表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第七章
131/568

2話 魔物の大軍と探索の再開

 ヴィンディクティヴウルフにスイッチが入った後。虫の魔物とフレンジーモンキーにもスイッチが入り、結界の周りは上も、左右も前も後ろも魔物で埋め尽くされている。


 フレンジーモンキーは問題無い。虫の魔物も我慢すれば何とか耐えられる。しかし、虫の魔物が従えている小さな虫は駄目だ。ゴムボートとゴムボートの間にある僅かな隙間に侵入して、大量に結界に張り付いている。


 ウゾウゾと蠢く沢山の虫が両サイドの結界に張り付き、ジラソーレの姿も見えなくなった。


「無理、これは無理だよ。気持ち悪すぎる」


「無理って言ってもどうするの? コツコツ減らすしか無いと思うわよ?」


「大丈夫、考えならあるから。イネスは目の前に炎の魔法で攻撃して。ジラソーレの皆さん聞こえますか? 今からイネスが炎の魔法を放ちますので、その場所にタイミングを合わせて皆さんの攻撃を集中してください」


「分かったわ。でも何をするの?」


「目標の周辺の木々を吹き飛ばして、そこにハイダウェイ号を召喚します」


 アレシアさんの言葉に答えると、後はアレシアさんが取り仕切ってくれた。召喚するのはルト号でも良いかと思ったけど、大きい方が虫から離れられる。さすがにフェリーはやり過ぎだよね?


「それなら範囲攻撃が良いわね。みんな聞いてたわね、カウントゼロで攻撃よ」


 アレシアさんのカウントと共に全員の範囲攻撃が撃ち込まれる。物凄い轟音と共に、木々、魔物が吹き飛び、土煙が上がる。そこにすかさずハイダウェイ号を召喚する。


 土煙が晴れると木製ボートのように傾いたハイダウェイ号が現れると思っていたが、船底が平らで普通に鎮座したハイダウェイ号が現れた。嬉しい誤算だけど、船を買う前に施設だけではなく他の事も調べておこう。


 嬉しい誤算だと思っていた、普通に鎮座したハイダウェイ号にも欠点があった。船に乗り込む場所が2メートル以上高い位置だ。……どうしよう? レベルが上がってるから飛び移れそうではあるんだけど……失敗したら最悪だ。


 結局、再度の攻撃で魔物を吹き飛ばして、その間にイネスにおんぶしてもらってハイダウェイ号に乗り移った。


 何度か魔物を散らしながら、全員がハイダウェイ号に乗り移りゴムボートを送還する。ヴィンディクティヴウルフのスイッチが入った時に、さっさとハイダウェイ号を召喚しておけば良かったな。……まあ結果論か。


「ワタルさん、お疲れ様。広い船の方が安心できるわね。連携も取りやすいし」


「はは、そうですね。まあ、眺めは最悪ですが」


 アレシアさんの言う通り広いだけで気分がだいぶ違うよね。


「確かに眺めは良くないわね」


「嫌い」


「気持ち悪いですね」


 イルマさん、カーラさん、クラレッタさんも同意見のようだ。他の女性陣も全員嬉しくはなさそうだ。2メートル以上高い位置に移る事によって、フレンジーモンキーとヴィンディクティヴウルフは飛び掛かって来た時に見える位だ。


 その結果、サンデッキから見える位置にいる魔物は、ほぼ空が飛べる虫になった。気持ち悪すぎる。これはお風呂は入り辛いな、虫を見ながらお風呂とか嫌だ。取り敢えず食堂に移動して休憩しながら軽食を取る。 


「ふふ、こんなに大量の魔物に囲まれてるのにゆっくり食事がとれるなんて、何度経験しても不思議ね」


「アレシアの言う通りね。本来なら大量の魔物を捌きながら、交代で食事を取るのが精一杯よね」


 船召喚、好評だな。アレシアさん、ドロテアさんの会話にジラソーレの他のメンバーも頷いている。さすが創造神様が与えてくれたスキルだな。


「それでこれからどうしましょうか?」


「そうね……数を減らさないとどうしようも無いから、毎日削っていくしか無いわよね。弱い魔物ばかりだから、結界の中からなら大量に魔物を削れるし、地道にやればなんとかなるわね」


 まあアレシアさんの言う通りだろうな。ゴムボートでも数時間で数えきれないほどの魔物を倒している。素材や魔石は全然手に入って無いけどね。


「そうですね、他にもまあ乱暴な手になりますが、ゴムボートを引っ繰り返して目の前の障害物を魔物もろとも吹き飛ばしながら進む事も可能と言えば可能ですね」


 自分で言っておいてなんだけど、出来れば選びたくないな。


「あー、それも出来ない事は無いわね。でも少し進むのにも時間が掛かりそうだしハイダウェイ号で殲滅の方がストレスは溜まらなそうよね」


 ストレスか……良かったアレシアさんも同じ意見だな。虫に囲まれながら先に進むのは遠慮したい。


「ご主人様。ちょっといいかしら」


「ん? いいよ、どうしたの?」


「魔物が落ち着くまで待つのは駄目なの?」


 イネスが言うように魔物が落ち着いてくれるのなら助かるけど、侵入者を森から追い出すか、殺すまで落ち着かないんじゃなかったっけ? 珍しく聞いてなかったのかな?


「魔物は侵入者が魔の森から排除しないと収まらないって言ってたよ」


 そう考えると、ダークエルフも居ない気がして来た。スイッチが入ったらダークエルフは逃げ出すか全滅するしかないのに、魔の森に居られるのか? でも人が居る痕跡もあるんだし……どうなんだろう?


「それは分かってるわ。でも、今までは防衛とかで戦闘をしてたのよね? でもご主人様の船召喚なら戦わなくても良いんだから、姿を見せないようにしてれば諦めるんじゃないの?」


「ん? ……ジェーラ王国にも結界師はいると思うから戦わないのも試してると思うよ」


「ワタルさん、前提が違うわ。大量の魔物に延々と攻撃を加えられたら、優秀な結界師が何人いても耐えられないわ。ワタルさんの能力が異常なのよ。……イネスのアイデアも試す価値があると思うわ」


 ……船召喚の優秀さを再確認してしまった。アレシアさんにも高評価だ。凄いね船召喚。


「うーん、じゃあイネスのアイデアを試してみましょうか。どのぐらい様子を見ますか?」


「……分からないわ。10日ぐらいかしら?」


 それはそうか。誰も試したことが無いんだから、分かる訳が無いな。


「じゃあ、10日ぐらいハイダウェイ号に籠りましょうか。後は様子見して考えましょう」


 取り敢えず今後の方針も決まり、食事を取り、部屋に戻る。


 今更だけど、10日で魔物が撤退したとして、魔の森の探索を再開してまたスイッチが入ったらまた10日待つのか? 魔の森の探索に何年かかるんだ?


 まあ最初は試してみても良いか、何か思いもよらない事が分かるかもしれないし。駄目だったら魔物の殲滅だな。


 暗くなっても明かりを点けず、真っ暗闇の中でいちゃつきながら時間を過ごす。明かりを点けていると、虫の魔物とか撤退する事無さそうだもんね。


 翌日、こそっと外の様子を見てみると、相変わらず気持ちが悪い光景が広がっている。夜以外は特にする事が無いので、カラカラに乾いたフカヒレを料理する事に決めた。成功してると良いなー。


 ……フカヒレの料理法のメモを見ると……材料が足りない。フカヒレ自体の作成方法に目が行っていたので、深く考えていなかったが、メモには紹興酒とオイスターソースの名前がある。


 フェリーには紹興酒もオイスターソースも無かったよな。豪華客船を買えば中華のお店で紹興酒は手に入るだろうけど、オイスターソースは手に入るか? 


 取り合えずフカヒレ料理は豪華客船まで待とう。材料も揃っていないのに難しそうな料理に挑戦するのは怖い。うーん、DVDはフェリーを送還したら一緒に送還されちゃうから見る事も出来ないし、何をしよう。


 特別な事も思いつかず料理をしたり、リバーシ、ジェ〇ガをしたりと代り映えのしない時間を過ごす。せめてお風呂に入れればジラソーレの湯着姿が見れたのに……


 偶に外を覗くと虫の魔物と虫がびっしりとへばり付き、結界を攻撃している。気持ち悪さを抑えよく観察していると、下の方にへばりついた虫の魔物が偶にヴィンディクティヴウルフに食べられている……狼って虫を食べるんだ……このまま虫が全滅したら助かるな。


 退屈と戦いながらハイダウェイ号で過ごして4日目の夜中。マリーナさんが起こしに来た。何か進展があったかな? 熟睡しているリムを残し、眠い目をこすりながら4人で食堂に向かう。


 マリーナさんの頭の上にはふうちゃんが乗っている。リムは直ぐに寝ちゃうんだけど、ふうちゃんは夜に強いのかな?


「夜中にごめんねワタルさん。でも魔物が引いて行くから、全員での確認と話し合いが必要だと思って」


「僕も興味があるので大丈夫です。ありがとうございますアレシアさん」


 そう言ってコッソリ外の様子を窺う。……見えない。真夜中の森の中、完全に真っ暗だ。起きても意味が無かったな。まあ話し合いがあるからまるっきり無駄ではないか。


 夜目が利くマリーナさん、イルマさん、フェリシアの観察報告を聞きながら考える。ここからヴィンディクティヴウルフとフレンジーモンキーは確認出来ないが、虫の魔物が結界に隙間なく張り付いていたが、今では隙間が増え、次々と飛び立っているそうだ。


「意外と早く落ち着きそうですね。日が登ったら探索を再開しますか?」


「魔物が散らばるまで待った方が良いから、探索は明日からの方が良さそうね」


 僕の質問にアレシアさんが答えてくれる。大量の魔物が集まっていたんだから、散らばるのも時間が掛かるか。


 一斉に引いて行く訳じゃないから、時間が掛かる。マリーナさん、イルマさん、フェリシアも真剣に観察して、落ち着いた原因を探す。


 マリーナさん、イルマさん、フェリシアによると、虫の表情、気持ちなんて分からないそうだ。……僕も分からないな。でも、もしかしたら何かが分かるかもしれないので観察を続けてもらう。


 日が登り僕にも外が見えるようになった。その頃には殆どの虫の魔物が飛び立ち、僅かしか残っていない。


「うーん、見えるようにはなったんですが、虫の魔物を見ても全く分かりませんね」


「そうね……皆はどう?」


 アレシアさんの言葉に他の女性陣は首を横に振る……結局何も分からなかったか。……せめて虫じゃなかったら何か分かったかもしれないが残念だ。


 全ての虫が飛び去った後、マリーナさんにフレンジーモンキーとヴィンディクティヴウルフの様子を見に行ってもらう。


 マリーナさんが身をかがめ素早く船の縁に近づき外を覗く。直ぐに別の場所に移り外を覗き込む。うーん、凄く洗練された動きなんだけど、頭の上のふうちゃんが緊張感を削ぐな。


 それに、マリーナさんが目線だけ船の縁から出しても、ふうちゃんは丸見えだよね? スライムは見えても大丈夫なのかな? 聞いてみるか。マリーナさんは船を一周して、普通に歩いて戻って来たので。安全と判断して尋ねてみる。


「あのー、マリーナさん、偵察の時、ふうちゃんが外から丸見えでしたけど大丈夫なんですか?」


「…………」


 僕の質問にビクッとした後長い沈黙が続く……


「あの、マリーナさん?」


「ま、魔物はいなくなってた。遠くに気配は感じるけど、もう安全だと思う」


「そ、そうですか。では朝食を食べながら話し合いましょうか。……でも何も分からなかったので特に話す事も無いですね」


 あの反応、頭の上にふうちゃんが居る事を完全に忘れてたな。顔が赤くなってるし。まあしょうがないか、僕も頭の上にリムが乗ってる事が当たり前だから、違和感とか感じないもんな。


取り敢えず、ふうちゃんの事は置いておき全員で食堂に向かう。食糧庫船から出来合いの物を出してテーブルに並べ朝食を取る。


 特に分かった事も無かったので、探索は明日からに決定して。今日は仮眠を取った後、お風呂に入る事にした。楽しみだ。


 仮眠を取った後、お酒を飲みながらたっぷりとお風呂を楽しむ。何度も一緒にお風呂に入ったけど、何度見ても飽きないよね。いずれ全裸のジラソーレとお風呂に入れるように頑張ろう。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 虫スライムとか居ないの?( ´・ω・`)?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ