16話 久しぶりのキャッスル号と神界
村長さん達に温泉の開発を丸投げしてキャッスル号を召喚するために島を離れる。温泉宿の本は今度で良いだろう。最初は温泉周りの整備だからな。
「ねえ、ワタルさん、キャッスル号はなんで隠しておくの? ダークエルフの村の人達には能力を隠さないんじゃなかったの?」
アレシアさんが聞いてきた。早くバーでお酒が飲みたいのが理由じゃないと信じたい。キャッスル号で暫くお休みにすると言った時から、お酒大好き組でどの店で飲むのか議論が始まったからな。
「特に隠すつもりもないんですけど、海にキャッスル号を浮かべると魔物が寄ってきますから、離れておいた方が安全ですよ。島の近くで魔物を集めて戦闘をするのも問題ですからね」
……島の周りに海の魔物を集めておけば、もし島に敵の船が来ても上陸できなくなるかも? ……だからって勝手に魔物を配置するのは問題だよね。村長さんに相談してみるか。
「確かに島から見える場所で騒動を起こすのは止めておいた方が良いわね」
「ええ、もう暫く走れば、召喚できますから、お酒はもう少し待ってくださいね」
「な、何言ってるの? 私が聞いたのは早くお酒を飲みたいからじゃないわ……本当よ?」
うーん、ワタワタしてるし5割はお酒目的な感じだな。残りはカジノか? でもちょっと恥ずかしがっているアレシアさんも良いな。本当よ? のところも無意識だったんだろうけど、あざと可愛い。これはこれで有りだな。原因はお酒なんだけどね。
「あはは、冗談ですよ。まだ時間はあるのでお茶にしましょう」
「え、ええ、お茶にしましょう」
シーカー号のリビングで、紅茶を飲む。それぞれにやりたい事もあるらしく、楽しそうに雑談をしている。クラレッタさんは教会を掃除した後は、ぬいぐるみの材料を買い込むそうだ……前回にも結構な量を買い込んでたんだけど、どのぐらいのぬいぐるみを作っているんだ?
リム、ふうちゃん、べにちゃんが戯れる姿を見守りながらお茶を飲む。この時間が大切なんだと思う。リム達を見ている時間以外はエロに思考がそれるからな。僕も何か趣味を考えるか?
「じゃあ、着いたらお酒を飲む前に運動しましょうか。プールで泳いで、ボルダリングとジップラインも楽しいわね。その後にソラリウムで飲みましょうよ」
……いかんな、アレシアさんの言葉によって、思考が水着で埋まってしまった。前にも水着でボルダリングをしてたんだよね、あの光景は素晴らしかった。見に行かないと。
女性陣は器具を付けないで上り下りするから、ちょっと高い所からなら自力で飛び降りたりしてプルルンってなるんだよね。ビデオカメラのバッテリーは大丈夫かな? 今のうちに充電しておこう。
女性陣はビデオ撮影を頼むと許してくれるからな。異世界では遊ぶ時は思い出を残すためにビデオで撮影するものだと言ったら、信じてくれた。まったくの嘘じゃないんだし平気だよね?
女性陣はキャッスル号に行くと結構開放的になるからな、良い場面を取り逃さないようにしないと。おそらく水着のままソラリウムで飲むだろう。この場面は外せないな。楽しくなってきた。
………………
「ワタルさん、もう島からだいぶ離れたわよ、キャッスル号に乗り移らないの?」
「えっ? ……あっ、はい、そろそろ移動しましょうか」
いかん、全力でビデオ撮影の場面を考えてたら、時間が過ぎてしまった。エロについて考えると時間が経つのが早いな。
ろくでもない事を考えていた事を隠して、キャッスル号を召喚する。
「キャッ、べにちゃん落ち着いて」
振り返るとドロテアさんの頭の上でべにちゃんが大興奮だ。おそらく、巨大な魔法陣に喜んでくれているんだろうな。……あっ、光の魔法陣に乗り込み損ねた。
現れたキャッスル号の大きさに、べにちゃんが更に大興奮だ。最近、みんな慣れてきたから、このリアクションは嬉しいな。海を見た時より興奮してるよ。ドロテアさんがべにちゃんを抱きしめて、頑張って落ち着かせている。どちらも可愛い。
「ワタルさん、乗り込み損ねちゃったけど、タラップから入る?」
「いいえ、面倒ですので、再召喚しますね」
「ワタルさん、すみません。べにちゃんは落ち着かせますから」
「あはは、ドロテアさん、気にしないでください。べにちゃんが喜んでくれて、僕は嬉しいので問題ありませんよ」
キャッスル号を送還して再召喚をする。今度こそ光の魔法陣に飛び乗り、ロイヤルプロムナードに移動する。
「なんだか久しぶりな気がするわね。ワタルさん、これからどうするの?」
「んー、特に決めてませんので自由行動ですね。イネス、フェリシア、お休みにするから、自由にして良いよ」
せっかくプールで遊ぼうとか計画しているのに、僕が別の予定を入れるのは有り得ないよね。イネスとフェリシアにお小遣いを渡す。
いきなりプールで待ち構えるのは露骨過ぎるから、少し時間を空けてプールに向かおう。それまでは何をしようかな?
「私達はプールで運動するけど、ワタルさんはどうするの?」
「ん? プールも良いですね、後で合流するかもしれません。僕は……教会でお祈りしてから考えます」
おー、アレシアさんの問いかけでプールで合流しやすくなったな。ありがとうございます。
「ワタルさん、私も教会に行きますので、ご一緒しますね」
ふふふ、クラレッタさんが教会に行く事も聞いてたからな、これでクラレッタさんとデートっぽい事ができる。最近の僕は攻めてるよね。
「そうですね。よろしくお願いします」
内心を押し殺して、キリッとした表情で答える。油断したらデレデレになりそうだ。
「でも、ワタルさんが直ぐに教会に行くのは珍しいですね、どうかしたんですか?」
……えっ? そうだっけ? そう言えば教会に行くのは、時間ができたら、そろそろお祈りにでも行くかって感じだったな。今回はクラレッタさんに良いところを見せるのが目的だから、確かにいつもと違うな。なんて言おう?
「確かにそうかもしれませんね。……ですが今回の洞窟探索で、創造神様から頂いたユニークスキルが改めて素晴らしい物だと思ったので、感謝のお祈りをしようかと思ったんですよ」
ヤバい、今、僕の頭の回転が極まってる気がする。好感度も稼げる最高の回答じゃないかな?
「そうなんですか。そういえばワタルさんは創造神様とお会いした事があるんですよね。素晴らしいです」
ん? お祈りに行って偉いって褒められるんじゃないのか……まあ、褒められてるのなら良いのか?
取り合えず他のメンバーと別れて、クラレッタさんと教会に向かう。リムは頭の上に乗ってるけど2人きりと言って良いはずだ。
ぬいぐるみの事を話したり、そろそろフェリーのユー〇ォーキャッチャーを確認しに行きたいとか、なかなか楽しい会話をする。いい感じだ。
一緒にユー〇ォーキャッチャーに行く約束をした。おそらく2人だけじゃなくてカーラさんも一緒だろうけど、遊びに行く約束が出来るのも進歩だよね。
「では、ワタルさん、私はお掃除をしてきますね」
教会につくとクラレッタさんが離れて行ってしまった……この船に掃除は必要ないんだけどね。しょうがないからお祈りしよう……しょうがないとか言ったら創造神様から怒られるかな? 真剣にお祈りしよう。
神像の前で膝をつき、感謝のお祈りを捧げる。
「やあ、航君、久しぶり」
……創造神様が現れた。
「創造神様、お久しぶりです。あの、下界への干渉は大丈夫なんですか?」
「うん、航君の船の教会には僕の神像を置いたからね。聖域になっているから大丈夫なんだ」
あー、えーっと……キャッスル号に聖域? パレルモの大聖堂と同じ扱いになったって事? ……それはありなの?
「聖域とか作って大丈夫なんですか?」
「あははは、まあ、僕は創造神だしね」
一瞬、何かを思い出して死んだような目をしてたんだけど……見なかった事にしよう。
「そうですね。創造神様ですからね」
「「あはははは」」
何故か乾いた笑いが出てしまうな。
「それで創造神様、今回呼ばれたのはどうしてなんでしょうか?」
「ん? ああ、そうだね。実は航君の豪華客船に遊びに行きたいんだけど、良いかな?」
とんでもない事を言い出した。創造神様の降臨イベントとかどうなのそれ?
「それは、大問題になりませんか?」
「んー、大丈夫だよ。みんな行くって言ってるから僕は怒られないよ」
……ん? 理解出来ない、いや、理解したくない言葉が聞こえた。みんなって言ってたよね。
「……みんなと言うのは?」
「みんなはみんなだよ。ちょうどいい、紹介しておくね」
「へっ? 紹介ですか? いえ、大丈夫です。気にしないでください」
「遠慮しなくて良いよ。遊びに行くのに顔を知らないのはおかしいからね」
いえ、遠慮なんてしていません。正直に言ってます。あっ、でも光の神様には会いたいかも。いやそんな問題じゃないな。
「じゃあ呼ぶね」
「あっ、ちょっと待っ……」
遅かった。目の前に5人? 5神? 5柱? とにかく神様が現れた。
「光の神は知ってるよね。後は、戦神、魔神、娯楽神、美食神だよ」
「お目に掛かれて光栄です。航と申します。よろしくお願い致します」
精一杯の挨拶をすると、意外とフレンドリーに挨拶をしてくれた。……娯楽神様って僕の行動を見ていたら吐きそうだって言ってた神様だよね。想像していたのと違って少年のような可愛らしい神様だ。この神様に吐きそうだって言われたのか……本気でへこむな。
戦神様と魔神様はタイプは違うけど、全力で関わり合いになりたくないな。怖い。美食神様は……これは、もう、最高です。
コックは男性が多いイメージだったから、食事関連の神様は男性だと思っていたんだけど、予想とは違って、こう、大人の色気がハンパない。優しそうな、お母さんタイプなら分かるが、美の女神様というか性の女神様と言われた方が納得できる。飼われたい。
何故か戦神様と魔神様が寄って来る。光の神様、美食神様が良いのに……
「おう、航だったな、もう少し戦えば面白いんだがな、まあ、創造神の被害者だ、しょうがねえな」
「えっ? どういう事でしょうか?」
戦神様、僕って被害者なの?
「なんだ気が付いてなかったのか、不利なスキルを与えられたんだ。今までの異世界人なら、初日からユニークスキルで大半の事は出来たんだ。お前のように苦労をする者はごく少数だな」
魔神様が教えてくれた。それって、相当強いチートが貰えたって事か? 滅茶苦茶強くて、冒険者になったらウハウハハーレム、俺TUEEEEが出来たって事か?
……いや、どうなんだろう? 俺TUEEEEに興味がないと言えば嘘になるが、僕の場合は調子に乗ってヒャッハーしてしまって、最終的にむごたらしい死に方をしそうだ。チーレムには憧れるが、僕では乗りこなせないだろう。
戦神様と魔神様が僕に同情しながらも船召喚と創造神様をこき下ろす。なんかイライラして来たな。これでも創造神様に感謝してるんだけどな。
「あの、戦神様、魔神様、確かに、最初は何で船召喚とも思いましたが、今では船召喚を気に入っていますので問題ありません。創造神様にはとても感謝しております」
僕の性格的に船召喚の方が向いていそうだ。ハーレムの可能性もある。地球の物資も手に入る。トータルで言ったら、俺TUEEEEより船召喚だよね。
僕がそう言うと、こいつマジで言ってるの? って顔で見られた。おかしなことを言ったのか? 僕の言葉を聞いた創造神様が、テンション爆上げで、戦神様と魔神様に自慢しだした。
僕が選んだユニークスキルの素晴らしさが分からないなんて駄目だ。創造神のスキル選びに文句を言う程の見識が君達にあるの? とかウザいぐらいにはしゃぐ創造神様。僕は間違っていたのかな?
「……あの、戦神様、魔神様、申し訳ありません」
「いや、お前が気に入ってるのなら、俺達が口出しする事はない、悪かったな」
「いえ、なんかもう、申し訳ないとしか、本当にすみませんでした」
「なんで航君が謝ってるの? 良いんだよ、この見る眼が無い者達に船召喚の素晴らしさを説いてあげて」
うわっ、面倒が極まってる。なんで僕はイライラしたんだ? 今のほうが断然イライラするよ。光の神様と美食神様と切実に話したい。
「い、いえ、それで、遊びに行くと言うのは、どういう事なんでしょうか?」
「ん? ああ、そうだったね。航君の豪華客船に聖域を作ったから、僕達も問題無く遊びに行けるようになったんだよ。だから遊びに行くね」
説明されているような、説明されていないような……なんと答えれば良いのだろう? どうしたら良いのか分からず、プチパニックだ。なんでお祈りなんかしちゃったのかな?
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。