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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第七章
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3話 2ヶ月と発見

 魔物が引いてから1日空けて魔の森の中心に向かって探索を再開する。慎重に進むが何度か魔物のスイッチが入り、ハイダウェイ号で待機する事になってしまう。


「うーん、魔物のスイッチが入る原因がサッパリ分かりませんね」


 魔物の大軍に囲まれながら、ハイダウェイ号の中で話し合う。


「そうね、魔の森の魔物を倒しても倒さなくても、それどころか視認すらされてないのに襲って来るのよね。皆も何か気付いた事は無い?」


 アレシアさんの質問に女性陣全員が首を横に振る。手掛かりなしか面倒だな。


「魔物に姿を見せなければ3~4日で落ち着くのは分かったのだけど、時間が掛かり過ぎるわね。魔物の殲滅に方針を切り替える?」


「ドロテアの言う通り、殲滅した方が結果的には早そうね……」


「ちょっと待って、正直私達が考える事でもないんだけど、問題があるわ」


 問題? 魔物がいなくなったら起こる問題ってなんだ? ……考えてもイルマさんが言う問題が思いつかない。


「イルマさん、問題って何ですか?」


 僕の質問にイルマさんは少し躊躇った後に答えてくれた。


「ええ、この国の獣人達には申し訳ないのだけど、魔の森の魔物を倒し過ぎてジェーラ王国の開拓が成功すると、人族至上主義の国が力をつけるでしょ? 獣人全体で考えると嬉しくないのよね」


 イルマさんが言い辛そうに、でもハッキリと意見を言った。


「あー、なるほど。この国に余裕が出来たら他の国にチョッカイを出す可能性があるんですね」


「ええ、しかもそのチョッカイに獣人が使われるわ。帝国とも仲が良い国だし、追い込まれている帝国に援助しだしたら更に厄介だわ」


 なるほど、面倒事がこんな所にも繋がっているのか……うーん、正直僕には関係ない気もするけど、帝国が元気になると僕にもチョッカイを出してくるかもしれないな。時間が掛かる以外は特に問題も無いしゆっくり進むか。


「それなら、人族至上主義の為に頑張るより、時間を掛けた方がマシですね。ゆっくり進みましょうか」


 僕も女性陣も帝国が力を取り戻すと面倒なので、魔物の殲滅は止めてゆっくり進む事に決定した。


 探索を再開して魔の森の中心部を目指して進む。気配を消して、慎重に、極力魔物を避けて行動すれば、魔物にスイッチが入りづらい事は分かったが、それだけが原因でもないようで、探索時間は伸びたが、相変わらず沢山の魔物に囲まれハイダウェイ号に避難する事になる。


 今更だけど、ダークエルフを見つけたとして、そのダークエルフが移住を受け入れてくれたとする……どうやって魔の森から脱出すれば良いんだろう?


 魔の森に住んでるなら、魔物にスイッチが入る条件を知ってるかもしれないけど。知らなかったら船召喚をバラさないと到底脱出出来ないよね……


 うーん、基本的にダークエルフが居るのは危険地帯らしいけど、もしかして何処に行っても船召喚が無いと脱出できないなんて事になるのかな? 考えても分かんないか。行ってみて出たとこ勝負だね。


 用心の為にもダークエルフの島の人達にも言って無いけど、情報が洩れるリスクは少ないんだし、見つける事が出来たらその時の状況しだいだね。


 魔の森を進んではハイダウェイ号に退避する事を繰り返して約2ヶ月、大きな湖に辿り着いた。


「…………」


 目の前の美しい光景に全員が言葉を失う。




「綺麗ね」


「ええ……」


 ただ湖に見とれアレシアさんの言葉に我に返る。うーん、魔の森の中にこんな神秘的な場所があるなんて不意打ち過ぎて見とれてしまった。


 テレビでみたカナダのモレーン湖だったかな? その湖に似た鮮やかなターコイズブルーが日の光に反射して煌めいている。


 確かモレーン湖は雪解け水が関係してたと思ったけど、魔の森には雪は降ってないんだよね……異世界的な何かか? 全部この言葉で済ませられる気がするのが困るな。


「綺麗な湖ですが、魔の森の中です。取り合えずルト号を湖に召喚しますから休憩しましょう」


 なんか綺麗な湖に船を浮かべるのも罰当たりな気もするが……結局は船で探索するんだから今更だよね。ルト号を召喚してサロンに入る。


「ふふ、魔の森と恐れられている場所に、こんなに綺麗な湖があるなんて。これだから冒険者は辞められないのよね」


「ええ、色んな所に行って綺麗な景色も沢山見たけど、この場所は飛びぬけているわ」


 アレシアさんとドロテアさんの言葉に他の女性陣も加わり、キャイキャイと景色の美しさを語り合う。


 僕も感動した。日本でも絶景と言われる場所に旅行した事があるけど、事前にネットやガイドブックで見ていたからな。やっぱり下調べして綺麗な景色を見るのと、何も知らずに綺麗な光景を見るのとは感動が違うな。


 デッキに出て景色を見ながら紅茶を飲む。素晴らしい光景だけど、綺麗な湖の船で景色を見ながら、紅茶を飲む自分に違和感があり過ぎて切ない。


「リム、綺麗だよね」


『うん』


 ルト号の縁に乗り、言葉少なく景色を見るリム。……景色に見とれるスライムって凄い気がするのは僕だけなのかな? 


 あっ、ふうちゃんが近づいて来てリムの上に。……写真が取りたい。ん? 色はちょっと違うし煌めいてるけど、ドロテアさんがピンクのスライムをテイムすれば、3色団子が出来上がるな……美味しそうに見えて来た。

 

 ピンクのスライムか……いたらいいな。


「ワタルさん、そろそろ湖を回ってみない?」


「そうですね。ぐるっと一周してみましょうか」


 アレシアさんのリクエストに応えてフライングブリッジに上がる。……少し考えて下におりる。


「ワタルさん、どうしたの?」


「上から見たら浅そうな場所が結構あったので、和船で行った方が良さそうですね」


「あーそうね湖だもの浅い所もあるわよね」


 アレシアさんが感心したように見て来る。いや、ただ見たら浅そうだったから和船にしようと思っただけなんで。なんで感心してくるのか分からないよ。


 和船を召喚して乗り移りルト号を送還する。


「じゃあ行きますね」


 綺麗な湖を和船で進んでいく。うーん、透明度の高い湖なのに大きい魚が結構いるな。透明度が高い水は栄養が無いって聞いた事があるんだけど……1メートル位のも泳いでる。攻撃はしてこないけどあの魚は魔物なのかな?  


 暫く船を走らせ湖を回ると遠くに大きな岩が突き出している。この距離でも大きく見えるなんて結構な大きさだな。


「皆さん、あの岩に行ってみますか?」


「そうね行ってみましょう」


「ワタルさん、アレシア、慎重に近づくべき。周りに人工物が見える」


 ん? 人工物? マリーナさんの言葉に岩の周りを見てみる……僕には全く見えない。でも人工物なら全滅していなければ人が居るはずだ。驚かせたら悪いから慎重に近づこう。


「分かりました、ゆっくり近づきますね」


 まだ距離があるが、スピードを抑え進む。獣人の可能性もあるんだけど、ダークエルフだと良いな。エルフの可能性もあるか……出来ればダークエルフでお願いします。森の探索は僕には不向きです。


 ある程度進むと巨大な岩の周りに筏が並びその上に木造の家が建っている。……魔物対策で湖上に住んでいるのかな?


 更にスピードを抑えゆっくりと近づくと、こちらに向かって弓を構えているダークエルフが見えた。……ダークエルフ発見は凄く嬉しいんだけど、攻撃態勢か……まあ狙われるから隠れてるのに、人が近づいて来たら警戒はするよね。


「ワタルさん、良かったわね、ダークエルフよ。凄く警戒しているけど」


「ええ、良かったです。警戒されていなければもっと良かったんですが」


「それは無理ね。私達って、とても怪しいから」


 まあアレシアさんの言う通りなんだけど。僕ならジラソーレが来たら……美人局を疑うな。うん、警戒を解く事から始めないと。


「多分フェリシアに説得を頑張って貰う事になるから、よろしくね」


「はい、ご主人様。頑張ります」


 張り切ってるな。まあ、フェリシアの望みなんだから当然か。


「止まれ」


 取り合えず指示に従って船を止める。警戒心を解いてもらわないといけないんだけど、上手くいくかな?


「どうやってここまで来た。何故この場所を知っている」


 凄い拒絶感。ウソをついてもしょうがないから、正直に言うか。


「あー、ここまで来たのは僕のスキルで来ました。この場所を知っていた訳ではなくて、ダークエルフを探して辿り着きました」


「我々を奴隷にする気か」


 やっぱりそうなるよね。


「あー、別にあなた達を捕まえて奴隷にしようとか考えてません。大声がキツイのでもう少し近づいても良いですか?」


「駄目だ」


 やっぱり駄目か。……このまま話すのはキツイけど頑張るか。


「えーっと、僕達はあなた方に移住を勧めに来たんですよ。この森が居心地が良くて移住なんてするつもりはないと言うのなら大人しく帰るので、取り敢えず話だけでも聞いてもらえませんか?」


「移住だと? 我々が籠っている間に世界が変わったのか? 奴隷もおらず、人族至上主義者は絶滅したのか?」


 うわー、欠片もそんな事を思っていない声色だな。その通りって言った瞬間に弓矢が飛んで来そうだ。


「いいえ、奴隷も居ますし、人族至上主義者も健在ですよ」


「話にならん。わざわざ狙われにこの森から出る訳なかろう」


「まあ言いたい事はとてもよく分かるんですが、移住の当てがあるのは本当なんです。僕には1人ダークエルフの奴隷がいます。その子との契約で此処まで来ました。話だけでも聞いてもらえませんか?」


(ワタルさん、ダークエルフの奴隷とか言ったら、相手も怒るわよ。どうするの?)


 アレシアさん、傷つくからこの子バカなのかしらって目で見ないでください。


(怒るでしょうけど、頑張って警戒を解いた後にダークエルフの奴隷が居る事が分かるのと、どっちがマシだとアレシアさんは思いますか?)


(まあ、先に言っておいた方がマシかしら?)


(そういう事です)

 

「ダークエルフの奴隷を連れた者の言う事を私達に信じろと?」


 凄く声が冷静になってる。静かに怒る人ってガチで怖いよね。


「言いたい事は分かりますが。違法な奴隷ではなく、商売の神様を通した正規の奴隷契約ですから問題は無いと思います。そちらで契約を確認してもらっても構いません」


「……このような場所に契約を確認する術があると思うのか?」


「あー無いのですか……」


 まあ、隠れ住んでるんだから無い可能性も考えてたけど、あったら話が楽だったのに。そう言えば根本的な事を知らないな。正規の奴隷と違法奴隷って見分けられるの?


「フェリシア、今更だけど正規の奴隷と違法奴隷を見分ける事は出来るの?」


「はい、出来ます。魔法で強制的に奴隷にされた者は意思と行動が縛られますので、一目瞭然です」


「そうなんだ。ありがとう」


 良かった、正規の奴隷だって事から証明する必要は無いんだな。違法奴隷は見た事無いけどそんな事になってるのか。


「まあ、契約は証明出来ませんが、正規の奴隷ですので、話だけでも聞いてもらえませんか?」


「正規だろうと違法だろうと、同胞が奴隷になっている事を私達が喜ぶと思うのか? そちらに居るダークエルフは望んで奴隷になったとでも言うのか?」


「まあ、その反応は当然ですね。彼女も奴隷になるしか無かった事情があります。ですが、それでも彼女はチャンスを掴み取りましたよ。あなた達は此処にいて先はあるんですか?」

 

 チャンスを掴んだとか、厨二ッポイけどカッコいい気がする。まあそのチャンスって僕の事なんだけどね。照れる。


「……………」


 黙ってるな。まあ見た感じ家の数も少ないし、魔の森に住んでいるんだ、楽な暮らしはしてないだろう。


「取り敢えず話を聞いてもらえれば、決断はそちらに任せます。もちろん断られたからと言って無理強いはしませんし、この場所も秘密にします。どうですか?」


「……そちらのダークエルフの1人だけなら話を聞こう。ただし私が迎えに行くがその時にウソをつかず、全てを明らかにする事と我らに危害を加えぬ事を命令してもらおう」


 ……全てを明らかにする? 嘘をつかないように命令する? 僕の事も必ず聞かれるよね。全部明らかにするのは無理だな。異世界人とかユニークスキルとか聞かれたくないし、性癖とか聞かれたら恥ずかし過ぎる。


「フェリシア、危険かもしれないけどどうする? もしかしたら人質にされちゃうかもしれないよ?」


「大丈夫です。必ず説得しますので行かせてください」


「んー分かった。でも無茶はしないでね」


「はい」


 フェリシア、気合十分だな。空回りしないと良いんだけど。


「あー、それは無理です。僕にも秘密はありますし、話されたら困る事もあります。どうして移住を勧めるのか位ですね。危害を加えない事は、あなた達が僕達に敵対しなければ危害を加えないと言う命令なら出せます。後はフェリシア、ダークエルフの奴隷なんですが、フェリシアの判断に任せるという命令ですね」


「……分かった。取り敢えず話は聞こう。今から迎えに行くが不審な行動はとるなよ」


「分かりました」 

  

 相手のダークエルフが小舟で迎えに来る。警戒心バリバリで命令をする事を要求して来たので、先ほどの内容をフェリシアに命令する。フェリシアが小舟に移り、筏に連れて行かれる。ちょっと心配だな。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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[一言] 水属性のスライム居そうなんだけど…Ҩ(´-ω-`)
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