表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第八章
158/568

6話 罪悪感と温泉

 温泉を探して山の中で野営をした。その朝、小屋船の中で朝の挨拶を軽めに行い、外に出る。


「皆さん、おはようございます」


「おはよう、ワタルさん」


 ジラソーレのメンバーと挨拶を交わして、食糧庫船を召喚して朝食にする。


「ワタルさん、今日の予定はどんな感じなの?」


「温泉を探して、後はその結果次第ですね。無理そうだったら直ぐに戻ります。上手く行きそうなら温泉の場所を整備したいですね」


「行ってみないと分からないのね。ふふ、冒険者らしくて良い感じよ」


 温泉がお宝って事なのか?


「……僕は商人ですよ?」


「……そうだったわね。ワタルさんってお金を稼いでいるんだけど、商人って感じがしないのよね」


 胡椒しか販売していないからね。でも儲けられているのなら商人と名乗っても問題無いはずだ。


「もう、この話は止めておきましょう」


 話し続けると悲しい事になりそうだ。朝食を済ませて、温泉があると思われる方向に進む。クラレッタさんに方向を決めて貰っているんだけど、異臭がするって言っているのに、もっと異臭がキツクなる場所に案内してもらうって結構酷い事をしているな。


 クラレッタさんに案内されながら先に進むと、僕の鼻にも温泉地で感じるような匂いが感じられるようになった。この匂いは嫌いじゃないんだけど、女性陣は嫌そうだから、育った場所の違いって大きいよね。


 少し進むと小さな川? に突き当たった。流れている水の幅は50センチもない。……温泉かな? 流れて来る先を見ると、崖のような場所が見える。


「多分、あの崖の所に源泉があると思います。行ってみましょう。ゆっくり進むので、気持ち悪くなったりしたら直ぐに言ってくださいね。危険なガスが出ている可能性があります」


「どんな事になるの?」


 アレシアさんの質問に答えられない僕。正直、温泉の危険性とか殆ど知らないんだよね。そもそもどうすれば良いんだろう?


「温泉に入りに行った事はあるんですが、源泉を見つけるのは初めてなので僕にもよく分からないんですよね。どうしましょうか?」


 呆れられてるな。視線が冷たい。僕だって分かっているんだ。温泉の可能性に気が付いてから、テンションが上がっていたけど、昨日の山登りで冷静になった。何をしたらいいのか分からない……


「危険な可能性があるのよね?」


 アレシアさんが改めて確認してくる。


「はい」


 少し考え込んだ後、アレシアさんが話し出した。


「クラレッタが解毒の魔法が使えるけど、それで対応できるのか分からないわ。ワタルさん、冒険者が安全を確かめる方法で良いかしら?」


「ええ、お願いします。僕には気持ち悪くなったら引き返す位しか考えつきませんので」


「ワタルさん、ロープを出して貰える?」


「分かりました」


 アレシアさんの指示でロープをもったマリーナさんとカーラさんが森に入っていく。……もしかして……


「ワタルさん、安全だったらこの辺りにハイダウェイ号を召喚するのよね?」


「えっ? ええ、そのつもりです。ですが、出来れば源泉に近い場所に召喚したいので探しても無駄になりそうです」


「分かったわ。ドロテア、イルマで、一応、周辺の探索を兼ねて場所を探しておいて」


 アレシアさんが仕切り出すと動きがキビキビしている。これがリーダーの素質か……


 暫く待っていると、ロープでグルグル巻きにされたゴブリンを引きずって、マリーナさんとカーラさんが戻って来た。手には鳥も捕まえているな。何となくそんな気がしてたよ。


 そのままマリーナさんが温泉の近くに走って行って、湯気が立っている場所に鳥とゴブリンを放置して戻って来た。素早くクラレッタさんが魔法を掛けている。解毒の魔法かな?


 日本だったら完全に怒られるパターンな気がする。ゴブリンはともかく鳥は怒られるだろう。


「これで暫く様子を見るわね」


「はい、じゃあちょっとお茶にしましょうか」


 ドロテアさん、イルマさんも戻って来たので、食糧庫船を召喚してお菓子と紅茶を出す。のんびりお茶を飲み、鳥とゴブリンの様子を見る。


 ……なんか凄く酷い事をしている気分だな。いや、凄く酷い事をしているんだろう。ゴブリンはともかく鳥には申し訳ないな。


 ドロテアさんとイルマさんの見回りの結果、少し先に洞窟があるらしい。未開の島の洞窟。なんかロマンの香りがするよね。女性陣も嬉しそうだし、探索する事になりそうだな。虫の魔物が居ない事を願う。


 時間を掛けて観察する。昼食を取った後、鳥、ゴブリン、両方共生きているそうなので、源泉に向かう。


「あの岩から温泉が流れ出ていますね」


 崖の岩の隙間から、お湯が流れ小さな川になっている。湯量は豊富だな。源泉掛け流しが出来そうだ。


「なんだか、大丈夫か疑問なんだけど」


 アレシアさんが少し嫌そうに言う。気持ちは分からないでもない。


「この温泉が入れるお湯なら、慣れればヤミツキになりますよ」


「チョット信じられないけど期待してるわ。次はお湯の安全を確かめるのよね?」


 本当に期待してる? 疑問たっぷりの顔をしていますよ? 頑張って見返してやる。温泉しだいだけど……


「はい。またゴブリンに協力してもらう事になりますね」


 自分で言っていて違和感があるな。ゴブリンは殺してやるって目で見て来るし。


流れているお湯の下にゴブリンを転がす。


 ゴブリンが激しく暴れ出した。


「なにか毒が?」


「あの、ワタルさん、熱いんだと思いますよ」


 ……そうだよね。湯気がモクモクと出てるもん。熱いよね。クラレッタさんの言う通りだ。


「少し、下りましょうか。下流なら冷めてますよね」


 よく考えたら、別にお湯の出元で調べる必要はなかったな。ある程度湯気が収まった場所。僕達が待機していた場所の少し上流にゴブリンを入れる。


 鳥は入れたらそのまま死にそうなので、更に下流の冷めたお湯に軽く浸して様子を見る。


「今の所問題は無さそうなので、ハイダウェイ号の召喚場所を整地しましょうか」


 せっかくなので源泉の近くの木を切断して運ぶ。その後に魔法を撃ち込んでスペースを広げる。


「……あのー、土魔法とかで綺麗に整地とかできないんですか?」


「土魔法? 残念ながら私達に使えるメンバーが居ないのよね」


 そう言えば土関連の魔法を見た事が無いな。まあ、使えないならどうしようもないよね。どうやって温泉の整地をしよう?


 ラノベとかで温泉が出ると、魔法で何とか出来るはずなんだけど……多分この世界でも出来るはずなんだよね。ただ土魔法が使えるメンバーが居なかっただけで……


 一応土木で使える道具も買って来てるんだけど、魔法の補助のつもりだったからな。出来なかったらダークエルフの村で探して来るか。使える人もいるだろう。


 取り合えず整地した場所にハイダウェイ号を召喚して鳥だけは連れて来る。温泉から上がった状態で暫く元気なら大丈夫だろう。 


 ちなみにゴブリンはそのまま放置だ、鳥は美味しくないとの事で放される事が決まった。チョットだけホッとしたのは内緒だ。


 角兎も海の魔物も虐殺しまくったのに、毒の確認の為に捕まえた鳥が無事に放たれるのが分かるとホッとするとか、人間の心って複雑だよね。ホッとしている自分がチョット好きだし。


「それで、ワタルさん、これからどうするの?」


「そうですね。今の所大丈夫そうですが、念のために明日までは様子見をします。後で少しだけお湯を腕にかけて、肌が荒れなければ明日はいよいよ入浴ですね」


「ご主人様が試すのは駄目よ。私がやるわね」


「そんなに心配しないでも大丈夫だよ。ゴブリンと鳥の様子からもほぼ大丈夫だから。あくまでも念のためだからね。僕が試すよ」


「大丈夫なら私でも問題無いわよね?」


 それはそうなんだけど……大丈夫っぽい所で進んで役にたちたい感じなんだけど……ここでゴネてもしょうがないか。


「分かったよ。イネス、お願いね」


「はい」


「それで、ワタルさん、大丈夫だったら、どうやって入るの?」


「そうですね。かなり熱そうなので、久しぶりにお風呂船にお湯を溜めて、加水して入るのが良いと思います。良いお湯だったら、しっかりと整備しましょう」


 確か温泉って、空気に触れたら酸化しだして成分が飛ぶって言ってたんだよな。草津とかは湯畑とかで冷ましているけど、どっちが良いのだろう? まあ今回は加水で試そう。


「ふふ、ワタルさん、なんだかイキイキしてきたわね。そんなに楽しみなの?」


 恥ずかしながら、楽しみです。途中の山登りでテンションが下がっちゃったけど、目の前に入れそうな温泉があれば、テンションが上がっちゃうよね。単純ですみません。


「はい、楽しみですね。DVDで観た通り温泉は、僕達の国では人気の場所でしたからね。皆さんも楽しみにしていてください」


「信じるわね」


「はい、入れるお湯なら問題無く気に入ってくれるはずです」


 なかなか納得しづらい物があるんだろうな。ハイダウェイ号で夕食を取り、鳥だけは先に放しておく。


「ご主人様、腕にお湯を掛けて来たわ。そのままで良いの?」


「うん、でも違和感を覚えたら直ぐに洗い流してね」


「ええ、分かったわ」 


 食事も終えたので最近の日課のリムの特訓を見学する。進化したリムにふうちゃんが興味津々で周りをポヨンポヨンしている。


 それを眺める、マリーナさんも気合が入っている。レベルアップを考えているのだろう。それをドロテアさんがチョット羨ましそうに見ている。


 ドロテアさんもスライムをテイムしたいよね。温泉が出るんだから、火魔法が使えるスライムが見つからないかな?


 少しのんびりした時間を過ごして、眠りにつく。明日は温泉だ。



 ………………



「さあ、皆さん温泉ですよ」


 朝食を終えて、イネスの腕にも異常は出ていなかった、ゴブリンも問題ない。なら温泉だよね。気合一杯で女性陣を引き連れて源泉に向かう。


 源泉の真下にお風呂船を召喚してお湯を溜める。更に小屋船を召喚して、湯着に着替える。


「ご主人様、最初に入るつもりなの?」


「うん、大丈夫だよ。イネスの肌も何ともなかったでしょ? 気にし過ぎだよ」


「しかしご主人様。私が先に入った方が良いと思うのですが」


「うーん、でも、イネスとフェリシアが先に入ったとしても、そのあと直ぐに入るんだから意味が無いよ。直ぐに分かる程の異常なら、鳥、ゴブリン、イネスの肌に異常が出ているよね?」


 小屋船から出て、お風呂船を確認する。半分以上溜まっているな。水を入れて貰い掻き混ぜる。何度か水を入れ丁度良くなったので、掛かり湯をして温泉に浸かる。


「う、あー、……」


 ゆっくり温泉に浸かる。お風呂には毎日入っているんだけど、温泉だと格別な気がするのは思い込みなんだろうな。だってなんの効能があるのかすら分かってないんだし……


「ご主人様、大丈夫なんですか?」


「うん、問題無いよ。気持ちが良い」


 お湯の中で、自分の肌を触るとスベスベと言うか、ヌルヌルになっている。これって泉質が弱アルカリ性って事だよね。たぶん。


「リムは、このお湯に浸かっても痛くなったりしてない?」


 頭の上にリムが居る事を忘れて普通に温泉に入ってしまった。気付いた時には僕の頭の上から温泉にダイブしていた……流石に焦る。慌ててリムを掬い上げ確認する。


『おふろ!』


 喜んではいるようだ。違和感が出たらすぐ知らせるように言って、一緒に温泉に浸かる。


 女性陣に見られながら入っているのは気になるが。大自然の中で入る温泉は格別だ。岩風呂にしたいな。石工とかいないのかな? 石工のダークエルフ。イメージが湧かないな。


 じっくり温泉に浸かり。タオルで体を拭くと、ちょっと体がスベスベしている気がする。


「ワタルさん、大丈夫?」


「大丈夫ですよ、アレシアさん。なんだか肌もスベスベになっていますし、問題は無いと思いますよ」


 僕の腕を触らせて「スベスベになってますよね」っと言うと。元が分からないから比べられないと言われた……その通りだと思う。


「では、私とイネスが試しますので確認してください」


 女性陣がイネスとフェリシアの肌を触り確認する。その後に、乗船許可を出して温泉に浸かる。


「イネス、フェリシア、どんな感じ?」


「気持ち良いわ。温泉に入っているとあまり臭く感じないし驚きだわ」


「私も気持ち良いです。ですが、肌がヌルヌルしているんですが……大丈夫なんでしょうか?」


「うん、大丈夫。温泉だとそんな感じになるんだよ。満足したら上がって体を拭いてみると分かるよ」


 お風呂から上がって体を拭いたイネスとフェリシアにジラソーレが群がる。 


「本当にスベスベになってるわよね?」


 アレシアさんが言う。


「ええ、劇的な変化ではないけど、違いが分かる位にはスベスベになっているわね」


 イルマさんが真剣な顔でフェリシアの肌を分析している。


「次は私ね。着替えて来るわ」


 アレシアさんがハイダウェイ号に走っていく。他のメンバーも慌てて後を追いかけて行った。温泉の良さは証明できたんだよね?

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ