17話 ジラソーレの格安雇用と残り312白金貨
ビッグクラブを美味しくいただいた翌日。僕とカーラさん、クラレッタさん以外は、しっかりお酒が残り、そのままハイダウェイ号で休息する事になった。
昼食を食べ、少しは体調が良くなったイネス、フェリシアと今後の予定を話し合った。
「ご主人様、商業ギルドでお金を下ろして、胡椒代と合わせたら400白金貨以上になるわよね? 元々のお金と合わせたら豪華客船も買えそうだけど、直ぐに豪華客船を買うの?」
「うーん、僕としては、欲しい豪華客船があって、それが高いんだよね。でもどうせならその欲しい豪華客船を買おうかなって思ってる」
「どんな豪華客船なの?」
「内緒かな。でも商業ギルドでの結果次第だけど、300白金貨位足りないと思うんだよね。胡椒をある程度商業ギルドに卸せるようになったから、数ヶ月で溜まりそうだし、我慢しようかと考えてる」
「イネスを数ヶ月我慢してまでご主人様が欲しがる豪華客船ですか。興味がありますね」
「そうね、ちょっとショックだわ。豪華客船が買えるようになったら直ぐに買って、求められると思ってたのに、フェリシアで満足しちゃったの?」
イネス、そんなに面白そうに言われても、何処にもショックを受けた様子なんか見えないよ。
「イネスの事を我慢するのは物凄く嫌なんだけどね。フェリシアとできてなかったら、白金貨を受け取ったその日に豪華客船を買ってたよ。でも後数ヶ月我慢して一番欲しい船を買ってからイネスとフェリシアと堕落した生活を送りたいんだ」
最低でも1ヶ月は豪華客船に引き籠って娯楽と肉欲に溺れた生活を送りたい。……今更な疑問だけど、豪華客船から外に出ない事を引き籠るって言うのかな?
「ふふ、そうなの、期待してるわね」
期待に応えないとな。期待に応えれば……。
「うん、任せて」
「それで胡椒を卸すのに2ヶ月位空けるから、その間にダークエルフを探そうと思ってるんだ。何処に居るのかが分からないんだから、船で大陸を一周しながら、森を見つけて探索したら見つからないかな?」
「ありがとうございますご主人様。ですが、船から見つけた森に入るのなら、危険な魔物が居た場合、イネスと私だけでは危険です」
「確かにそうね。簡単に人が入れる場所にダークエルフが隠れる訳も無いし……」
「あれ? でもフェリシアの村は周りの魔物もそんなに強くなかったよね? 海からも近かったし、どうしてなの?」
「私達の村も、周辺は弱い魔物しか居ませんでしたが、それは長年の狩りで危険な魔物を減らしたからです。森側から入れば、危険な魔物がいる地帯を通らないと辿り着けないようになっています。
海側も襲撃前は人数が居たので見張りが割かれていたんです。海から船が来れば規模しだいで避難する手筈になっていました。
襲撃後は村の周りの警戒で精一杯になってしまいました。それでもラティーナ王国は安全な国なので、他のダークエルフの村より安全な場所にあったとは思います」
「そうだったんだ、ならイネス、フェリシアだけだと厳しいね。どうしようか?」
「ジラソーレの皆に頼んだらいいんじゃないかしら? ある程度の報酬で付き合ってくれると思うわよ?」
「んー、でもダークエルフの島の事は内緒なんだから、問題が出てこないかな? ダークエルフを説得する時は島の事を話さないといけないし、ダークエルフの島にも連れて行けないから手間も増えるよね」
「そこは契約しておけば良いんじゃないの? 訳を話せば手伝ってくれると思うわよ」
「んー、どうだろう。フェリシアはどう思う?」
「私としてはジラソーレの皆さんが契約してお手伝い下さるのなら、とても助かります。実力者がいてくだされば移住の時も村の人達を守りながら移動出来ますから」
なるほど、村からの移動でも人数が必要なのか……元々僕達だけじゃ厳しかったな。
「分かった、夕食の後にジラソーレに頼んでみるね」
「ありがとうございます」
………………
夕食後、そのまま食堂で紅茶を飲みながら話を切り出す。
「アレシアさん、ジラソーレは今後の予定とか決まってますか?」
「えっ? ……いいえ何も無かったと思うわ。ドロテア、予定って何も無いわよね?」
「ええ、何も無いわ」
良かった。予定があったら頼み辛いもんな。
「それなら、僕からの依頼をお願いしたいんです。詳細は契約して頂ければお話します。おおまかな内容としては、いくつかの森の探索をするので、陸地にいる間の護衛になりますね。
もう一つ仕事がありますが、それも契約をして貰ってからになります。契約内容は犯罪行為ではありませんし、今回の依頼で知った事を口外しないという契約になります」
「ワタルさんには恩があるし、犯罪行為でなければ大丈夫よ。でも、もしも契約の時に仕事内容を聞いて、私達が受け入れられない内容だったらどうするの?」
「酷い依頼ではないので大丈夫だと思います。ですが無理だった場合でも、契約内容に関する事を口外しない契約を結んでもらえれば、断って貰っても大丈夫です。依頼料もその時に決めますね」
「少しでも恩返し出来るなら私達も嬉しいから、依頼料は無料で構わないわ」
恩返しと言われても、大金を貰ってるからな、無料だとこっちが気まずい。
「依頼料が無料だと頼み辛いので、相場をお支払いしますよ」
「うーん、私達もほぼタダでパレルモまで連れて行ってもらったりしてるのに、依頼料を貰うのもどうかと思うのよね。そもそも、Aランクの冒険者を護衛に雇うって、なかなか無いし相場って幾らなのかしら?」
他の女性陣も知らないみたいだ。Aランク冒険者って護衛に雇わないの? ……採算が合わないからか? 偉い人なら自前の護衛がいる。街道を行く商隊の護衛なら、Aランクみたいな高ランクは護衛で必要ないのか?
大金持ちで、その身に危険が迫ってるとかだと高ランクの護衛も需要がありそうだけど、一般的な依頼じゃないのか。そう考えると、Aランク以上の冒険者は探索が主体になるっポイな。
「それは困りましたね、僕も無料だというのは心苦しいです。だいたい2ヶ月の拘束期間ですので、それで冒険者ギルドに計算して貰いましょうか」
「それは止めておいた方が良いわね。冒険者ギルドも魔導士様には興味津々よ。余計な注目を集めるだけだわ」
アレシアさんの言う通りか、興味を持たれてパリスとか追いかけて来たら最悪だ。船の結界に執着してたし、可能性がある所がかなり嫌だな。冒険者ギルドは止めておこう。
「あー、そうですね。止めておきます」
「……そうね、じゃあ、明日、商業ギルドに行きましょうか。契約内容を聞いて依頼料を決めるわ。それでいいかしら?」
「はい、お願いします」
翌日、ジラソーレ、イネス、フェリシアに囲まれて、商業ギルドに向かう。いつもなら嫉妬の視線が飛んで来るんだけど、ジラソーレの緊張感のある雰囲気に、仕事中と思われたのかスルーされた。
契約の間でダークエルフの事について話すと。喜んで協力すると契約を結んでくれた。アレシアさん達もダークエルフを奴隷にしているんだから、何かがあるとは思っていたようだ。移住までしている事には驚いていた。
契約内容は僕が関わる全てのダークエルフの事に関しての守秘義務だ。そして、どうやってダークエルフを探すのかを話した結果、非効率過ぎるとダメだしをくらった。
ジラソーレの皆さんいわく、見つけた森をただ探索するだけでは、情報も無く危険も大きい。出発する前に情報を集めるべきとの事だ。
ダークエルフを探している事を知られたくないと言うと、調べるのは、危険度が高く冒険者が寄り付かない森を調べるだけだからバレる事は無いらしく、後はその森の近くの村か町で情報収集をしてから森に入れば少しは楽になるそうだ。
言われてみればそんな気がするな、簡単に入れる森にダークエルフがいる訳も無いし、片っ端から探索するより断然時間短縮になるな。
何となく、森に隠れてるんだから片っ端から森を探せばいいやって単純に考えていた自分が恥ずかしい。考える事って大事だよね。
それからは、情報収集、食料の確保、ダークエルフを見つけ、移住する事になったら必要そうな物資の購入等はジラソーレが中心で動いてくれた。
ちなみに依頼料は10金貨になった。格安過ぎて、もっと払うと言ったがこれ以上は受け取って貰えなかった。
Aランクパーティーを2ヶ月拘束して1千万、ジラソーレなら、南東の島に1回行っただけでその位は楽勝で稼ぎそうだ。ここまで安くしてもらって良いのだろうか?
だって一流の人間が丸一日で3万行かないお金で雇える、時給なら千円ちょいだ。陸地に居る時だけの護衛と言っても。お得過ぎて申し訳ないな。
そんなこんなで、出発の準備を続けて数日。商業ギルドから白金貨が用意出来たと連絡が来た。護衛をしてくれているジラソーレと共に商業ギルドに向う。
「ワタルさん、お金を貰ったら直ぐに出発するの?」
ご機嫌なアレシアさんが質問して来た。冒険者だけあって旅に出る前はワクワクが止まらないらしい。ニコニコ笑顔が眩しいです。
「まだ目的地が決まってませんよ。ですが直ぐに決まったら今日中に出発すると思います。準備は出来ていますよね?」
「ええ、大丈夫よ。早く目的地を決めて出発しましょうね。楽しみだわ」
「そうですか? 僕は森に行くのは良いんですが、虫が苦手なんですよね。不安です」
「そう言えば洞窟でも嫌がってたわね。でも森だと虫は確実に出るわよ。大丈夫?」
「はは……なんとか我慢します」
我慢出来るかな……普通の虫なら、苦手だけど我慢は出来る。でもこの世界、虫の魔物も居るのが厄介だ。巨大ムカデの気持ち悪さを僕は一生忘れないだろう……
森に入ると虫系のトラウマが増えるんだろうな……止めたくなって来た。気分を切り替えて商業ギルドに入ろう。ザックザックの白金貨が待っているはずだ。カミーユさんを探し声を掛ける。
するとそのまま普通に奥の部屋に通される。もうFランク商人の扱いじゃ無いよね。上げる意味も無いんだけど、年会費を上乗せして商業ランクを上げるかな?
でもメリットって初めて行った商業ギルドや商会で、ナメられない位の効果しか無いんだよな。あっ、でも受付のお姉さんが優しくなるのなら上げる意味はあるか? ……考えておこう。
「ワタルさんお待たせしました」
そう言って紅茶を配ってくれるカミーユさん、出来る女性の雰囲気です。
「ありがとうございます」
お礼を言って紅茶を口に含む。美味しい。
「では、ワタルさん、こちらがお引き出しされた、242白金貨です。こちらは何故か時間が経っているはずなのに、最高品質の胡椒の代金です。色を付けて全部で225白金貨で買い取りになります」
……微妙に疑問を挟まれながら、合わせて467白金貨を受け取った。えーっとこれで全部で945白金貨か、目標の豪華客船まで、310白金貨か……それに遊ぶお金を考えると312白金貨は貯めたいな。
「ありがとうございます」
「いえ、大量の最高品質の胡椒、私共もとても助かっております。ちなみにですが、また胡椒を卸して頂けますか?」
にっこり笑顔のカミーユさん。後ろに獲物に食らいつく寸前のキツネが幻視出来るのは気のせいだろうか?
「え、ええ、ですが、そんなに沢山の胡椒を卸しては値崩れしませんか?」
「大丈夫です。確かにこの国だけでは捌ききれませんが、他にも胡椒を欲しがる国は沢山あります。私共にお任せいただければ、今回卸して頂けた量の数倍でも捌ききれますので、よろしくお願いしますね」
……それは、他の所に売ったら駄目って釘をさしてるんですね。分かります。まあ、商会に卸した方が圧倒的に高くはなるんだけど、まとめて卸せるほうが面倒が少なくて良い。取り合えず豪華客船が買えるまでは、定期的に卸しに来よう。
「はは、分かりました。僕も稼ぎ時なのでまた仕入れに行ってきます。その時はお願いしますね」
「はい、白金貨を用意してお待ちしております」
いつもの優しいカミーユさんじゃなくて、商売人のカミーユさんだったな。商業ギルドを出て、ルト号に戻る。
さっさと目的地を決めて、出航だ。まだ見ぬダークエルフの美女が僕を待っている……はずだ。
資金 手持ち 50金貨 21銀貨 38銅貨 ギルド口座 0白金貨 70金貨 貯金船 945白金貨 胡椒船 425艘
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。




