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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第六章
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11話 商業ギルドでの話と実験?

 カミーユさんに案内されて、上手にウソをつくんだと微妙に情けない決意を固めて商業ギルドのマスターの部屋に入る。


「おお、ワタル、来たか。いつも酒を貰って悪いな、感謝するぞ」


 相変わらず元気そうなお爺さんだな。活力に満ち溢れているお爺さん、なんかレアな気がする。


「いえ、お世話になっていますので」


「ふはは、袖の下として高価なものや金を贈って来る奴はおるが、お土産として酒を1~2本だけとは、なかなか面白かったぞ。純粋にお土産を貰うなどこの立場になって中々無いからの」


 ……あー、そう言えばそうかも、何となくお世話になったからってお酒を渡してたけど、ギルドマスターに贈り物って、賄賂の意味合いもあるのか?


 まあ、僕はジラソーレに媚びをうるのに集中してたからな、ギルドマスターには適当で済ませてしまった。喜んでもらえているみたいだし、結果オーライと言う奴だな。


「はあ、ありがとうございます?」


「マスター、その話はまたにして、本題をお願いします」


「ああ、そうじゃな。さてワタルよ、ジラソーレに魔導士殿を紹介したのはお主じゃと聞いたが、間違いは無いか?」


「魔導士様ですか? 確かに紹介しましたけど、どうかしたんですか?」


 これからウソをつきまくるんだよなー矛盾が出ないと良いんだけど。


「ふむ、事の重大さを認識しておらんのか? 魔導士殿が何をやったのか当然知っているのだろう?」


「いえ、暫く南方都市にいなかったので、分からないです」


「そうじゃったな。パレルモに行っておったんだったな」


 ん? パレルモに行ったのはウソにするつもりだったし、ギルドマスターなら僕がパレルモに行ってない事ぐらい掴んでるよね? 


 なんか話に乗ったらハメられる気がする。どうしよう? 予定通りパレルモには行っていない事にしておこう。


「いえ、パレルモに行くのは止めて別の所に行ってました」


「ほう……別の所とは、何処に行ってたんじゃ?」


「儲けの種なので秘密ですね」


「ふう、お主、自分の立場が分かっておるのか?」


 危険な事は重々承知しています。だからウソをつき通したいんです。今の所何とか自然にやれてるかな?


「立場ですか? Fランクの商人ですよね?」

 

「まあ、そうじゃがの、では、魔導士殿の活躍をまったく知らんというのだな?」


「はい、知りません」


 物凄い疑惑の目で見られてる。ウソをついてる事も完全に見抜かれてるみたいだ。まあ商業ギルドのマスターに僕みたいな若造がバレずにウソをつくのも無理があるんだろう。


 こうなったら白々しくても、都合の悪い事は意地でも認めない方向で頑張ろう。


「ならば、説明してやろう。魔導士殿は帝国海軍を降伏した者以外は皆殺しにして壊滅させた。ブレシア王国の第2王子様を徹底的に追い込み、民衆の前で土下座させた。帝国領内に強力な拠点を作りあげ、帝国を存亡の危機に追い込んだ。


 まあ他にも気に入らぬ貴族を潰した等、いくらでも話はあるが、大きいのはこの3つだな。これだけのことが起こって大騒ぎになっておるのに、知らぬとは無理があるのではないか?」


 えっ? そんな話になってるの? 悪意が凄いんだけど。ルッカでは結構良い評判が立ってたのになんで? しかも皆殺しって、沈んだ船から逃げ出した人もいるし、戦闘が終わったら助けてたよ? 他の人がだけど……


 とにかく話が大袈裟になってるな。情報を捻じ曲げて無慈悲な魔導士のイメージを作ろうとしているみたいだ……それに、殆ど、僕がやった事じゃないよね?


 関わった事は認めるし、僕が居なかったら出来ない事だったかもしれないけど、なんか納得がいかないな。


「魔導士様がそんな事をしたんですか? お優しい印象なので俄かには信じられないのですが……あと、僕が知らないのは、南の大陸に行っていたからですね。噂はそこまで届いていませんでしたし、カターニア王国の内乱の話でもちきりでしたから」


 適当に言っちゃった、でもいい加減内乱が始まっていても良さそうだし、何とかなるはず。南の大陸の情報自体が殆ど届かないんだしね。


「ふむ、内乱の話も興味深いが、また胡椒貿易に行っておったと言うのか? 南の大陸なら知らぬ事も無理は無いが、何故、ウソをついて胡椒貿易に行く必要があるのだ?」


「あー、それはですね、何度も胡椒貿易に成功したら、何か秘密があると疑われますよね? ですから、商業ギルドを通さずに胡椒を販売するために内緒にしていました」


「確かに、何度も胡椒貿易に成功すれば、探られるだろうな。それで、その秘密とは何なのだ?」


「あはははは、秘密です」


「お主は既に各国に注目されておる。ラティーナ王国も例外ではないのだぞ、南方伯様からの呼び出しも間違い無いだろう。素直に話しておけ。お主が魔導士殿ならば何とでもなるのかもしれんが、違うのなら秘密を守る事等できんぞ」


「はぁー、大事になってるんですね。ですが僕が秘密を話しても面倒事になりそうなんですよ。秘密を守って貰えますか?」


「ふむ、内容によるな。そもそもある程度は公表せんと周りの追及は止まらんだろうしな」


「そうなんですか、話さないと不味いのなら話しますが、公表する部分は考えて貰えますか?」


「考慮はするぞ。お主が納得できるかは分からんがな」


 考慮してくれるだけマシなのか? まあ元々話しても良いと決めていた部分だし、無理に隠す事もないか。


「分かりました。僕の船は魔導士様に売って貰った特殊な船なんですよ。ですから南東の島にも行けましたし、南の大陸も往復できます。


 こんな事がバレたら大騒ぎですよね? 自由に南の大陸にいけるんですから。魔導士様にもバレたら面倒事に巻き込まれるから、注意するようにと言われました」


「……それが本当なら、大騒ぎになるな。胡椒の輸入だけでも莫大な財産を築けるぞ。しかしその船を持っておるだけで、危険だろう、如何じゃ商業ギルドに売らんか? いくらでも出すぞ?」


「それは無理なんですよ。カミーユさんにも話したんですが、僕しか使えないようになっています。魔導士様は国とか組織が苦手らしく、自分の船を気に入らない奴に使わせる事はないと仰ってました。


 僕が居ないと船に入れませんし、僕を殺しても船は手に入らないそうです。まあ、僕に異変があったら分かるから、仇を討ってくださるそうですが、酷い目にあったり、殺された後に仇を討たれてもしょうがないですから、秘密にしていました」


「ふむ、カミーユ、今の話は本当か?」


「ワタルさんにしか船が使えない事は聞いた事があります。あと魔導船を売って下さる方の紹介をお願いしましたが、断られてしまいました」


「あー、なんだ、結局お主も危険人物ではないか、お主に手を出したら魔導士殿がやって来るんじゃろ? 十分な脅しだの」


「そうなのかもしれませんが、脅しになるのは魔導士様が有名になったからですよね? 魔導士様は殆ど隠遁生活でしたから、有名になるとは思わなかったんですよ。


 秘密にしておかないと、聞いた事のない魔導士様の後ろ盾では、船の事がバレたら攫われて殺されますし、出来るだけ目立たないようにお金を稼いで遊んで暮らす予定だったんですよ」


「まあ、どっちにしろ目立つのは避けられんだろうな。しかし確かめられる事は確かめさせて貰うぞ、結果に満足したなら魔導士殿の後ろ盾の話は広めておいてやろう。上の者ほど手を出し辛くはなるだろうが、信じぬ者、自分に都合の良い解釈をする者も必ず現れるぞ、注意しておく事だな」


 みんなが魔導士にビビッて一切手を出されない、ある意味快適な生活は無理か。まあ、権力者が躊躇ってくれるのなら上出来かな?


「はい、ありがとうございます。ですが調べると言っても何を如何するんですか?」


「なに、本当にお主しか使えんのかと、船に入れんのかと南の大陸と往復できる強度があるか調べるだけじゃよ。船に攻撃を受けたら魔導士殿は来るのか?」


「さあ、僕は、何をどう判断して魔導士様が来るのか知りませんから、何とも言えません」


「ふむ、実験も危険かの?」


「マスター、攻撃は止めておいた方が良いと思います。船が使えないのかの確認だけにしておくべきです」


 カミーユさんありがとうございます。ナイスフォローです。魔導士が来るとか吹いちゃったけど、来る条件とかなんにも考えてなかったよ。


「しかし、実力者でも中に入れん事を証明せんと話にならんぞ。魔導士殿が来たらワタルが何とかしてくれるのであろう?」


「……来たとして、怒らせたら僕の船も取り上げられそうなので嫌なんですが」


「……魔導士殿を説得するのか、各国、各ギルド、商人、犯罪者等に狙われるか、好きに選べ」


 狙われるバラエティーが豊富過ぎる。国も沢山、ギルドも沢山、商人も沢山、犯罪者も沢山、どんだけの人数に狙われる事になっているんだよ。


「はー、分かりました。実験に協力します」


「分かった、南方伯様には騎士団の実力者を、冒険者ギルドにも高ランクの者を出して貰おう。ワタル、明日はいつでも動けるように船で待機しておけよ」


「はー、分かりました」


「後は胡椒じゃな、バレたんじゃから商業ギルドにも卸すんじゃろうな?」


「色を付けてくれるのなら、ため込んでいる分を放出しますよ。何か起こったら逃げるので、現金での取引を希望します。あと口座のお金も下しておきたいです」


「お主、逃げる気まんまんじゃの。まあよかろう、現金を用意してやる。しかし時間は掛かるぞ」


「時間が掛かっても現金でお願いします。用意出来たら胡椒を持って来ます」


「ふむ、どの位の量を卸せるのだ?」


「そうですね……」


 どの位の量なら大丈夫なんだ? どうせなら全部売りたいんだけど、さすがにやり過ぎだよな……ボート60艘分、前回ギルドに卸した時の3倍位が妥当かな? 上手くいけばこれからはちょくちょく売りに来れるんだし。


「おそらく、前回ギルドに卸した時の3倍位は卸せますね」


「そんなにですか……分かりました、準備をしておきます。マスターよろしいですね」


「構わん、胡椒の売り先は幾らでもある。少し色を付けてやれ」


「はい」


「では、そろそろ失礼します。明日は船に待機していますので、使いを出してください」


「分かった」


 何とか商業ギルドのギルドマスターからの追及を乗り切った……無事に乗り切れたのか?


 上手くいったと言っても良い気もする。完全に目立たないってのは無理になったけど、魔導士様の後ろ盾効果で、目立たない事の最大の理由、権力者からの干渉も牽制する事が出来る。


 しかもある程度船の性能を話したから、胡椒をわざわざ売り歩く必要も無くなった。自分にしてはよい交渉が出来た気がするな。胡椒貿易に行くとか言って、ダークエルフを探しに行くのも良いかもな。


「イネス、フェリシア、ギルドマスターとの会話で問題になりそうな所はあった?」


「そうね、だいぶ疑われてるけど、ご主人様の話に合わせてくれたんだから、その話で手を打ってくれたんだと思うわよ?」


「そうですね。騙し討ちでも考えていない限り、ご主人様の筋書きにそって話を進めて下さるように感じました。大丈夫だと思います」


 ああ、なんだ、僕は上手くいったと思ってたんだけど、ギルドマスターが話に乗ってくれていただけなんだ……本気で恥ずかしい。


「そ、そうだね。じゃあ、ドニーノさんの所に行こうか」


「「はい」」


 ドニーノさんの所に向かい、お土産の蒸留酒を渡すと、機嫌よく工房で完成したばかりのリバーシとジェ〇ガを譲ってくれた。


 聞いた話だと商業ギルドも積極的に売り出してくれているらしい、評判も良いそうなので期待しておけと言われた。


 そう言えば今日、レシピの売り上げと龍の鱗の代金もカミーユさんに聞こうと思ってたんだけど、早く商業ギルドから脱出したくて、そのまま出て来ちゃったな。まあ次の機会に聞こう、今日はもう商業ギルドには戻りたくない。


 海猫の宿屋に寄ってジラソーレに会おうと思ったが、依頼に出ていて帰るのは夜になるそうだ。伝言をお願いして、ルト号に戻る。明日の実験、微妙に不安だな。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんでこんな状況になってまでここを拠点にすんの? ここ以外でも良い国なんていくらでもありそうだよ。 魔道士の噂が少ないところになんで行かないの? 教えて作者さん。
[気になる点] ここまで来ると、どうやったらランク上がるのか 逆に不思議にすら思えます(´・ω・)
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