11話 温泉の可能性と休日
ダークエルフの村の様子を見ながら、僕はジラソーレが知りたがっていた、この島の探索状況を村長さんに聞く事にした。あっフェリシアはセシリアさんのお手伝いに行ってもらった。村長さんが少し残念そうにしているのが印象的だな。
「この島の探索状況ですか?」
「はい、彼女達は冒険者ですから、未開の地があると気になってしまうんですよね。島の状況を教えて貰えれば助かります」
「なるほど、冒険ですか……村の若者達も探索に出る者は楽しそうにしてますからな、気持ちは分かります。ただ、人数が少ないので、大きな範囲は探索出来ていません。その情報で構いませんかな?」
「ええ、十分です。未開の場所が多いほど彼女達は喜びますよ。探索されていない場所に向かう為に探索されている場所が知りたいだけですから」
ジラソーレは僕の言葉に頷いている。ワクワクが止まらないって感じだな。
「そうですか、分かりました。今の所の探索範囲はここから山までの森を重点的に探索しています。ですので山の反対側は殆ど探索していません。
魔物はスライム、角兎、ゴブリンぐらいですね。動植物も豊富で森の中はゴブリンが多いようです。数が多いので少しずつ間引いています。
ああ、それと山の裏側に卵が腐った匂いがする場所があるそうなので、気を付けてください。キツイ匂いが常に立ち込めているそうです」
……山……卵の腐った匂い……それって硫黄かな? 温泉? もしかして温泉? なにそれ、頑張ってる僕に創造神様がご褒美をくれたの? 発見した島は魔物も弱く、温泉も湧いている最高の島でした。最高のご都合主義だな。
「村長さん、その卵の腐った匂いがする場所は何処らへんですか? 無理なく近づけますか?」
「えっ? ええ、山の裏側の、中腹より少し下だとは聞いています。匂いが漂って来るそうなので直ぐに分かると思います」
「そうですか。ありがとうございます」
どうする? 今から行くか? いや今回滞在できるのはあと2日程度、どうせ行くのなら準備を整えてじっくり楽しみたい。いや、そもそも温泉って毒ガスとか出てる場合があるんだっけ?
あとお湯の温度も高すぎたり低すぎたりする場合があった気がする。お湯の量も心配だな。調査だけでも時間が掛かりそうだ。うーん、でも、自由に出歩ける島で、温泉が出る可能性があるのなら頑張るべきだろう。
何がどうなれば温泉が満喫できるんだ? お湯が出ていたら入っても大丈夫なのかパッチテストだっけ? そんな事もしないと駄目だろうし。
匂いのする場所は山の途中にあるんだったな。ハイダウェイ号を召喚できるスペースは難しそうだね。魔法を撃ち込んで、地面を平らにして貰うか。そこにハイダウェイ号を召喚して、じっくり温泉を調べるようにしよう。
「あの、ワタルさんはどうしたんでしょう? 何かおかしな事を言ってしまいましたかな?」
「ご主人様が真剣に考えているから、悪い話ではないと思うわ。何か面白い事を思いついたのかもしれないわね」
村長さんとイネスが話している、少し考え込んじゃったかな? 今から行くのは無理なんだから後でじっくり考えるか。豪華客船に温泉か……忙しくなって来たな。
「卵が腐った匂いに心当たりがあっただけですよ。今度調べてみますね」
「そうだったんですか。探索する者には近づかないように通達を出していたんですが、危険は無いのですかな?」
「うーん、僕が思っている物なら大丈夫だと思うんですが、危険な場合もあるので僕が調べるまで近づかないで貰えますか? 僕ならある程度確認できるはずですから」
「分かりました。よろしくお願いします」
取り合えず、温泉の事は後で考える事にして、村の様子を見て回り、フェリシアと合流する。
「セシリアさんこんにちは」
「ワタルさんこんにちは。フェリシアと話す時間をくれてありがとう」
「いえ、気にしないでください。それより村の人数が増えてどうですか?」
「そうね、新しい歌も教え合ったり、とても楽しいわ。村の中も賑やかになったし言う事なしね」
女性の間でも軋轢は無いみたいだな。人数が増えると揉め事が起こるイメージだったけど、人間とダークエルフの違いかな?
暫く村の様子や、フェリシアの事を話したりと雑談して、今日の夜から明後日の朝まで島を離れる事を伝えてからシーカー号に戻る。
「ワタルさん、どうして島を離れるの?」
アレシアさんが不思議そうに聞いて来る。3日ダークエルフの島に滞在するって言ってたから不思議だよね。
「それはですね、この前どの船に乗り換えるか聞いたじゃないですか。その時みんなの意見がバラバラだったので、フォートレス号とストロングホールド号とシーカー号を並べて召喚して、お休みにしようかなって考えたんですよ。どう思いますか?」
「ふふ、それは楽しそうね。好きなように行き来できるのよね?」
「ええ、チケットは必要ですけどね。気分で好きに行動できるのも楽しそうですよね?」
「ええ、そうね。面白そうね。お酒もフォートレス号とストロングホールド号では違うし、その時の気分で船を移るのは良いわね」
アレシアさん、飲む気満々なんですね。
「飲むのは良いですけど、飲み過ぎないでくださいね。特に船と船を移動する時に海に落ちたりしないように注意してください」
「あはは、さすがにそんな間抜けな事はしないわよ」
船と船の移動ではないけど、酔っぱらってガードレールに座って、ふらついて海に落ちて、更には異世界まで落ちて来た人間が目の前にいます。恥ずかしいから言わないけど。
「はは、でも酔っぱらうと思わぬミスをする時がありますから注意してくださいね」
「ふふ、分かったわ」
「イネスとフェリシアもお休みにするから、自由にして良いよ。お小遣いも後で渡すね」
「うふふ、ありがとう、ご主人様」
「ありがとうございます、ご主人様」
「あっ、でもフェリシアは村に残った方が良いかな? お休みの間は好きにして良いよ?」
「いえ、母とも十分に話せましたし、大丈夫です。私も船で楽しませて頂きます」
村長さんとは十分話せてないと思うんだけど……突っ込まない方が良いのかな?
「そう、分かったよ。じゃあ、外海に出てから船を召喚したら、明後日の朝までお休みです。のんびりリフレッシュしましょう」
僕の言葉に、嬉しそうに計画を立て始める女性陣。……キャイキャイと楽しそうなのは良いんだけど、女性陣の半数近くが、どの順番でお酒を飲むか話し合っているのはどうかと思うな。
フォートレス号の自販機コーナーで軽く飲んで睡眠。起きたらストロングホールド号の朝食バイキングを食べながら飲んで、昼からは……
休みの間、飲みまくるつもりだ。まあ、お休みなんだから僕が口出しする必要も無いか。酔っぱらってる彼女達とのラッキースケベを念頭に行動しよう。
「ご主人様、リムちゃんは私達がお預かりしましょうか?」
「ん? いや大丈夫。途中でちょこちょこ頼むかもしれないけど、せっかくのお休みだから、リムとゆっくりするつもりだから」
『あそぶ?』
「そうだよ、一緒に沢山遊ぼうね」
『いっしょ、たくさん』
「うん、沢山だよ」
リムも楽しみなのか、ポヨンポヨンと僕の周りを跳ねている。ふうちゃんも合流して僕の周りを跳ねている……鼻血が出そうです。
「分かりました、私達もリムちゃんと遊べたら嬉しいので、いつでも大丈夫です」
「そう? まあ、その時はお願いね」
船を走らせ外海に出てから、シーカー号、ストロングホールド号、フォートレス号の順番で並べて召喚する。真ん中にストロングホールド号を置いたのは、基本的にストロングホールド号で映画三昧をする予定だからだ。
豪華客船が手に入ったら、映画は豪華客船で見る事になりそうだからな。今の内にしっかりストロングホールド号でも映画を楽しんでおこう。
船を並べて歩き回るのは意外と楽しい。日本にいた頃の体力だと移動しないで引き籠ってた気もするけど、レベルアップした体力なら何の問題も無い。ひたすら遊ぼう! ……普段の生活とあまり変わらない気もするけどね。
僕達は思い思いに休暇を楽しんだ。
お酒大好き組。
アレシアさん、マリーナさん、イルマさん、イネス。この4人は休みの間、基本的に自販機コーナーを根城にしていた。ただ飲んで、気が向いたら、好きなツマミがある売店や食堂に行って買い物をする。
……ただただ、お酒を飲んでツマミを食べる。……なんかお酒が大好きなおっさんの集まりと変わらない気がする。でも楽しそうに話しながら、騒いでいるので良いんだろう。夜になったら他のメンバーも合流して華やかだったな。
でも、酔っぱらっているのに、ガレット号を操船したいと言い出したのは、困った。さすがに酔っぱらった操船大好き組がパワーボートで爆走するのは怖すぎるので、召喚枠を理由に断った。
ドロテアさん、フェリシア。
探索が好きなのか全ての船を行き来しながら、船を見比べたり、普段使用しない部屋を利用してみたりしていたそうだ。イキイキしていたので結構楽しいみたいだ。2人とも話が合うみたいで仲良く移動している。褐色巨乳美女2人のデート……萌える。
カーラさん。
各種バイキングを楽しみ、売店と食堂を行き来していた。食べ物のある場所を通ると高確率で出会う。ある意味探しやすい人だ。
クラレッタさん。
この機会に、フォートレス号とストロングホールド号のぬいぐるみ部屋を統合するそうだ。楽しそうにぬいぐるみをストロングホールド号の自室に運び、配置を考えている。楽しそうだから良いのだろう。
僕、リム、ふうちゃん組。
ふうちゃんはマリーナさんがお酒を飲みだしたあたりで合流して来た。リムとふうちゃんと過ごす休日。楽しかった。欲に塗れた心が浄化されそうな1日だったな。
予定通りストロングホールド号で映画を観て、観終わるとストロングホールド号のキッズコーナーにリムとふうちゃんを連れて行く。
小さなボールが集まったプールやプラスチックの滑り台とジャングルジム。初めて中に入ったリムとふうちゃんは興味津々で部屋の中を動き回る。
可愛い。ボールのプールにポヨンと飛び込み、高さが足りないと思ったのか、僕の頭の上に登り、そこからボールプールにダイブする。気に入ったのかリムとふうちゃんが交互に僕に登り飛び込んで行く。
ジャンプ台にされてしまったが、これはこれで良いな。滑り台は滑ると言うより転がり落ちているが、楽しいらしい、ジャングルジムでのリムとふうちゃんの追いかけっこはとても可愛かった。
映画⇒ご飯⇒映画⇒お風呂⇒映画⇒宴会
映画を挟んで一日を満喫する。お風呂はシーカー号の展望ジャグジーでリムとふうちゃんと遊んでいると、ドロテアさんとフェリシアがやって来た。
なかなかいいタイミングだったみたいだ。2人の褐色巨乳美女とのお風呂。普段と違うエキゾチックな雰囲気漂うお風呂だ。まあ、ドロテアさんはリムとふうちゃんを抱きしめてご満悦で、色っぽい展開には全くならなかったけど……
夜には全員で集まって宴会。酔っぱらったイルマさんの隣をキープしていたが前回のような幸運には恵まれなかった。
クラレッタさんが目の前にいる時に、うっかりつまずいて豊かな胸の谷間に顔を突っ込むとか考えたんだけど、実行できなかった。お酒の力が足りなかった。もう少し飲んでれば実行できたかもしれないのに。結局ビビッて無理だった気もするけど。
クラレッタさんなら笑って許してくれそうだと思うんだけど、怒ったクラレッタさんは怖いからな……
女性陣も今回の休日は楽しかったらしく笑顔でお礼を言われた。ちょっと飲み過ぎで辛そうな人も居たけど……僕の好感度は順調に上がっているはずだ。
休暇を終えて、ダークエルフの島に顔を出す。村長さん達と話して、何か足りない物が無いかと聞いてみたが物資は十分らしい。まあ、温泉の可能性を確かめたいから直ぐに来るだろうし、次の機会でも大丈夫だろう。
まずは南方都市に戻って胡椒の代金を受け取ってからだな。温泉を確かめるのが先か、豪華客船を楽しむのが先か、悩みどころだよね。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。