表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第八章
156/568

4話 アッド号の確認と緩和?

 アッド号の試運転をして、カーラさん、イネス、フェリシア、ふうちゃんの所に戻る。


「ご主人様、凄いじゃない。船だと思っていたんだけど、魔導車なのね」


「魔導車とは違うと思うんだけど、似たような物なのかな?」


 魔導車を見た事が無いから何とも言えない。


「すごい」


 カーラさんも近づいて来て興味津々で観察している。


「ありがとうございます。簡単ですからみんなで乗ってみましょう」


 チケットを作り、カーラさん、フェリシアを順番に後ろに乗せて、走り回る。腰に手を回されて後ろから抱き着かれる。嬉しいんだけど装備を付けているのが残念だ。感触が楽しめない。単純な運転方法なので運転しながら説明する。


「カーラさん、後ろに乗ってみてどうでしたか?」


「楽しかった!」


 言葉は短いけど、手をワチャワチャと動かしているので本当なんだろう。チョット興奮気味だね。


 フェリシアも楽しそうに後ろに乗っていた。問題はイネスだ。興奮気味だし、目つきが違う。これは操船する時の顔だ。嫌な予感がするから後回しにしたんだけど、待たされて更にテンションが上がってしまったようだ。明らかに失敗したな。


「ご主人様。次は私の番よね。さあ、行きましょう!」


「う、うん」


 ハイテンションのイネスを後ろに乗せて出発する。しっかり抱き着いてくるイネス、走り出したら騒ぐと思っていたんだけど。食い入るように僕の操縦を見ているようだ。僕の顔の隣にイネスの顔がある。騒いでくれた方が楽だったかも。 


 操作方法の説明が必要かな? とも思ったが、ちゃんと説明しておこう。注意事項を特に念入りに伝える。ワクワクしているのが見えなくても伝わって来るからな。


「イネス、どうだった?」


 聞かなくても分かるんだけどね。


「とても面白いわ! 馬と同じ位の速さかしら? でも雰囲気が違うのよね。後ろで見ているだけでもドキドキしたもの」


 うん、楽しそうだ。イネスはこういう乗り物が好きなんだな。アレシアさんとマリーナさんも同じ反応かな? ……嫌がる未来が見えない。嬉々として乗り回すだろう。


 転倒してもレベルがあるから日本人よりは無事な可能性は高いだろうけど……難しいな。最初は速度制限をしておこう。40キロでもこの世界なら速い方だ。


「じゃあ、今度は、運転してみましょうか。僕が後ろに乗るのでカーラさんは前に乗ってください」


「うん」


 今度は後ろから教えながら進む。アクセルをゆっくりと捻り、草原を進む。草が長い地帯は避けてのんびりとした走行だ。景色を見ながら楽しく走る。こんな感じがベストだな。


 フェリシアもきちんと言われた事を守りながら運転するので安心感がある。イネスもちゃんと説明すれば分かってくれるので、テンションが上がらなければ大丈夫だな。簡単にテンションが上がりそうだけど。


「そろそろお昼ですよね。カーラさん、ご飯にしましょうか?」


 笑顔で頷かれたので昼食の準備をする。ハイダウェイ号を召喚する事も考えたけど、せっかくなのでピクニック気分を味わう為に草原のど真ん中でお弁当にしてみた。


 お弁当と言ってもホットメニューの買いだめを放出するだけなんだけど、気持ちの良い草原の中で食べるご飯は一味違う。


 まあいつもなら最低でもゴムボートを召喚しているんだけど、ここにフェリシアの結界を破れる魔物は出ないと言われたからなんだけどね。


「ご主人様、どうしたの? 凄い笑顔だけど」


「ん? なんかこんなのも楽しいなって思ってたんだ」


 目の前にはカーラさん、リム、ふうちゃんが一心不乱にご飯を食べているのを眺める。平和だ。


「確かにそうね。なんだかのんびりしているから、南方都市の周辺より安全な気がするわ」


「はは、そうなんだ」


 よく考えたら僕は南方都市の周辺を殆ど知らない。南方都市に到着した時以外は船でシエーナ村に行ったぐらいだ。


 大食いトリオが満足するまでのんびり缶コーヒーを飲みながら待つ。しかし食いっぷりが凄まじいな。


 陸上での走行には慣れたので次は水上走行だ。海は怖いので川だな。今日は村のみんなも二日酔いだから、川も利用されていないだろう。


 ……重大な事に気付いた。山の裏側まで川を遡って行こうと思ってたんだけど、アッド号を隠すつもりなら使えないよね。……なんか面倒になってきたな。ダークエルフの皆ぐらい見せても良い気がしてきた。


 そもそも豪華客船を手に入れたんだから、無理に広める必要も無いけど、コソコソ隠す必要も無いんじゃないのかな? 今日の夜、皆が復活していたら相談してみよう。


 川に移動して入れそうな場所からゆっくりと水に入る。……あれ? 凄いとか水に入って大丈夫なの? とか驚きの声が無い。


 ボタンを押して、タイヤが移動する所でやっと歓声があがった。ここには歓声が貰えるんだ。よく分からないな。


 後で聞いてみたところ、水陸両用って言ってたじゃない? っと不思議そうに言われた。素直にそういうものだと納得されていたらしい。ジェネレーションギャップではなく異世界ギャップだね。


 アッド号で水上を走行する。まあまあ揺れるな。川の流れが危険なのか? 大きい方が安定性は増すんだし、このサイズならこんな感じなんだと思おう。


 でもなー、この川なら和船の方が便利なんだよな。召喚で直ぐに乗り換えられるんだし、アッド号は陸上専用の方が良いな。陸上で走行できるだけで最高なんだし。


 みんなの所に戻ると、乗る気満々だ。交代して順番に水上に出て行く。タイヤの上げ下げが楽しいらしい。


 水上を走行するというより、タイヤを下げて陸に上がり、また水上に移動してタイヤを上げるを繰り返している。使用目的が違っているな。一通り水上を走り満足したのでシーカー号に戻る。



「ワタルさん、お帰りなさい」


 クラレッタさんが笑顔で出迎えてくれる。癒されるんだけど、後ろにある5個のぬいぐるみが気になる。おそらくアレシアさん達の面倒を見ながら、ぬいぐるみを作っていたんだろう。


 クラレッタさんのぬいぐるみ作成速度を考えると、ぬいぐるみ部屋がどうなっているのかちょっと怖い。


「ただいま。クラレッタさん、アレシアさん達の調子はどうですか?」


「ふふ、少しは良くなったみたいですが、まだ本調子ではないみたいです」


「そうですか。明日は前に言っていた異臭がする場所に行ってみたいんですけど、大丈夫そうですか?」


 明日も休みにした方が良いかな?


「大丈夫ですよ。飲み過ぎても夜には復活しますから、明日なら大丈夫ですよ」


 問題無いのなら明日出発するか。


 クラレッタさんとお茶を飲みながら今日の出来事を話す。カーラさんが一生懸命にアッド号の事をクラレッタさんに説明している。カーラさんが頑張って話すのって珍しいよね。


 一生懸命に話すカーラさんと楽しそうに話を聞くクラレッタさん。ほのぼので綺麗な光景だ。僕が混ざったら醜い光景になりそうだから、黙って見ていよう。


「へー、そうなの。陸と水の上を走れるのね。想像もつかないけど、明日にでもワタルさんに見せて貰うわね。教えてくれてありがとう」


「うん、でもね、今からでも頼んだら見せてくれるよ?」


 頼まれなくても見せて自慢して後ろに乗って欲しいんだけど。ここで乱入したら台無しだな。しかしカーラさんが微妙に幼くなってないか? クラレッタさんからも母性を感じるし変な関係だな。


 基本的にクラレッタさんとカーラさんは一緒に居るからな。別れてこんな風になるのが珍しいんだ。クラレッタさんが敬語じゃないのも何気にレアだな。


「ふふ、私も見たいんだけど、アレシア達も見たがるでしょうから、その時まで我慢するわね」


「わかった」


「ワタルさん、夕食はどうしましょうか?」


 ありゃ、こっちに振られちゃった。このままボーっと見てるのも良かったんだけどな。


「うーん、そうですね、アレシアさん達も本調子ではないでしょうし、それぞれが食べたい物を食糧庫船から出しましょうか?」


「ありがとうございます。そうして頂けると助かります」


 キャッスル号の有料料理は、しっかり買ってストックしてあるからな。無料の方は欲をかくと罰がありそうだから手を出していないけど。


 特にやる事も無いので夕食の時間まで、久しぶりにジェ〇ガをしながら過ごす。最近はキャッスル号の娯楽ばかりだったけど、ジェ〇ガも変わらずに楽しい。考えると凄い事だよね。


 

 騒いでいるとアレシアさん達が起きて来た。輝く雰囲気は陰り、ぬぼーっとした表情をしている。二日酔いって美人でも曇らせるんだな。


 あれ? イルマさんはエロい雰囲気だ。辛くてダルそうなのに、退廃的って言うのかな? 色気が増している気がする。こんな状況でも色気ムンムンって凄いよね。フェロモンに愛されてるよ。


「皆さん大丈夫ですか?」


「ええ、大丈夫よ。楽しかったから少し飲み過ぎたわね」


 苦笑いしながら言うアレシアさん。少しじゃないよねたっぷり飲み過ぎてるよ。


「あっ、そう言えば二日酔いに良い飲み物がありますよ」


 そう言ってスポーツドリンクを全員に渡す。飲んだ後直ぐにスポーツドリンクを飲むのは駄目らしい。


「二日酔いに良いのは助かるわ」


 二日酔いに良いとの言葉にグビグビとスポーツドリンクを飲み干す。


「ふー、前に飲んだ時は不思議な味だと思ったんだけど。今飲むと美味しいわね。なんでかしら?」


 スポーツドリンクってそんな評価だったんだ。僕の方が疑問だな。


 少しソファーに座り食べたい物が無いそうなので、うどんを勧めてみた。うどんって二日酔いに良さそうだよね? 食べやすいし。


 二日酔いのメンバーがうどんを食べる横で、僕達も普通の夕食を食べる。夕食が終わるともう1本、スポーツドリンクを頼まれたので渡す。


「あー、少し落ち着いたわ。ありがとうワタルさん」


「いえいえ、落ち着いたのなら良かったです」

  

 顔色もマシになってる。スポーツドリンクかうどんが効いたのか? 僕も二日酔いになったら試してみよう。


「あっ、今日の昼間に思ったことがあるんですが、相談を聞いてもらえますか?」


 丁度いいから聞いておこう。

 

「構わないわよ。どうしたの?」


「えーっとですね。今まで自分の能力を精一杯隠して来たんですが、これからはもう少し自由にやっても良いんじゃないかと思うんです。もちろん、わざわざ能力を見せびらかしたり、何処かに能力を売り込んだりとかする気はありません」


「能力を示して、どこかの国の要職に就くとか、貴族になるとかが目的じゃないのなら、目立っても良い事は無いわよ?」


 不思議そうに聞いて来るアレシアさん。地位と名誉か……ハーレムに近づきそうだけど、付随する面倒事が多そうだ。ハーレムが出来ても退廃的な生活が送れないのなら意味が無い。


「国とか貴族とかは、どうでも良いんです。今日の昼間も面白い物が召喚出来るようになったんですが、目立つから使いどころが限定されると思ったんです。


 目標だった豪華客船も手に入れたので、お金を稼ぐのにそこまで拘らなくても良くなりました。なら目立つ事に怯えて、やりたい事を我慢するより、ある程度の注意はするけど楽しい方を選択したいなって考えたんです。皆さんはどう思いますか?」


 ヤバそうならこのままで生活するけど、楽しくなるならちょっとぐらい開放的になっても良いかなって思っている。特にダークエルフの島で能力を隠しているのは無駄な気がする。


 ごく僅かな可能性を恐れていたけど、この島を見つけた頃と状況が違う。ルト号までしか購入していなかった時とキャッスル号まで購入している今。選択肢が増えていても良いはずだ。


「うーん、言いたい事は分かったわ。安全の面では隠せるだけ隠した方が安全なのは間違いないんだけど……面白い船も召喚出来るようになったから、少しぐらい見つかる可能性が上がっても、利用しようって事で良いのよね?」


 大体そんな感じかな? 大筋はアレシアさんの言ってる事で間違っていないと思う。


「ご主人様、取り合えずどんな行動がしたいのか教えて貰える?」


 ごめんねイネス。ただ、アッド号を自由に使えないのが窮屈に感じただけなのが切っ掛だから、考えてないんだよね。船偽装で馬にでも変えようかと思ったけど、船偽装だと馬の脚が動かないんだよな。


 街道を脚を動かさずに疾走する馬。どう考えても討伐案件だよね。


「そこまで深くは考えていないんだけど、ダークエルフの島でも能力を隠しているのは、無駄な気がするんだ。湖上の村の人達にはハイダウェイ号の召喚は見せている訳だし……」


「確かに、この島なら危険は少ないわね。この島で何が安全で、何が危険か判断する感じなの?」


 思った以上に真剣に考えられてしまった。


「取り合えずアッド号をこの島で自由に乗り回すのはどうなのか? またアッド号を大陸で乗った場合はどんな反応があるのか? ですね。他の能力は隠したままでもそこまで不便を感じていませんので、陸地での船召喚の使い方が一番のネックだと思うんです」


「そのアッド号を私達は確認していないから何とも言えないわね。今から見に行きましょうか」


「僕は構いませんが、アレシアさん、体調は大丈夫なんですか?」


「ええ、本調子ではないけど、問題は無いわ。行きましょうか」


 連れだってアッド号を確認するために、外に出る事になった。どんな反応なのかな? ちょっと楽しみだ。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ