11話 冒険者パーティーと今後の計画
街の観光を早めに切り上げ、今後の事を考える為に宿に戻る。
「おかえりなさい。今日は早いんですね」
普段と違う帰宅時間に、女将さんが少し驚いている。この様子を見ると、働き過ぎだったんだと自覚できるな。まあ、神様に発破をかけられちゃったし、休みを考えつつも頑張らないとな。
「ただいま。今日はちょっとお休みにしたんです。部屋でゆっくりしていますね」
「あら、お休みですか。ゆっくり休んでくださいね。夕食はどうされます?」
「えーっと、6の鐘頃にお願いします」
「かしこまりました」
女将さんと別れて自分の部屋に戻る。さて、創造神様に頑張りますって言っちゃったし、さすがに真面目に考えないと、下手したら天罰とか落とされそうだ。
まず、教えてもらった情報の整理をしよう。
船召喚の魔法陣の上に乗る事ができる。
魔法陣の上に乗ると、船内の望んだ位置に移動できる。これ地味に便利だよね。
船召喚は船を買っていたらレベルが上がる。
船召喚のレベルが上がると目立つのも何とかなるらしい、何とかが不安だ。
船が送還されている間は、船に積んである荷物も時間が止まっている。
乗船拒否の力はドラゴンブレスも楽々弾き返す。完全にチートもらってました。それでゴブリンから逃げてたら怒るよね。
船召喚で船に出店している店と施設は使えるが、ネットとテレビは駄目。和食が食べられる、DVDでアニメが見れる、映画館で映画も見れる。これが1番大事な情報だな、フェリーや豪華客船の店舗と施設を調べないとな。
以上だな。この情報を考えると豪華客船までたどり着きたい。豪華客船までたどり着くには、大金を稼がないと駄目だ。その為には冒険者で荒稼ぎか、商人で大成功くらいしか思いつかない。
あっ、国に能力を売り込んで、資金を出してもらうって方法もあるな。上手く売り込めばすぐに豪華客船が買えそうだけど、しがらみや暗殺、いろんな危険がいっぱいありそうで却下だな。絶対沈まない船とか、戦争一直線っぽい。
となると冒険者か商人か、冒険者はどうだ? 船さえ出してれば防御面はほぼ無敵。でも、陸地を移動中が紙装甲、攻撃力がほぼない。今のところ攻撃できるのってオールくらいだよね。魔物を倒す力がないのは冒険者としてかなりの問題な気がする。
攻撃力の高い冒険者を仲間にして、攻撃を全部まかせる。人を見る目がないのが問題だな、上手く行けばいいが、下手にバレたら利用されまくりそうな能力だから心配過ぎる。
テンプレ通りに奴隷がいれば問題は解決するが……どうせ奴隷を買うならごつい戦闘奴隷を買うより、色っぽい綺麗なお姉さんを買って、ひたすら甘やかして欲しい。とりあえず奴隷が存在するのか? いくらくらいなのか調べよう。
商人はどうだ? 能力的には商人向きだよね。店より貿易って感じだけど、沈まない船ってどう考えても有利だし、国と国を往復して儲かるルートが見つかれば延々とノーリスクで稼げる。
問題は船を買う資金だな。モーターボートは買えるが、貿易となると最低でも漁船はほしい。
いずれは南方都市に行きたいが。いきなり南方都市に向かって、到着してすぐに資金稼ぎができるか分からない。それに最低限、旅に出て目的地にたどり着く為の実力も必要だ。
ここで角兎を狩りながら、漁船が買える資金を貯める。3~4ヶ月で資金は貯まりそうだけど、その前に天罰が落ちてきそうだな。
まずは情報収集が必要だ。冒険者の事、南方都市の事、奴隷の事を調べよう。角兎だけ狩っているだけでは駄目だから、森にも入らないと駄目だろうな。あっ、南西の森の事も調べないと。
「カラーン、カラーン」6の鐘が鳴った。食堂にいくか。
食堂に行けば冒険者のパーティーくらいいるだろう、話を聞いてみるか。
食堂に行くと、予想通り冒険者達がご飯を食べている。たしかゴブリン討伐依頼を主に受けていて、オークに挑戦したいって言ってたよな。偶に挨拶をかわす程度だが、知り合いは知り合いだ。声をかけてみよう。
「こんばんは。お食事、ご一緒してもいいですか?」
「ん? 別に構わないが、めずらしいな。いつも1人で食ってるのに」
「あはは、南西の森の事が知りたくなってですね、お話をお聞きできればと。今更ですが、ワタルって言います、よろしくお願いします」
「そういえば名乗ってなかったな。俺がリーダーのアルドだ、そっちの2人が剣士のクレートとガイウスで、槍持ってるのがシスモンドで弓持ってんのがオルソだ。よろしくな」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
店員さんがきたので、今日のお勧めと冒険者達にエールを頼む。
「悪いな、南西の森についてだったか? 俺達も駆け出しを卒業したくらいで、たいして話せる事はないぞ?」
駆け出しを卒業したくらいでも、俺から見たらムキムキで迫力があるんだよな。一流の冒険者とかどんな感じなんだろう? 冒険者ギルドにいる人達は、全員強そうで違いが分からないんだよな。
「えーっと、ゴブリンの倒し方や、危険な時の逃げ方なんかを聞かせてもらえれば嬉しいです」
「森に入る気なのか? 1人で入るのはお勧めできないぞ」
「森に入ると言いますか、いずれ旅に出たいと思っていまして。せめてゴブリンが倒せるか、逃げ出せるかしないと不安なんです」
「あー、旅か。ならなおさらパーティーを組んだ方がいいぞ。夜番もなしに旅はできないからな。いっそのこと、護衛を雇うのが手っ取り早いんだが」
夜番か、考えた事がなかったな。小屋船に泊まればいいかと考えてたんだが、1人旅だと目立ちそうだ。
「うーん、やはりパーティーが必要ですか。情けない事に冒険者として生きていくか、商人になるか決めかねてるんです。そんな状態でパーティーを組むのも、迷惑をかけてしまいます。実力を少しでもつけておくのに越した事はないので、森に入りたいんです」
「そうなのか、それならきちんとしたパーティは組み辛いな。臨時のパーティーに入れてもらって経験を積むのが1番だと思うぞ。ゴブリンなら人数がいれば何とかなるし、逃げ方もそこで学べる。1人で森に入るってのは、よっぽど強いスキルでも持ってたら別だが、命を捨てに行くようなものだ」
「やっぱりそうですか。うーん、武器を選んで訓練しながら、臨時パーティーに入れてもらいます」
「まだ、武器も選んでないのかよ」
「ええ、槍かなって思ってますが、身軽なナイフも捨てがたいんですよね」
僕の場合は、船召喚まではナイフでしのいで、船召喚ができたら槍で突くのが一番かなって考えているんだが、そんな事説明できない。
「まあ、ギルドの訓練場で試してみたらいい。それで、俺も聞きたい事があるんだが、いいか?」
「ええ、いいですよ。なんですか?」
「角兎をずっと狩ってるだろ? 金に困ってるようには見えないが、儲かるのか?」
ついに角兎について興味を持たれたか。まあ、いずれ西方都市を出るんだし、隠しておく必要もないよな。仲良くなる切っ掛けにもなるし、話しておこう。
「みなさんがどれ程稼がれてるのか分からないので、判断はつきませんが。今の暮らしなら貯金もできますし、十分な稼ぎは出ると思ってます」
「そうなのか、俺たちは不安定だが1人80銅貨くらいだな。悪いが角兎の報酬を聞いてもいいか?」
「ええいいですよ。狩りをする時間で変わりますが、朝から夕方まで狩りをして50羽で、5銀貨ですね」
「おいおい、俺達パーティー全員より稼いでるじゃねえか。なんで角兎でそんなに稼げるんだ?」
「綺麗に狩ってちゃんと血抜きをすれば、1羽10銅貨です。棒で叩けば綺麗に倒せますから、あとは数を稼ぐだけですね」
アルドさん達が驚いている。まあ、チリも積もれば山となるって稼ぎ方だし、冒険のついでに狩ってくるだけだとイメージが湧かないよね。
「そんなに稼げるのか、俺達もやってみていいか?」
「ええ、大きな街ですから角兎の依頼は全然消化できてないんです。角兎を待っている人達に喜ばれると思いますよ。ですが、角兎を狩り続けても強くなれないです。個人で狩りをするので、いままで磨いてきた連携が鈍るかもしれませんよ? 僕も角兎を狩り続けていても、ゴブリンが倒せる気がしませんしね」
一応レベルは上がるんだが、初心者を卒業したアルドさんには、ほぼ誤差だろう。
「そうか、確かに角兎を狩ってるだけじゃ、実力はつかないな」
「ええ、街で暮らしていくには十分ですが、実力を付けて高ランクになる事はできませんね」
「そうか、バランスが大切だな。俺達は装備をよくして森の奥に行きたいんだよな。パーティーでよく話し合ってみるよ、ありがとな」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
夕食代とエール代の35銅貨を払い部屋に戻る。角兎の狩場にアルドさん達はくるかな? 船召喚は使いにくくなるけど、船召喚を使わないでも少しは戦える様にならないといけないから、ちょうどいいと言えばちょうどいいだろう。
やっぱり1人で森に入るには無謀に思われるか。船召喚があれば大丈夫そうだけど、臨時パーティーに入れてもらうなら使えないから、戦闘の訓練をしよう。
船召喚を使わないなら槍が必要だ。あとはナイフと、索敵、船召喚を使う時も、槍の間合いから外れた時に弓が必要な気がする。全部完璧になんて無理だから、冒険者ギルドで基本を教えてもらえないか聞いてみよう。
朝から2時頃まで狩りをして、そのあとに冒険者ギルドで訓練をする。臨時パーティに参加できるなら参加して、経験を積もう。
すぐに派手な行動はできないけれど、訓練と森に行くんだからしばらくは神様も納得してくれる……よな? それで訓練しながら南方都市の事、奴隷の事を調べよう。
よし、大筋は決まったし、生活魔法の練習をして寝るか。
残高 1金貨 31銀貨 25銅貨
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。