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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第六章
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1話 第2王子と上から目線な騎士 

 帝国海軍との海戦も終わり、食料のルッカへの運び込みも終わった。帝国陸軍も動きが無く、フェリーに引き籠り堕落した生活を送っていると、王族の旗を掲げた中型魔導船と小型魔導船2艘が入港して来た。


「あー、ネス、シア、僕は面倒事が降り掛かって来そうな予感を、ひしひしと感じるんだけど、気のせいだったりしないかな?」


「気のせいだったら良いですが、無理そうですよね」


「ネスの言う通りですね。ご主人様、残念ながら希望を持った方が後で辛いと思います」


「やっぱり関わってくるかー。帝国軍に囲まれているのに、王族が入港して来るとか面倒事以外考えられないか」


「魔導士様、私達は、ルッカで待機しています。何か分かりましたらご連絡しますね」


「分かりました。アレシアさん、ガレット号を所持していると面倒な事になる可能性がありますから、ネスに送って貰ってください。まあ、いきなりガレット号を取り上げようとする事は無いと信じたいですが、用心しておきましょう」


「確かにそうですね、用心しておいた方が良さそうです」


 ネスにジラソーレをルッカまで送って貰い部屋に戻る。


「ふー、フードを被って演技をする以外は、今の状況って結構楽だったんだけどね」


「ふふ、そうですね。訓練以外は映画を観たり、お酒を飲んだり、結構のんびりしてましたね」


「うん、正直楽しかった。でもあの王族が僕に関わって来ないとは考え辛いし、頑張って出来るだけ接点を持たないようにしないとね」


「そうですね」


 イネスも戻って来たので、リムと戯れながら、今後の起こりそうな事を話し合う。


 ~アレシア視点~


 侯爵様が用意してくださった拠点に戻り、マリーナ、カーラ、クラレッタには緊急の場合を考えて、家族に話をしに行ってもらう。


 私とドロテア、イルマは今後の事を話し合う。ルッカを囲む帝国軍だけでも面倒なのに、王族なんて勘弁して欲しいわ。


「こんな危険な場所に、王族の方が入港して来たんですもの、目的は帝国軍を追い払う事で、魔導士様の話を聞いて、利用しようとしているんだと思うんだけど、どう?」


「アレシアの言う通りでしょうね。そして、接点を持っている私達が呼び出されるわ」


「そうね、2人の言った通りになると思うわ。問題はどなたがいらしたのか、魔導士様を如何しようとするのかね」


「あー、そうね。イルマは心当たりがあるの?」


「どうかしら? 王都を包囲される前に脱出の機会はあったはずだし、王女様方は危険な場所には来ないでしょうけど、王子様方は全員可能性があるわね。でも第4王子様は、まだ幼いはずだし、除外しても構わないかしら?」


「そうなると3人ね。私が知っているのは噂位なんだけど、王太子は文武両道の人格者。第2王子様は軍事に熱心なお方。第3王子様はよく知らないわ。誰か知ってる?」


 王族の事って関係ないって思っていたから、この位しか知らないのよね。イルマはよく第4王子様が幼いなんて知ってるわよね。


「第3王子様は元々外に出る事を好まない方だと聞いた事はあるわ。魔法が好きみたいね」


 ドロテアも詳しいわね、第3王子様が魔法好きとか一般常識なのかしら?


「2人の話からすると、こんな危険な場所に乗り込んでくるのは、第2王子様かしら? 王太子様は、立場的にも危険な場所に来づらいでしょうし」


「まあ、第2王子様でも包囲されている場所に来るのは問題があると思うけど、ドロテアの言う通り第2王子様の可能性が高そうね。そうなると、軍事に熱心なお方だけに、魔導士様への接触は確定よね。私達はどう対応するのか決めておかないとね」


 軍事に熱心って事は間違いなく、王都を包囲している帝国軍をどうにかするために動くわよね。ルッカは如何するつもりなのかしら?


「そうね、私達の目的は家族、友人の身の安全、次にルッカの防衛よね。なら、魔導士様の協力が絶対に必要よ。契約を守る事を第1に考えれば良いと思うわ」


「イルマの意見と後は王族の方の怒りを買わない事も重要よ。ブレシア王国は不利なのだから、怒らせたら乱暴な手段も取って来るわ。アレシアの頑張りに掛かっているわね」


「やっぱり私が受け答えをするのよね?」


「リーダーはアレシアだもの、当然そうなるわ。私とイルマは口を挟む事は出来ないでしょうね」


「ふー、頑張らないとね」


 下手したら私達を人質として魔導士様に言う事を聞かせようとするかもしれないわ。私達が人質になったらどうなるのかしら?


 ……なんだか想像できないわね。私達を助けようとはしてくれると思うのだけど。戦う姿とか想像できないし……どうなのかしら?


「ん? 誰か来たわよ。見て来るわね」


 お客様……このタイミングなら呼び出しかしら? 


「イルマ、呼び出しかもしれないから準備するわね。私とドロテアで行ってくるから3人に状況を伝えておいて」


「ええ、分かったわ。アレシアも頑張ってね」


「ええ」


 予想通り、侯爵様からの呼び出しで、城に向かう。


 ……この部屋は前に侯爵様が軍議をしていた部屋よね。……私、結構このお城に呼び出されているのに、謁見の間に入った事無いわね。普通なのかしら?


 促されて中に入ると、いつも侯爵様が座っている席に若い男性が座っている、王子様で良いのよね? 


「こちらはブレシア王国、第2王子、アルノルフ殿下である、跪かぬか」


「申し訳ありません」


 ボーっと見ちゃってたわ。慌てて跪き目線を下げる。やっぱり第2王子様だったわね。


「よい、軍議の場だ、立ち上がり質問に答えよ」


 立てって言われたんだけど、立ち上がって良い物なのかしら? こっそり叱責して来た騎士様に視線を送ると頷かれたので、立ち上がる。


「冒険者パーティー、ジラソーレのリーダー、アレシアと申します」


「うむ」


「アレシアと言ったな、魔導士の事について答えよ」


 質問は騎士様がするのね。やっぱり興味は魔導士様だったのね……正直に話せる事が少ないと言っておきましょう。


「申し訳ありませんが、契約により魔導士様について殆どの事を話す事が出来ません」


「話せる事でよい。残りは魔導士に直接聞く」


 直接? 魔導士様を呼び出したのかしら? ……来るのかしら? 魔導士様、ルッカに入れなかったの喜んでたし、もう入る必要は無いと思ってそうなんだけど。


「畏まりました。魔導士様は目立つ事がお嫌いで、自分の事を知られるのを嫌がります。その為、契約を結び、ほぼ話す事が出来ません」


 出発前に契約を結んでおいて良かったわね。この人達なら無理やり聞き出そうとする事もあり得そうだし……侯爵様でも契約を結んでいなかったら、無理やり聞き出されたのかしら?


「何も分からんではないか……どのような契約を結んでいるのかは言えるのか?」


 凄くイライラしてるわね。第2王子様のお側に居るんだから、身分は高いのだと思うのだけど……戦争中で気が立ってるのかしら?


「はい」


「話せ」


 なんかちょっとイラってするのは私の気が短いのかしら?


「はい、魔導士様達の情報を洩らさない事、攻撃に参加しない事、防衛関係では協力して頂ける事、脱出が必要な時は協力して頂ける事、偉い方との交渉に参加しない事、嫌がる事を強制しない事を条件に契約をして頂きました」


「……そこまで身元を隠したいのか。その契約は確認しても構わないのだな?」


「はい、侯爵様にもご確認頂いておりますが、お望みなら再度のご確認も問題ありません」


「そうか」


 騎士様が侯爵様に視線を送り、侯爵様が頷くのを確認している。


「ですから言ったではありませんか、この者達はたいして役に立たぬと。しかし、見目は麗しいですからな、やはりこの者達には魔導士を誑し込んで貰うのが一番ですな」


「な、なんで?」


 なんでヤコポ子爵がここに居るの? 捕まったでしょ?


「なんで? ああ、何で捕まったはずの私がここに居るのかという事かな? それは当然捕まった事が間違いだったからだよ。


 私はこの国に忠誠を誓う模範的な貴族だ。ルッカが解放され、あの巨大な船を見た時、私は直ぐに南の貴族を纏めていらっしゃる殿下にご報告申し上げた。


 不思議な事に侯爵様は詳しく報告をなされてなかったみたいでな、殿下が私の話を詳しくお聞きくださり、無実が証明されたのだよ」


 ……侯爵様をみると苦虫を噛み潰したような顔をしている。帝国に囲まれている所に、王族が来るのだから、噂を聞きつけたのだと思ってたのだけど、こいつの仕業か。


「私が前に言ったようにきちんと魔導士を誘惑しているかね?」


「いえ」


「いかん、いかんなあ、この国を、このルッカを愛していないのかね? ならば君達にも出来る事があるだろうに」


 ……調子に乗ってるわね、声だけでも分かる位に調子に乗ってるわね。最悪だわ。


「失礼致します」


「おお、戻ったか」


 側近の騎士様が答える。取り合えずヤコポ子爵の会話は遮られたわ。


「ん? 魔導士はどこだ?」


「申し訳ありません。船までは行ったのですが、船に触れる事も出来ず、呼びかけても返事すらありませんでした」


 あの騎士様が魔導士様を迎えに行ったのね。会えなかったみたいだけど。


「アレシア、どういう事が説明しろ」


 なんだかあの騎士様の言い方も嫌よね。侯爵様はきちんと対応してくださるのに、ヤコポ子爵に呼ばれてのこのこやって来る王族の騎士なんてそんなものなのかしら。


「申し訳ありませんが、契約により説明出来かねます」


「……会う事すら出来んのか。殿下の召喚に返事すらよこさぬとは無礼にも程がある」


「大隊長、巨大な船でしたので、私が大声で叫んでも聞こえていなかった可能性があります」


 あの騎士様って大隊長なんだ……騎士大隊長? そういえば名前すら聞いてないわね。


「……入港した時に見たが確かに巨大な船だったな。アレシア、お前は魔導士と会う事は出来るのか?」


 お前ってどういうことなの? この騎士様、口が悪過ぎよね。どこかのギルドマスターを思い出して不快だわ。帰ろうかしら……駄目ね、ここで切れたら家族にも害が及ぶわ、我慢するのよ私。


「はい、会う事は可能です」


「では、そこの騎士を連れて、魔導士に会って来い」


「申し訳ありませんがいたしかねます」


「契約か……ならばお前が行って、身元を明らかにさせ呼んでくるのだ」 


「お話をお伝えする事は可能です。ですが、魔導士様の嫌がる事は出来ませんし、偉い方との交渉には参加しないという契約がございますので、呼んでこれるかどうかは分かりません」


「……殿下がお呼びだと伝えろ。国に逆らう怖さが分からぬ訳ではあるまいと言えば、直ぐにでも飛んでくるであろう」


 どうなのかしら? 国と魔導士様の戦い……私なら魔導士様につくわね。そもそもこの国の方でもないし。その上、この国は滅びかけているのに、なんでそんなに強気なのかしら? 理解出来ないわ。


「殿下、魔導士殿の能力を全て把握したわけではありません。礼を尽くして協力を仰ぐべきと愚考します」


「侯爵様、甘いですぞ。何処の馬の骨とも分からぬ魔導士です。身元を明かさぬのも、国には逆らえないからですぞ。きちんと力の差を分からせ、あの巨大な船を取り上げ、従属させないと今後が使いにくいのです」


 ヤコポ子爵の増長っぷりが鼻につくわね。余計な事ばっかり言って。


「そうは言うが、国に逆らえぬと確定したわけでもあるまい。危険だぞ」


「ふむ、侯爵の言う事も一理あるが、隠れる者の大半が力の欠点を持つ事は確かだ。ブレシア王国を救うためには使いやすい駒が必要なのだ。ヤコポ子爵の言を取る。よいな」


「「はっ」」


 私は侯爵様の案の方が良いと思うけど。魔導士様の能力は理不尽だし。でも困った事になったわね、ルッカを防衛出来る可能性が高まったのに、王族が来たせいで、余計な手間が増えたわ。


 特にヤコポ子爵……家族の身の安全には最大限の注意を払わないと。


 ~アレシア視点終了~


「ご主人様、船が来ています。今はネスが見つからないように見張っていますが、騎士様が何か叫んでいるようです」


「ん? 騎士様? 間違いなく王族の船と関係あるよね。取り合えずコッソリ様子を見に行こう」


「はい」


 船が来ているタラップの所に行くと、騎士様が何か叫んでいるのが聞こえる。見張っているネスに近づき話を聞く。


「ネス、お疲れ様。騎士様は何て言ってるの?」


「第2王子様がご主人様にお会い下さるそうです。身元を明らかにして同行するようにと、同じ事を繰り返しています」


「……お会いしたくないんだけど。取り合えず聞こえなかった事にして、アレシアさん達を待つのは駄目かな?」


「いいと思います。聞こえなかった事にすればどうしようも無いですし、アレシアさん達に話を聞いてからの方が状況も分かります」


 シアも頷いてるし、このまま聞こえなかった事にしよう。ストロングホールド号の大きさが思わぬ所で役に立ったな。


「じゃあ、そうしようか。アレシアさんが戻るまではのんびりしてよう」


「「はい」」


 リムと戯れ、ネスとシアにいたずらをしながら、アレシアさん達が来るのを待つ。1時間程でアレシアさん達が小舟に乗って戻って来た。


「皆さん、お疲れ様でした。大丈夫でしたか?」


「私達は問題ありませんが、ルッカに来られた第2王子様の目的は魔導士様と船でした。ヤコポ子爵が王子様に魔導士様の事を詳しく報告したようです」


「ヤコポ子爵、どんな人なんですか?」


「ルッカの海軍の隊長で、私達に体を使ってでも魔導士様を籠絡しろと言ってくるような奴です。捕まったので安心してたんですが、王子様に牢から出して貰っていたようで、今日の軍議にも出ていました」


 周りを見るとジラソーレのメンバー全員が嫌そうな顔をしている。僕的にはちょっと嬉しい命令を出してくれてるんだけど。


「あー、そうなんですか。取り敢えず、食堂で話しましょうか」


「はい」


 食堂に向かい、コーヒーを飲みながら話を再開する。


「それで、アレシアさん、こちらにも騎士様が来ました。聞こえないふりをして帰って貰いましたが、関係ありますよね?」


「はい、私が城に呼び出された時、既に魔導士様の所にも騎士様を派遣していたようです。魔導士様の身元を明らかにして、城に連れて行くのが目的みたいでした」


「そんな事を叫んでいましたね。それで、アレシアさんの方はどうでした?」


「私の方は、魔導士様の事を聞かれましたが契約を盾に、契約内容と魔導士様が身分を明らかにするのが嫌な事以外は話していません。しかし、魔導士様に伝言を頼まれました。身元を明らかにして城に来るようにとの事です」


「やっぱりそうですか。面倒事ですね」


「申し訳ありません。それで、契約で強制が出来ない事を告げましたら、殿下がお呼びである事と国に逆らう怖さが分からぬ訳ではあるまい、と伝えるように言われました」


「完全に脅しに来てますね。そんな人達に会いたくないんですが、どうしましょう?」


 国に逆らう怖さ? 怖過ぎて逆に分かりません。うーん、どうしようか、身元を明らかにするのは論外だし……逃げるか? アレシアさん達の家族と友人だけ連れてさっさと逃げるのがマシな気がする。


「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」


「この件に関わる時に面倒事は覚悟しましたし、構いませんよ。それより身元を明らかにするのは論外なので、皆で逃げる方向でいいですか?」


「はい、少し時間を頂きたいのですが準備をしておきます」


「ご主人様、少し良いですか?」


「ネス、何かアイデアがあるの? 話してみて」


「まず、呼び出しに応じる理由も、国と敵対する事を恐れる理由も無いと思います。ご主人様はこの国の人間ではありませんし、国に逆らうのは、帝国に喧嘩を売っている時点で今更ですよね?


 相手が下手に出て来るならまだしも、脅して来たのなら逃げたら舐められます。脅し返して、徹底的に後悔させる事が必要だと思います」


 ……なんかネスが怖い事を言い始めたんだけど、どうしよう。 

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。


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