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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第八章
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5話 森の探索と山の探索

 アッド号を確認するためにシーカー号から外に出る。もう暗くなっているので、光の玉を浮かべて明かりを取る。


「じゃあ召喚しますね」


 アッド号を召喚する。うん微妙な表情だ。乗ってみせないと理解は出来ないだろう。


「取り敢えず乗ってみせますので確認してください」


 アッド号にまたがり、グルッと一周して戻る。


「ワタルさん。とっても凄いんだけど、ワタルさんのユニークスキルって船しか召喚できなかったんじゃないの?」


 ごもっともな疑問です。船召喚だからね。それにしても、アレシアさんとマリーナさんの食い付きが悪いな。イネスみたいに興味津々になると思ってたんだけど。


「多分ですが、アッド号は水陸両用ですので船としても認識されてるんだと思います」


「そうなの? 前にも言ったと思うけど、魔導車は大型魔導船よりも貴重なの。見つかったら大騒ぎだから、大陸で乗るのなら見つからないようにするしかないわね。見つかったら国から逃げるか、大陸から逃げるかね。戦って従えるとかは考えていないんでしょ?」


 戦うのは嫌です。しかし国、大陸から逃げるんだ。無いな。


「アレシアさん、アッド号って魔導車と似てるんですか?」


「私も聞いた事しかないから分からないわ。ただ、自力で動くのは魔導車って認識はあるから、アッド号は魔導車って思われるわね」


「……見つからないのが大前提なんですね。これならどうでしょう?」


 船偽装で馬車っぽく偽装する。見せたら乗ってみてと言われたので。乗ってみせる。


「御者が見えなくて……脚を動かさない馬が引く、音を響かせる馬車。……噂にはなりそうだけど魔導車程の騒ぎにはならないわね。討伐依頼とか出てもおかしくないけど……」


 討伐依頼が出るかも分からない、討伐依頼が出るまでその場に止まっている事も無いだろう。馬車形態の方がマシだな。


「分かりました、大陸で乗る事になったら馬車に偽装します。この島ではどうでしょう?」


「この島はさっき、ワタルさんが言っていたように、ハイダウェイ号の召喚もバレているんだから今更隠してもしょうがないんじゃない?」


「そうですよね。この島では普通に乗りましょうか」


 アッド号だけでこれだけ考えないといけないのか。なんか面倒だよね。取り敢えずの結論が出たのでシーカー号に戻り明日の予定を決める。


 明日は朝から温泉探索だ。気合をいれないとな。リムの変化の練習を見学してから、お風呂に入り眠りにつく。




 朝、準備を済ました後。和船で行こうかと思っていたが、どうせならアッド号で探索しようという話になり、追加で4台のアッド号を購入した。色は赤が2台、青、黄、銀は1台ずつになった。取り敢えず全員分のチケットを作り直す。


 シーカー号を送還して、昨日教えたメンバーで講習会をおこなう。昨日は興味が薄かったアレシアさん、マリーナさんもスピードが出る事が分かると一気に興味が増した。


 昨日はゆっくり一周しただけだったからあんまり興味を持っていなかったようだ。スピードが大事なんだね。真剣に操作方法を覚えて乗り回しだした。


 申し訳ないのが、船が消えたのを確認した村長さん達が慌てて走って来た事だ。伝えてから送還するべきだったかな?


 理由を説明したら安心してくれた。本当に申し訳ない。お詫びにもならないが、村長さん達をアッド号の後ろに乗せて村におくった。喜んでもらえたから少しホッとしたな。探索に出る事を伝えて、戻ろうと思ったら音に惹かれて子供達が走って来た。 


「すごい、すごい。なにこれ?」


「なにこれ? なにこれ?」


「のせて、ねえ、のせてよ」


 8人の子供達がアッド号の周りを走り回る。……これは、乗せないと収まらないな。順番に後ろに乗せて村の外周を一回りする。大興奮ではしゃぐ子供。落ちないかと怯える僕。心臓に悪い。


 一回ずつ乗せた後は即行で村から離れる。のんびりしていると村の外周をエンドレスで回る事になりそうだ。


 村から離れそのまま川に向かう。初めは慣れる為にゆっくり川を遡る。ちなみにジラソーレは2人ずつに別れてアッド号に乗り、僕はイネスと、フェリシアは1人で乗っている。


 遡って森の境目に到着すると、武器を構えたダークエルフの皆さんが現れた。僕達を見てから武器を下ろしてくれたが、驚かしてしまったようだ。


 村でも村長さん達を驚かした事を反省していたのに、森にもダークエルフの人達がいる事が抜けている。出来る男……いや、普通の社会人とかなら、忘れたりしないんだろうな。


 ロマーノさんもいたんだけど、こちらに一礼したあと、ビシッとした体勢で待機していた。これはこれで怖いなスパルタで鍛えられていそうだ。


 ダークエルフの人達と別れて川を遡る。途中で倒木に川を塞がれていたので陸上に移動する。


 ……広い場所があったので合図をして、止まる。


「ワタルさん、どうしたの?」


 アレシアさんが聞いて来る。


「ええ、結構揺れますし、このままアッド号で進むか、徒歩に切り替えるか相談しようと思いまして」


 木の根は避けられるし確認も出来るから、大丈夫なんだけど、地面自体が悪いので凹凸が酷い。僕は耐えられるけど、乗り物酔いの人とかいないのかな?


「うーん、確かに揺れるけど、早いのはアッド号に乗って行くのよね。ゴブリンが出ても無視できるから更に早いわね」


 確かにそうなんだよな。何度かゴブリンが襲って来たけど、乗船拒否があるから無視して進める。アッド号って相当便利だよね。


「気分が悪くなっている人はいませんか?」


 女性陣で気分が悪くなっている人は居ないようだ。みんな平気そうに首を横に振っている。


「居ないみたいですね。じゃあこのまま進めなくなるまで行きますね」


「ちょっと待って、ちょうどいい場所だから昼食にしない?」


「あー、そうですね。時間も丁度良いですしお昼にしましょうか」


 弱い魔物しか見つかっていないとはいえ、森の中なのでアッド号を送還してゴムボートで周りを囲む。食糧庫船を召喚し各々で好きな料理を取る。


 僕はカップ麺にオニギリだな。外で食べると妙に美味しいんだよな。リムはお肉が良いそうなのでトンカツと唐揚げにオニギリだ。育ちざかりなはずだから問題無いよね。


 周りの森を見ながらご飯を食べる。


「ご主人様。何かありましたか?」


「ああ、フェリシア。この森と魔の森が普段の時はあまり変わらないから、不思議だと思ってね」


「魔の森は魔物が特殊なのが原因ですから、森としては変わらないのかもしれませんね」


 そう言えばそうだな。魔物が狂乱して集中攻撃をしてくるから面倒なだけで、森自体はそうでもなかったな。いや、強い魔物も居たから少しは違うんだろう。


「まあ、魔の森に比べるとビクビクしなくて済む分、気持ちが楽だよね」


 食事を終えて再びアッド号に乗り、山に向かって進む。


「うひっ……」


 ……ゴブリンってあれだよね、大きな音を立ててるからしょうがないんだろうけど、何も考えずに突っ込んで来るから怖いよ。速度が出ていないとはいえ、目の前に飛び出して来るのは止めて欲しい。


 跳ね飛ばされるまで結界にへばりつくのは見ていて気持ち悪い。その上、ダメージは殆どないから滅茶苦茶に怒って追いかけ「ギャ、グギャ、ギャ――!!」て来る。こんな風に叫びながら……


 ひき逃げみたいなものだから、怒るのも分からないでもないけど、自分が茂みから飛び出して立ち塞がった事も忘れないで欲しい。


 何度かゴブリンに驚かされながら、先に進む。傾斜が急になって来たので、登れない事も無さそうだけど安全の為に徒歩に切り替える。


 テレビの衝撃映像とかでゴロンゴロン転がって落ちるシーンとか再現したくないよね。ハンドルから手を離さなければ乗船拒否で助かるんだろうけど、木とかにぶつかって方向が変われば投げ出されかねない。



 山登り……体力的には問題が無いんだけど、どちらかと言うとインドアな僕にとっては言葉を聞くだけで疲れた気がする。あとアッド号から降りると乗船拒否が無くなるから突然飛んで来る虫にも驚かされる。


 ゴブリンに驚き、虫にも驚く……恥ずかしい。


 女性陣も平気そうに草や蔓を薙ぎ払いながら登って行くから、僕も平気なふりをして登る。前に登った時は異世界で頑張ろうと気が張ってたから平気だったけど、良い船を手に入れて、軟弱な精神が蘇ってる。情けない事を考えながら山を登る。


「ワタルさん、そろそろ中腹よ」


 頭にふうちゃんを乗せたマリーナさんが、中腹に到着した事を教えてくれる。ふうちゃんが頭の上でポヨンポヨンと飛び跳ねている。一緒に教えてくれてるのかな? ふうちゃん、思念を飛ばしてくれたら分かるよ。


「ありがとうございます。じゃあ山の反対側に移動しましょう」


 中腹付近から横移動に切り替える……歩きにくい。山の麓でアッド号にのって反対側に移動した方が楽だったか? 今更だよね。頑張ってひたすら歩こう。      


 偶に出て来るゴブリンを瞬殺しながら山の中を進む。所々崖みたいな急斜面になっていたりと、横に移動する方が時間が掛かる。


 もしかして、頂上まで登って反対側に下りた方が楽だったのではなかろうか? 挫けそうな心を立て直しながら何とか進む。正直、こんなに苦労してまで温泉に入りたいとは思わない。しかも確実に温泉かどうかも分からない……ドンドン思考がネガティブな方向に向かっているな。


 秘湯に入りに行くのはテレビで見ただけで満足できるタイプだ。温泉という言葉の魔力に無意味にテンションが上がってしまったのが原因だと思う。


 温泉って日本人なら殆どの人が反応するよね。日本人のDNAに、温泉って聞いたらテンションが上がる情報が刷り込まれている気がする。


「ワタルさん、あちらから異臭がします。臭いです」


 クラレッタさんの言葉に匂いを嗅ぐが何も分からない。


「僕には分からないです。方向は分かりますか?」


「獣人は鼻が良いですからね。ワタルさんではまだ分からないと思います。方向は大体あっちの方ですね」


「そうですか。うーん、まだ時間が掛かりそうですか?」


「距離まではちょっと分からないです。ですが、時間は掛かると思うので、今日は野営の準備をした方が良いと思います。そろそろ日が暮れます」


 今日中には到着出来なかったか、無理して行っても暗くなっていたら意味が無い。ゴムボートが出せそうな所で野営だな。


「では、スペースがある場所を探してそこで野営をしましょう」


「分かったわ、じゃあワタルさん達は此処で待機していて。私達で探索してくるから」


「えっ? あー、はい、お願いします」


 アレシアさんの号令で、ジラソーレが散らばる。僕が待機なのはオブラートに包んで言うと、危なっかしいからだろう。普通に言えば足手まといだからだな。何となくピンと来た。


 20分程で全員が戻って来た。情報を交換して一番マシな所に案内される。ハイダウェイ号が召喚できるスペースは無いが、小屋船なら十分に召喚できる。


 軽く草を刈って、小屋船を3艘と食糧庫船、ゴムボートを召喚する。料理と飲み物を取り出し、夕食にする。


「それで、ワタルさん。変な臭いがする場所に行くんですよね? 何があるんですか?」


 クラレッタさんはワザワザ異臭がする場所に行く事が不思議みたいだな。気持ちは分かる。その上僕より断然嗅覚が優れているみたいだしね。


「うーん、僕が思っている通りかも分からないですし、違ったらガッカリする事になるんですが、聞きますか?」 


「うーん、……アレシア、どうしましょう?」


「そうね。クラレッタ、そんなに臭いの?」


「ええ、だいぶ薄まっているはずなんですが、嫌な臭いです」


 不評だな。まあお世辞にもいい匂いとは言えないよね。


「ワタルさん、どんな場所か教えてもらえる? そんな異臭のする場所に訳も分からずに行くのは怖いわ」


 確かにその通りだよね。意味も分からず臭い場所を通り、更に臭い場所を目指すのは、僕も遠慮したい。


「僕が思っている通りの場所なら、温泉が湧いている可能性があります。前に映画に出て、説明しましたよね?」


「あっ、あの、お湯に色々な物が溶け込んでいて疲れが癒えたり、お肌が綺麗になったりするお湯がでる場所の事よね?」


 しっかり覚えているんだね。たぶん美肌効果があるって事で、覚えていたんだと思うんだけど。温泉の話を聞いて、女性陣の目がキラリと光る。


 でも美肌って、お湯に入っている成分が肌の表面の何かを溶かしているから、ツルツルになるって聞いた事がある。……異世界のお湯は大丈夫なんだろうか? 不安になってきたな。


「ええ、でも、たとえ温泉でも、毒ガスが出ていたり、入浴に向かないお湯の可能性もあるんです。あまり期待しないでくださいね」


 予防線は張っておかないとね。違ったら物凄くガッカリしそうだし。……聞いてないな。キャイキャイと女性陣で話し合っている。


 素晴らしい温泉である事を願うしか無いのか。夕食を済ませて小屋船、ゴムボートに別れて眠りにつく。せめて入れる温泉が出てくれる事を願って眠りにつく。お休みなさい。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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