プロローグ4
4
あれから色々話した。
九条さんは能力を使い出して8年位らしい。
最初は気のせいだと思ったけど、また同じ事が起こらないかな?って考えたら起こってそれで自分の能力を知ったらしい。
自分もそうなんだけど能力が発現する時って軽く考えただけで発動するんだよな。
そして意識して発動しようとすると難しくなる。
九条さんのテレポートは物体を転送させるのに10分集中し続けて目視出来る範囲ならどこでも転送出来て、重さは関係ないとか。
いやいや、俺のと比べて随分優秀じゃないですかね?
何だか理不尽さを感じる。
これで継続発動とか使ったらと思うともう、何だかもう!
まあ、教えるんだけどね。
でも本人によると自分はおろか生き物は全然駄目みたいで、しかも1回使っただけで数時間眠らないと使えない、いわゆる[MP切れ]に
なるらしくその辺が自分でダメエスパーと思ってるとのこと。
「あはは、確かにMP切れになると眠くなるよね。最初の頃は気付くと寝ていて親に病院に連れていかれたよ」
「MP切れかぁ、私は限界って普通にいってるなぁ。でもいいよねMP切れって。分かりやすくて。私は眠くなるのに気付いてから夜寝る前に使う事多かったから心配されなかったよ」
誰にも聞く人がいないから呼び方も自分で考えるから違いがあるよね。
弱小サイキッカーとダメエスパーとかさ。
うん、自分を卑下する所とか気が合うよね。俺達。
*
「それじゃやりながら教えるね」
話も一段落ついて九条さんに継続発動を教える事になった。
「まずは普通に使う時と同じ様に集中して・・・うん、オーラで石が包まれているのが見えるから成功したね、ここまでは同じかな?」
継続発動前は意識を集中し続けないと途切れてしまうために石から目が離せないが九条さんから、うん。と返事が聞こえたのでつづける。
「普通ならここで集中しながらオーラを流動させているとおもうけどここから継続発動に切り換える。今の状態をイメージに残したままさらに能力を使おうとして、ずっと続く様に包まれているオーラに対して思念する。・・・継続発動。うん、これでオッケー。ふう」
もう慣れたもので話ながらでも問題なく出来る。
自分で言うのもなんだけど、これって結構難しいと思うよ。
集中して話してさらに違う能力を使う。いわば疑似多重思考だからね。
「もうほっといても大丈夫なの?」
「うん、5分位経ったら少し石がうくよ」
「はあー、凄い!凄いね!便利だね!」
それから少しして予定通り石が浮いて、コロンと落ちた。
この瞬間が何よりも切ない。
もっとこうさ、バフューーン!凄いもう見えない!えへへ。
みたいなさ。
「凄い!ホントに出来た!普通にしてたのに・・・ね、ねぇ私にも出来るかなぁ!?」
俺の妄想とは別に九条さんは興奮して様にはしゃいだ。
九条さんがだんだん子供っぽくなってくるのは気のせいなのだろうか?いや本来こんな性格なんだろうね。
「色々難しそうな事言ったけどようは、見てなくてもこのまま続けていてね?オヤツあげるから、頑張ってね!って事でさ、ここで言うオヤツがさらなるエネルギーで頑張ってねが、継続発動って言葉。継続発動って言葉は何でもいいんだよ。ずっと続けていてねでもザボんじゃねーぞでもさ」
「あはは。うんありがとう、じゃあ少しやってみるね」
そう言うと九条さんは適当な石を拾って集中しだした。
うん、凄く真剣だ。でも表情を見るとリラックスしているかな。
そして暫くすると九条さんの集中が途切れた。
うん。誰か近くにいてこんな場所で新しい試みとか無理だよね。
「まあ、普通にこんな場所で初めてのチャレンジとか難しいよね」
俺は気軽な気持ちで言った。俺達が持っている能力は自分を、自分の能力を信じる事が大事だからさ。
「んー、ダメだったー。えへへ。でも何ていうかいつもとは違う何かを感じたかな。後は家で練習するね!」
九条さんは俺の考えているのと同じ事を思ったのか、そんな特に気にならない調子で答えた。
「そうだね、それと信じる事が大事!・・・だよね!」
「もちろん!」
すでに空は夕焼けでオレンジ色になり二人ならんで帰途に着いた。
嬉しそうに話す九条さんの笑顔はとても可愛いかった。