剤にするつもりなのか。
魔神様は急激すぎる変化は望ましくないと言って、図書室の閉鎖や機械類の販売を止めたけど、それでも十分な進歩にはなるんだろうな。
「分かりました、そういう事なら少し頑張ってみます。ご褒美もキャッスル号の開放の後で構いません。その代りご褒美は期待していますね」
「異世界人君、どうせなら全力で頑張りますとか言った方が良いと思うよ」
「娯楽神様、全力で頑張りますとか僕には無理です。神様に嘘をつくとか怖いです」
「ふふ、分かったわ。私も少し頑張るから、航さんもよろしくね」
「はい、僕も美食神様のご褒美、期待してます」
娯楽神様の乱入で予想以上に長い立ち話になってしまった。お待たせしてしまった光の神様、森の女神様達にお詫びをして、美食神様が希望したドーナツショップに移動してスタッフ任命する。今日も夜に沢山のドーナツを作って貰う約束をしたので、楽しみだ。
「光の神様は如何されますか?」
「そうですね……私はスパでリラックスした後に映画を見に行きたいと思います。夜はまた温泉を頼んでも良いですか?」
温泉は……確か15~20艘分しか残ってなかったよね。……光の神様の為ならそのぐらい惜しくはない。
「大丈夫ですよ。お気に入りの缶ビールもご用意しましょうか?」
「まあ、嬉しいです。よろしくお願いしますね」
「では……何時ごろにしますか?」
「そうですね。美食神と森の女神と一緒に入るので、ワタルさんが大量注文に行く夜にドーナツショップまで迎えに行きます」
また、素晴らしく妄想がはかどる事を言う。前回もこの言葉で勇者に憧れたな。
「分かりました」
光の神様と別れていよいよ森の女神様とデートだ。
「航さん、デートですけど、どうするんですか?」
「そうですね。ではプールで遊ぶので構いませんか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「では、午前中はプールで遊んで、昼食を食べてから映画でも見ましょうか。その後、耳かきをお願いします」
「ふふ、分かりました」
なんか、こうやってデートコースを決めるのも初々しい感じがして恥ずかしいな。なんか昔を思い出す。一生懸命考えたよな。まずは水着を買いに行かないとね。女神様に際どい水着を勧めるのは有りなんだろうか?
「そう言えば、僕の奴隷のフェリシアと言う子が、森の女神様にとても感謝していました。ありがとうございます」
「あの、ダークエルフの娘ですね。ふふ、私に感謝するのではなく、航さんに感謝をするように言っておいてくださいね。行動しているのは航さんなんですから」
フェリシアには感謝を夜にとても示して貰っているんだけど、そんな事は女神様に言えないよね。
「森の女神様、さすがに森の女神様に感謝しないで僕に感謝するようにって、僕が言うのは問題がありますよ」
「なるほど、確かに問題がありますね」
水着店に到着する。さすがにTな水着を奨める度胸は無い。正直な事を言って森の女神様に任せよう。
「いろいろありますね。どれにしましょうか?」
森の女神様が意見を求めてくれた。自分の気持ちを正直に吐露しよう。
「えーっとですね。露出が少ないのがワンピースタイプなんですが、僕が好きなのはこういった露出が大きい奴です」
取り合えず、黒の三角ビキニが好きだと言ってみた。
「……それは、少し恥ずかしいですね」
駄目か。もしかしたら、じゃあこれにしましょうとか言ってくれるのを期待していたんだけど、そんなに上手く行かないよね。
これはどうですか? いやそれならこっちの方が。微妙な攻防を繰り返しながら水着を選ぶ。僕と森の女神様の妥協点はモノキニで落ち着いた。
モノキニに決まっても、布地が多い水着を選ぶ森の女神様と、布地が少ない水着を勧める僕の攻防が始まる。
いや、神様相手に調子に乗らないようにしようと、心に決めていても、目の前に現物があるとどうしても欲望が生まれてしまう。
お互いの妥協の結果、色は黒で、そのビキニをつなぐ布地の面積は広いが、レースでスケスケの水着に決定した。
取り合えず近場の部屋で森の女神様の着替えを待つ。楽しみだな。どんな感じなのかな? ワクワクが止まらない。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。