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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第六章
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19話 臨検と魔の森の情報

 ジェーラ王国付近の外海に到着した。陸地に向かう前に、ルト号の船偽装を済ませる……あんまり船の外観を変えすぎるとどれがどれだか分からなくなりそうだな。


 内部も船偽装を済ませ、オーナーズルームのシャワールームとトイレをいつでも壁と一体化させて秘密部屋に出来るようにしておく。これで臨検を受けても見つからないはずだ。


 ……積み荷が無いと怪しまれそうだ、パレルモのワインと南の大陸の蒸留酒を出しておくか。胡椒を積んでたら難癖付けられそうだしな。


「じゃあ陸地に向かいますね。アレシアさん達が情報収集に行くカルピの町は、森と平地の境目からが近いんですか?」


「ええ、距離的には一番近いわね。港に入ればまた違う方法もあるけど、人族以外の出入りが面倒だから、森との境目を集合場所にしましょう。往復だと最低3日は掛かる距離らしいの。


 情報収集の時間を考えて5日後の夕方にこの場所に迎えに来て。その時に戻ってなかったら更に3日後の夕方を目安に戻って来るわ。8日後にはどんな理由があっても戻って来るから、戻って来なかったら何かあったと思って、冒険者ギルドに連絡してちょうだい」


「分かりました。ですが、カルピの町は戻って来られない危険がある町なんですか?」


「いいえ、そんな話は聞いていないわ。念のためよ、不測の事態はいつ起こるか分からないから」


 Aランク冒険者がどうにかなる不測の事態か……町が酷い事になりそうだな。


「そうですね、でも気を付けてくださいね」


「ええ、十分に気を付けるわ、心配しないで」


 まあAランクの冒険者が、町で特に問題の無い事を情報収集するのに心配するって言うのも変か。安心して待っていよう。


 森との境目に到着してアレシアさん、ドロテアさん、マリーナさん、ふうちゃんがカルピの町に出発する。しかし、どっからどう見ても普通の森に見えるな。なんか妖気が漂っているとか、変なガスが噴出してるようなイメージだったよ。


 取り合えず5日の間はやる事も無いので、外海でストロングホールドを召喚して、アレシアさん達には悪いけど、のんびり待つ事にした。


 映画、DVD、漫画、お風呂、バイキング、イチャイチャ、フォートレス号やハイダウェイ号に乗り換えたりと、目先は変えてるけど、最近やってる事が殆ど同じような気がする。


 やっぱり豪華客船が欲しいな。手に入ったらもっとバリエーション豊かに楽しめるのに……創造神様、豪華客船で楽しむと考えて、イネスの事しか思い浮かばない僕はおかしいのでしょうか?


 レベルアップで性欲も強化されているようにしか思えない。異世界に来た頃はもっとストイックだったはずだ……たぶん……


 豪華客船まで残り312白金貨か。一回胡椒を卸したら最低72白金貨として、胡椒を5回卸せば360白金貨。2ヶ月間を空けるから10ヶ月か……長いな。10ヶ月我慢するか、胡椒を卸す量を少し増やすか、卸す間隔を短くするか……よく考えておこう。


 ………………


 5日後の夕方、森との境目に迎えに行くと、無事に3人と合流する事が出来た。外海に戻りながら話を聞く。


「皆さんお疲れ様でした。問題はありませんでしたか?」


「ええ、情報もある程度入手できたし、何の問題も起こらなかったわ。でもワタルさんにとって、嬉しい情報と、嬉しくない情報もあるわ」


 皆元気そうで良かったけど……嬉しくない情報? うーん、最近面倒事が多いから、どれの事か分からないな。魔の森が危険過ぎるとか、魔導士関連でなにかあったか? 


「アレシアさん、聞くのも怖いんですが、何の情報ですか?」


「ご主人様! 船が近づいてくるわ」


 えっ? なに?


「あら……おそらく臨検ね。ワタルさん5人を隠してから、船を止めて。あっ、リムちゃんとふうちゃんも隠れて貰った方が良いわね」


「分かりました」


 いきなり臨検ですか。嬉しくない情報がとても気になるのに、空気を読んで欲しい。5人とリムとふうちゃんに荷物を持ってトイレとシャワールームに入って貰い、壁と一体化するように入り口を偽装する。いくら臨検でも壁を壊してまで調べないだろう……壊れないけど。


 船を止めると、横付けして来た魔導船から兵士が声を掛けて来る。


「ジェーナ王国の臨検である。船内の者は全員外に出て並べ」


 言葉通りに、後方デッキに並ぶ。いきなり3人の兵士が乗り移って来た。ふー、ギリギリ乗船許可が間に合った。声を掛けてから乗り移って欲しかったな。結界に弾かれたりしたら面倒事が増えそうだ。


「代表者は誰だ?」


「あっ、私です」


 緊張してきた。こういう時って悪い事をしていなくてもドキドキするよね。……悪い事してた、イネス達に隠れて貰ってるし。そういえばイネスとフェリシアは奴隷なんだけど、それでも問題になるのか? ……まあわざわざ嫌な目に遭う事もないか、隠れて貰って正解だよね。


「身分証を出せ」


「Fランクの商人……何故Fランクの商人が魔導船に乗っている? しかも日も暮れかけているのに、外海に向かって走っているし……怪しい所が多すぎるぞ」


 Fランクでも特にデメリットがなかったから上げなかったけど、こんな所でデメリットが出るとは。外海に向かって走る理由も考えてなかった、言い訳を捻り出さないと。


「あっ、私がFランクなのは、独自のルートを持っているのでランクを上げる必要が無いからです。外海に向かっていたのではなく、停泊しようとしたら魔の森が見えるので不気味だったので離れていました」


 無理があるか?


「ふむ、そんな話を聞いた事はあるな、魔導船を持っているという事は、儲かるルートなのだろうな。羨ましい事だ。しかし、魔の森が不気味だからと船で離れるなど臆病過ぎるであろう」


「臆病だったので生き残れたと思っております」


「……まあそうなのかもしれんな。だがその女たちの身元と、船内は改めさせて貰うぞ」


「は、はい」


 アレシアさん達もギルドカードを見せている。そう言えばこんな時って袖の下を渡した方が良いのか? ……聞いておけば良かった。臨検に対して準備してたつもりでも全然足りてなかったな。


「Aランク冒険者が護衛など珍しい……儲かっているのは本当のようだが違和感があるな。次は船内を臨検するぞ。まずは積み荷を見せろ」


「はい」


 物凄く怪しまれてるな。最初からやり直したい……ここまで来たらやり通すしかないな。怪しい物がある訳でもないんだから大丈夫だと信じよう。準備していたお酒を兵士に見せる。


「パレルモのワインか……この樽はなんだ?」


「その樽は南の大陸のお酒だそうです。珍しいので仕入れてみました」


「しかし、積み荷がこれだけなのは少ないだろう。商人は限界まで荷を積み込むはずだ。どういう事なのか説明してもらおうか」


「はい、先ほども申しました通り、私は独自のルートを持っております。その品物を卸すだけで儲かりますので、ワインはついでに仕入れただけでして……」


「ふむ、その品物はなんだ?」


「言わねばなりませんか?」


「言わぬのは自由だが、お前達には疑問が残る。納得出来ん限り解放するわけにはいかんな」


 うーん、胡椒って言っちゃうか? 面倒になりそうだから隠してたけど、納得できる事を言わない限り解放されそうにない。……胡椒の現物は送還してあるから、すべて卸したって言うか。


「……分かりました。胡椒を商っております」


「胡椒だと! 持っておるのか?」


「いえ、商品として仕入れた胡椒は、パレルモで卸したので残っておりません。個人用の香辛料の詰め合わせなら1つだけ残っておりますが、ご覧になりますか?」


「うむ」


 キッチンに置いてある香辛料の詰め合わせセットを渡す。じっくりと確認した後、持ったままこちらに返そうとしない……これは、よこせって事か? 


「使いかけで申し訳ありませんが、よろしければお持ち帰りください」


「む? そうか? ふむ、まあそういうなら受け取っておこう」


 その後は軽く船内を見回して、あっさりと帰って行った。大人の汚い世界を垣間見てしまった。賄賂を贈った僕も穢れた大人の仲間入りだな。


「あの人達は臨検の時、怪しいとか疑問が残るとか色々言って来たのは、最初から賄賂が目的だったんですかね?」


「ふふ、そうかもね。ワタルさん、そろそろ5人を出してあげない?」


「ああ、そうですね。出してきます」


 偽装を解除して5人を外に出す。狭苦しい場所から解放されて、皆嬉しそうだ。やっぱりトイレは嫌だよね。隠れ場所をもう少し考えるべきか。でも狭い船内だから、他の場所だと違和感があるんだよね。ポヨンと飛び付いて来たリムを抱きしめる。


「リム、平気だった?」


『へいき』


「良かった」


 リムをもっちもっちしているとフェリシアが話しかけて来た。


「ご主人様、臨検は無事に終わったんですか?」


「うーん、無事に終わったって言って良いのかな? 香辛料の詰め合わせセットの使いかけを1つ持って行かれたけど」


「えーっと、無事に終わったと言って良いんじゃないでしょうか?」


 フェリシアも微妙な表情だ。香辛料を巻き上げられたんだし、損はしているんだけど、お土産で配る物の使いかけを1つ持って行かれただけで痛みは殆どない……無事に終わった事にしよう。


 再び外海に向かって自動操縦を再セットしてサロンに戻る。紅茶を飲みながら臨検の事を5人に話す。微妙な賄賂に5人とも何と言って良いのか微妙な表情だ。一応胡椒も入ってるんだから高いんだよ? ……腐る程持ってるんだけど。


「そう言えば僕にとって嬉しくない情報ってなんですか?」


「えっ? ああ、魔の森について、話の途中だったわね」


 アレシアさんもすっかり忘れてたな。僕も嬉しくない情報って言われて無かったら忘れてたけどね。嫌な事程頭に残っちゃうんだよ。


「魔の森も情報を集めて来たんだけど、その中に大量の虫の魔物が襲って来る話があったのよ。嬉しくない情報でしょ?」


「……フェリシア、ごめんね。皆さん、別の森を探す事にしましょう」


「ワタルさん、気持ちは分かるけど、どの森でも多かれ少なかれ虫は出るわよ?」


 そうなんだよな。アレシアさんの言う通り森なんだから虫は出るんだよな。……もう少し話を聞いてから決めるか。


「……そうですね。続きをお願いします」


「じゃあ、集めた情報を纏めて話すわね」


 ………………


 アレシアさん、ドロテアさん、マリーナさんの情報によると。魔の森は強力な魔物は少ないが、Dランク、Cランクの魔物が大集団で襲って来るらしい。


 虫の魔物、フレンジーモンキー、ヴィンディクティヴウルフの3集団があり、何かのスイッチが入ると侵入者が森から逃げ出すか、死ぬまでは収まらないらしい。


 フレンジーって逆上とか狂乱って意味だよね。ヴィンディクティヴは執念深いとか復讐とかって意味だ……逆上猿か狂乱猿? 執念深い狼か復讐狼? どれにしても遠慮したい。


 スイッチが入る理由は分かっておらず、森に入ったら直ぐにスイッチが入る事もあれば、進入して魔物を何体も討伐してもスイッチが入らない事もあるらしい。


 しかもどの集団のスイッチが入るのかも分からず、一つの集団に耐える事が出来たとしても他の集団にもスイッチが入り3集団全てが襲ってくる事もあるそうだ。


 個々の魔物としての力は、Bランクの実力があれば簡単に討伐出来るレベルらしいが、スイッチが入ると広大な森のほぼ全ての魔物が襲って来る状況になり、冒険者パーティーどころか、軍でも耐えられず、開拓出来ないようだ。


 特に虫の魔物が厄介で多種多様な虫の魔物と、同種の普通の虫も操れるのか、大小様々な虫が隙間なく、そして絶え間なく襲って来るらしい。聞くだけで鳥肌が立つ。


 森の中の一部の危険な魔物も、スイッチが入った魔物の集団にはかなわず、森から逃げ出してくる事もあり、その中にはAランクの魔物も確認されているらしい。数の力か……Sランク冒険者でも駄目なのかな?


 ジェーラ王国は何度も開拓に失敗しているが、魔の森が開拓出来れば、広大な領地と魔の森で分断された隣国へのルートの確立などメリットが多く諦めきれずに魔の森の開発に挑戦している。


 ジェーラ王国が人間至上主義に舵を切ったのは、魔の森を開拓する為に獣人達を強制的に利用する為だと言われている。実際に実験的な開拓を獣人族でおこない、回数を重ねる程に被害を減らして3集団全てからの襲撃にも耐えられる時間が増えているらしい。


 僕的には魔の森に入るのは遠慮したいが、アレシアさん曰く船召喚があれば問題無く探索出来るらしい。休憩、食事、睡眠が取れるのなら、この程度の魔物がどれ程居ようが吹き飛ばしながら進めるそうだ。


 魔物や虫に囲まれるのは遠慮したいし、トイレとかどうするんだと質問したら、ゴムボートがあれば単独行動も問題無いと言われた……僕には無理だ、ルト号かハイダウェイ号の陸上召喚も考えよう。


 何故、魔の森の探索を前向きに考えているかと言うと、アレシアさんが言った、嬉しい情報が関係する。それは、魔の森の中でジェーラ王国と明らかに系統が違う、矢、罠が発見されている事だ。


 森の中、矢と罠……誰かが隠れ住んでいる可能性がある。冒険者はほぼ探索に入らないし、罠を仕掛けても回収出来ないのにそんな事はしない。


 ジェーラ王国から逃げ延びた獣人の可能性もあるが……人の痕跡があるだけでダークエルフな気がする。獣人だったらその時考えよう。


 取り敢えず1回でもダークエルフを移住させれば、後はのんびり出会ったら勧誘で良いはずだ。たとえ苦手な虫が居ようとも、何度も別の森に探索に入るより、確率の高い魔の森で一度目で目的を達成したい。


 長い話し合いの結果、明日から僕達は魔の森を探索する。あっさり見つかってくれないかなー。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
ダークエルフ森から連れ出すときのこと考えてるかな? ゴムボート結界その他
話は面白いのになんで評価少ないのかなあと常々思っていましたが、ここらへんまで来て思ったのは「無敵のクソ雑魚ナメクジがいい思いするだけの話」って思えて来て、自分と同じ感覚の人は話が面白くても評価はしない…
ヘタレが! レベルの概念やめれば?レベル上がっても逃げるだけなら必要ないと思うし、異世界きて1年経つのに順応しないで今だに臆病って笑えるわ!戦う為の努力もしないし本当にクズだな!イライラする。 サーペ…
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