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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第九章
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2話 勧誘とルッカ

 カミーユさんの説得に暗雲が……強い護衛を雇えば大丈夫か? 船内だけ安全でも難しいよね。


「船の中なら絶対に安全なんですか?」


「ええ、船の中で殺傷行為をしようとしたら外に弾き出されます。それにカミーユさんには相応の権限を付加しますので、船の中では絶対に安全です」


 創造神様が解除しなければだけど……そんな事はめったにないはずだ。


「ですが、船内は安全でも外に出れないのは辛いですね。息が詰まってしまいます」


 どうなんだろう? キャッスル号なら引き籠って居ても平気だけど、アクティブな人だと辛いかな? 


「カミーユさんが考えているほど酷くはないと思います。普通の船と違って、運動する場所も買い物をする場所も、公園もありますから」


「船に公園ですか……想像も出来ないですね。でも、外を歩くだけで身の危険に晒されるのなら、やはり、働くのは厳しいです」


 うーん、上手く行きそうだったのに。根本的な所で躓いた。確かに身の安全は第一に考えないといけないよね。何とかならないものか。


「アレシアさん、何かいい方法はありませんか?」


「そうね、Aランクの冒険者パーティーかSランクの冒険者を雇えれば何とかなるでしょうけど……あの船で過ごせるのなら引き受けるかもしれないわね。でもSランクの殆どの人は何処かおかしいらしいわ。


 あとは、カミーユを鍛えるぐらいかしら? 前に聞いたけど少しは戦えるんでしょ? 一流の敵が来たら無意味でしょうけど、レベルが上がれば少しは安全になるわ。


 他には……カミーユをキャッスル号に案内すれば良いんじゃないかしら。船を確認すれば、偶に私達と外出するぐらいで満足できるって思うわよ」


 そんなに単純で良いのかな? カミーユさんは身の安全を求めていると思うんだけど。あと何処かおかしいSランクとか嫌過ぎる。


「そんなに凄い船なんですか?」


 食い付いて来た。カミーユさんって好奇心が強いのか。それならキャッスル号を見せれば上手く行くかも。


「私達は1ヶ月過ごしたけど、まだまだ楽しみきってはいないわね。カミーユならいくらでも仕事を見つけられるわ。息が詰まる暇も無いわよ」


 流れが変わったかも。


「ワタルさん、船を見せて貰う事は可能なんですか?」


「可能ですよ。ただ外海に出て暫く走らないと目立ちますので、時間が掛かりますけど大丈夫ですか?」


「見て回って明日の朝までに戻れますか?」


「表面を見て回るなら、出来ますけどジックリ見るには時間が足りないと思います。興味深い物も沢山あると思いますから。ある程度時間を掛けて見て貰いたいですね」


「……なんとか明後日に休みを取りますから、明日の夕方から見せて頂けますか?」


 取引が終わったらルッカに行こうかと思ってたけど、明後日の夜からでも問題無いか。


「分かりました。明日、ご案内しますね。あっ、ここまで話したのでついでに聞きますけど、胡椒を前回の倍以上出せるんですが、何処まで出して大丈夫ですか?」


「……そうですね。倍までなら怪しまれずに対応できます。卸して頂けますか?」


 相手に確認できるって助かるな。怪しまれずにって所まで考えてくれるのが更に嬉しい。カミーユさん、なんとかして雇いたい。


「ぜひ、よろしくお願いします」


 会話が終わりカミーユさんを送り出そうとしたら、ジラソーレが送って行くと言い出した。僕が船に招いて話しただけで身の危険に陥るのか? 大袈裟じゃない?


 聞いてみると、念の為だそうだ。やっぱり少し危険になる可能性があるんだな。面倒な話だ。僕はルト号で大人しくしておこう。


 ルト号でリバーシやジェ〇ガを楽しみながらダラける。久しぶりにリムとのリバーシ、癒される。そう言えば僕、イネス、フェリシア、リムで遊ぶのも久しぶりな気がするな。


 暫くすると、ジラソーレが戻って来た。ふうちゃんとべにちゃんもリバーシに集まって来る。リバーシのルールを覚えた、べにちゃんはドロテアさんやふうちゃん、リムに勝負を強請る。可愛い。


 特に、スライムVSスライムは見ごたえがある。リム、ふうちゃん、べにちゃん、の勝負を僕、ドロテアさん、マリーナさんがデレデレしながら見守る。幸せだ。



 ………………



 240艘分の胡椒を卸し、夕方にカミーユさんを迎えて外海に向かう。


「ここら辺で良いですね。カミーユさん、真っ暗ですけどキャッスル号の明かりを点ければ大体の大きさが分かります。見てみますか?」


「ええ、お願いします」


 カミーユさんの目の前にキャッスル号が現れる。おお、驚いている。驚いている。人が驚くとなんか嬉しいのは自分の器の小ささか? 


 カミーユさんを徹底的に接待してみた。スパ、化粧品、食事、お酒、プール、楽しそうな物をドンドン勧める。


 でも、カミーユさんは商売の方に意識が向いているみたいで。この部屋なら幾ら、この料理は幾ら、こんな物が! っと滞在中は精力的に行動していた。


 キャッスル号には無料の料理が沢山ある事を伝えると、有り得ないと驚いていた。まあ、部屋代に含まれているだけなんだけどね。そう伝えると、あらたな部屋の値段を考え始めた。商人だよね。


 特にお風呂とスパを体験して、キャッスル号で買った美容グッズを使った後は目の色を変えて商売を考えていた。しっかり丸一日キャッスル号を体験した後、南方都市に送って行く。  


「ワタルさん、本当にあの船のトップを任せて頂けるんですか?」


「厳密に言うと僕がトップになるんでしょうが、ほぼ全権を任せます。ただ文化を広めたい意識もありますから、適度な値段でお願いしたいです。それと、この国以外で働く事になるかもしれません」


「そうなんですか。船からあまり出ないのならあまり関係は無いんですが、南方都市以外だと人脈が使えませんよ?」


「キャッスル号を見て分かると思いますが、噂が広がればお客さんには困らないと思います。値段の設定と船内の統制、お客さんの相手をして貰えれば、十分です。あとはカミーユさんの自由にしてください」


「ありがとうございます。とても興奮して来ました、悩みますね。……ワタルさん船の特殊な物は商売の神様の契約を結びますか?」


「商売の神様の契約が必要ですか?」


「はい、ここに来られる方は殆どがお金持ちです。失礼な言い方かもしれませんが、契約を結ばれていない事を知ったなら、商売の神様の契約を結び高値の使用料を取る人が絶対に出て来ます。先に契約を結んで安く提供できるようにした方が絶対に良いですね」


 あー、言われてみればそんな気がするな。結構利用できそうな物も多いから先に契約しておこう。僕だったら問題が起こった後に気が付きそうだ。やっぱりカミーユさんが欲しい。


「カミーユさん。僕に商売は難しいので助けてもらえませんか?」


「……船を見ると物凄く魅力的な仕事です。条件を詰めて頂けますか?」


 ……これは、条件を詰めれば雇われてくれるという事だよな。そこからはカミーユさんと周りの意見を聞きながら話を纏めて行く。


 大まかな内容としては、給料は豪華客船のトップに立ってもらうという事で、月に1金貨。異世界の物価だと破格のお給料らしい。でもキャッスル号はお金が掛かるからちょっと心配だよね。


 もう少し高い方が良いかと思ったんだけど、取り合えず1金貨から昇給有りでスタートになった。最初に働く時には支度金として、2金貨は渡すつもりだ。船のトップなら良い服を着ておかないと駄目だよね?


 キャッスル号が開放できるようになったら移動してもらい、そこから、奴隷の購入と、様々な契約を済ませて開放、という流れになった。その間に魔物が集まったらカミーユさんのレベル上げもする予定だ。やる事が一杯あって結構大変だよね。

 

 商業ギルドまでカミーユさんを送り、ギルドマスターにカミーユさんを引き抜いた事を詫びる。カミーユさんはかなり期待されていたらしく、盛大に文句を言われた。


 商業ギルドから追い出される所だったよ。お爺さんの本気マジ切れ本気で怖い。さっさと南方都市を出てルッカに向かおう。



 ………………



 外海に出て、豪華客船での船旅。偶に目先を変えてフォートレス号やストロングホールド号に乗り換えたりする。


 船が変わると気分も変わるのが面白い。退屈しのぎにガレット号でのレースや、魔物の討伐も完全な娯楽になっている。落ち着いたらこんな感じで世界を回るのも楽しいかもしれない。


 そうだよな、神様の依頼でどうやっても注目を浴びるんだ。必要な時以外は別の大陸でも探しに行こうかな。


 七つの海を巡る大冒険だ。この世界の海っていくつあるのかな? 七つの海って全ての海って意味だったような気もするな。


「ワタルさん、そろそろルト号に乗り換える?」


「ええ、アレシアさんは準備が終わりましたか?」


「終わったわ。他のメンバーも大丈夫よ」


 ルト号に乗り換えルッカの港を目指す。久しぶりのルッカにジラソーレも嬉しそうだ。


「そう言えば、ルッカでジラソーレは人気者ですよね? 一緒に居ると、僕達も注目されますかね?」


「どうかしら? 前に来てから結構な時間が経っているから落ち着いてると思うわよ。私達よりワタルさんの方が、魔導士様関連で注目されているんだから危ないわね。


 元々どこに行ってもワタルさんは偉い人達に注目されているんだから気を付けないと。ルッカでは魔導士様も人気があるし、恐れられてもいる分手は出され辛いわ。それに私達がしっかり護衛をするから安心してね」


 そうだった。いつの間にか有名人になってたんだよね。嬉しくない方向でだけど……第2王子様の復讐イベントが起こらない事を切に願う。


「ワタルさんってルッカに初めて入るのよね? 豪華客船と比べられたら困るけど、良い所よ。案内するわね」


 ……そう言えば一度も中に入らなかったな。ジラソーレとルッカを散策か目立ちそうだけど楽しそうだ。


「楽しみです。アレシアさん、ルッカの名物は何ですか?」


「……魚介類ね。よく考えたら南方都市とあまり変わりが無いわ。ごめんなさい」


 楽しい散策が一瞬で駄目になりそうだ。 


「……場所が変われば魚の味も変わりますよ。美味しい魚介類が食べられるお店に連れて行ってください」


「そうかしら? まあ、美味しいお店があるから案内するわね」


 何とか持ち直した。


 暫く走りルッカの港に到着する。入港料を払い、船を停泊する……前回来た時より船の数が増えているな。ブレシア王国内の戦争は終わったけど、帝国での戦争はどうなったんだろ? あとで情報を集めてみるか。


 門に向かい身分証を提示する。前回は此処から引き返したな。今回は無事には入れそうだ。周りがジラソーレに大注目で、衛兵さんまで敬礼しているんだけど、ジラソーレって何処まで人気者なんだ? 時間が経ったから大丈夫ってのは勘違いか?


 ルッカの中に入って、周りにキャーキャー言われながら進むジラソーレの後ろに、気配を消してくっ付いて行く。


「ご主人様、ジラソーレって凄い人気なのね」


「イネスがイルマさんと一緒に情報操作をしてたよね。ちょっとやり過ぎたんじゃないの?」


 まるで大スターだな。失神者とか出そうだ。


「……あの時は、ジラソーレの人気が高いほど、やりやすかったから……まさかここまでとは思わなかったわ。勢いって怖いわね」


 勢いか……確かにあの時のイネスとイルマさんは盛り上がってたからな。まあ、今更か……注目はジラソーレに向いているからコッソリついて行けば問題無いだろう。まずは良い宿に案内してくれるそうなので、そこまで行けば人も減るはずだ。


 気配を消してジラソーレの後ろについて立派な宿に入る。周りに付いて来た人も何人か一緒に中に入って来た。海猫の宿屋と同じ状況になりそうだな。


 いや、ちょっと高級な感じの宿だからそこまで人数は増えなさそうだ。海猫の宿屋みたいにジラソーレファンに、殺意を集中的に向けられる事が無さそうなのは助かるな。


 僕はジラソーレは実家に泊まる物だと思っていたが、この宿に泊まるそうだ。僕の護衛をするんだから当然だと言われた。僕の考えはズレているらしい。


 案内されて部屋の中に入る。久しぶりの宿屋だな。最近、ずっと、召喚した船に泊まっているから、新鮮で楽しいかも。


 良い宿だから、キャッスル号ほどではないとは言え、なかなか良いベッドだ。どんな料理が出て来るかも期待が持てる。しっかり楽しもう。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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