20話 ルームサービスとプール
次回で船内の話を駆け足で済ませる予定です。閑話を挟んで次の章に移ろうと思っています。
女性陣のスケートショーを堪能した後、遅い昼食を取りに行く事になった。
「ワタルさん。今日は何を食べるの?」
カーラさんが興味を抑えられない表情で聞いてくる。ご飯関連になるとカーラさん表情が5割増しになるな。さて、何を食べようかな?
「うーん、では、今日は部屋で食べる方法を試してみましょうか」
ルームサービスの使用方法を教えておこう。ただなー、お酒 (有料)もご飯も頼み放題なんだよな。不安だ。
「お部屋で食べられるの?」
興味津々だな。なんか早まった気もするな……一応、釘は刺しておこう。
「ええ、食べられますよ。ただし、いくら部屋で自由に飲食ができると言っても、暴飲暴食は禁止ですからね。じゃあ、僕の部屋に行きましょうか」
僕の部屋に全員で向かい。テレビでメニューを選ぶ。……文字が異世界仕様になってるな。英語だったら暴飲暴食が防げそうだったのに。あっ、駄目だ、カーソルを合わせるとお酒の写真が出てくる。彼女達ならこれだけで理解するだろうな。
「これを頼めるの? へー、有料だけどお酒もあるのね。値段的には高いけど、異世界のお酒が飲めると考えたら物凄く安いわね」
アレシアさんの言葉に、お酒大好き組が反応する。……やっぱりこうなるか。
とりあえず人数が居るので、片っ端から頼む。スープにサラダを2種類、サンドイッチを3種類、ピザ、ソーセージ、ポテト。テレビで選択する度にリビングのテーブルに料理が現れる。
別にテレビで注文しなくても、部屋のなかで言葉で頼んだら注文できそうな気がするな。……試さない方が良いか。便利過ぎるのも問題だよね。
驚きなのがサンドイッチだ。パンの上にデンっとステーキやチキンが乗っている。周りにはナイフとフォークが置いてある。
僕、ナイフとフォークでサンドイッチを食べるのは初めてだな。これがハイソな生活なんだな。ちょっと面倒だと思う僕はハイソじゃないんだろう。
テーブルの上に料理が沢山。簡単なパーティーみたいな雰囲気だ。賑やかに食事を取る。話題はスケートの事が多い。かなり楽しかったらしく、話題が尽きない。
それと、女性陣がリモコンを完全に使いこなしているところが凄い。なぜ、あんなにボタンがあるのに迷わずに使いこなせるんだろう? 気に入ったご飯をサクサク追加している。侮れないな。
遅い昼食を終えて、ロフトのスクリーンにビデオカメラで撮ったスケート動画を投影して皆で見る。
「なんだか、自分の姿を見るのって不思議ね。映画もこんな感じで作られているの?」
イルマさんが難しい事を聞いてきた。撮影するのは同じなんだけど……
「こんな感じと言って良いんですかね? 専門の人達が僕が買ったビデオカメラのもっと大きくて、もっと高価な物で撮影をして映画を作ってると思います」
CGとか使ってるんだろうけど、自分でも理解してない事は説明できないから、止めておこう。
「やっぱり、専門の人がいるわよね。あれだけのお話を素人が作れないっていうのは分かっているわ」
心配しなくても、素人と専門家の違いは分かってくれているみたいだ。良かった。私達も映画を撮ってみたいとか言われたらどうしようとか、思ったよ。
騒いだり感想を言いながら映像を見ている。プルンプルンのタユンタユンは気にしていないようだ。揺れるのが普通の世界だからかな?
……ハプニング場面が流れた。ハプニング場面と言っても、ただアレシアさんがカメラの前で、大ジャンプをして、着地に失敗しただけなんだけどね。
着地で付けた足が、アニメでバナナの皮を踏んで滑ったように滑り、オーバーヘッドのように上がった足とゴンっと後頭部を氷にうちつけた頭。
氷上がシーンと静まり、慌てて全員がアレシアさんに集まる。僕も焦って走り寄ったので、映像がブレブレだ。
クラレッタさんが慌ててヒールを頭に掛ける。涙目のアレシアさん、可愛い。……ヘルメットとかも借りれたのかな? あるんだったら借りておけば良かった。あの落ち方は危険だ。
カウンターにいってヘルメットと頼むと出てきた……あったね。ごめんなさいアレシアさん。全員にヘルメットを配ったが気を付けるから大丈夫だと断られた。
あれだけの大惨事の後でもヘルメットを断る女性陣の気持ちは分からなかったな。
「ワタルさん、あの、転んだところは消せないの?」
顔を真っ赤にしたアレシアさんが聞いてくる。……どうなんだろう? パソコンがあればできるかな? ……ソフトをダウンロードしないと無理そうだな。
「無理そうです」
ガーンとした表情を向けてくるアレシアさん。気持ちは分かる。調子に乗ってやらかしてしまうと、とてつもなく恥ずかしいよね。
「まあ、思い出として心の奥にしまっておいてください」
「……忘れたいけど、忘れられそうにないから、記憶を封印しておくわ。できれば皆も思い出さないようにしてね」
黒歴史扱いか。あのぐらいの恥は、僕の中では軽い笑い話レベルなんだけど、アレシアさんは違うらしい。順風満帆な人生を送ってきたんだろうな。羨ましい。
ハプニングシーンも終わり、女性陣のショーが始まる。
「確かにワタルさんの言う通りね。普段着だと違和感があるわね」
アレシアさんも、アレシアさんの言葉に頷いている女性陣も同意見みたいだな。なんかショーに向いている服が作れないかな? さすがにブランド服でショー向きの服は売ってはいないだろう。ドレスがあればなんとかなるかもな。
「でも動きは悪くないわよね。面白かったし、衣装を考えてまた挑戦したいわ」
ドロテアさんも乗り気だな。そうだマリンシアターでもショーがあるよね。ジラソーレが水着でショーか燃えるな。でもキャッハウフフしながら水泳を教えたいから、スタッフ任命は泳ぎを教えた後だな。どうせ女性陣は直ぐに泳ぎをマスターするだろうから問題無いだろう。
今日は昼食が遅かったので、夕食は各自自由に取る事にして、ジラソーレと別れる。クラレッタさんは水着の加工を今日中に終わらせてくれるそうなので、明日はプールだな。
「イネス、フェリシア、リム、夕食はまだ良いよね? バルコニーのお風呂に入ろうか?」
「良いわね。ねえ、ご主人様、夕日を見ながらお酒が飲みたいわ」
お酒か……毎日飲んでいる気もするけど……量は少なかったし、少しだけなら良いか。
「なら、シャンパンを1本だけ飲もうか」
「ふふ、ありがとうご主人様」
美女2人と一緒にお風呂に浸かり、夕日を見ながらシャンパンを飲む。シャンパンの味はよく分からないけど、僕は成り上がった。
後はなんとかジラソーレをハーレムメンバーに加える事ができれば、言う事無しだろう。……ここからどうやったら彼女達をハーレムメンバーに加えられるのか、全く分からないのが問題だ。
……前に考えた船召喚から離れられなくなる作戦と並行して、なんとか大人な関係になれるように頑張ろう。
「ご主人様、どうかしましたか?」
「ん? ああ、なんでもない。少し考え事をしていただけだよ」
「そうですか。夕日が綺麗ですから、考え事は後にしませんか?」
フェリシアに言われて、夕日を見ると、空が赤く染まっていた。一面の海に沈む夕日……これは綺麗だよね。
「確かに、凄い光景だね」
ゆっくりお湯に浸かりながら、夕日を見つめる。考えてみれば、船の施設ばかりに気を取られて、景色とかあまり気にしていなかったな。
何度か、ルト号やハイダウェイ号で景色は見ていたけど、フェリーを手に入れると、船内で満足して景色は見てなかったな。シーカー号も景色は良かったけど夕日は見てなかった。勿体ない事をしていたな。
日が沈みきるまで景色を眺め、上がってから出歩く気分ではなかったので、ルームサービスで夕食を済ませて、ベッドに倒れ込む。今日は……今日も早めの就寝だね。大人な時間を過ごそう。
………………
今日はカフェで朝食を取り、クラレッタさんから水着を受け取る。近くの部屋で水着に着替えてプールに向かう。
うーん、これは良いな。スタイル抜群、お胸も抜群の美女がビキニ姿で8人。頑張ってビキニに誘導して良かった。
「これは、結構恥ずかしいわね」
少し恥ずかしそうに赤いビキニを身につけたアレシアさん、素晴らしいです。でもイルマさんが一番凄い。
……ただでさえ妖艶なのに、黒の三角ビキニを身に着けたイルマさんは、絡みつくようなエロいオーラをまとっている。何もかも忘れて飛び付きたいな。サキュバスとかこんな感じなんだろうか?
フラフラと視線をさまよわせながらエレベーターに乗る。これは素晴らしいな。ガラス張りで船内の景色が見える素晴らしい光景も、周りにいるビキニ美女達には敵わない。このままエレベーターが止まっても良い気がする。
エレベーターは止まる事無く到着する。
「うわー、こうなってるのね。ワタルさん、あれがプールなの?」
屋上には水をたたえたプールが複数、ジップラインにロッククライミング、ミニゴルフにスポーツコート、楽しみがいっぱいだ。
「ええ、そうですよ。まずは子供用プールに行きましょうか」
……子供用プールに到着する。軽く柔軟体操をして(眼福)プールの中に入る……予想外だ、あまりにも浅い。ここで泳ぎの練習は逆に危険だ。ジラソーレに理由を説明して大人用プールに移動する。
プールの中に入ると胸元ぐらいの水深で、わざわざ子供用プールに行く必要は全くなかった。少し虚しくなってしまった。
「じゃあ皆さん水の中に入ってください。怖がらなくても足はつきますから安全です」
僕の言葉に女性陣がプールの中に入ってくる。少し緊張しているみたいだが、慣れてくると楽しそうに水を掛け合いだした。
「じゃあ、そろそろ泳ぎの練習をしましょうか」
「えっ、ああ、そうだったわね。じゃあ私からお願いするわ」
アレシアさんが立候補してくれたので、両手を握りバタ足の練習から始める。運動神経が違うんだろうな、バタ足の勢いが違う。
簡単にバタ足をマスターするアレシアさん。直ぐにドロテアさんと交代する。……イルマさんの両手を握る時は理性が飛びそうだったが、クラレッタさんがバタ足から勢いよく起き上がった時は目が釘付けになった。
「ふー、ワタルさん泳ぐのって気持ち良いですね」
「そうですね。僕も泳ぐのが大好きです。クラレッタさんが喜んでくれて嬉しいです」
「こんな遊びがあるなんて考えもしませんでした。魔物が居ないと水場も遊び場になるんですね」
ニコニコ笑顔で本当に嬉しそうに言うクラレッタさん。笑顔が眩しいです。
クロールと平泳ぎを簡単にマスターしたので、次はいよいよ背泳ぎの練習だ。仰向けに浮かんだアレシアさんの背中を支えバタ足の練習をする。視線がたわわに実った果実に集中するのは仕方がない事だと思う。
ちなみにリムとふうちゃんはプカプカと水に浮かんで漂っている。ふうちゃんの風魔法も水面では抵抗が大きすぎるのか不発のようだ。浮かんだまま僕達の近くに漂ってくると、放り投げるように思念をとばしてくる。
風の力で水面を走れたら、ホバークラフトみたいでカッコ良かったのに。ホバーなふうちゃんは魔法のスキルが上がれば見れるかも、今後に期待しよう。
午前中でクロール、平泳ぎ、背泳ぎをマスターしてしまったな。バタフライは僕ができないのでどうしようもない。問題無く泳ぎを覚えた女性陣とひとしきりプールを楽しむ。
正直楽しいな。まさかこの僕が、プールで美女と追いかけっことか……幸せです。創造神さまありがとうございます。
「ご主人様。目つきが危なくなっています気を付けてください」
「ありがとうフェリシア」
心当たりがあり過ぎる。
驚く出来事がそろそろ昼食にしようと、プールから上がった時に起こった。僕が耳に入った水を出そうと片足飛びをしていると、それを見たクラレッタさんが真似をしたのだ。
暴れて飛び出しそうになる2つのお山が……ビデオカメラを探したが別のプールのテーブルの上……なんで手の届く位置に置いておかなかったんだろう。痛恨のミスだな。
「ワタルさん、どうしたんですか?」
ビデオカメラが手元に無かったので、脳裏に刻み込もうと集中していた僕にクラレッタさんが声を掛けてきた。さすがにあなたの胸をガン見していましたとは言えない。
「お昼を何処で食べようかと考えていたんです」
「そうですね。沢山運動したのでお腹が空きました。今日は新しいお店ですか?」
ワクワクした表情で聞いてきた。クラレッタさんの後ろに気が付いたらカーラさんが居る。2人とも食べるのが大好きだからな。
「うーん、では近くにあるヘルシーメニュー&ロマンティックビス〇ロっていう店に行ってみましょうか」
名前がロマンティック過ぎるな。ヘルシーでロマンティックな事しかわからない。
「なんか凄そうですね。どんな料理か想像がつきませんけど」
クラレッタさんもそう思うよね。僕もまったくの同意見だ。
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