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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第五章 フェリーと戦争
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18話 商談と侵入者対策

 ルト号でオーフスの港に入りネスが確保していたスペースに停泊する。大勢の見物人が集まって来てるな。あのサイズの船でも相当目立つ。豪華客船ならどうなるか想像すると怖いな。


 注目を集めながら、港に戻って来たマリーナさんと合流してゴッフレード商会に向かう。


「マリーナさん、ゴッフレード商会で商会長に会えましたか?」


「はい、会えました。魔導士様が来る事、詮索はしない事、ルッカの侯爵様の手紙を持っている事を伝えました。魔導士様が来るまで商会で待機してくれるそうです」


「分かりました。ありがとうございます。ドロテアさんは商会で合流するんですか?」


「どの位時間が掛かるか分からないそうで、商会で合流するか、ルト号で合流するか分かりません」


「分かりました。時間も無いですし、先に交渉しておきましょうか」


「はい」


 マリーナさんの案内に従い、ゴッフレード商会に入る。話が通っているので、スムーズに商会長の所まで案内されるらしい。こんな怪しい人物をすんなり通すなんて、どんな話をしたのか気になるな。


「ようこそ御出で下さいました。ゴッフレード商会、商会長のイサルコと申します。よろしくお願い致します」


 凄い丁寧に出迎えられた、魔導士は嘘で単なるFランク商人なんですってバレたらどうなるんだろう……バレないように本気で頑張ろう。


「申し訳ないが、身元を隠している。魔導士とでも呼んでくれ。これが侯爵様からの手紙と代金だ、よろしく頼む」


「畏まりました。拝見します」


 商会長が手紙を読む間の沈黙が気まずい。あんな感じの少し偉そうな態度で問題無いのか、不安でしょうがない。


「拝見いたしました。ルッカの事は心配していたのですが、魔導士様のお力で港が解放されたのですね。ありがとうございます。それで、手紙には20白金貨で日持ちがする食料を出来るだけ多く仕入れるように依頼されていました。


 ドロテアさまが領主様に話を通して頂けるそうなので、そちらは問題無いのですが、量が量なので、商業ギルドにも話を通さねばなりません。少し時間を頂けますか?」


「無理を言っているのは分かっている。食料を集めるのに時間が掛かる事も承知している。だがルッカの状況を考えると少しでも早い方が望ましい。出来る限り急いでもらいたい」


「畏まりました。出来る限り迅速に行動します。集まった食料はどちらにお運びすれば良いでしょうか?」


「港に入れなかったが、少し離れた場所に大型船を停泊させている。面倒とは思うが、集まった食料は船でそこまで運んでほしい」


「畏まりました」


「よろしく頼む」


 ただの嫌な奴になってそうで怖いが、偉そうな態度とかこれが限界です。早く帰りたい。細々した事を決めながら、商談を最後まで詰める。


 オーフス商会は中型船を所有していて、その船に積み荷を纏めてストロングホールドに運んでくれるそうだ。


 商談を終えて、観光もせずにルト号に戻る。


「ふー、やっと終わりましたね。あんな態度で良かったんでしょうか?」


「ご主人様の態度は好印象だったと思います。素晴らしい方もいらっしゃいますが、殆どの魔導士様は、魔法狂いか、エリートで傲岸不遜な方で、お付き合いしづらいと言われていますから」


「そ、そうなんだ」


 ネス、知ってたんなら教えてよ。……精一杯偉ぶった結果が好印象? 魔導士ってどんだけなの? 魔法狂いの方はマッドサイエンティストって感じで、エリートの方は全てを見下す自分が一番みたいなタイプか? どちらも近づきたくないな。


「そうですね、私が言付けに行った時、魔導士様が来ると聞いて色々と注意点を聞かれました。逆鱗に触れる事を恐れたのでしょう」


「では、ある程度まともな魔導士が来たと思われたんでしょうか? 魔導士じゃないと見破られたりしませんか?」


「侯爵様のお手紙で、港を解放した事を書かれていたので、疑いを持たれる事は無いと思います」


「ふー、良かったです」


 何となくフードを被った怪しげな魔導士って感じの怪しい人物になろうとしたら、意外と好印象って、予定外にも程があるな。演技をするのなら、魔導士の情報位集めておくべきだったか。


「後は、ドロテアさんが戻ってきたら話を聞いて、今後の予定をたてましょう」


「「「「はい」」」」


 せっかくの新しい街なんだから胡椒を卸したいんだけど、それは流石に駄目だよね。胡椒の在庫がなかなか減らないな。


『わたる』


 ポヨンとリムが飛び付いて来た。


「どうしたの?」


『ふうちゃんもぶるぶる』


 ふうちゃんもぶるぶる? ……リムがぶるぶるって言うのは、マッサージチェアの事だよね。


「リム、ふうちゃんもマッサージチェアに乗せたいの?」


『うん』


 よっぽど楽しかったのか、ふうちゃんに布教活動をおこなったみたいだ。今の所問題は無さそうなんだけど、見た感じが不安になるから避けたい……ふうちゃんも飛び付いて来て『……ぶるぶる……』と伝えて来る。リムの話を聞いて興味津々みたいだ。


「うーん、マリーナさん、リムがマッサージチェアに乗ったのが楽しかったらしく、ふうちゃんにも教えたんです。ちょっと不安になる光景ですが、体調には問題無さそうなので乗せても構いませんか?」


「気になる言葉もありますが、私がいる時なら大丈夫です。ふうちゃんが乗りたいと言うのなら、お願いします」


「分かりました。じゃあリム、ふうちゃん、大きな船に戻ったらね。でも僕とマリーナさんが終わりって言ったら直ぐに止めるんだよ。約束出来る?」


『うん』


『……できる……』


 リムとふうちゃんが喜んで、ポヨンポヨンと跳ねている。可愛いんだけど、マッサージチェアの光景を想像すると和めないな。


「おっ、ドロテアさんだ」


「ただいま戻りました」


「お帰りなさい。お疲れ様でした」


 なんか疲れているように見える。面倒な事を言われたのかな?


「ドロテアさん、疲れているようですが、何か問題が起こりましたか?」


「いえ、ルッカが落とされるとオーフスにも影響が出るので、食料の購入も許可が下りました。援助もして下さるそうです。ただ領主様が魔導士様や巨大な船に興味を示されて、色々と質問されましたので、気疲れしているかもしれません」


「あー、なるほど。ストロングホールド号は目立ちますよね。申し訳ありません」


「ルッカに食料を運んで貰う為の船なのですから感謝しかありませんよ。魔導士様の事も契約をしていたので問題無く済ませる事が出来ましたし」


「そうですか。ありがとうございました」


「いえ、それで帰りにゴッフレード商会に寄って、領主様からの言葉も伝えておきました。明日の早朝からそれまでに集まった荷物を運搬できるそうなのですが、どうしますか?」


「早い方が良いですし、お願いしましょう。荷運びの為のチケットを30枚程作って後で渡しに行きましょう。あっ、先に船へ戻って積み込む場所は偽装しておかないと駄目ですね」


「チケットを作って頂ければ私が届けて来ます」


「ドロテアは休んでいて、私が届けて来る」


「そう? じゃあマリーナにお願いするわね」


「うん」


「では、マリーナさん、これがチケットです。船体左後方の乗車口を開けておきますので、そこから積み込むように伝えてください」


「はい、では行ってきます」


 マリーナさんを見送り、戻って来るまで、雑談をしながらのんびりする。


「領主さまも援助してくれるのは驚きでしたね。ここからルッカまで魔導船で4日の距離なので、帝国を警戒して食料の備蓄を始めてもおかしくないと思うんですが」


「備蓄はしていると思いますが。それを減らしても、ルッカに援助をして帝国を撃退してもらった方が良いと考えたのかも知れませんね。ブレシア王国が帝国を抑えている間はテッサロニキ王国は平和ですから」


「なるほど。ドロテアさん、テッサロニキ王国からブレシア王国に援軍を出すとかは無いんですか?」


「国同士の仲は悪くないので、援軍の話も出ているとは思いますが、詳しい事は分かりません」


「そうですか、援軍が来て帝国軍を撃退出来れば、楽なんですが」


「私達としても嬉しいですが、国としてはそんなに簡単に借りを作る訳にもいかないのかもしれませんね」


「難しいですね」 


「はい」


 暗くなる話は終わらせ、とりとめのない話を続けていると、マリーナさんが戻って来た。


「マリーナさん、お帰りなさい」


「ただいま戻りました。明日の朝から積み込みを開始するそうです。領主様が他の商会にも声を掛けて下さったそうで、明日から3日間で20白金貨分と、領主様からの援助物資も運び終わる予定だと言っていました。


 それで、他の商会の船も使うので、あと30枚はチケットが必要だそうです。お願い出来ますか?」


「分かりました、お願いします」


 チケットを受け取り、そのまま届けに行くマリーナさんを見送る。うーん、最初から多めに発行しておけば良かったな。


 再び時間を潰してマリーナさんが戻って来てから、ストロングホールド号に戻る。忘れないうちに駐車場を木製に偽装して、出入り口は1ヵ所以外は塞ぐ。 これでここを見張れば、内部からは入り込めないだろう。


「みなさん、チケットを渡したので、それを手に入れた人が面倒な事を企む可能性もあります。まあ殺傷行為は出来ませんので身の安全は大丈夫ですが、船内でも注意はしておいてください」


「でも、船内の設備が見られると厄介そうですね。駐車場以外は偽装しないのですか?」


「した方が良いでしょうか? ドロテアさんはこの船に侵入する事は出来ますか?」


「私よりマリーナが詳しいですね。マリーナ、斥候として侵入するとしたら出来そうかしら?」


「チケットがあれば、斥候専門なら侵入も可能だと思います。道具を駆使すれば上まで登れますので」


「うーん、船内の設備を見られるのは面倒ですね。じゃあ、ルッカに食料を届け終わるまでは、自室以外は偽装しましょうか。部屋はあのチケットでは使用できませんからね。


 後は、外から内部に入れないように扉も全部偽装しましょう。窓と電気が無くなり暗くなりますから、基本的にライトの魔法で行動してください」


「「「「「はい」」」」」


 面倒だけど、船内を船偽装していく。マッサージチェアの所でリムからの意思が伝わって来る。……そうだった、約束していたからしょうがないな。


 マッサージチェアに銅貨を入れて、リムとふうちゃんを乗せる。プルプルプルプルプルプルプルプル……高速プルプルが始まった。何度見ても心臓に悪い。


「ワ、ワタルさん、大丈夫なんでしょうか?」


「はい、僕もこの光景は不安になるんですが、リムは楽しいらしいです」


「そうですか……」


 マリーナさん、魔導士様設定を忘れる程の衝撃だったのか。ドロテアさんと一緒に心配そうにリムとふうちゃんを見守っている。


 やっとマッサージチェアの時間が終わり、すぐさまリムとふうちゃんを回収する。


「リム、気持ち悪くなってない? 大丈夫?」


『だいじょうぶ』


「そう、なら良いんだけど、調子が悪くなったら直ぐに言うんだよ」


『うん』


「マリーナさん、ふうちゃんは何て言ってますか?」


「……とても楽しかったそうです」


「……そうですか」


 スライムには高速振動が楽しく感じるのか? 謎がいっぱいだ、さっさと偽装してしまおう。マッサージチェアを普通の椅子に偽装すると、リムから悲しみが伝わって来る。ルッカに戻ったら解除する事を伝えて納得してもらう。


 一通り偽装を終えて、夕食を済ませてしっかりイチャイチャして眠りにつく。


 それから3日間、引っ切り無しに食料を積んだ船が往復して大量の食料を運び込んだ。殆どの人が船の大きさ、駐車場のスペースの広さに驚きながらも、しっかり荷物を積み込んでくれた。


 ごく僅かな怪しい人が、何とか船内に潜り込もうと躍起になっている。1つしかない見張り付きの扉は早々に諦めた様で、マリーナさんが言ったように、夜中に道具を使ってコッソリ侵入しようとして来た。


 チケットは60枚しかないのに、そのうちの10人が現在侵入しようと頑張っている。


「ドロテアさん、侵入しようとして来てる人達は全員帝国の人なんでしょうか?」


「帝国の人間もいないとは言えませんが、簡単にチケットを入手している所を見ると、オーフスの領主様から送られて来ていると思います」


「この街の領主様がですか?」


「はい、このような船に乗っている魔導士様が気になるんでしょう。少しでも情報を集めようと派遣された可能性が高いです」


 あー、ルッカの援助はするけど、怪しげな魔導士の情報も知っておきたいって事か。気持ちは分かるな。


「捕まえた方が良いですか?」


「いえ、ああいう仕事の者は拷問でもしないと情報は話しませんし、重要な情報自体持っていないでしょう。私達は拷問などした事無いですし、捕まえるだけ無駄だと思います」


「そうですか。では夜も遅いですし交代で見張りながら休みましょうか」


 ある意味助かったな。捕まえて拷問しますか? とか言われたら、かなり怖い。


「「「「「はい」」」」」


 侵入者達は上まで登って来ても、壊す事も出来ない壁に、内部への侵入方法も無く、日が昇ると半分は帰って行き、もう半分は今も物陰に隠れているそうだ。


 帰る時に今回発行したチケットは取り消すつもりなんだけど、隠れてる人達は大丈夫なのか? そういえば船内から乗船拒否で排除される人を見た事が無いな。あの人達で試させてもらおう。陸まで近いし泳いで帰れるよね?


 微妙に面倒な事が起こりながらも、荷物の積み込みが終わった。ルッカに戻るか。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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