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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第九章
181/568

4話 弟君とワタル

いつも沢山の感想、誤字脱字、アドバイス、ご指摘ありがとうございます。


少しですが活動報告で質問に答えさせて頂きました。よろしくお願い致します。

 侯爵様の使者が帰った後、僕の服をどうするのか、緊急会議が行われた。


「流石に、会う事を要求して、普段着で行くのは問題ですよね?」


「ええ、問題ね。ごめんなさいね。私が話しちゃったから」


「いえ、アレシアさんのせいではないです。僕も会う気満々でしたから」


 いったるぜーとか思って、自分から前に出たからな。恥ずかしかった。慣れない事はするものじゃないな。


「侯爵様の晩餐に出る服って、簡単に手に入りますか?」


「良い服の新品はオーダーメイドだから時間が掛かるわ。中古だと体形に合う服が見つからない可能性も高いから、お勧め出来ないわね」


 アレシアさんが難しそうに答えてくれた。この世界の服は厳しいか。


「うーん、手持ちで一番まともなのは、スーツなんですが、この世界の標準ではありませんよね?」


「ええ、この大陸では見た事が無い服になるわね」


「そうですよね。豪華客船を開放した後なら少しは広まって、問題は無かったんでしょうが……偉い人の服装って派手なんですよね?」


 あんまり見た事は無いけど、偉い人の恰好って派手なんだよね。布の質はキャッスル号で買った服の方が良さそうだけど……


「そうね……でも、偉い人達は地位を表す為に派手になっているんだから、ワタルさんが派手にする必要はないわね」


 別に僕が派手な格好をする事も無いのか。てっきり、偉い人に会うには僕もキラキラしないと駄目かと思ったよ。いざとなったら白のタキシードを買って、アクセサリーショップで宝石を買いまくるかとか考えてたけど助かったな。


「Fランク商人の僕が派手に着飾る必要は無いんですね。それなら魔導士様との関連を意識して貰う為に、スーツを着て行きましょうか。清潔で、ある程度上質であれば、珍しい服でも怒られませんよね?」


「……そうね。興味を持たれるかもしれないけど、怒られる事は無いと思うわ。でもスーツの事を詳しく聞かれたらどうするの? 商売の神様の契約をしていないのに、広まったらカミーユに怒られない? 見た事も無いタイプの服なのよ」


 ……盲点だった。形だけなら真似る事も可能だよね。先に契約されたら面倒この上ない。カミーユさんの怒りも怖い。


「着て行く衣服だけ、明日、商業ギルドに行って契約しておきましょうか、まったく何もせずに誰かに登録されたら本気で怒られそうです」


 着て行く服が決まったので軽く打ち合わせをして、それぞれの部屋に戻る。侯爵様の所にイネスとフェリシア、リムは連れて行けないようだ。ジラソーレがしっかりと守ってくれるそうだが少し不安だな。



 ………………



 翌日、商業ギルドに行って着ていく服をアイテム毎に登録する。服をアイテムって言い方カッコいい気がする。テレビで言ってたけど使い方を間違ってないよね? 日本では怖くて使えなかったが、この世界なら何とか使える。間違っていても誰も分からないもん。


 昨日の受付嬢が引き続き相手をしてくれたが、スーツを見て、キョトンとしていた。違和感があるみたいだ。どのような利率で契約するのか迷ったが、後で契約しなおせば問題無いらしいので、受付嬢が適切だと言ったパーセンテージで契約した。あとはカミーユさんに丸投げだな。


 契約を済ませて宿に戻り、昼食にする。街で食べるより、豪華客船の食事が食べたいそうだ。勝った。ジラソーレはかなり異世界の文化に依存している。


 お城に行く前にルト号でシャワーを使いたいとお願いされたし、もう、船召喚から離れられない体になってるのかも? ……後は……どうするのかが問題だ。


 1人を口説くと他が駄目になりそうだし、全員一気に口説くと……全員一気に口説くってなんだよ。全員が好きですとか、ハーレムに加入してくださいとか言うのか? 詰めをどうしたら良いのか全く分からん。


 これからも船の施設を使いたければ俺の女になれ……無いな。悲しい結末になる事は分かる。女神様の中に恋愛神とかいなかったかな?  


 ……恋愛かー、冷静に考えると恋愛って感じでもないんだよな。もちろん好きなんだけど、美人で巨乳なお姉さんを独占したいという欲望の方が強い気がする。……恋愛神様に相談したら怒られそうだな。


 頭の中でゲスな事を考えていると、宿の従業員が来客を知らせに来た。昨日の悲しみを思い出して、後ろで大人しくしておく。どうせ僕には関係ない事だろう。……複数の男の声が聞こえる。誰だろう?


「ワタルさん、私の弟とその友人達が来たわ。冒険者のパーティーを組んでいるんだけど、一昨日実家に帰った時は依頼に出ていて会えなかったのよね。挨拶させて貰っても良い?」


 アレシアさんが来客の正体を教えてくれた。弟さんとその友人なんだな。……見てみると、アレシアさんの弟さんだけあって、美青年だ。あれだな、なんか辛い。


「ワタルと言います。アレシアさんにはいつもお世話になっています」


 握手を求めると、少し不機嫌そうに握手をしてくれた。なんでだ? 不機嫌になりたいのは僕だよ。周りの男達もあんまり友好的じゃないよね。なんだこの雰囲気は。


「サヴェリオだ。ジラソーレを護衛に雇うなんて、あんた何の仕事してるんだ?」


「ちょっと、サヴェリオ、ワタルさんに失礼でしょ。言葉遣いに気を付けなさい」 

  

「あはは、構いませんよ。僕は商人をしています」


「ランクは?」


 グイグイ来るな。


「Fランクですね」


「なっ、ねえちゃんはAランクの冒険者だぞ。なんでFランクの商人がジラソーレを雇えるんだよ!」


「ねえちゃん?」


 ……ピンと来た。サヴェリオ君はシスコンだ。初めて見たな。漫画やアニメでは見た事あったけど、現実では会った事が無かった。本当に居るんだ。創作物の中の存在だと思ってたよ。


 まあ、アレシアさんみたいな巨乳美人で強いお姉さんだと、シスコンも分かるな。しょうがない事だろう。


「な、なんだよ。ねえちゃんはねえちゃんだろ。そんな事より、なんでFランクの商人がジラソーレを雇えるのか説明しろよ」


 なるほど。不機嫌な態度も頷ける。Fランクの商人に、大好きなお姉ちゃんが雇われている事が気になるんだね。他のメンバーも友人だから、多かれ少なかれジラソーレに憧れがある。不機嫌になるのもしょうがないな。僕は大人だ。優しく見守ってあげよう。


「なんでニヤニヤしてんだよ。ぶっ殺すぞ」


 ニヤニヤってなんだよ。大人が子供を見守る、素晴らしく優しい微笑だったはずだ。


「サヴェリオ、いい加減にしなさい。私達はワタルさんにとてもお世話になっているのよ。礼儀正しくしなさい」


 あっ、これは逆効果だな。大好きなお姉ちゃんに叱られた恨みが、僕に飛んでくるパターンだ。案の定涙目で睨んで来る弟君。分かっているよと、今度こそ素晴らしいアルカイックスマイルで弟君を見つめる。


「見下してんじゃねーぞ!」


 ブチ切れる弟君。納得がいかないが、どうやら僕の笑顔は人を不快にさせるらしい。かなりのショックだ。笑顔の練習をしないとこれからの人生で損をしそうだな。おっとアレシアさんがマジ切れしそうだ。何とかしないと。 


「えーっと、サヴェリオ君、商業ギルドのランクは、特殊なルートを持っている人は上げる必要が無いんだ。僕はFランクの商人だけど、大儲けしているから、ジラソーレも雇う事が出来たんだ」


 実際には違うけど、いくらアレシアさんの弟さんと言えど、色々話すのは駄目だ。だって嫌われてるもん。


「そ、そんなに儲けているのか? いつまでジラソーレを雇うつもりなんだよ」


 僕の儲けている発言を聞いて、少し勢いが弱まった。……でもさっさと別れて欲しいみたいだ。


「サヴェリオ、あなたが口を出す事じゃないわ」


 ふむ、アレシアさんは弟の気持ちに対しても鈍感らしい。これが鈍感系主人公か。……僕の気持ちって届くのかな? 普通主人公が鈍感系で周りのメンバーがやきもきするものだよね。


 僕だって異世界人のチート持ちだ。主人公であってもおかしくないのに、狙っている相手が鈍感系とか意味が解らんな。


「ねえちゃんが何時まで護衛の仕事をするのか気になっただけだ」


「いつまで? いつまでって当分は離れられないわね」


「離れられない! なんでだよ。あいつとどんな関係なんだよ」


 弟君、全開で振り回されているな。アレシアさんの言葉に深い意味はないよ。弟なんだから分かるでしょ? 口喧嘩になった二人を眺めながら、イルマさんに近づく。


 こういう時に頼れるのはイルマさんだよね。他のジラソーレメンバーは仲が良いわねーとのほほんだ。


(イルマさん、あの2人は昔からああなんですか?)


 小声でイルマさんに話しかける。


(ええ、小さい時から変わってないわ)


 イルマさんが僕に耳打ちしてくれる。それと同時に殺気らしき物が飛んで来た。見てみると弟君の仲間の1人が悔しそうに睨んでいる。そうか、彼はイルマさん狙いか。妖艶なお姉さんが好きなんだね。僕も大好きだ。


 ちょっとしたシンパシーを感じて笑顔を向けようとして、慌ててやめる。今笑ったら絶対に勝ち誇った微笑だと誤解される。その位は僕も学習している。


(止めなくて良いんですか?)


(直ぐに収まるわ。サヴェリオは徹底的にアレシアに弱いから)


 イルマさんの言葉を聞いて、のんびり見学していると、直ぐに弟君がごめんなさいをしていた。圧倒的な力関係だな。


「それでサヴェリオ、ただ、会いに来てくれただけじゃないの?」


「えっ、ああ、俺達Cランク冒険者になったんだ。もう一人前になったから、ジラソーレに入れて欲しいって言いに来たんだ」


 他のメンバーもうんうんと頷いている。みんな、美青年なんだけど、涙ぐましい努力を感じる。おそらくジラソーレと一緒に居たいと頑張って来たんだろう。素晴らしい事なんだけど、僕にとっては甚だ都合が悪い。どうなるんだ?


「いきなりそんな事を言われても困るわ」


「いきなりって、前から連れて行ってくれって言ってただろ。何で駄目なんだよ」

 

「みんな、ちょっと来て」


 アレシアさんが呼ぶので近づくと、弟君に威嚇された。番犬って言葉がピッタリだな。ジラソーレの仲間に入ると、僕は近づけなくなりそうだ。


「アレシアさん、どうするんですか?」


 僕が聞くと、難しい表情で答える。


「可愛い弟だけど、Cランクだと実力の差がありすぎるわ。育てるって考え方もあるんだけど、私達はワタルさんのお手伝いをするんだから、そんな暇はないわね」


 話し合いを続け、結論としては、連れて行かない事に決まった。良かった。これで近づけなくなるって事は無さそうだ。


 アレシアさんが駄目って事を伝えると、いやだ、一緒に行くとゴネ出した。しぶといな。僕にもあれだけの根性があれば、もっと違う人生を歩めそうだ。


「無理よ。何より今はワタルさんの依頼を受けているもの、いきなり仲間を増やすなんて出来ないわ。分かるでしょ」


「じゃあ、あいつが、良いって言えば仲間にしてくれるんだな」


 弟君、何でそうなる。こっちに来ないでください。


「なあ、俺もついて行って良いだろ。あんた弱そうだし、頭の上の変なスライムも含めて守ってやるからよ」


 ……こいつ今なんて言った?


『りむ、へん?』


 慌ててリムを抱きかかえて、撫でながらリムは変じゃない。とっても可愛いと褒めまくる。これは、アレシアさんの弟と言えど、万死に値するのではないだろうか?


「おい、なんでスライムとイチャついてるんだよ。変態か?」


 地獄を見せてやる。


「ちょっと、サヴェリオ、いい加減にしなさい」


 なにで潰そうかな? フォートレス号かな、ストロングホールド号の方が威力がありそうだよね。いっその事キャッスル号で行っちゃうか? 


「ストロングホールド号とキャッスル号のどちらが良いですか? 特別に選ばせてあげますよ」


 プチってしてやる。


「ワタルさん、待って、落ち着いて。いくら何でも、ストロングホールド号とキャッスル号は駄目よ。被害が大きすぎるわ。申し訳ないのだけど、別の罰でお願いします。私が必ず実行させるから」


「ねえちゃんは、どいててよ。俺が話を付けるから」


「黙ってなさい。私達はワタルさんの護衛よ。もうこれ以上は敵として処置します」


 ジラソーレが武器を構え、周りの空気が一変する。張り詰めた空気にビビる僕と弟君。


「わ、わかりました。冷静に考えるとそこまでの事でもなかった訳ですから構いません。ですが……僕が決める罰は実行してもらいます」


「なんで、お前が「サヴェリオ、大人しくしてなさい、良いわね」」


「ねえちゃん。分かったから剣を向けないでくれよ」


 何の罰にしようかな? 確かに船召喚はやり過ぎだよね。よく考えたら悪口とも言えない言葉で、僕達を守るつもりだったみたいだし……でも何故か物凄くイラって来たんだよね。軽い罰はなんか嫌だ。


「決めました。原因となったジラソーレの加入を最低でも1年間は無し。僕とジラソーレのメンバーに対して話しかける時は常に敬語。ねえちゃん呼びの禁止、アレシアさんと呼ぶ事。スライムに敬意を持つ事。以上を守って貰えるのなら水に流します」 


 顔を真っ赤にしてパクパクしている弟君を見る。怒りで声が出ないみたいだ。


「ありがとう、ワタルさん。必ず実行させるわ。サヴェリオ、分かったわね」


「そんな、ねえちゃん」


「敬語とアレシアさん、でしょ。これから間違えるごとに、加入禁止期間、敬語期間を1月伸ばします。良いですね。ではもう、戻りなさい」


 有無を言わさず弟君たちを追い返すアレシアさん。なんか疲れた。弟君って長い付き合いになりそうなのが更に嫌だ。この後、侯爵様とのお食事があるんだよな~。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] FランクインってピンとこないならばFラン大学と言うと理解する人間が多そう(笑)
[一言] こういうキャラ達って必要? 航って独占欲があるみたいな事言ってた割には弟達がジラソーレのメンバーに惚れてるのわかるのによく1年後以降はpt組むの許したね? てかジラソーレと航をひっつける…
[気になる点] >「決めました。原因となったジラソーレの加入を最低でも1年間は無し。 1年経った頃に加入する約束だったろ?と言われそう。
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