16話 部屋とバー
動画を撮影した後、次は宝飾品店に入る。煌びやかな店内に女性陣のテンションが上がる。冒険者でもジュエリーとか好きなんだな。……冒険者だからかも、お宝探したりするもんね。
僕は特に興味を持てないので、ふらふらしていると、腕時計が目に入る。腕時計……この世界で必要なんだろうか? 商品にしたら大儲け出来るだろうけど、わざわざ目立つ必要は無い。
今の所、会うのはジラソーレぐらいで、時間を合わせる必要も特にない……高級な腕時計はカッコいいけど、日本でも腕時計はしていなかったし……欲しいと言えば欲しい。要らないと言えばいらない……保留にしておこう。女性陣も満足したのか集まって来たので店からでる。
店を出ると日が落ちて暗くなった船内が電気とネオンで照らされている。おお、夜の方が雰囲気がでてカッコいいな。
「なにこれ、凄いわね。夜なのに明るいわ。ワタルさんに見せて貰った映画みたい。……そうよね、この船はワタルさんの世界の船なのよね」
みんな興味深げに周りを見渡している。
「そうですね。僕の世界の繁華街はこんな感じですね」
ちょっと雰囲気は違うけど。
「お腹が空きましたし。そろそろ、夕食にしましょうか?」
「そういえばそうね。珍しい物が沢山見れたから忘れていたわ」
「お腹すいた」
みんなもお腹が空いているみたいなのでメインダイニングに向かう。
「ワタルさん、何かが降りて来たわ。何? あれは何なの?」
アレシアさんに言われて見てみると、ネオンで縁取られた物体が上からゆっくり降りて来ていた。……ああ、偶に目に入っていたけどネオンが光ると更に目立つな。女性陣は今まで気が付かなかったのかな?
「えーっと、あれはですね、ライジングタイドバーだそうです。ゆっくり3階層を上下しているバーですね」
「バー! あそこでお酒が飲めるの?」
「ええ、そうですね。じゃあ暗くなりましたし、メインダイニングでご飯を食べて、今日泊まる部屋を決めてからライジングタイドバーで飲みましょうか。他の場所は明日にしましょう」
「そうね、楽しそうね。ワタルさん、ありがとう」
アレシアさんはニコニコだ。お酒大好き組もニコニコだ。お酒の予定が決まると嬉しいみたいだね。
メインダイニングに到着すると3階が吹き抜けになっていて、豪華な雰囲気だ。なんか吹き抜けとか、貧乏性の僕にしたら無駄なスペースに思えるんだけど、そう言う所も豪華なんだろうな。
このスペースに何部屋作れるんだろうとか考える僕は、まだまだ庶民なんだろう。お金は沢山あるのに、精神がお金持ちになっていないのか?
お金があるから、成金にはなったはずなんだけど……ハイソな真なるお金持ちにはどうやったらなれるんだろう? 今、考えてもしょうがないか。晩御飯を楽しもう。適当な席に座る。
「みなさん、メニューに載っているのは全て無料で、好きなだけ食べて良いですからね。あっお酒は有料です」
僕の言葉にそれぞれがメニューを開き食べてみたいメニューを頼む。頼むと目の前に瞬間移動のように料理が現れる。
「……ワタルさんサポラビちゃんを召喚するのって何かリスクはある? 魔力的な問題とか」
「えーっと、今の所、何も問題はないですね。召喚しても魔力は減りませんでしたし」
大量召喚してサポラビの暴走とかが起こらなければ問題にはならないだろう。
「じゃあ、サポラビちゃんの召喚をお願いしてもいい? 別に瞬間的に料理が来ても問題は無いんだけど、サポラビちゃんに運んでもらえたら嬉しいと思うの」
「構いませんよ。アレシアさん以外にもサポラビを召喚して欲しい人はいますか? どうせなら専属にしますよ」
クラレッタさんが素早く手をあげ、続いてドロテアさんも手を上げた。取り敢えず3体のサポラビを召喚してそれぞれの専属をお願いする。コクンと頷いたから大丈夫だろう。
アレシアさん、ドロテアさん、クラレッタさんは自分専属のサポラビの頭を撫でて、料理を頼んでいる。
「他の方達もいつでも召喚しますので必要になったら言ってください」
取り合えずいまは必要ないそうなので、ご飯に戻る。
さて、僕は何を食べようかな?
前菜はロブスターのビスクと牛テールのスープ。
サラダはシーザーサラダ。
メインは牛のフィレ肉のステーキと最高級黒毛牛サーロインの香草バター焼き。
魚料理はノルウェー産サーモンの炙り焼き。
デザートはイチゴのスフレ。
こんな感じかな? フィレ肉のステーキとサーロインステーキ……メインを2個は頼み過ぎかな? まあ良いよねタダなんだから。でも夜はイネスとムフフなんだから食べ過ぎには気を付けないとね。ちなみにリムも同じメニューだ。
頼めば直ぐに現れる料理、情緒は無いけど、まあ僕は問題無い。カーラさんも次々に料理を頼んでは平らげている。
アレシアさん、ドロテアさん、クラレッタさんはサポラビが運んでくる料理を楽しそうに待っている。もって来たら優しく頭を撫でてあげている。こちらも楽しそうだから問題無いだろう。
赤ワインを頼んで、何となく優雅な感じを意識しながら、料理を食べる……肉には赤ワインだって聞いた事があったけど正直、料理とワインのマリアージュとか、まったく分からないな。
でも美味しいから良いか。女性陣も料理が気に入ったのか、別々の料理を頼みシェアしたりしている。次は日本食だな。でもハンバーガーも食べたいな。……いや、イタリアンも捨てがたい。次に食べるお店で悩めるなんて幸せだな。
全員が満足するまで食べたので、次は泊まる部屋を確認しに行く。広く豪華な廊下を通り、目的地のロイヤルロフトスイートに到着する。
「ここが僕達が泊まる部屋、ロイヤルロフトスイートですね。見てみますか?」
「ええ、ぜひ見たいわ」
アレシアさんも興味津々だ。
「じゃあ、入りますね」
中に入ると豪華としか言えない部屋が……部屋の中にグランドピアノがある……意味があるのか? 金持ちは全員ピアノが弾けるのか?
……もしかしてピアニストが呼べるとか? 部屋専用のピアニストが演奏に来て。泊り客の為の専用ステージ……良いかどうかは分からないがゴージャスだな。
大きなL字ソファーにマッサージ台? 大きなテレビ。豪華なインテリア。凄い。
「階段を上ってみましょうか」
ロフトに登ってみるとダブルベットがある。ん? あれは? 下ろしてみるとスクリーンが……プロジェクターで映画が観れるのか。奥に進むとトイレとシャワー、そしてジャグジー。
「ワタルさん、これってハイダウェイ号やシーカー号に付いている泡が出るお風呂よね? 凄いわ個人の部屋に付いているのね」
「ええ、僕にも予想外ですよアレシアさん。本当に凄いですね。泊まるのが楽しみです」
ロフトから下りて、バルコニーに出てみる。ソファーがおかれ、L字のデッキの奥に進むと、ジャグジーがある……
「ワタルさん、もう一つあるわね?」
「アレシアさん、もう一つありますね」
「景色を見ながら入る為にもう一つ付けたのかしら?」
「おそらく……」
「凄い部屋ね」
「凄い部屋ですね」
部屋にジャグジーが2つ。こういう所が豪華客船なんだな。一通り部屋を見て回ったので、ジラソーレが泊まる部屋に案内する。
「ここはロイヤルスイートですね」
豪華な部屋を一通り見て回る。
「この部屋の中のお風呂は普通ですけど、バルコニーのお風呂はジャグジーでしたね」
「ええ、楽しみね。でもこのジャグジーは丸いのね、初めてのタイプで楽しみだわ」
「そうですね。アレシアさん、僕も入りに来ても良いですか」
「ふふ、良いけど湯着は着て来てね」
おお、湯着を着ずに来る方法もあったのか、止められちゃったけど。
「じゃあ次の部屋に行きますね」
「ワタルさん、私達ならこの部屋で全員泊まれるわよ?」
「んー、この部屋は5人部屋ですし、他に部屋があまり過ぎるほど余っていますから、確認しておきましょう」
「確かにそうね、大きな船だものね」
アレシアさんも納得してくれた。だって部屋が有り余ってるんだもん。1人1部屋でも余りまくりだよね。
「ええ、5400人泊まれるんですよ。大きすぎると思いませんか?」
「ふふ、その事を分かっていて船を買ったのよね」
「まあそうなんですけどね。そういう訳で、次を見に行きましょう」
「分かったわ」
次の部屋に向かい歩く。次の部屋はどうなんだろう? 14人泊まれる部屋らしいんだけど……
「ここがプレジデンシャルファミリースイートです」
豪華な部屋を一通り見て回る。
「……凄いけど広すぎるわね」
「アレシアさん、広すぎる部屋を1人で使うから贅沢なのかもしれませんよ?」
「うーん、誰か1人で泊まってみる?」
女性陣は全員首を横に振る……ジラソーレも庶民仲間だね。大金持ちはこの部屋でも平気で使うんだろうな。あっ、大金持ちは1人で泊まったりしないか。妻、愛人、美人秘書……妬ましいな。
その後、スカイロフトスイート、アクアシアタースイートを見てまわった。ロイヤルスイート、スカイロフトスイート、アクアシアタースイートに寂しいからそれぞれ2人ずつ泊まる事になった。
取り合えず部屋が決まったのでライジングタイドバーに向かってお酒を飲む事になった。後はイネスがお酒に夢中になってムフフな事を忘れないかが心配だ。大丈夫だよね?
ライジングダイトバーに到着して、ちょうど降りて来たので乗り込む。女性陣は座らずに再び動き出すのを待っている。動き出すと喜びの声があがる……エレベーターもエスカレーターも乗った事があるのに……まあ雰囲気が違うか。
ようやく落ち着いたので皆で座って、お酒を頼む。
「ワタルさん、どんなお酒があるの?」
「うーん、そうですね。種類が多いのでメニューを見て、シェアしながら飲んだ方が良いかもしれませんね。色々楽しみたいですよね?」
飲み方としては邪道だけど、異世界だし良いよね? マティーニとかカパカパいかれたら洒落にならん。急性アルコール中毒とか勘弁して欲しい。
「ふふ、そんなに種類があるの? 全部飲めるのかしら?」
全部って、アレシアさん明日、起きれなくなりますよ?
「カクテルは飲みやすいですが、強いお酒を使っている場合が意外と多いので気を付けてくださいね」
言っても止まらない気がするけど、強くて飲みやすいお酒か……酔っぱらってラッキースケベが増えそうだな。イネスとの夜が無ければ、ここで強いお酒を出しまくるな。
まあ有名どころしか知らないんだけどね。そして僕はカルーアミルクが好きです。お子様ですいません。
「サポラビも召喚しておきますね」
取り合えず2体のサポラビを召喚する。衣装がバーテンダーになっている。あの体形でシェーカーが振れるのかな? 取り敢えず今日は酔いたくないのでカルーアミルクを頼んでみる。
シュンとサポラビのトレイの上にカルーアミルクが現れサポラビが運んで来る……サポラビが作るんじゃないんだ……
女性陣はそれぞれ違うカクテルを頼み、シェアしながら飲みだした。8人いると色々な種類がドンドン運ばれてくる。
そう言えばちゃんとしたバーって2回しか行った事が無いな。居酒屋がお似合いな僕には、聞いた事はあるけど見た事が無いお酒が運ばれて行く。
そう言えば僕が行った店ってメニューが無くて、どんなものが飲みたいですか? とか聞かれたんだよな。メニューが無いバーって普通なのかな? 凄く雰囲気が良くてお酒も美味しかったけど……
あっ、ピンクレディーって本当にピンクなんだな。たしかかなり強いって聞いた事があったんだけど、大丈夫かな?
僕でも知っているマティーニとかマルガリータだけじゃなく、聞いた事のないカクテルも注文され運ばれて行く。イネス大丈夫かな? 後1杯飲んだら早めに出よう。僕は……アイリッシュコーヒーにしよう。
「わあ、凄いわ、ワタルさん。なんで船の中に木があるの?」
ん? 木? ああ、セントラルパークか、そう言えばこのバーが上下を移動しているのを忘れてた。アレシアさんはお酒に夢中だと思ってたんだけど、周りもちゃんと見ているんだな。
「ここはセントラルパークですね。船内にある公園です。美味しいレストランとかカフェもあって楽しい場所みたいですよ。明日来てみましょう」
「うふふふふ、キャッスル号は楽しい所がいっぱいね。楽しいわ」
アレシアさん、笑い方がいつもと違うもう既に酔って来てるのか? アイリッシュコーヒーも飲み終わったし、お先に失礼しよう。問題は自然に帰れるかだな……僕にそんな芸当は無理だ。普通に帰ろう。
イネスとの関係まで書きたかったのですが間に合いませんでした。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。