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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第七章
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9話 久しぶりの南方都市と商業ギルド

 南方都市に向かう為にストロングホールド号からルト号に乗り換える。シーカー号で行こうかとも考えたが、南方都市での僕の騒ぎが沈静化していたら新たな火種を投入する事になりそうなので止めておいた。


 今も騒がれるのなら、シーカー号で再訪問しよう。燃えているのなら火種を投入しても変わらないだろう。


 どうなってるかな? 忘れられていたなら問題は無いんだけど、6ヶ月……僕からしたら長いけど、国からしたら短いんだろうな。


 ……予定では2ヶ月毎に胡椒を卸すつもりだったけど、6ヶ月も空いてしまった。また保管しておいた胡椒を一気に卸すって事にするのはどうだろう……


 ただでさえ不自然なのにそれを繰り返すのか? でも諦めたら豪華客船を購入するまでの時間が更に伸びる……全部魔の森の所為だな。こんな所まで祟るとは物騒な名前がつくわけだ。


 なんとか大量に胡椒を卸したいんだけど……どうせ不自然なら魔導士様が協力してくれたとか言って胡椒を全部卸してしまうか?


 うーん……決めた、取り合えずルト号でいつも通り20艘分の胡椒を卸したうえで、カミーユさんにだけシーカー号の事を話そう。まあギルドマスターには伝わると思うけどそれはしょうがない。


 同じ魔導士の話を出すならシーカー号の事を話した方が後々便利そうだ。


 入港しても問題が無さそうならシーカー号で乗り付けて、問題がありそうなら、町の外で取引が出来ないか頼めばいい。まるで薬の密売みたいだけど胡椒だから問題は無い。


 これならどっちにしろ大量の胡椒が卸せる。シーカー号なら100艘分ぐらい楽勝だよね……いや120艘分ぐらい卸しちゃうか? ……白金貨が足りなさそうだけど1回で豪華客船が買えるのなら待つのもありだろう。安直な考えかな? みんなに聞いてみるか。


「……出来ない事は無いと思うわ。普通なら商業ギルドがそんな便宜を図ってはくれないけど、相手がワタルさんで積み荷が胡椒なら、融通を利かせてくれると思うわよ」


「そうね。でもワタルさん、急がないで時間を掛けた方が安全よ? もしくは前みたいに島で保管していた事にして、何度も往復した事にすれば良いんじゃないかしら」


 アレシアさんは大丈夫の判断。ドロテアさんは大丈夫だけど、もっとリスクが少ない方法があるならそっちを選ぶべきって判断だな。


「急がなければ確かに目立たないんですが、待ちきれないんですよね。保管していたって方法も胡椒の鮮度の関係でカミーユさんに疑惑の眼差しで見られましたし。両方に欠点があるのならシーカー号で運んだ方が大量に卸せる上に楽なんですよね」


 結局みんな賛成してくれた。と言うより僕の口癖が移ったのか、面倒事になったら船で逃げれば良いんだし大丈夫でしょっとイルマさんに言われてしまった。逃亡する事になったらジラソーレも付き合ってくれるそうなので、心強い。


 港に入る前に胡椒をデッキに並べ準備万端で入港する。船を停泊させると周りがざわついた気がする……気にし過ぎか?


「ふー、久しぶりの南方都市ね。ワタルさん、このまま商業ギルドに行くの?」


 アレシアさんが体を反らしながら聞いて来る。……装備を付けていなければ眼福だったろうに、残念だ。


「いえ、胡椒を運ぶ為にカミーユさんに来て貰うつもりです。行くのはその時ですね。買い物の手配もして貰うつもりですから、少し時間が掛かるかもしれませんが良いですか?」


「買い物ってあの村で必要な物?」


「はい、数が数ですから商業ギルドに頼もうと思ってます」


「うーん、買い物は私達に任せてちょうだい。あの買い物の内容だと商業ギルドもワタルさんのしている事に興味を持つわ。まあ、私達が分散して買っても詳しく調べれば分かるでしょうけど、用心しておいた方が良いわよ」


 僕が店を回ったら目立つから、商業ギルドに頼んだ方が良いと思ったけど……ジラソーレに頼んだ方が目立たないのか? ……余計に目立つ気がするけど。……まあせっかくの好意だ、お願いしよう。


「分かりました、後でリストを渡しますので、お手数ですがお願いします」


「ええ、任せて」


 港に居る商業ギルドの職員にカミーユさんを呼び出してもらう。これで荷車を引き連れて来てくれるはずだ。今の所、カミーユさんが来なかった事は無いんだけど、もしかして休みの時も呼び出したりしてたらどうしよう。僕だったら凄くイラつくな。


 ……暫く待っていると、カミーユさんが荷車を引き連れてやって来た。相変わらずの美人さんだよね。


「ワタルさん、お久しぶりです。全然いらっしゃらないので、何かあったのかと思いました」


「お久しぶりです。まあ色々あったんですが無事ですよ。胡椒なんですけど問題ありませんよね?」


「はい、勿論です。色々の話は後で聞かせてくださいね。まずは胡椒を運んでしまいましょうか」


 ……色々と話してしまいそうだから気を付けないとな。カミーユさんの笑顔は危険だ。くだらない事を考えながら、胡椒を船から荷車に運び、ジラソーレに囲まれながら商業ギルドに向かい、奥の部屋に通される。


 座って待っているとカミーユさんとギルドマスターがやって来た……ギルドマスターが居ると、あまりカミーユさんと話せないから嫌なんですけど……


「ワタル、久しぶりだな。逃げたか攫われたかと思っておったぞ」


 明るく言う話じゃないよね。


「なんとか生きてますよ。今回はお土産もありませんけどね」


「……まあ残念だがそれは良かろう。それで何をしていたんだ?」


 本当に残念そうなのが面白い。商業ギルドのマスターでもお土産は嬉しい事らしい。


「えーっと、内密の話にしてくださいね。と言っても話せる事は多くないんですが」


「……まあ、言ってみろ」


「いや、内密にするって約束してくださいよ。なんで普通に話を聞こうとしてるんですか?」


 怖い、何か変な間を取って、さも分かったような雰囲気を出しているのに、言葉は全く約束してないとか、商人って怖い。


「うむ、まあ分かった。だが犯罪、もしくは国、大陸に騒ぎが起こるような事なら別だぞ」


 いや、犯罪ならまだしも国? 大陸? ギルドマスターの中で僕はどんな危険人物なんだよ。そんなに大袈裟に取られたら、魔導士様から新しい船を買ったってショボイ感じがして非常に言い辛いんですけど。


「そんなにたいした事じゃありませんよ。しっかり言葉で約束すると言ってくださいね」


 ギルドマスターって僕の事警戒してるの?


「分かった約束しよう」


「……契約もしませんか?」


「……ギルドマスターの言葉が信用できんのか?」


「ギルドマスターだから信用できない気がするんです」


「ギルドから脱退するか?」


 ストレートな脅しがきたな。普通に怖い。


「分かりました。でもカミーユさんも約束してくださいね」


「分かりました。お約束します」


 まあ、これで良いか最初から話すつもりだったし、本気で騙すつもりなら僕ではどうしようも無いだろう。


「えーっと、魔導士様のお手伝いをして、新しい魔導船を売って貰いました。あとお手伝いの内容は言えません」


「……その船は魔導士殿の結界が張ってあるのか? サイズは?」


「張ってありますね。サイズは中型船です」


 ギルドマスターが物凄いしかめっつらで僕を見て来る。


「Sランクの攻撃を無傷で耐える結界を持つ、中型魔導船か……ワタル、自分が危険人物になっておるのが分かっておるのか? 魔導士殿の脅しが無ければ、良くて船を没収。悪ければ殺されておるぞ」


 やっぱり、良い船を持っていたら没収なんだな。魔導士の脅威が無ければ面倒事が満載だね。


「その辺は重々承知しています。だから秘密にしてくださいって頼んでいるんですよ。そう言えば魔導士様の事を調べている人は居ますか?」


「数えきれんほどな。ギルドで把握しておるだけでも相当な数だ。その上で把握できん腕利きも派遣しておるだろうし、探すだけ無駄だな」


 6ヶ月位じゃ諦めないよね。第2王子様土下座させておいて良かった。魔導士が舐められてたら南方都市で商売なんか出来なかっただろうな。


「僕が目的なんですよね?」


「だろうな」


 用事が済んだらさっさとダークエルフの島に行こう。豪華客船が買えたら次に来るのは1年後ぐらいにしようかな。


「それでなんですけど、その買った魔導船で胡椒を大量に仕入れて来たんですよ。今日卸した胡椒の6倍位あるんですがどうします? 入港したら目立ちそうなので、ルト号で来たんですが、何処か人目につかない所で取引が出来るのならそのまま降ろせますよ?」


「うむ、全部引き取ろう。無論色も付けるぞ。目立たぬ場所なら、パリスと実験した場所で良かろう。カミーユ、手配を頼む」


「分かりました。ですが、胡椒の仕入れの為に白金貨は用意していますが、更に6倍となると白金貨が足りません、現金での取引ならば7日程時間を頂きたいです。あっそれとパリスさんがワタルさんを訪ねて見えましたよ。連絡が取れるようにして欲しいそうです」


 実験か。あれでSランクの化け物さを初めて知ったんだよな。パリス……二度と会いたくない。だから連絡が取れるようにはしない。友達を探そうとも思っているが、あの人は違うと断言できる。


「現金での取引の方が助かります。前回みたいに胡椒を先に降ろした方が良いですか? それとパリスさんとは連絡を取りたくないのでそうお伝え頂けると助かります」


「現金ですね。胡椒は先に卸して頂ければ助かります。パリスさんにはお伝えしますが、諦めないと思いますよ?」


 諦めようが、諦めまいが、連絡が取れるようになったら来るだろう。良い技思いついたんだよね、試させてとか軽い感じで、馬鹿みたいに強力な技を僕の船に叩き込むだろう。


 乗船拒否の力は信頼しているが、あんな化け物みたいな人が近くにいるだけで落ち着かない。全力で避けるのが正解だ。


「諦めなくても避け続けます。僕の情報をパリスさんに渡さないでくださいね」


「商業ギルドから情報を渡す事はありませんが、情報屋もいますしバレますよ?」


 次に南方都市に来るのは2年後ぐらいにしよう。


「頑張って避けるので大丈夫です」 


 なんかカミーユさんに困った人ねって顔で見られてる。そんな表情も美人だよね。2年も会えないのは辛いな。1年と半年ぐらいにしておこうかな?


「それでワタル。前に船を売って貰えんか魔導士殿に聞いておいてくれと頼んだだろう、聞いてくれたかの?」


 ギルドマスター、今は僕とカミーユさんの時間なんです。空気を読んで下さい。魔導船については、そんな事頼まれた気もしますが売りません。


「はあ、聞きましたが、嫌だそうです」


「……ちゃんと頼んだのか?」


「とても一生懸命に頼みました」


「なんで今の所だけキリッっとした顔をした? 似合わんぞ、そして胡散臭い」


 放っといて欲しい。ただ真面目な顔をしただけでそこまで言われると傷付く。


「とにかく駄目だったので諦めてください」


「……」


 物凄く恨めしい顔で見られてもどうしようもない。気付かないフリをしてカミーユさんと、今後の予定を決める。白金貨を用意して待っているとの言葉は本当だったらしく、今日卸した胡椒を75白金貨、即金で買い取ってくれた。残りの胡椒は明日、人が少ない夜明け頃に、例の場所で引き渡す事も決まった。


「カミーユさん、物凄い大金ですよね? 今までもかなりの胡椒を卸しましたが、まだまだ大丈夫なんですか?」


「ふふ、胡椒は王侯貴族、大商人、お金を持っている方達に大人気の商品です。消耗品でもありますし、まだまだ大丈夫ですよ」


 なんか、儲かってしょうがないと言った雰囲気だ。どの位の利益を上げているのかな? 僕が直接お店に卸しただけで、かなり儲けが増えたからな。直接王侯貴族に胡椒を持ち込んだらどれだけ儲かるんだろう……


「カミーユさん、僕が卸した胡椒で商業ギルドが儲かるんですよね? 商業ギルドって利益はどうしているんですか? そもそも商業ギルドが儲けるのも違和感があるんですけど」


「ああ、それは誤解ですよ。確かに利益は得ていますが、胡椒を商人達に分配して影響力を高める事の方が重要なんです。


 大量の胡椒を卸してくださるワタルさんのおかげで、南方都市の商業ギルドは影響力も利益も凄い事になっています。お給料も上がったんですよ。ありがとうございますワタルさん」


 そんなシステムだったのか、影響力を高めるには大儲けできる胡椒はかなりの力を持っているんだろうな。当然商業ギルドのランクも重要になるだろうし、ウハウハだな。


「そうだったんですか。まあカミーユさんのお役に立てたのなら僕も嬉しいです」


 商業ギルドマスターとカミーユさんと別れ、ルト号に戻る。ルト号に戻ってからはジラソーレと別行動で、僕達はルト号で待機、ジラソーレは、冒険者ギルドと、リストの買い物に行ってもらった。あっ、リバーシとかの特許料? の確認を忘れていたな。


 資金 手持ち 48金貨 19銀貨 77銅貨 ギルド口座 0白金貨 70金貨 貯金船 995白金貨 胡椒船 405艘

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] この作品は必ず船に有る筈の無線機もレーダーも出て来ないんだよ。 プレジャーボート以上小型沿岸漁船以上ならば必ず対水上レーダーはクルーザーにも中型漁船にも小型沿岸漁船でも付けてるユーザーも多い…
[気になる点] 胡椒の取引で貢献してるはずなのにギルドランクが一切上がらない件
[気になる点] ギルドマスターがただのヤクザもんになってる
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