表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第七章
134/568

5話 ワタルの交渉とダークエルフの決断

 微妙に緊張する雰囲気の中でダークエルフの村長さんとの話し合いが始まった。


「それで村長さん、村での話し合いをするとの事でしたが、どうなりましたか?」


 行く事に決まったとか言ってくれないかなー、物凄く助かるんだけど。


「話し合いの結果、全員が興味を持っている。……しかし、騙されている可能性が否定できない。私達に信じる根拠を示して欲しい」


 面倒なんだけど……ダークエルフ側からしたら村を捨てる事になるんだし、誘いに来た僕が根拠とやらを示さないといけないんだろうな。


 良い場所があるんだけど行かない? ナンパでも無理だよな。僕にダークエルフ並みの美貌があれば成功するかもしれないけど、相手がダークエルフで行く場所が村を捨てての島への移住……無理難題な気がする。


 契約を使えない時点で僕の人間性で勝負をする事になる訳だ。カリスマも武力も持っていない。持っているのは金だけだ。……持っているのは金だけだ、これほど傲慢なセリフを僕が言えるようになるとは、異世界って凄いよね。


 僕、白金貨を何百枚も持ってるお金持ちなんだよね。だから君達を騙す必要なんて無いんだよ……駄目だな、僕だったら金持ちを信じないし、言われたら殺意を覚える。しかも周りからの信頼低下も確実だ。リスクが高すぎる。


 神様に縋るか? 神様が見てるって言ってたし、森の女神様に必死でお祈りすれば、ダークエルフを憐れんで何か説得の助けを期待できるかも……不確定過ぎるか。


「ワタルさん、どうされましたか?」


「ああ、すみません。取り敢えず僕の事を信じて貰えるようになれば良いと考えていたのですが、難しいですね。僕の事を信じても大丈夫と言える証拠は持っていません。そちらの質問に答えられる事は答えますので、そちらで判断してもらえますか?」


 中納言で副将軍なお爺さんの印籠みたいな物があれば違うんだけどな。今度会う機会があれば創造神様の印籠とか貰えないかな? 信頼性は抜群だよね。


「分かりました。ではここまでどのような方法で来られましたか?」


 やっぱり気になるよね。でも移住に来ない可能性があるのにペラペラと全部を話せないな。


「うーん、簡単に言いますと、魔物の大軍でも侵入出来ない結界を持っています。魔物の大軍が来たらそこに籠ってやり過ごしながら此処まで来ましたね。詳細は秘密です」


「契約の話は聞きましたが、あなたとフェリシアの対価が釣り合っていません。どうしてでしょうか?」


 なんかフェリシアって呼び捨てにされる所にカチンと来てしまうな。独占欲か? 正直に言うと引かれそうなんだけど……僕にウソをつくのは無理っぽいから正直に言うか。


「護衛が必要になって、フェリシアが強くて美人だったからですね。フェリシアの条件も可能だったので契約しました」


 イネスの時はギャンブルで身売りだったから迷ったけど、フェリシアは真面目そうだったし、何よりダークエルフの銀髪巨乳美女、頑張っちゃうよね。


「そ、そうですか。……この村にもダークエルフの女性はいますが、差し出す事はありません。それでも話を続けますか?」


 これは、女を寄こせと言いそうだから牽制されたんだよな。ダークエルフの美女、フェリシアでも十分満足だけど増えたら嬉しいのは事実だ。上手に説得してれば、ハーレムに一歩前進できたかもしれないのに、失敗したな。


「別に女性を差し出せとか言ったりしませんよ。フェリシアとの約束でここに来てるんですから、対価を求めたりはしません」


 どうしてもと言うのなら、喜んで受け取るんだけどね。


「そうですか」


 そんなに露骨にホッとしなくても良いと思うんだけどね。


「他に聞きたい事はありませんか?」


「そうですね、昨日、あなたがガエルに言った、ここに居て先があるのかと言う言葉が胸に刺さりました。私達はここに居ても先が無いのでしょう。


 魔物が狂乱すれば大岩をくり抜いた中に潜んでやり過ごしています。飛んでこれるのは虫だけですからね、命は助かりますが家や家具は壊されてしまいます。岩のスペースも食料も僅かで、子孫を増やす事もままなりません」


 おっ? なんかいきなり話が変わった。このまま移住を決断してくれるかな? ていうかあの岩に隠れるスペースがあるのか。僕達がハイダウェイ号に避難してる感じかな?


「あなたとフェリシアの話を聞いて、事実であればどんなに素晴らしい事だろう。好きな時に歌う、それだけでも私達にとって想像も出来ない事でした」


 歌ってたら魔物が集団で襲って来るとか洒落にならないからね。


「ですが、村を預かる者として賭けに出る事も出来ないのです。外の情報を知らず、あなた達の話だけで移住の決定を下すにはあまりにも危険過ぎます」


 話の流れが悪い方に変わった……駄目か。


「ですので、ガエルを共に連れて行ってもらえませんか? ダークエルフの安住の地を確認させて欲しいのです」


 面倒な事になってます。確認したい事も分かるけど、だからってそこまで付き合わなければならないの?


「村長さん、それは流石に厳しいですよ。森を抜けるだけで2ヶ月掛かるんです。そこから安住の地まで更に時間が掛かります。その上で更に往復しなければならないんですから、僕達の負担は相当な物になります。酷い話だと思いませんか?」


「……そうですね。やはり駄目ですか」


 駄目って言うか嫌だよね。もう一度ダークエルフを一から探すより、時間が掛かってもガエルさんを連れて行った方が早いかもしれないんだけど、安心の為にこの森を再往復は嫌だ。まあ、他で見つからなかったら、またここに来るかもしれないけど……そうなったらかなりのショックを受けるだろうな。


 ただでさえ2ヶ月毎に胡椒を卸す予定がしょっぱなから崩れているのに……さすがに再往復は遠慮したい。


「はい、村長さんが確実な情報が欲しい事も分かりますが。僕にとっては無駄足にしかなりません。今回で決断して欲しいですね」


「……そうですか」


 うーん、言い過ぎたかな? でもここで流されると最低3回も魔の森を通らないといけなくなる。流される訳にはいかない。何か説得できる方法はないかな?


 異世界人ってバラしても、騙さない保証にはならない。船召喚のスキルも同じだ。僕自身の人柄で勝負しないといけないわけなんだが……


「あの、卑怯な方法とは思いますが外の料理を食べてみませんか? 安住の地でも僕が食料を運んでいるので食べられますよ」


 人柄に自信が無いから食べ物で釣ろう。異世界の物でなくても、美味しい料理は沢山ストックしてある。これを食べて貰えば移住に積極的になるかもしれない。


「それは、美味しい物を食べると、ここでの生活が辛くなるという事ですか?」


「まあそうなりますね。確かに外は危険ですが、ここでは手に入らない物が沢山あります。移住の切っ掛けになると思いますし、安住の地に到着すれば美味しい物が食べれて、怯えて生活をしなくても良いですってアピールですね」


「ワタルさん、美味しい物は嬉しいのですが、私達が問題としているのは、あなたを信じるか信じないかです」


「分かってますよ。ですがあなた達が移住してくれれば、後は無理してダークエルフを探さないで済みますからね。食べ物で釣れるのなら釣りたいんですよ。安住の地にはこんなに美味しい物があるんだって分かれば、信じたくなりますよね?」


「そうかもしれませんが、言ってしまっては台無しなのでは?」


「食料を出して、食べて貰えば気に入って貰える自信はあります。でも何も言わないで食べさせたら、物凄く疑うでしょ? 僕としては騙す気もありませんし、外の魅力を伝えるだけです」


「……止めておきます。食べ物に釣られて、村の者達の将来を賭ける訳にはいきませんから」


 やっぱり駄目か。露骨過ぎるとは思うんだけど、何も言わずに食べさせたら、それはそれで信頼を失いそうだからな。正直に話して興味を持ってくれれば良かったんだけどね。


「ワタルさん、仮に、私達が移住を決断した場合、安全に森から出る事は可能なのですか?」


「そうですね。どんな事が起こるのか分からないので、絶対にとは言えませんが大丈夫だと思います。この村には森を自由に移動する方法はあるんですか?」


「いえ、先ほど言ったように岩の中に隠れる位ですね」


「そうですか。では移住する場合は僕の方法で行きましょうか」


 人数しだいだけど、チケットを渡しておいて魔物にスイッチが入ったらハイダウェイの魔法陣に飛び乗って貰えれば問題無いよね。


「分かりました。また全員で話し合いたいと思います。時間はどの位頂けますか?」


「あまり時間が掛かり過ぎるのも困りますが、何日かは大丈夫ですよ」


「でしたら2日後にもう一度時間を頂けますか?」


「分かりました。では失礼します」


 ガエルさんに小舟で和船まで送って貰い、昨日と同じように離れて見えない場所にハイダウェイ号を召喚。食堂に移動して会議の内容を説明する。


「そうなの、でもワタルさん、そのガエルさんを連れて行くのを断っても良かったの? 案内して済むのなら案内した方が確実でしょ?」


「イルマさんの言う通りですけど、受け入れたら確実に後3回魔の森を通らないと駄目ですからね。今回で移住を決断してくれたら1回で済みますから。駄目だったら他の場所を探して、見つからなかったらまたここに来ますよ」


「うふふ、見つからなかったら物凄く遠回りになるわね」


「ええ、ですが他の森を探す場合は変な柵も無い場所で、魔の森みたいに集団で来なければ時間も短縮出来ますから結局早いと思いますよ」


 魔の森って僕達の状況だと通る事は出来るけど物凄く時間が掛かる場所なんだよね。片道2ヶ月は勘弁して欲しい。


「まあ、そうかもしれないわね」


 女性陣も納得してくれたみたいだ。


「そういう訳だから、フェリシア、せっかく見つけたけど断られたら他の場所を探す事になるよ。ごめんね」


「いえ、移住するのもしないのもあの人達の自由です。別の場所に同胞が生きている事が分かっただけでも嬉しいです」

 

 本当に気にしてないのかな? 表面上の笑顔かもしれないけど、信じておこう。



 ………………



 それから約束の日まで、綺麗な景色を満喫しながら、湖畔の別荘地にいるような優雅な生活を送った。湖畔の別荘地には行った事は無いけど……


 2日後、ダークエルフの村に向かい迎えに来たガエルさんの小舟に僕、フェリシア、アレシアさんが乗り移り、村長の家まで案内される。


「村長さん、こんにちは」


「こんにちは。ご足労ありがとうございます」


 うーん、表情からはどっちか分からないけど、どうなったかな? 出来れば移住を決定してくれたら都合が良いんだけど、疑いが強かったから無理かな?


「早速ですが、結論はどうなりましたか?」


「はい。移住をお願いします」


 ……おー、成功しちゃった。僕の説得で村を移住する決断をさせてしまった……交渉のスキルが有るのなら取れるかも。フェリシアの顔を見ると素敵な笑顔だ。いいものを見たな。


「分かりました。全力でお送りしますので安心してください。でも、断られるかと思ってたんですよ。正直意外でした」


「はは、村の者達は今でも不安がっています。ですが、怯えずに生活出来るというのは、とても魅力的な話でした。ここの生活は、魔物に怯え空腹を耐える日々ですからね。ただ生きているだけより、楽しく生きたいと言う事になりました」


 思っていた以上に厳しい生活だったんだな。僕の説得と言うより、ここでの生活が嫌だったみたいだな。


「そうでしたか。最低でもしっかりご飯を食べて、怯える事の無い生活は約束します。どの位の人数が居て移住の準備はどの位掛かりますか」


「村の人数は25人です。たいした荷物は無いので3日も掛かりません」


 うーん、意外と少ないな。でも移動中に魔物のスイッチが入らないって事は無いんだからハイダウェイ号は必ずバレるよね。それならさっさとバラして荷物を積み込んで貰うか。


 フェリーは隠しておくか? フェリーはダークエルフの島の人達も知らないから、かなりの大騒ぎになりそうだな。調度いい大きさの船を買うか?


 ……うーん、ハイダウェイ号をルト号で引っ張るとダークエルフの島までかなりの時間が掛かるか。森を抜ける間に船を買うかな。


「分かりました。では明日、森を安全に抜ける方法をお見せしますので、朝に村の人達を集めておいてください。荷物も積み込めますので出来るだけ、荷物もまとめておいてください」


「分かりました」


 ………………

 

 見えない場所に戻りハイダウェイ号の食堂に集まる。


「移住を決断してくれました。明日からハイダウェイ号の内部をこの世界に合わせて偽装しますね」


「分かったわ。ワタルさん、今日はお風呂に入らない?」


 おお、イルマさん、ナイス提案です。良い事が続くな。


 約束事に目途がついたし、軽くお酒を飲んで楽しくお風呂に入る。たっぷり楽しんで、たっぷりいちゃついて英気を養おう。今日は良い日だね。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
奴隷は無理じゃね?商人の元に居るならまだ買って解放が出来るけど、購入されてるのは神様契約で逃亡も無理だし、この章でフィリシアが奴隷の意識レベル下げること出来る的なこと言ってたから基本的には主人側に主権…
[一言] 奴隷商人に聞けば売りに出されてるダークエルフの情報は手に入らないんかな?
[気になる点] 主人公の最近の心の声がクズすぎる(´・ω・)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ