9話 入浴と洞窟到着
岩風呂に行くと。大きな岩風呂2つに温泉が溜まり、溢れたお湯が小川に流れ込んでいる。
「なんだか雰囲気がありますね」
自分で言うのもなんだが、カッコいいと言うか、わびさびと言うか、森の中の大きな岩に、溢れる温泉は不思議な雰囲気を持っている。日本だったら有名な温泉になりそうな雰囲気だ。
ダークエルフの美男美女が作る温泉街。平和な時代だったら大人気になりそうな場所だよね。
「ええ、なんだか初めて見るのに落ち着く雰囲気ね」
「私、この雰囲気は好きだわ」
「うふふ、私もよ」
アレシアさん、ドロテアさん、イルマさんにも好評だな。2つ目の岩風呂に手を入れて温泉の温度を確認する。
……少し熱いな。無理すれば入れない程じゃないんだけど、加水した方が良いか?
「皆さん、温度を確かめてください。加水するかしないか微妙な所です」
女性陣も温度を確かめると、みんなもう少し温い方が良いそうだ。加水して入るか。調度いい温度まで加水して、掛かり湯をする。あと少し冷ませれば、丁度良いんだけど何か方法を考えるか。
ジャバジャバとお湯を浴びると地面の土で足が汚れる。昨日はゴムボートに乗っていたから気が付かなかったけど洗い場が必要だ。……今回はゴムボートで代用するか。ゴムボートを召喚して足を洗う。
「丁度良い温度になりました。また直ぐに熱くなると思うので、それぞれで加水が必要ですね。洗い場は次の機会に作りますので、今回はゴムボートで洗ってください。では、お先に…………あ、あーーー」
「分かったわ。でもワタルさん。変な声を出し過ぎよ」
「いずれアレシアさんも声を出してしまう時が来ますよ」
「そうなのかしら?」
お風呂に入れば入る程、声が出るようになると思う。まあ、様式美な気もするけどね。しかしやっぱり温泉は良い。
少し気になるのが。平らに均したとは言え、岩風呂の底がざらつくのが嫌だ。日本の温泉の岩風呂って底はツルツルしてたよね。……岩を磨くのってどうすれば良いんだろう。……ダークエルフの大工さんかドニーノさんにでも聞いてみるかな。
掛かり湯をして、入って来る女性陣をガン見する。やっぱり濡れた巨乳美女ってたまらない。しかもお湯を浴びると胸元にもお湯が流れ込んで……実に良い。……実に良い。
「ワタルさん、とっても気持ちが良いわね。見た目はお風呂と変わらないのに、なんでかしら?」
この温泉、見た目は透明だもんね。白濁したお湯だったら分かりやすいんだけど、この世界にはあるのかな? 気味悪がられそうだけど。ジラソーレのメンバーなら意外と挑戦しそうな気もする。
「お湯にいろんな成分が溶け込んでいるのと、周りがいつもと違う雰囲気だからかもしれませんね」
見える景色は基本的に海だからな。魔の森では虫に囲まれていたから、森なんて見えなかった。
「あー、そう言えば殆どが海か船の中だったわね。雰囲気が違うのも新鮮な感じで良いわ」
いつもと違う雰囲気、森の景色も良いんだけど、どうしても女性陣を見ちゃうよね。僕が冷静になれるのは、リムとふうちゃんが漂って近づいて来た時だけだ。後は色々と忙しくて森は楽しめない。
「そうですね。でも結界が無いのでゴブリンが乱入してくる可能性もありますけど」
「ふふ、ゴブリンぐらいなら楽勝よ……そういえば、あの時に捕まえたゴブリンは如何したのかしら?」
捕まえたゴブリン? ……あー、このちょっと下でお湯に付けておいたゴブリンがいたな……完全に忘れてたよ。
「後で確認に行きましょうか」
「そ、そうね」
僕だけではなくて、女性陣も完全に忘れていたな。ゴブリンとは言えちょっと可哀想だ。……いや、ゴブリンは逃がす訳にはいかないから、忘れられていた方が良かったのか?
「ねえ、ワタルさん。この温泉ってなんでお肌がヌルヌルになるの?」
近寄って来たイルマさんが聞いて来た。イルマさんの口から出る、ヌルヌルと言う言葉がエロく聞こえるのは僕の精神が卑猥なんだろうか?
「えーっと、確か、皮膚の汚れや角質を溶かす効果があるんだったと思います」
「とけちゃうの?」
「表面をほんの少しだけですので問題はありません。皮膚が弱い人だと何度も連続で入ると良くないと聞いた事がある程度です」……たぶん。
「そうなの。ありがとう」
妖艶な微笑みで胸元を少しはだけさせてくれたのは、質問に答えたご褒美なのか? 単にからかっているだけなのか? ……どっちでも良いか。今は目に焼き付ける時間だ。
じっくり温泉に浸かると女性陣がゴムボートの上で頭と体を洗いだした。良いな。これは良いな。頭を洗う時はお胸様が微妙に揺れるし、前屈みになると胸元が開く。
湯着を着ているから隙間から手を入れて体を洗っている。今まで見た事のないシチュエーションだ。ジャグジーの時は部屋のシャワーで体を洗っていたからな。ドキドキする。
今回ここで洗うって事は、温泉の効果をよりよくしたいからか?
「イルマさん、部屋以外で体を洗うのは珍しいですね。皆さんどうしたんですか?」
「ふふ、それはね、温泉の後にシャワーを浴びると効果が薄れそうな気がするからよ。ワタルさんはこの光景は嫌い?」
「いいえ、大好きです」
本当に大好きです。
「それなら良かったわ」
あー、大好きな光景だけど、シャンプーとかの泡が小川に流れ込んでいるな。……生活排水の垂れ流しってどうなんだろう? 9人ぐらいなら大丈夫か?
ダークエルフの村の人達に期待しよう。なんとか考えてくれるだろう。体を洗い終わった女性陣が再び温泉に浸かる。そうだ洞窟の事を話しておくか。
「アレシアさん、僕達も洞窟探索に行きたいんですが、お願いできますか?」
「私達はワタルさんに付いて来て貰えると嬉しいけど、虫の魔物が沢山よ?」
「……僕も遠慮したい所なんですが、ジャイアントアントって繁殖するんですよね? この島にダークエルフを連れて来たのは僕ですから、ちゃんと確かめないと気になるんですよ」
虫が苦手なのは頑張れば我慢できる。でもほっといてダークエルフの村が襲われたりしたら、フェリシアと気まずくなるから嫌だ。
ラノベでテンプレの蟻の魔物のイメージをアレシアさんに聞いてみると、まさしくその通りだった。女王蟻がドンドン働き蟻等を生み出し巣を大きくしていくそうだ。
巣の外に蟻が出てきていないのは、おそらく洞窟内で食料が賄えているからだろう。蟻が増えて食料が賄えなくなると外に出て来る可能性が高い。しかも洞窟内には蟻が沢山……時間もなさそうだな。何とか女王蟻まで討伐したい。
「あー、そういう事なら、ワタルさん自身で確認しておく事が必要ね」
「ええ、そういう事ですので、よろしくお願いします」
僕が一緒に行くと分かって、ジラソーレのメンバーが喜んでいる。僕も喜ばれると満更じゃないよね。たとえ休憩所、食料補給係としてだとしても。
カーラさんの顔が輝いたのは確実にご飯が充実するからだろうな。作戦が上手く行っていて、僕の便利さから離れられないようになってきていると考えても良さそうだ。
問題は此処からどうすれば先の関係に進めるのかが、まったく分からない事だ。イルマさんに相談するか? ……それはそれで怖いが、効果的な作戦を教えてくれそうな気もする。
悩んでいると温泉から上がる事になった。軽く体を拭いハイダウェイ号に戻る。岩風呂での温泉を気に入ったのか女性陣は楽しそうだ。僕も十分に楽しめたので満足だ。
後は景色が悪くなるけど、この周辺に柵を設置する必要があるよね。それと洗い場と屋根は設置したいな。これはダークエルフの村に丸投げするか。
「あっ、ワタルさん。ゴブリンの様子を見に行かないと」
アレシアさんの言葉にゴブリンの事を再び思い出す。直ぐに忘れてしまうな。
「いくら何でも湯着のままでは不用心ですから、着替えてから行きましょう」
「分かったわ。簡単な装備で良いわよね?」
近くにゴブリンの様子を見に行くのに、フル装備までは必要ないよね。弱い魔物しか見つかってないし。
「ええ、大丈夫です」
ハイダウェイ号に戻り、着替えて簡単な装備を身に着ける。ジラソーレと合流して、ゴブリンを放置しておいた場所に向かう。
「ここでしたよね?」
「ええ、間違いなくここね」
僕の疑問にマリーナさんが答えてくれる。となるとゴブリンの姿が無いのは逃げちゃったかな?
「逃げちゃいましたか?」
ゴブリンを放置した周辺を確認するマリーナさんに聞くと、いくつかゴブリンの足跡が見つかったそうなので、助け出されたんだろうとの事だ。
……あのゴブリン、かなり怒ってたから、復讐に来たりしないよね? ひどい扱いをされたゴブリンが奮起して、進化を重ね、ゴブリンキングとなって復讐に現れる。……ラノベでは有り得る展開な気もする。
何気に怖いから、先にゴブリン狩りでもしておくか? ……女性陣には気にし過ぎって言われるだけか。戻って夕食にしよう。
夕食を楽しみながら、今日の温泉の感想や、明日からの洞窟探索を話し合う。僕達が参加する事になったので、帰りを考えずに隅々まで探索する事になった。
食料は何ヶ月でも大丈夫だし、小屋船も使える。広い場所があればハイダウェイ号を召喚してお風呂にも入れる。自分で言うのもなんだけど、とっても便利だよね。
長い時間洞窟に入る事になりそうだけど、1回の探索で終わらせられるのなら良いだろう。何度かに分けて探索すると、その度に嫌になりそうだからね。……夕食を終えて、部屋に戻る。
「ご主人様、ジャイアントアントの群れは正直私でも気持ち悪いわ。大丈夫?」
「イネス、たぶん大丈夫じゃないけど我慢するよ。だから今回の探索で出来るだけジャイアントアントを間引いてね。数が減れば時間も稼げるし、ダークエルフの村の人達でも安全に間引けるようになるよね」
「ご主人様、ありがとうございます」
「フェリシア、頭を上げて、ここに連れて来たのは僕なんだから、このぐらいなら頑張るよ」
良いところを見せれる場面だ。女性陣の好感度も上がるだろう。気を付ける事は、上がる好感度以上の醜態をさらさない事だな。虫が苦手なのはみんな知っているんだから、少しぐらいの醜態は大丈夫なはずだ。
「ありがとうございます」
「気にしないで良いよ」
これでフェリシアの好感度は上がったよね。奴隷で関係があると言っても、好感度は高ければ高い方が良いよね。
……こんなギャルゲーみたいな考え方がモテない原因な気もするんだけど、どうしても思考がそっち方向に向かってしまう。僕は娯楽で溢れた現代日本の被害者なのかもしれない。
『わたる、とぶ』
「ん? ああ、リム、変化の練習をするんだね」
人前で変化しないように伝えたら、リムは変化をする前に必ず声を掛けてくれるようになった。可愛い。変化を覚えてからは毎日の日課になっていて、幸せです。
『うん』
「じゃあ、見学してるから、頑張ってね」
『がんばる』
そう言うとリムは光を増して、輝く天使の輪っかと小さな羽に変化させる……可愛い。どういう理屈か分からないが、体よりも小さな光の羽で、羽ばたくと少しずつ体が浮き上がる。
最初は膝ぐらいまでしか飛べなかったのが、変化を覚えてまだ数日なのに、現在は胸元付近まで飛べるようになっている。リムはとっても偉い頑張り屋さんだよね。しかも可愛い。
バランスを取るのが難しいのか、他に原因があるのか分からないが、飛ぶのは難しいらしい。天使に変化は出来るんだけど、飛ぶのは自分の力で頑張りなさいって事なのかな?
リムがフラフラと一生懸命に羽ばたきながら、僕の胸元に飛び込んで来た。
『たくさんとんだ』
鼻血が出そうだ。
「上手になったね」
頑張って満足した様子のリムを褒めながら撫で繰り回す。
『うん』
疲れて眠ってしまったリムを寝床に移し、僕はイネスとフェリシアと大人な時間だ。何日も洞窟に潜る事になっても困らないように頑張っておかないと。気合十分でベッドに向かう。お休みなさい。
………………
少し眠い目を擦り、食堂に向かい朝食を取る。洞窟探索か、気分は沈むんだけど、女性陣の顔は明るい。……気持ちはまったく分からないけど楽しみなんだろう。蟻の巣なのに。
気合の入った女性陣に連れられて、洞窟に向かう。10分も歩かずに、洞窟前に到着する。
「かなり温泉から近いですね。アレシアさん、ジャイアントクイーンアントまで辿り着けますか?」
「数が面倒なだけだから、ワタルさんの協力があれば、問題無く辿り着けると思うわ」
良かった。歩いて10分で温泉の場所に到着するのなら、村なんか作れないからな。ジャイアントクイーンアントが討伐出来れば何とかなりそうだ。
何とかなりそうなら頑張るか。しらみつぶしにジャイアントアントを討伐して、ジャイアントクイーンアントも討伐だ。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
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