22話 1ヶ月と眩しい光
次回から閑話を挟み8章に突入します。よろしくお願いします。
一か月の出来事を思い出していたら、次から次に出て来る。それだけ豪華客船の施設が多いって事か。まだ時間は有るしのんびり思い出してみよう。
大人用のナイトクラブ。
ここも雰囲気的にティーン用ディスコと変わらなかった。大人用でも僕には合わなかった。どこに行けば僕に合うディスコやクラブがあるんだろう?
……たぶん自分の心が変わらないと駄目なんだろう。特に踊った事が無くても気にせず踊る勇気が無いとあの雰囲気に慣れる事は出来ないと思う。問題は此処でそれをやると僕がこの世界での基準になる気がする。
……ディスコ関連はDVDでディスコとかが出て来たら女性陣に勉強してもらおう。あとで図書室に上手なクラブの過ごし方とか載っている本を探そう。
プロムナードのパレード
人数が必要で、サポラビの大量召喚が必要だ。今までサポラビはしっかり働いてくれているので問題無いはずなんだけど……同じエリアに大量召喚と言うのが引っ掛かる。他に見る物もあるし、後回しにしよう。
フィットネス&スパ
ここはかなり当たりの施設だった。フィットネスは様々な運動用の器具が並んでいたが、僕はあまり興味が無い。女性陣が色々試して楽しんでいたが、筋肉ムキムキになられたら悲しいので、出来れば止めて欲しい。
ルームランナーとかフィットネスバイクとかで満足して欲しい。そんな人より重たそうなバーベルを軽々と持ち上げないでくださいカーラさん。
此処まではこの施設に来たことをチョビット後悔していたが、スパの部分は素晴らしかった。置かれている様々なクリームや機械が美容関連の物だと知ると、女性陣に大喜びでスタッフ任命をお願いされた。
知識を得た女性陣は着替えてきて楽しそうにお互いを施術しあう。イネスとフェリシアは僕に施術すると言って来たが、僕が美肌になってもどうしようもないので遠慮しておいた。
訳の分からないクリームを顔に塗ったり、振動かな? よく分からないマラカスみたいな機械を体に当てたりとよく分からない事をしている。
僕も退屈になったので、サポラビを召喚して、メニューを確認してみるとスチームサウナ、マッサージに針まである……これはイネスとフェリシアにやって貰えば良かったな。美容関係だと思っていたから失敗した。次の機会にはお願いしよう。
取り合えずサポラビにマッサージと針を頼む。着替えて来て施術台にうつぶせになる。高さが足りないのか台を用意したサポラビがじっくりとマッサージをしてくれる。
ふー、これは気持ち良いな。復讐されそうだとか怖がってごめんねサポラビ。じっくりとしたマッサージに眠りに落ちてしまう。この時、寝てしまったから、くだらない危機に陥ってしまったんだよな。
「あら、起きたのね、ワタルさん」
あー、寝ちゃったのか。何故か目の前にはイルマさんが居る。寝起きのイルマさんは刺激的だな。起き上がってイルマさんに話しかける。
「イルマさん、何かありましたか?」
「いいえ、何も無いわ。ワタルさんが動かないからどうしてるのか様子を見に来たのよ。サポラビちゃんがゆすっても起きないから困ってたわよ」
そんなに熟睡していたのか。疲れてたのかな? 正直、遊んでしかいないんだけど。遊び疲れか……社会人をイラつかせそうな言葉だな……
「あはは、マッサージが気持ち良かったので、熟睡しちゃいました」
「疲れてるの? 私がマッサージの続きをやってあげるわね。そのまま横になって」
少し心配そうに驚く事を言い出すイルマさん。
「えっ? 大丈夫ですよ。それより、エステの効果って凄いですね。凄く艶々ですよ、イルマさん」
不味い、何とか断らないと、寝起きの股間にテントが……話を逸らすんだ。
「そう? ありがとう、ワタルさん。さあ、マッサージをしましょう。遠慮しなくて良いわよ」
両肩を押さえられ、仰向けに寝転んでしまう。とっさに掛かっていたバスタオルで股間を隠したが危険な体勢になってしまった。しかもイルマさん、エステ後で艶やかさが増している上に、良い匂いがする。
「ふふ、スタッフ任命って素敵よね。マッサージもエステもお手の物よ」
ヤバい位にイルマさんが色っぽい。そんなイルマさんが枕元に座り頭をマッサージしてくれる。目を開けるとお胸様が見える。……テントが収まる気がしないな。
物凄く気持ちが良い地獄だ。どうしたら良いのか分からないまま結局バレてしまった。恥ずかしい。
「うふふ、男の子ね」
色っぽいお姉さん。大好きです。ゾクってしました。バレてしまったので開き直ってイルマさんのマッサージに身をゆだねる。だらしない顔をしている自覚はある。
角兎よりイルマさんのマッサージの方が断然気持ちが良いのは、スタッフ任命と最低限の仕事が出来るサポラビとの違いなのかな? イルマさんのマッサージって事でかなり上乗せされている気もする。スチームサウナと針は次の機会にしよう。
恥ずかしい思いもしたけど、トータルではプラスだ。いい思い出という事にしておこう。
魔物の大軍
「ワタルさん、ちょっと良い?」
普段、ふうちゃんやリムの事以外であまり表情を変えないマリーナさんがとても嫌そうな顔をしている。一緒に付いて来たドロテアさんも同様だ。なんか面倒事っぽいな。
「どうかしましたか?」
「ええ、ちょっと外を見てもらえる?」
マリーナさんに言われ、バルコニーに出て海を眺める。……何も無いんだけど。
「ワタルさん、下を見て」
手すりから下を覗くとうじゃうじゃと魔物が集まっている。……これか。
「良く分かりました。とても面倒ですね」
そう言えばフェリーに乗っている時も魔物の大軍が群がって来たな。豪華客船で遊ぶ事ばかり考えていたから、魔物の事が頭から抜けていた。
バルコニーや展望ジャグジーでも海は見ていたけど、わざわざ下を覗き込まない。バルコニーのジャグジーに浸かっていた時に、微かに魔物の声が聞こえた気もするが、気にもしてなかった。
その結果がこれか。これだけの大きな船だもん。魔物も沢山寄って来るよね。
「これはあれですね、今から魔物を倒すべきでしょうか? 倒してもまた集まって来そうですから、出発の時に全部まとめて倒しますか?」
船に乗っていれば魔物を倒すのに危険は無いんだけど、何度も倒すのは面倒なんだよな。
「……そうですね、魔物の大軍を放っておくと、予想外の事が起こるかもしれません、倒した方が良いと思います」
……上から見たら魔物が共食いしている。蠱毒みたいな状態だな。魔王が生まれたりしないよね?
「取り敢えず、この部屋では見辛いので3層のデッキに装備を整えて集まりましょうか。そこで話し合いましょう」
3層デッキに集まり話し合うが、話し合う事が無駄に感じるぐらいに女性陣がやる気満々だ。これはあれか? 戦いに飢えていたのか? 止まりそうにないな。
「じゃあ、ガレット号を2艘召喚しますから分乗して、魔物を殲滅しましょう」
僕が思うにキャッスル号のデッキからひたすら攻撃すれば済むと思うんだけど、言うだけ無駄なんだろうな。ウキウキ感がハンパないし。
「久しぶりのガレット号ね。楽しみだわ!」
テンションマックスだねアレシアさん。操船はアレシアさん、マリーナさん、イネスがするから、ストッパーを配置しておかないとな。
フェリシアはどっちかと言うと、一緒に楽しみたいだろうけど、今回は止める側に回って貰おう。ドロテアさんとイルマさん、クラレッタさん、フェリシアに操船大好き組が暴走し過ぎないよう、注意を頼む。
タラップから海面に近づき全員で攻撃を叩き込みそこにガレット号を召喚する。先に乗り込むのはアレシアさん、ドロテアさん、イルマさんだ。再度攻撃を打ち込みガレット2号を召喚して、僕達も乗り込む。
後は船の揺れに耐えながら攻撃をするだけだ。これが終わったらスパに行こう。マッサージしてもらってスチームサウナに入って、ジャグジーに浸かって、またマッサージだ。頑張ろう。
結局1ヶ月の間に魔物の大掃除を後2回したんだよな。キャッスル号、魔物からの注目も抜群だね。
シアター&アクアシアター
この二つは凄いんだけど、スタッフが足りないと辛い。ショーの要員が必要だな。満足できるショーを見るには人員の追加が必要だ。
さすがにサポラビだけだと劇が人形劇に見えてしまう。衣装はしっかり劇に合わせているところが更にシュールだ。背後の大型スクリーンに劇の背景が映されてかなり面白そうだ。20人ぐらい居れば劇が出来るのかな?
アクアシアターはサポラビが高い飛び込み台から飛び降りたりと派手なショーだが……ここでもサポラビに違和感を覚える。
せめてサポートスタッフが人型だったらだいぶ違うんだけどな。チャペルで教会で毎日お祈りしていたら巨乳美女に変わらないかな? 試してみよう。
アクアシアターのショーを見ていると、舞台に大型トランポリンがある事に今更気が付く。トランポリン、後で絶対に遊ぼう。
サポラビのショーが終わる。高い所から飛び込む事に、アレシアさんとマリーナさんが興味を示したので、スタッフ任命をする。
水着に着替えて来た2人は下の段から飛び込みながら、徐々に高い位置に上がっていく。高い位置から楽しそうに飛び込む2人。ちなみにふうちゃんは危険なので見学だ。
……リムやふうちゃんもスタッフ任命が出来るのかな? いきなり飛び込みは危険だから、安全そうな仕事が見つかったら任命してみよう。
キャッスル号で一番エレガントなレストラン。
一番エレガントなレストランって書いてあると、かなり気になる。豪華客船が一番と宣言するレストランだからと、何故か僕が自慢してレストランに向かう。
クラレッタさんとカーラさんも元気いっぱいだ。食べ物関連だとこの2人が喜んでくれるよね。レストランに入り、高級レストランだからと、直ぐにサポラビを5体ほど召喚する。
サポラビに案内されて席に向かう。コースを頼む。高級な所に行き慣れていないから、メニューを見ても料理の想像が出来ない。エレガントなレストランだけど、エレガントな男ではない僕には荷が重い場所だった。
バケットが沢山運ばれてくる。バターと6分割されたクローバーのような器に、塩が盛られていた。えーっと、これは6種類の塩みたいだな。
バターを塗って6種類の塩をそれぞれ食べてみる。……何となく味の違いは分かる。塩ってだけで結構違うもんなんだな。
クラレッタさんは味の違いを細かくつぶやいている。話しかけると意見を求められそうなのでそっとしておこう。
色々と美味しい料理が出てきたが、一番驚いたのはレアなステーキの周りにキャビアが飾られている。人生初キャビアだ。たぶんお肉と一緒に食べるのが正解なんだろうけど、キャビアだけ食べてみよう。
……美味しい? 美味しいんだろうけど、良く分からない……お肉と一緒に食べるととても美味しかった。……B級グルメには何気に自信があったんだけど、A級グルメは経験が足りなさすぎる。慣れたら味が分かるようになるのかな?
取り敢えず美味しかったし、一番エレガントなレストランで食事が出来た事で満足だ。
バー、カフェ、ショップ。
ステーキレストラン、ピザ屋、ビュッフェレストラン、沢山のバーやパブ、カフェを楽しんだ。バーに関してはラテンバー、シャンパンバー、ジャズバー、ピアノバー、ワインバーをその日の気分で楽しんだ。
他にもドーナツショップ、アイスクリームパーラー、キャンディストアと楽しみが沢山だった。正直、あの店に行きたいと言われても分からない時がある。
こう考えると、気に入った場所には何度も行ったし、結構充実した1ヶ月だったな。女性陣も自分が好きな場所やお店を巡り喜んでいた。ちなみに一番人気はスパで、美容関連の強さを認識させられた。
日本に居た時にここら辺の機微を理解出来ていれば、少しはモテたかもしれないな。
まだまだキャッスル号でやりたい事は沢山あるけど、全部一度に楽しむのは勿体ないから、ダークエルフの島で探索した後にまた楽しもう。
ダークエルフの島付近の外海でシーカー号に乗り換える。ストロングホールド号にまとわり付いていた魔物をいつものように討伐した時にそれは起こった。
「ご主人様、リムちゃんが光ってるわよ」
リムはいつも淡い光を発しているんだけど、イネスの表情から違うと思い、頭の上からリムを下す。……僕の腕の中で眩い光を発するリム。……えっ? なにこれ? 大丈夫なの?
「リム、どうしたの? 大丈夫?」
慌ててリムに声を掛けると。
『……へん』
「へん? へんって何? 大丈夫じゃないって事? ヒール、クラレッタさん! クラレッタさん! リムにヒールをお願いします」
僕が慌てていると、更にリムの光が強まる。どうしたら良いの?
「ワタルさん! リムちゃんは進化してるんだと思います。船内に連れて行って、ソファーの上にお願いします」
取り合えず全力でシーカー号の中に入り、リムをソファーの上に降ろす。
進化ってリムはどうなっちゃうの?
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。