17話 イネスと……とシーパスカード
飲んだ事のないお酒に女性陣のテンションが上がる中、僕はイネスとフェリシアを連れて脱出しようとする。
しかし、美女とカクテルか……飲みなれて来たらカッコいい光景になりそうだな。今はこれが美味しい、あれが美味しいと騒がしく、大人な雰囲気ではないけどね。ロイヤルプロムナードにライジングタイドバーがついた時に声を掛けて降りる。
クラレッタさんだけにはしっかりお願いしておいた。お酒の時に頼りになるのはクラレッタさんだからね。ちゃんと連れて帰りますと約束してくれたので安心だ。
ついでに明日の船の見学は昼からにしておいた。僕もまったりしたいし、お酒を飲んだジラソーレも昼からの方が動きやすいだろう。一応朝食はメインダイニングで食べられる事も伝えておいた。カーラさんは朝食が無かったら辛そうだからね。
部屋に戻る途中で、フェリシアがリムを抱っこして声を掛けて来る。
「では、ご主人様。私とリムちゃんは別のお部屋で休ませて貰いますね」
「ん? ……広い部屋だから問題無い……事も無いよね。ごめんね気を使わせて」
自分がどんな行動を取るか分からないから、別の部屋に居て貰った方が安全だよね。いずれは3Pも視野に頑張りたいんだけど。
変にテンションが上がって、イネスとの初夜にフェリシアを連れて来て3P突入とかはしたくない。欲望全開にすると、とんでもない事でも何故か問題無いとか思っちゃうんだよな。
「いいえ、私の時もイネスが気を使ってくれましたから、当然の事です。ではお昼に合流しますね」
そう言ってフェリシアは別の部屋に入って行った……
「……なんか緊張して来たよ」
前回は暴走しちゃったから、今回こそ女性を労わる素敵な感じで頑張ろう。
「ふふ、そうね。でも、大丈夫よ。フェリシアに教えて貰ってるから」
……え? 不穏な言葉が聞こえたんだけど……フェリシアに何を教えて貰ったの?
「ね、ねえ、イネス、フェリシアに何を教えて貰ったの?」
……アブノーマルな事はしていないが、ちょっと恥ずかしい事は要求した事がある……
「ふふ、心配しないで。内容を聞いたわけじゃないわ。心構えみたいな事を聞いただけよ」
それならセーフだよね。まあ、いずれは2人と一緒にと考えているんだから無駄かもしれないけど。
………………
ふう、朝か……隣を見るとイネスが寝ている。予定通りに行かないものだ。結局朝まで励んでしまった。
女性を労わる素敵な感じを目指し、暴走しないように抑えていたが、まさかイネスが暴走するとは。気持ち良かったし、心の底から満足してるけど、予定とは違った。
攻められるのが、僕の性格に合っているからこそ危険だ。主導権を握れるように頑張ろう。そう心に決めて眠りにつく。
………………
目が覚めるとイネスと目が合った。
「んちゅ、おはよう、ご主人様」
「おはよう、イネス」
「ふふ、ちょっと照れるわね」
「はは、確かにね」
甘酸っぱい、甘酸っぱいよ。僕のキャラにも、イネスのキャラにも合わないから、お互い顔が赤くなる。この雰囲気は苦手だな。
「お風呂に入ろうか」
「そうね」
言葉少なくお風呂に浸かる。……でも目の前にイネスが居ると我慢できなくなる。今まで縛られていたちょっとHな事まで、という制限が無くなった事でテンションが上がってしまう。
お風呂から上がり、暫くイチャイチャしているとフェリシアが戻って来た。
「ご主人様、イネス、そろそろジラソーレの皆さんがいらっしゃいますけど、大丈夫ですか?」
「ああ、そうだった。直ぐに準備するね」
服を着ていると、楽しそうにイネスとフェリシアが話している。楽しかったとか驚いたとか聞こえて来るが明るく話しているから問題は無いだろう。何に驚いたのかは気になるけど。
服を着てジラソーレと合流する。みんな二日酔いになっていないみたいだし、クラレッタさんの頑張りのおかげだろうな。
話を聞いてみると、やっぱり大変だったみたいだ。結構酔ってしまって、もっと飲みたいと言う、お酒大好き組をカーラさんと一緒に引きずって部屋に戻ったそうだ。
お疲れ様でしたと言うと、苦笑いしながら頷かれた。否定しないという事は本当に疲れたんだろうな。
朝食はカーラさん、フェリシア、リム、ふうちゃんと一緒にメインダイニングで食べたそうだ。美味しかったとカーラさんも満足していたので、今度、僕も朝食を食べに行こう。
「皆さんお昼はどんなものが食べたいですか?」
「んー、そうね、どんなお店があるのか分からないから、ワタルさんのお勧めでお願いね」
「お勧めですか……」
どうしようかな? 日本食は夜が良いからイタリアンかハンバーガーかな? イタリアンがセントラルパークでハンバーガーはボードウォークにあるのか……
うーん、お昼だしハンバーガーの気分だな。昔からある有名なお店らしいし行ってみよう。ボードウォークの見学も楽しそうだしね。
「じゃあ、ハンバーガーを食べに行きましょうか。いまからボードウォークという場所に行きますね」
女性陣を引き連れてボードウォークに向かう。扉を開けて外に出るとメリーゴーランドが目の前に現れる。……メリーゴーランドって女性陣は喜ぶのかな?
「ワタルさん、これは何? 大きな馬の人形?」
やっぱり気になるよね。だって目立ってるもん。
「うーん、何と言えば良いのか、あの馬や馬車に乗って、グルグル回るだけなんですけど、乗ってみますか?」
「それって面白いの?」
……普段から馬や馬車に乗ってる人が面白がるとは思えないんだけど……どうなんだろう?
「子供が好む遊具ですから、皆さんが楽しめるかは分かりませんね。試しに乗ってみると良いのでは?」
「そうね、お願いするわね」
ジラソーレとイネス、フェリシア、リム、ふうちゃんをメリーゴーランドに乗せて動かす……楽しい音楽と共に上下に動きながら回り出す……
始めは動き出した事に驚いていたが、直ぐに微妙な表情になる女性陣。まあ気持ちは分かる。外から見ていてもシュールな光景だ。リムとふうちゃんは、ポヨンポヨンしたりモッチモッチしたりしているから楽しんでるだろう。
うーん8人の美女が回転木馬……なんか卑猥な感覚を覚えるのは僕だけなんだろうか?
「どうでしたか?」
戻って来たアレシアさんに聞いてみた。
「……そうね、ふしぎな体験が出来て良かったわ」
物凄く言葉を選んでいるな。他の女性陣も微妙な表情だし。まあ気持ちは分かる。おっ、リムが飛び付いて来た。
『わたる、もういっかい』
『……のる……』
やっぱり気に入ってたな。ふうちゃんももう一回乗りたいみたいだ。
「リムとふうちゃんがもう一回乗りたいそうなんで、時間を貰って良いですか」
女性陣も自分が乗らないならと頷いてくれたので、リムとふうちゃんを乗せてもう一度動かす。楽しそうだな。
「こんな風に動いていたのね。見ていると華やかで良いわね」
「そうですね。アレシアさん達が乗っているともっと華やかに見えましたよ」
「ふふ、そう?」
メリーゴーランドが止まるまで、くだらない事を話しながら時間を潰す。
『もういっかい』
『……のる……』
かなり気に入ったみたいだね。でも終わりが見えないから、ハンバーガーを食べに行こう。
「リム、ふうちゃん、今からハンバーガーを食べに行くんだよ。だからまた今度にしようね」
『はんばーがー?』
『……おいしい……?……』
「うん、昔からある、有名なお店だから美味しいと思うよ」
『たべる』
『……たべる……』
良かった。リムとふうちゃんを抱きかかえてハンバーガーを食べに向かう。しかし板張りなんだな。ボードウォークってそういう意味だったな。全然思いつかなかったよ。
メルヘン? ……子供が好きそうな雰囲気の場所を通り抜けハンバーガー屋さんに到着する。席に座ると直ぐにコイン投入口が開いた……なんでだ?
画面を確認すると、席料が取られるらしい……5銅貨か、食事は無料なのに何で席料が必要なのかな? まあ5銅貨で食べ放題なんだから安い物だろう。
……ん? 豪華客船の画面にシーパスカードってある……なんだコレ? 説明文を読んでみるとお金がチャージ出来るらしい……沢山の硬貨を持ち歩かなくて済むわけか……しかも勝手に引き落とししてくれるらしい。
わざわざシーパスカードを使わなくても、現金をそのまま持って行ってくれても良いんだけどな。それは駄目なのか。でももっと早く知りたかったな。
「あー、皆さん。シーパスカードというものがある事に今、気が付きました。ギルドカードみたいにお金を入金しておけば、この船の中なら使えるみたいです。引き落としも商品を買うと勝手にやってくれるみたいなんですけど要りますか?」
みんな必要だそうだ。硬貨って結構かさばるからな。取り敢えずカードを召喚してみる。でもどうやって入金するんだ? カードの隣にコイン投入口が……便利なんだけどなんか納得いかないな。
取り敢えず使い方を説明してカードを渡す。ジラソーレのメンバーは全員1金貨を投入していた……100万円ですよ?
何となく僕も自分とイネス、フェリシアのカードに1金貨ずつ入れて渡す。これだけ儲けてるんだし、せっかくの豪華客船だ。ボーナスがあっても良いよね。
「ご主人様。こんなに良いの?」
「ご主人様、さすがに多すぎです」
「まあ、せっかくの豪華客船だし、欲しい物も、食べたい物も沢山出て来るよ。お小遣いとは別の豪華客船購入記念だね。フェリシアは大丈夫だろうけど、イネスはカジノで直ぐに使い切らないようにね。
契約では豪華客船を思いっきり楽しむ契約だけど、カジノで大散財はどうかと思うからその金額で思いっきり楽しんでね」
イネスがカジノにハマったら制限付けておかないととんでもない事になりそうだ。契約に引っ掛かるかな? 直ぐにお金が無くなってヤバそうだったら追加も考えるか。でもその事は内緒にしておこう。
「ご主人様ありがとうございます」
「……ご主人様、1金貨なら十分楽しめると思うんだけど、直ぐに無くなるの?」
「うーん、この船のカジノがどうなのかは知らないけど、高レートがあれば意外と簡単に無くなるかな?」
「……気を付けるわ。ありがとうご主人様」
「じゃあ、そろそろ注文しましょうか。僕は、ハンバーガーとオニオンリングとポテト、炭酸飲料にします。皆さんも好きなのをドンドン頼んで下さい。席料以外はただですから」
シュンと目の前に現れるハンバーガー大きいな。ダブルを頼んでないのにパテが2枚入っている。チーズが2枚にレタスにトマト大き目のピクルス。
美味しそうだ、大口をあけてかぶりつくと、肉汁が口の中に溢れて来る。ハンバーガーのパテが肉汁たっぷりなんだな……パサついていない事に驚きを覚えるが美味しい。
濃厚なチーズと肉汁が混ざり、ピクルスと玉葱とレタスが歯ごたえとサッパリ感を味合わせてくれる。うーん、上手く言えないけど美味しい。
合間にポテトとオニオンリングをつまみ、炭酸飲料を飲む。……美味しいハンバーガーだけど、何故かマ〇ドナルドが食べたくなって来た。
テリヤキバーガーが食べたい。味としてはこのハンバーガーが上なんだけど、食べなれたあの味を思い出してしまった。
マ〇ドナルドが出店している豪華客船もあったんだよな……何百億の豪華客船をマ〇ドナルドの為に買うのは有りなんだろうか?
ふう、大きいからハンバーガー1個でもお腹に溜まるな。でも何個頼んでも値段が変わらないのなら、もう1個は食べないとな。
食べ終わっていたリムにも聞くと、まだ食べるそうなので別の種類のハンバーガーを食べる。周りを見るとカーラさんとふうちゃん以外は食べ終わっている。
カーラさんは包みの数からいって今食べてるのが5個めだな。凄いよね。カーラさんとリム、ふうちゃんが満足するのを待って店を出る。
「美味しかったわ。お腹いっぱいね。ワタルさん、次はどうするの?」
次か……お腹いっぱいだし、腹ごなしにセントラルパークで散歩して、カジノに行こう。カジノはどの位のお金を使うか決めとかないと不安だな。
イネスはギャンブルで身を持ち崩しているし、ジラソーレまで破産したら洒落にならない。ちゃんと説明しないとな。
「じゃあ、セントラルパークに行って散歩しましょうか」
「セントラルパークって昨日バーで言っていた公園ね。ゆっくり散歩するのも楽しそうだわ」
「そうですね。散歩して腹ごなしが済んだら、カジノに行きましょう」
カジノの説明をしながらセントラルパークに向かって歩く。到着する頃には腹ごなしが済んでたりして……それは無いな。
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