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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第八章
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10話 洞窟探索と単純作業

 洞窟に到着した、温泉から徒歩10分、中には嫌いな虫が沢山居るらしい。屈まなくても入れる大きな穴に疑問を覚える。


 聞いた話ではジャイアントアントは僕の腰ぐらいの高さまでしか無い魔物なのに、なんでこんなに穴が大きいんだろう?


「アレシアさん、ジャイアントアントは僕の腰ぐらいの大きさの魔物なんですよね? 穴が大き過ぎませんか?」


「ああ、ワタルさん、普通のジャイアントアントは言った通りだけど、ジャイアントソルジャーアントとかジャイアントガードアントとかはもっと大きいのよ」


「そ、そうですか」


 嫌な情報だな。しかも名前が長いし、面倒だ。全部にジャイアントを付ける必要があるのか? しかもジャイアントアントとかアントが2回も並んでるし、ジャイアントじゃ駄目なの?


「アレシアさん、魔物の名前が長くないですか? 言うのも面倒になりそうなんですが」


「ああ、説明だからフルネームで言ったけど、普通はアント、ガードとかソルジャーとか簡単に呼んでるわ」


 助かった、毎回ジャイアントソルジャーアントが出た、とか言ってたら、僕の舌が持たないよね。顎も疲れそうだし。まあ、冒険者が魔物の名前を毎回フルネームで言わない事とか考えたら分かるよね。


「なるほど。フルネームは面倒ですよね」


「ええ」


 苦笑いしながら頷くアレシアさん。当たり前すぎる質問だったんだろうな。


「じゃあ、そろそろ洞窟に入りましょうか」


 くだらない事に時間を使ってしまったな。光の玉を浮かべ洞窟に入る。……蟻の巣って日本だと入り口は真っ直ぐ下に穴が開いている感じだったと思うんだけど、異世界では違うのか?


 体が大きいと垂直はキツイとかあるのかな? まあ、ロープとか使わなくて良いのなら楽で良いか。


「……アレシアさん、今更ですけど、洞窟って崩落したりしないですよね?」


「アントが固めているから、簡単には崩落しないわ、大丈夫よ。まあ、やり過ぎると崩れるから気を付けてね」


 やり過ぎなければ大丈夫なのか。僕は見ているか弓を射るだけだし、大丈夫だね。リムにはやり過ぎないように注意しておこう。


 僕達は真ん中でジラソーレに囲まれながら、なだらかに下っている洞窟を進む。入口付近にはあまり魔物は居ないようで、偶にゴブリン、アントが出て来るぐらいでジラソーレに瞬殺される。


 ちなみに出て来る魔物はランクが低いので、特に必要な素材は無いそうだ。解体するだけ時間の無駄だそうだ。


 そんな洞窟をなんで探索するのかと言えば、アントの巣は地下を縦横無尽に掘り進めてあるので、地中の貴重な鉱脈が見つかる事があるそうだ。


 鉄の鉱脈でも見つかったら、この島もだいぶ助かるよね。金鉱脈とか価値が高い鉱脈が見つかれば、南方都市に僕が運んでも良いから、何か見つかると良いね。 


「ワタルさん、一昨日に探索した場所は飛ばすけど良い?」


「ええ、問題無いです。ジラソーレの主導で進んで下さい」


 僕は素人だから、口出ししても良い事無いよね。


「分かったわ。じゃあ、そこからしらみつぶしで探索するわね」


「了解です」


 いくつかの通路を魔物を瞬殺しながら通り過ぎる。前回の探索は半日ぐらいだったのに結構深くまで探索していたんだな。


「ここからは初めての場所だから注意して」


 先頭を進むマリーナさんが注意を促す。薄暗く似たような場所ばかりなのによく分かるな。どうして分かるのか聞いてみたら、壁を指差した。


 マリーナさんが指さしたさきを見ると、洞窟が大きく切り裂かれている。……分かりやすい目印が付いてた。間違えないな。


 先に進みはじめて枝分かれした通路に入る。奥に進むと、うわっ、臭い。何の臭いだ? 悪臭に耐えながら更に奥に。アントも出て来る数が増える。


 広い部屋に出ると、悪臭がさらに強くなる。原因は部屋の中に積み上げられている腐った物のせいらしい。


「アレシアさん、あれは何ですか?」


「あれは、アントの食料よ。ワームやゴブリン、動物や魔物の肉をああやってため込んでいるのよね。ここにはワームの類いが多いみたいで、食料には困ってないみたいよ。今まで通り過ぎた部屋も似たような物だったわ」


 あー食料は豊富なのか。豊富な食料で賄いきれなくなったら、大量の蟻が溢れるって事なんだね。最悪だ。


「それでアレシアさん、これはどうするんですか?」


「燃やすわよ」


「燃やすんですか? 洞窟の中で火は危険ですよ? 特にこの匂い、変なガスが出てます。爆発するかもしれません。燃えると呼吸が出来なくなります」


 肉が腐ったらメタンガスとか出なかったっけ? 爆発したような気がするんだけど……爆発しなくても酸欠は勘弁して欲しい。


「大丈夫よ。アントも空気が必要だから、色んな所に空気穴が開いているわ。爆発の事も大丈夫。燃やす前に風魔法で臭いを散らせば爆発しないの。見ていて」


「分かりました。お願いします」


 口出ししないって思っていたのに、口を挟んでしまった。


「じゃあふうちゃんお願いね」


 マリーナさんの言葉に、ふうちゃんが魔法を使う……強い風が吹き荒れ臭いがドンドン薄くなっていく。さすがウインドスライムだね。


「イルマ」


「ええ」


 短いやり取りで、イルマさんが炎を放つ。油をまいた訳でもないのに、燃え上がるアントの食料。凄いな。


「燃え終わるまで時間がかかるから、今の内に次の部屋を探索するわよ」


 取り合えず燃やしながら先に進み、戻る時に部屋の中を確認するそうだ。時間を無駄にしないんだね。同じような部屋を3部屋ほど処理してメイン通路に戻ると、沢山の蟻の群れが。一回り大きい蟻も居るな。あれがソルジャーかガードなんだろうな。


「数が多いわねソルジャーもいるわ。増援も来ているし、ワタルさん前方にゴムボートをお願いできる?」


「分かりました」


 アレシアさんに言われた通り、前方にメイン通路を塞ぐようにゴムボートを召喚する。乗船拒否されたアント達がメイン通路に詰まる。


「ワタルさん、大丈夫? 気持ち悪くなってない?」


 アレシアさんが目の前の光景に、僕を心配して声を掛けてくれる。


「薄目で見ていますから大丈夫です。それに魔の森でハイダウェイ号で待機していた時に比べればまだマシですよ」


「ああ、あれは酷かったわね。ほぼ全方位を無数の虫の魔物に囲まれて、平気な私達でもげんなりしたわ」


「ええ、虫の魔物の普段見えない部分がへばり付いていると見えましたからね。うっかり見てしまうと吐きそうになりましたよ」


 夢にまで出てきたもんな。軽いトラウマだよ。


「まあ、ワタルさんは無理しないで良いわ。このレベルの魔物なら、のんびり交代で討伐するから」


「ありがとうございます」


 お言葉に甘えて、アントの群れと逆方向を向いて、一応反対側にもゴムボートを召喚して安全圏を確立して休憩する。偶にマリーナさんのふうちゃん頑張ってって言う応援の声が聞こえる。


 弱い魔物でもチリツモでふうちゃんのレベルを少しでも上げるつもりらしい。教育ママみたいになってる。ふうちゃんもリムの進化を見て気合十分みたいだから問題は無いか。


 弱い魔物が乗船拒否で止められて、そこをサクサク討伐する。魔物の死骸が溜まると少し強めの魔法で、襲って来ようと頑張っているアントごと吹き飛ばす。


 吹き飛ばす時に洞窟が壊れそうなのが怖いが、そこら辺は考えて、洞窟には強い衝撃が行かないようにしているらしい。蟻って土に穴を掘るよね? 固い岩盤も掘り抜いているんだけど、魔物の力か?


 確かに考えると大きな体には大きな巣が必要だな。地球の小さな蟻と違って岩だろうと掘り抜けないと話にならないのか。


 2人が戦い、残りの6人プラス僕はお茶を飲みながらまったりとしている。昔のロールプレイングゲームでの単純作業でレベルアップを思い出す光景だ。少し疑問に思ったので隣に座っているイルマさんに聞いてみる。


「イルマさん、数が揃うと厄介だと言ってましたけど、ジラソーレなら問題無く討伐出来ますよね? かなり弱そうですし」


「そうね、出来る出来ないで言ったら出来るわね。でも結構苦労すると思うわ」


「そうなんですか?」


 見た感じ2人でサクサクとお手軽に惨殺してるんだけど。魔物に同情しそうなぐらいに。


「アントじゃないけど、ゴブリン相手に同じような状況になった事があるわ。ゴブリンが廃鉱に大きな集落を作ったから、潰しに行ったのよ」


「ゴブリンの集落ですか、面倒そうですね」


「ええ、とっても面倒だったわ。出入り口を一つ残して潰す。その後、洞窟に侵入してゴブリンを倒すの。倒すの自体は簡単だけど、ゴブリンも逃げ場が無いから全力で襲い掛かって来たわ」


「廃鉱の入り口を全部塞げば自滅するんじゃないんですか?」


「それも考えたわ。毒や火を放つ事も。でも大きな廃鉱だから、その方法だと全滅させられないの。ゴブリンキングがしっかりと統率しているから、閉じ込めたら把握できない場所に穴を掘って逃走される可能性もあるの。結局中に入っての討伐が一番確実だったのよね」 

 

「あーなるほど。逃げられたら面倒ですよね」


「ええ、私達と、もう一組Aランクパーティーが居たんだけど、大変だったわ。一番の問題は血や体液ね。強力な攻撃は廃鉱が崩落しちゃうから出来ないでしょ。切っても叩いても、結局血まみれになるの。最悪だったわ。


 人数は居たから交代をして休んでいたけど、体中が血まみれなの。でもお風呂や、お風呂セットも無いから水を出して体と装備を拭うぐらいしか出来なくて……あれは辛かったわね」


「ああ、倒すのは問題無いんだけど、精神的に辛い依頼だったんですね」


 ゴブリンの血肉に塗れての休憩はご遠慮したいな。


「ええ、範囲攻撃が出来れば問題無いんだけど、崩落しちゃうから、廃鉱や洞窟に数がいるとそういう所が厄介なのよね。今回はワタルさんの乗船拒否がアントの体液を防いでくれるから本当に楽ね」


 生き埋めは誰だって嫌だからな。そして、乗船拒否の便利さがまた分かった。魔物の血肉を浴びるとか嫌過ぎる。

 

「あれ? そう言えば前回の探索ではアントが集団で襲って来なかったんですか?」


「ええ、マリーナがしっかり偵察して分断してくれたから問題無かったわ。まあ目印の所でアントが集まって来たから引き上げたのもあるわね。あそこらへんから警戒が厳しくなってるってマリーナが言ってたわ」


「なるほど、警戒網があるんですね」


「お話し中に悪いけど、イルマ、交代よ。ドロテアとお願い」


「分かったわ」


 交代でアントの処理に向かうドロテアさん、マリーナさんを見送る。


「アレシアさん、マリーナさん、お疲れ様です。飲み物は何が良いですか?」 


「ありがとう。そうね私は二日酔いの時に飲んだのが良いわ」


「私も」


 アレシアさんとマリーナさんにスポーツドリンクを渡す。運動の後だからかな? ふうちゃんにもスポーツドリンクをお皿に注いで出してあげる。


「アレシアさん、どの位かかりそうですか?」


「分からないわ。この巣がどの位の大きさなのか判断できないから、直ぐに途切れる可能性も、延々と続く可能性もあるわ。ただ、ソルジャーの数が多いから結構大きな巣かもしれないわね」


「そうなんですか。面倒ですね」


「大丈夫よ。ただただ排除するために押し寄せて来るだけだから。攻撃が止まれば、後はクイーンを守る為のガードやソルジャーだけになるわ。倒し終わったらゆっくり探索するだけね」


「アントってそんなに全力で攻めて来るんですか?」


「ええ、詳しくは分かっていないんだけど、大抵はそうなるみたいね。探索の場合は、出来るだけアントを倒さずに行動して、アントが集まり出したら撤退が基本なんだけど、今回は巣を潰しておいた方が良いんでしょ?」


 ああ、間引きだけじゃなくて、巣を潰してくれるんだ。有難い。


「そうですね、そうしてもらえるとかなり助かります」


「ふふ、私達も巣を潰した方が探索しやすいから良いのよ。ワタルさんが来てくれなかったら、間引きだけで終わっていたわ」


 来て良かったな。巣が潰せたら、温泉の場所に安心して村が作れそうだ。まだ村長さんの許可を得てすらいないけど。


 ここからが長かった。アントの数が多すぎて、吹き飛ばすだけで追いつかなくなったので、水で押し流したりと、なかなか面倒な事になった。数が多すぎる。


 何度も交代を繰り返し、アントを討伐する。かなりの数のアントが居るのに、狭い洞窟の中なので直ぐに渋滞が起こる。倒す時間よりも、死骸を処理する方が時間がかかる。


 昼食を食べ、おやつを食べ、夕食を食べてもまだアント達は押し寄せて来る。だいぶ前に飽きたが、リムとふうちゃんも退屈なのか自分の番じゃない時にもアント討伐に混じり出した。


 暇すぎるので討伐をしていないメンバーでリバーシやジェ○ガをして時間を潰したり、仮眠を取ったりする。クラレッタさんは現在3つ目のぬいぐるみを作り出している。


 ………………結局、各々で仮眠を取りながら、延々と討伐し続け、ビデオカメラの時計で確認すると午前10時33分にアントの襲撃が止まった。ほぼ丸一日掛かるって、どんだけのアントが居たんだろうな。まあ、取り合えず探索再開だ。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 何故か腕時計を購入しないワタル達、G-SHOCKとかプロトレックシリーズならば耐衝撃性も高いのにね。 プロトレックならば方位磁石や高度計や温度計やら満潮時干潮時とかも確認出来る。 きっ…
[一言] よくある話 巨大なおばさん蟻、ジャイアントアントアント
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