7話 角兎狩りと小屋完成
朝だ……身支度を整え洗濯物を取り込みギルドに出発する。なんか、この行動も慣れたな。
クエストボードを見るが、やっぱり角兎狩りが1番効率がいい。この品質のいい角兎10羽納品でいいな。異世界にきてから角兎としか戦ってないけど、このままでいいんだろうか?
でもなー、ゴブリンとか怖いし、角兎でも生活できるんだよなー。考え事をしながら受付カウンターに依頼表を持っていく。
「おはようございます、この依頼をお願いします」
綺麗な人族のお姉さんだ、キツネミミのお姉さんはいないようだ。お休みかな?
「おはようございます、角兎10羽納品依頼ですね。昨日と同じ品質なら問題ないですから、頑張ってください。あと、昨日報告頂いた南西の森から出てきたゴブリンは、討伐されましたのでご安心ください」
「ありがとうございます、頑張ってきます」
うわー、危ない。ゴブリンの事を完全に忘れてたよ。普通に依頼を受けちゃったけど、ゴブリンが討伐されてなかったら、ヤバかったな。
***
屋台で朝食を3銅貨分買って、南西の草原にいく。小屋船と備品の為にお金がいるから、夕方までしっかり稼ぐぞ。
いつものように角兎が出てきたので船召喚しようとする。おっとそうだった、ゴムボートが召喚できるようになったんだ!
微妙にテンションが上がる。オールもアルミ製だし、攻撃力がどうなるか確認するつもりだったのを忘れてた。
しばらくゴムボートで角兎を狩って試してみよう。ゴムボートを船召喚しながら、普段通りに角兎発見→船召喚→殴打→血抜き→船送還を繰り返す。
うーん……角兎の血抜きをしながら今日の戦闘を振り返る。ゴムボートは、船底が柔らかいのが少し気になるが、斜めになってないだけでかなり戦いやすい。オールもアルミ製で先はプラスチックだけど、軽くても角兎相手には十分だ。
しかし、最近異世界に慣れてきて油断している気がする。ゴブリンの事も、ゴムボートの事もすっかり忘れてた。油断してると思わぬミスをするし、改めて気を引き締めよう。
平らな足場って素晴らしい。ゴムボートのよさを再確認しながら角兎を狩っていく。しかし結構な数の角兎を狩ってるけど、狩場の角兎が少なくなったように感じないな。魔物だから、普通の兎とは違う増え方なんだろうか?
疑問に思いつつも、夕方までしっかり狩りを続ける。結構頑張ったし、かなりの数を狩れたはずだ。数えてみよう……47羽、新記録だ! あっ、袋に入らない。完全に忘れてたな、また蔓でしばって戻るしかないか? でも、角兎を丸出しで担いで帰るのって結構恥ずかしいんだよな。
そうだ、冒険者初心者セットに袋がついてたはずだ。さすが初心者セット、初心者に優しい品揃えだ。そういえば、セットのポーションも放置してたな、身に着けておくべきかもしれない。
***
無事に角兎を袋詰めにして冒険者ギルドに戻ると、夕方だからか受付カウンターには行列ができている。おっ、キツネミミのお姉さんもいるな、でも行列ができている。
空いてるカウンターを探すと……いかつい顔のおっさんがいた。当然のように、いかつい顔のおっさんのカウンターは空いている。
……キツネミミのお姉さんのところに並ぶか迷ったが、おっさんと目が合ってしまったので、しぶしぶおっさんのところにいく。
「依頼の確認をお願いします」
「おう、ギルドカードを出しな」
やっぱり綺麗なお姉さんがカウンターにいるのって、効果抜群なんだな。疲れて帰ってきて、いかつい顔のおっさんと話すだけで、こんなにもテンションが下がるなんて、予想外だ。
綺麗なお姉さん達のカウンターに行列ができているのも納得できる。次からは俺も綺麗なお姉さんのカウンターに、必ず並ぼう。
「はい、それと納品依頼の角兎10羽です」
「おう、品質も問題ねえな、10羽で1銀貨だ」
「ありがとうございます」
さて、残りの角兎も買い取りカウンターに持っていくか。
「こんにちは、角兎の買い取りお願いします。37羽です」
「おう、毎回、沢山狩ってきてくれて助かるよ」
「そんなに需要があるんですか?」
「おう、あんちゃんの角兎は卸すところが違うんだ。他の冒険者もついでに角兎を狩ってくるが、それは串焼きとかスープになるな。あんちゃんの持ってくる角兎は丸焼き用だ。安くて見栄えがして、美味い」
「角兎の丸焼きですか? 美味しそうですね」
なにより、丸焼きって原始的な響きに魅かれる自分がいる。
「おう、角兎の丸焼きは人気なんだよ。でも、角兎は角兎だからな。買い取り価格を、あまり上げるわけにもいかなくて、結果品薄なんだよ」
「へーそうだったんですね。角兎の丸焼き、今度食べてみよう」
この調子なら、お金にも余裕ができそうだし、何よりも自分で討伐しているんだから、持ち込みで作ってもらえば安くなりそうだ。
「おう、美味いぞ。それでな、最近高品質な角兎を結構卸してるから、クエストボードの依頼にも角兎の依頼が増えてくると思うぞ。いままでは依頼を出しても塩漬けになっちまって、依頼が出なくなってたからな」
「依頼表をよく確認してみます」
「おう、頼むな。それで代金だが、37羽、全部高品質だ。1羽8銅貨で2銀貨96銅貨になる。いいか?」
「はい、お願いします」
角兎の丸焼きかー、先の楽しみが増えたな。今日も十分稼げたし、宿に戻るか。いや、小屋用の備品を探しておこう。ギルドの売店にも売ってそうだし、いいのがあったらサクッと揃えてしまおう。
「いらっしゃいませ、何をお探しですか?」
いつもの可愛い系の店員さんが出迎えてくれた。
「えーっと、ロープと毛布、カンテラがほしいです。あと木箱があれば3箱お願いします」
「ありますよー、ロープ5銅貨、毛布10銅貨、カンテラが15銅貨、木箱は1つ3銅貨ですね」
「お願いします」
さすが冒険者ギルドの売店だな。冒険に必要そうなのは大抵揃ってそうだ。
「全部で39銅貨です」
「はい」
必要ない物は木箱に入れて木製ボートに乗せておけばいいな。宿屋の裏に回り、人がいないのを確認して手漕ぎボートを呼び出す。木箱にすぐ使わない物を入れて、さっくり送還。人目が気になるが、それを除けばかなり便利だ。よし、宿に戻って夕食にしよう。
「すいません、今日も1泊夕食付きでお願いします」
「あいよ、15銅貨だね。もう夕食は食べられるよ」
「はい、さっそく頂きます」
夕食を食べて水浴び、洗濯をして部屋に戻る。あー、明日は夕方の6の鐘に小屋が届くな。必要な物はボート以外は買ったし、明日狩りに出た時にゴムボートをもう1艘買っておけば、準備は万端だな。
残金も401銅貨残ってる。ゴムボートを買っても160銅貨残る。個室の宿屋に移動するか? もっと時間かかると思ったけど、角兎が案外お金になる。これから依頼も増えそうだし、個室に移るのもいいかもしれない。
明日までは小屋の受け取りとかあるし、この宿屋に泊まってそのあとか。角兎を30羽狩れば最低でも240銅貨。約2万4千円になるから、日本のバイトより高額だ。
でも、何が起こるかわかんないんだよな異世界……余裕が欲しいし20銀貨貯まるまでこの宿に泊まってそれから移ろう。調子に乗ってもろくな事がない。
宿を移ってもやっていく稼ぎは出るだろうけど、怪我したりお金が急に必要になるかもしれない。準備と余裕は大切だ。
方針も決まったし、眠くなるまで生活魔法の特訓をしよう。魔力を指先に集めては戻すを繰り返す。落ち着いた場所で、時間をかければ生活魔法は使えそうだが、まだまだだな。最低でもあまり意識しないで、魔力を集めれるようにならないと野外では役に立たなそうだ。
眠くなって来たなステータスチェックして寝るか……。
名前 豊海 航 とようみ わたる
年齢 20
種族 人間
職業 船長
レベル 7
体力 220
魔力 20
力 24
知力 34
器用 30
運 15
スキル 言語理解 (ユニーク)
船召喚レベル1 (ユニーク)
レベルが上がってる。……某有名ゲームで、お城の周りでスライムを倒してるみたいな感じっぽいよな。まあいい、寝よう。お休みなさい。
残高401銅貨
***
パチッと目が覚める。すっかり早寝早起きが身に着いてしまった。夜遊びして、昼まで惰眠をむさぼる生活が懐かしいな。すこし、センチメンタルな気分になったが、いつものように身支度を整え、洗濯物を取り込んでからギルドに向かう。
クエストボードを見ると角兎の納品依頼が2つ見つかった。両方とも10羽納品すればいいので、合わせて20羽なら、余裕をもって依頼達成できそうだ。……2つ同時に依頼受けてもいいんだろうか? ちょっと聞いてみるか。
おっ、キツネミミのお姉さんがいる。結構久しぶりな感じがするな。
「おはようございます。依頼って2つ同時に受ける事ができますか?」
「おはようございます。依頼は無理がない範囲であれば、いくつでも受ける事ができますよ」
相変わらず優しく教えてくれるキツネミミのお姉さん。素晴らしいです。
「では、この2つをお願いします」
「はい、依頼を受理しました。頑張ってくださいね」
「はい、頑張ってきます」
うわー、僕ってチョロイ。美人なキツネミミのお姉さんに、お義理で頑張ってくださいって言われるだけで、すごくやる気になってる。冒険者ギルドに転がされてるね。
朝食を3銅貨で買って、兎狩りだ!
南西の狩場に着くころには少し気持ちが落ち着いた。えーっと、今日の予定は、まずゴムボートを買う。次に角兎を最低20羽以上狩る。6の鐘には小屋が届くから夕方には宿に戻れるように帰る。
結構単純だな。まずはゴムボートを買ってしまおう。購入画面でビッグ フィッシング ゴム ボートを選択。色は……今度は青にするか。2銀貨40銅貨を支払い、さっそく船召喚画面をみる。
船召喚 レベル 1
購入した船を召喚することができる。
購入した船に限り最善の状態に保ち、自由に操船することができる。
購入画面から新しく船を購入することができる。
初期 手漕ぎボート(木製) 人数制限2
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 ビッグ フィッシング ゴム ボート(深緑) 人数制限4~5
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 ビッグ フィッシング ゴム ボート(青) 人数制限4~5
特性 不沈・不壊 乗船拒否
うん、ちゃんと増えてるな。それでも確認の為に一応召喚してみる。当たり前だけど、色以外に違いはない。満足したし、そろそろ角兎を狩ろう。
ルーティンワークのお時間だ。角兎発見→船召喚→殴打→血抜き→船送還。最近は何も考えずにできるようになった。ところどころ休憩を挟みながら、サックリと38羽角兎を狩った。夕方から用事もあるし、そろそろ戻ろう。
ギルドに戻ると、美人のお姉さんのカウンターには相変わらず行列ができている。今日は美人のお姉さんのカウンターに並ぼう。
……いかつい顔のおっさんがこっちを見ている。……いかつい顔のおっさんが強い視線でこっちを見ている。……諦めて重い足取りでおっさんカウンターに向かう。
「依頼の確認をお願いします。ギルドカードと角兎20羽です」
「おう」
他の美人のお姉さんのカウンターに並んでいる冒険者達は、どうやってこのいかつい顔のおっさんから逃れているんだろう? レベルが足りないのかな? もっと強くなれれば、このいかつい顔のおっさんから逃れられるのかな?
「おう高品質の角兎20羽で間違いねえな。2つの依頼達成で、2銀貨だ」
「ありがとうございます」
重い気分のまま買い取りカウンターに向かう。なんだかそれほど疲れてなかったのに、いかつい顔のおっさんと話すだけで疲れが噴出してきたような気がする。
「角兎18羽、買い取りをお願いします」
「あいよ、依頼は増えてたかい?」
「ええ、2つ依頼が出てまして、20羽は依頼で納品しました」
「そうかい、まだ増えると思うよ」
「そうなんですか?」
「ああ、角兎を買いにくる店が増えたからな。確実に手に入れる為に、依頼をだす店はまだまだ増えそうだぞ」
「あはは、頑張ります」
なんか角兎に波がきたらしい。このビックウェーブ、逃す訳にはいかないよな。目指せ、角兎長者!
「18羽、全部高品質だね。1羽8銅貨、全部で1銀貨44銅貨だね。いいかい?」
「はい、お願いします」
そろそろ6の鐘が鳴りそうだな、宿屋に戻るか。
「女将さん、今日も1泊、夕食つきでお願いします」
「あいよ、15銅貨だよ」
「はい、それと、裏に小屋が届くと思いますので、少しおかせてもらいますね」
「ああ、そうだったね。明日の朝までに移動するなら構わないよ」
「はい、朝までには移動させます」
女将さんと話していると、大工さんが小屋を運んできた。
「あれかい? なんだかみすぼらしい小屋だね」
「あはは、だからとても安かったんですよ」
「なるほどね」
女将さんも簡単に納得してくれた。そうだよね、あのボロボロの見た目で高いわけないもんね。
「大工さん、宿屋の裏側まで運んでもらえますか?」
「おう」
大工さん達が、軽々と小屋を宿屋の裏側に運んでいく。小屋が軽いのか、大工さん達が力持ちなのか……両方なんだろうな。あの小屋、材料少ないもん。
「ありがとうございました」
「いやいや、運搬料ももらってるからな。じゃあ、またなんかあったらきてくれ」
大工さん達と別れて、さっそく小屋を確認してみる。見た目はみすぼらしいが、革はしっかりしてるな。中はどうだ? ……木組みはしっかりしてるし、力をかけても軋まない。十分なできだな。いや、1銀貨なら十分過ぎるできだ。
今すぐ動かしたら目立つから、寝る前に移動する事にしよう。さて、夕飯を食べて水浴びをするか。
水浴びを済ませ、生活魔法の練習をする。魔力を指先に集めるのは少しずつ進歩しているが、まだまだだ。まだまだ毎日継続しての練習が必要なようだ。おっと、そろそろ小屋を移動させよう。
宿の裏手にいき、人がいないのを確認して小屋の隣にゴムボートを召喚する。えーっと、1人でもボートの上に載せれるよな? 小屋の片方をゴムボートの上に載せ、反対側に回って小屋をゴムボートの上に載せる。結構簡単にいけたな。
うーん、今からここで作業するのはうるさいだろうし、船送還して明日、草原で作業しよう。
よし、今日やる事は全部終わった。部屋に戻ってステータスチェックして寝るか。
……レベルは上がっていないな。船召喚のレベルも上がってない。船も結構頻繁に召喚してるんだけど、他に条件があるのかもしれない。
お休みなさい。
残高487銅貨
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。