14話 ロイヤルプロムナードとお店
いよいよ豪華客船の船内に入ります。豪華客船……乗った事が無いのでネットで調べた事と想像で書きます。心配ですが何とか頑張りますのでよろしくお願いします。
オア〇ス・オブ・ザ・シーズ……全長360メートル、全幅64メートル、全高65メートル、まるでお城だな。いやお城と言うより優雅な感じだから宮殿かな?
宮殿なら僕は国王様だね。家臣は居ないけど。名前はパレス号で良いか……名前がSランク冒険者のパリスと一文字違いか……なんか嫌だな、キャッスル号にしよう。
唖然としている女性陣に声を掛ける。
「皆さん物凄く驚きましたか?」
僕の言葉に女性陣が反応する。
「え、ええ、物凄く驚いたわ。冗談で山みたいな船って話していたんだけど、想像以上だったわ」
おお、中の施設を見せる前に決着がついた。フェリーで大きな船に耐性が出来てるかと思ったけど、想像を超える大きさだったみたいだ。よし、褒めて貰おう。このまま船内を案内すると忘れられる可能性が高いからな。
「では、物凄く褒めてください」
アレシアさん達が僕の言葉に約束を思い出す。
「ちょ、ちょっと待ってね」
「どうするの?」「イルマ、本当にするの?」「少し恥ずかしい」「約束したし、私達、物凄く驚いたわよね?」「私、平気」「良いんでしょうか?」
微妙に聞こえるジラソーレの話し合いに期待感が高まる。どんな風に褒めてくれるのかな?
「分かったわ。ワタルさんこっちに来て」
おお、いよいよだ。少し赤い顔をしたアレシアさんの前に立つ。
「じゃあ、順番に褒めるわね。……す、凄いわワタルさん、あんな船初めて見たわ」
少しどもりながら、褒めた後、ほっぺにチューをしてくれた。おお、なんだ? 初々しい、これはこれで有りだな。褒める事とほっぺにチューの関連性が分からないけど、イルマさんが上手に話を持っていってくれたんだろう。
次々と誉め言葉と同時に、ほっぺにチューをしてくれる。ドロテアさんは真面目に、マリーナさんはふうちゃんを頭に乗せたまま無表情で、カーラさんは笑顔でムチュっと、クラレッタさんは物凄く赤い顔でしてくれた。
最後のイルマさんは、初心な子達でごめんね、でも楽しんでくれた? と言いながら口の真横にムチュっとしてくれた。
イルマさんは味方だ。まあ、裏に隠されている思惑も気になるけど、貴重な味方だ。初心なメンバーを上手に誘導してくれている。後で付け届けをしておかないと。
しかし照れる巨乳美女達からのほっぺにチューか……Hな事をするのとはまた違う、嬉し恥ずかしの、淡い感覚が意外と萌える。イルマさん恐るべし。
「凄く嬉しいです。船内を見てもう一度物凄く驚いたら、もう一回お願いします」
船内でも相当驚くはずだ、上手くいけばもう一回、今のプレイが楽しめるかも。
「駄目よ、イルマに乗せられたけど相当恥ずかしかったわ。それによく考えたら褒めるのに、ほっぺにチューする意味が分からないわ」
真っ赤な顔で拒否された。意味が無い事に気が付いてしまったらしい。でもほっぺにチューぐらいで真っ赤になるってどんな生活を送っていたんだろう?
たしかパーティーを組んでから男の冒険者を撃退し続けてきたんだよな。見事に拗らせてるのか。
「そうですか? でもほっぺにチューして貰えてとても嬉しかったですよ? 褒められた事になると思いますけど」
「……それでも駄目」
「残念ですが、しょうがないですね。船内に入りましょうか」
僕では上手に説得できないらしい。イルマさんはどうやって納得させたのか不思議だな。キャッスル号を送還、再召喚して皆に許可を出してロイヤルプロムナードに出るように念じて魔法陣に飛び乗る。
「凄いな、商店街みたいだ」
豪華客船に乗っての第一声が何となく生活感あふれる言葉で、自分でも残念だ。でも両サイドにお店が並んでいて、そんな感覚になってしまったのだからしょうがないと思う。
画面にはニューヨークの街並みを再現したって書いてあったけど、ニューヨークとか行った事無いし、分かんないよね。
広い空間に存在するのは僕達だけ、微妙に怖いな。音楽が流れているから、まだマシだけど一人でいたら寂しそうだ。
「ワタルさん、ここって船の中なの? 見た事無い物が沢山。凄いわ。よく分からないけど凄いわね」
アレシアさんも、他の女性陣も少し混乱気味のようだ。体験した事が無い雰囲気に興奮しているみたいだ。
「アレシアさん、落ち着いてください。ここは船の中でロイヤルプロムナードという場所です。両サイドはお店で、売っている物が買えますよ。まずはそこのカフェでお茶と、ケーキでも食べて落ち着きましょう。その後ゆっくり見て回りますね」
「ケーキですか。ワタルさん早く行きましょう」
クラレッタさんに火がついてしまった。そういえばケーキに興味津々だったよね。他の女性陣も甘い物は好きなので、問題無くカフェの中に入る。
中には沢山のケーキが並べられていて、自分で取れるみたいだ。
「ワタルさん、凄いです。フォートレス号やストロングホールド号にもないケーキが沢山あります。お幾らなんでしょう? 全部食べたいです」
クラレッタさんが暴走している。珍しいな。普通の服を着ているのにプルンプルンのタプンタプンで僕の方も暴走しそうだ。
「えーっと、このお店は無料みたいですね」
「無料? こんなに凄いのに無料なんですか?」
「ええ、この船は高いお金を払って乗る船なんです。ですから、特別に料金が設定されている店以外はただの場所が多いんですよ。取り敢えずケーキを取ってお茶を頼んでから、席に着いて話しましょう」
取り敢えずコーヒーはカウンターで言ってみると、瞬間移動したみたいに出て来た。ストロングホールド号と同じシステムか?
「美味しい。このケーキ美味しいですよワタルさん」
満面の笑顔のクラレッタさん素敵です。
「クラレッタ、ここには落ち着く為に来たのよ。興奮したら駄目でしょ」
「あっ、そうでしたね。ドロテア、ありがとう」
「それでワタルさん、先ほどの説明の続きをお願い出来ますか?」
珍しいな。アレシアさんが居る時は、あまり会話に参加しないのに。疑問に思ってアレシアさんを見てみると、カーラさんと一緒に夢中でケーキを頬張っている。……納得しました。
「分かりました。ケーキは食べながらでも良いので、話を聞いていてくださいね」
僕の言葉に女性陣が全員頷いたので問題無いだろう。
「先ほども言ったように、高いお金を払って乗船するので、基本的な食事や、娯楽は無料になっています。まあ、買い物や、カジノ、無料のお店の中でも、特別なメニューは有料だったりしますけどね」
無料と聞いて女性陣の目が怪しく光る……Aランク冒険者でも無料には食い付くんだな。
「皆さん。いくら無料でも、フォートレス号で注意したように、暴飲暴食をしていたらこの船自体に出入り禁止にしますからね。
この船には、フェリーと違って僕の世界のあらゆる所のお酒が集まっていると思います。お酒を飲むお店も沢山あります。カクテルもありますから、種類は数えきれませんよ。節度を持たないと全部を楽しむ前に出入り禁止ですね」
「わ、分かったわ。十分に気を付けるから。いきなり出入り禁止にするのは止めてね」
アレシアさんと酒飲み組がすがるような表情で僕を見て来る。基本的に僕は性的な嗜好はMだと思っていたが、少しSのけもあるかもしれない。すがるような視線にゾクッとした喜びを覚えてしまった。
異世界に来て性格がまともな成長をせずに、危ない方向に成長している気がする。
「ええ、大丈夫ですよ。無茶な事をしなければそんな事はしません。カーラさんお酒だけじゃないですからね。この船には美味しい物が沢山ありますが、食べ過ぎていたら、出入り禁止ですからね」
われ関せずでケーキを食べていたカーラさんがショックを受けたようにこっちを見て来る。可愛い。
「ええ、前回の話し合いの通り、暴飲暴食はしないように心がけます。ですがワタルさん、私達は高いお金を払って乗船していませんが良いのですか?」
ドロテアさんは冷静だな。とても助かる。
「はい。僕がこの船のオーナーですし問題無いと思いますよ。もし他の人達を乗せる事になったら高い料金を頂きますけど。ジラソーレの皆さんからわざわざお金は取りませんよ。一緒にこの船を楽しんで貰えれば僕も嬉しいですしね」
僕達は仲良しだよねアピール、成功か?
「ふふ、ありがとうございます」
ドロテアさんの優しい微笑み……たぶん成功? 少なくともマイナスにはなってないよね。
「まあ、そういう訳なので、色々見て回りましょう。たぶん、皆さんが知らない物も沢山ありますから、面白いはずですよ。一気に見て回るには広すぎますから、のんびり時間を掛けて見て回りましょう」
「そんなに広いんですか?」
「見るだけなら、そこまで時間は掛からないと思いますが、楽しい物が多いので、説明したり体験したりしていると、時間が掛かりますね」
「ああ、そうですね。このお店だけでもじっくり楽しめば時間が掛かりますね。私もゆっくりこのお店でお菓子を楽しみたいですし」
ドロテアさんも落ち着いて話しているけど、ケーキは3個めなんだよね。がっついているように見えないのに、自然な形で素早くケーキを食べている。ある意味凄い能力だ。スキルか?
「沢山の種類がありますからね」
話しているとコーヒーが無くなった。カウンターに注文しに行こうと思ったがサポートスタッフの事を思い出したので試してみる事にした。
「みなさん、ちょっと新しい能力を試してみるので、驚かないでくださいね」
「新しい能力? どんな物なの?」
アレシアさんが食い付いて来た。いくつかケーキを食べて落ち着いたらしい。
「なんて言えば良いのか。この広い船内での作業をサポートしてくれる存在を召喚できるらしいです」
しかも僕が好きなのに変更されているらしい。巨乳美女は燃える。スライムなら萌える。どっちだろう? ドキドキする。
「サポート? 私達を警備員に任命したのとは違うの?」
「ええ、スタッフ任命は任命すると仕事が熟せるんですが、サポートは最低限の仕事しか出来ないらしいです。まずは召喚してみますね」
「ええ」
カフェの従業員としてサポートスタッフを召喚する。光の魔法陣が目の前に出現してそこから現れたのは……角兎? 大きくなってぬいぐるみっぽくデフォルメされて、ずんぐりむっくりで、頭には小さな角がついている角兎らしき存在が出現した。
格好はウェイターの格好をしており、銀色の丸いトレーも持っている。拘ってるな。
違う。違うよ創造神様。僕が好きなのは巨乳美人かスライムだよ。今まで僕を見てたら分かるよね。角兎は儲かるから好んで狩っていただけで、好きな訳じゃないよ。
どちらかと言うと、虐殺していたから復讐されそうで怖いです。創造神様お願いします。変更してください。バルレッタの大聖堂まで行かないと駄目か?
角兎って異世界に来て西方都市を出るまでしか狩ってないよ。なんで角兎を選んだの? 丸焼きを美味しそうに食べてたからか? 食材としての好きな物に変えたのか?
巨乳美女が無理だったとしても、角兎が出来るのならスライムも可能なはずだよね。
「あら、可愛いわね。角兎? 魔物なのは不思議だけど危険は無いのよね?」
可愛いですか? 僕には目に恨みがこもっているように見えます。被害妄想なのかな?
「危険は無いと思います。召喚した場所の仕事を最低限出来るだけですから」
たぶん……
「まあ、仕事を頼んでみますね。ウェイターさん、コーヒーのお代わりをお願いします」
コクンと頷くと 空になったコーヒーカップを手に取り奥に入って行った。食器も持って行くのかストロングホールド号の食堂と同じなら食器は勝手に消えるはずなんだが……色々試してみないとな。
女性陣は角兎のウェイターが気に入ったようで可愛い、可愛いと騒いでいる。角兎は襲い掛かって来る魔物でジラソーレも討伐した事があるはずなのに、デフォルメされたら別物なのか?
角兎のウェイターが戻って来て、僕の前にコーヒーを置く。毒とか入ってないよね? ありがとうと言うとコクンと頷いてさがろうとする。
「キャー可愛い」
アレシアさんとクラレッタさんが我慢できなかったのか、角兎のウェイターに抱き着いてモフモフしだした。まあ、クラレッタさんもぬいぐるみが好きだからな。
角兎のウェイターは、なされるがままにモフられている。羨ましい。コーヒーを飲んでみると普通のコーヒーだった。さすがに被害妄想だったか。
でもなー。僕にモフり属性は無いんだよな。スベスベプルプルの方が断然良いよね。取って来たケーキを一心不乱に食べているリムをなでる。
『わたる?』
「ああ、何でもないよ。美味しい?」
『うん』
「そう、良かったね」
『うん』
再びケーキに夢中になるリムを見ながら、角兎よりスライムの方が可愛いと確信する。あれ? サポートスタッフが角兎なら、ミュージカルとか舞台とか角兎がやるの? キャッツとかを角兎がやるの? 違和感だらけだよ。
まあ、舞台で試してみるか。今はこれからの豪華客船の見学ルートを考えるか。まだ一軒目なんだよな。全部見終わるのはいつになるんだ?
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。