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『幼馴染みの…』シリーズ

幼馴染みの定義

作者: いかの天ぷら

初投稿です。

些細な暇潰しにでもなればと…。

拙い文ですがご容赦下さい。

さて、突然ですが“幼馴染み”と聞いてどう説明しますか?


『小さい頃からずっと一緒にいた人』

『家が隣や近所で交流のある同じ世代の人』


大体の人がそんなイメージを持ってると思います。


ですが、本来の“幼馴染み”の意味はこれです。


『幼いときに“親しく”していたこと。また,その人 』


“親しく”...そう!

小さい頃“親しく”していたことや人のことを言うんです!!


...失礼。少々取り乱してしまいました。


気を取直して。

さて、何故今そんな事を言ったのかと言いますと...。


「家が隣だからって調子にのらないで!庶民のくせに!」

「幼馴染みだからって何しても許されるわけないのよ!」

「毎日一緒に登下校!ずっと付き纏って!彼のことを考えてあげて!」


...はい。絡まれております。

こちらは放課後の人気の無い体育館裏。

まさに呼び出しの王道ですね。


「幼馴染みの何が偉いって言うのよ!」


まだ言い足りないのか、少ない語彙で私のことを貶す女生徒達。


しつこく“幼馴染み”を強調してきます。

ですが、反論させていただきたい。


...私には幼い頃に、または幼い頃から親しく思っていた人に心当たりがありません。


...えぇ、本当に。これっぽっちも、です。


女生徒1の言う通り、家が隣の同級生はいるのは事実ですけど。


...名誉のために訂正しておきますが、付き纏うなんて天と地がひっくり返ってもしません。時間がもったいないです。


そもそも“一緒に”登下校なんて事態、私には身に覚えがありませんよ!


っと、話がそれましたね。

とりあえず訂正させていただきましょう。


「あの、申し訳ありません...」


「やっとわかった?庶民のアンタなんか彼に釣り合わないのよ!」


…遮られました。


女生徒1のまた“庶民”発言。選民意識すごいですね。

私には庶民の何が悪いのか、金持ちの何が偉いのか謎で仕方がありません。


それは置いておいて...。


「いいえ、そうではなくてですね...」


「何が言いたいのよ。」


「私には貴女方がいう“幼馴染み”という存在はいません。」


「はぁ?!あなた何言ってるの?」

「そうよ!バカにするのもいい加減にして!」


煽ってしまいました。

でも、本当の事ですし嘘ついてませんよ。


「私には幼い頃から親しかった人や幼い頃親しく思っていた人なんていないんです。」


「意味わかんない。」


「えっとですね、貴女方がの話す彼が誰なのかわかりますが、彼と私は家が隣なだけです。貴女方が言ったように住む世界が違いますし、幼馴染みなんて親しい続柄になった記憶はありません。」


ここまでキッパリと言うと、女生徒たちは戸惑い出してしまいました。


「え?でも、彼はアンタのこと幼馴染みだってわたし達に話したわよ」


「...彼が何故そう説明したのか私には意図はわかりません。ですが、彼とはただのご近所さんで赤の他人ですよ。」


目を逸らさずに正面からそう伝えます。嘘じゃないから堂々としてればいいんです。


女生徒達が私の言葉に対してまた何か言おうと口を開いたときガサガサと草木が揺れました。


「ちょっと待て!どういうことだ!」


その言葉と共に現れ、近づいてきたのは今お話に出てきている自称、私の幼馴染みらしい彼。


「え?!なんでここにいるの?!」

「帰ったんじゃ...」


突然の来訪者に女生徒達はオロオロと取り乱しはじめ、彼に近づいて何やら弁解しています。

しかし、取り次いでもらえなかったようで女生徒達は泣きそうな顔して去っていきました。


ちょっと、置いていかないで下さいよ。


何やら不穏な雰囲気に思わずそう言いそうになります。

...言えませんでしたが。


「...幼馴染みじゃないってどういう事だよ。」


目が合うと彼はとても悲痛な顔をしていました。そして、そのまま足を止めることなくだんだん近付いてきて...。

後ずさりしてしまうのは仕方ないと思います。


「赤の他人ってどういう...。」


とうとう、体育館の壁に追い詰められてしまいました。


...あれ?何故、私がこんなことに?

それにいつから聞いていたんですか?


「その、えっと。ごめんなさい...?」


とりあえず、なんだか怖いので謝りましょう。

よくわかっていませんが。


「わかってないだろ。適当に謝るな。」


何故、わかったんでしょう?


「顔に書いてある。」


つい、顔を隠してしまいました。

というか、心の中を勝手に覗かないでいただきたいです。


「んなことできるか。お前がわかりやすいだけだ。」


そうですか。


「で?赤の他人とか幼馴染みじゃないとかどういうことなんだ?」


「そのままの意味ですが...。」


この状況に困惑しながらも答えると彼の顔がさらに歪みました。


「...家が隣同士で小さい頃からずっと一緒にいたのにか?」


「幼馴染みというのはそれに“親しい”を付け加えないと成立しないですよ。」


「っ俺とお前は...親しくなかったのか?」


「必要以上にそうはなってないかと...。」


質問ばかりの彼。答えるごとにだんだんその整った顔が歪められていきます。何故そんな顔をするか検討がつきません。


「家が隣で両親同士が仲良くて、お互いの家を行き来してて、小さい頃からずっと一緒にいて幼稚園から高校まで同じ学校で登下校も一緒にしていたのに、か?」


ちょ、ちょっと怖いです。


私から視線を外すことなく真っ直ぐ目を見て鬼気迫る彼は流石に怖いです。


「って、すみません。その一緒に登下校っていつしていたんですか?小学校の時は強制的にありましたがその後は特にしてなかったと思うんですが...。」


「はぁ!?してただろ!お前、本ばっか読んでて俺のこと気にしてなかったかもしれないけどな、ずっと一緒に帰ってる!」


...はて?そうでしたか?

全然気が付きませんでした。


「マジかよ...。」


彼はとうとううなだれてしまいました。

いい加減、離れて欲しいです。


「なんだかすみません。物事に集中している時は周りに目がいかないもので...」


「知ってる。」


うなだれたままかぶせるように返事をする彼。


「...小さい頃から本の虫で、ジャンル問わずなんでも読んでて、しかもありえねぇくらい影響されやすい。」


よくご存知ですね。


「小3ん時、昆虫図鑑にハマった時は夏休みに実際に昆虫採集しに田舎まで行って山で遭難しかけた。」


懐かしいです。夏休みの宿題という名目で連れて行ってもらってそうなりました。

ものすごく怒られましたね。


「小6ん時、当日好きだった作家の母校に通いたいとかでいつの間にか中学受験決めてた。」


うんうん。高校生でデビューした作家さんでしたね。たまたま母校の中学校を知ったんです。

しかも、通える範囲で私立だったんですが、成績優秀者は学費免除とか素晴らしい学校だったので、すごく行きたかったんです。

ですが、両親に相談せずに勝手に決めて進めていたのでのでこれまた怒られました。

でもここは説き伏せて無事に入学することできましたよ。


「中学んときは星座関係にハマって冬休みに『一週間、星が綺麗に見えるところに行きます。探さないで下さい。』って置き手紙だけ残して失踪しかけたし。」


良き思い出です。都会じゃ綺麗に見えなくてプラネタリウムでは満足なんてするはずもなく計画しました。すぐに見つかって強制送還されましたが。

このときは両親に泣きながら怒られたような気がします。


「高校受験は本場の芸術に触れたいとか理解し難い発言して、海外の学校に受験するとか言い出して家族総員で必死に止めた。」


あの時は絵画や彫刻の類いの本にハマっていましたね。

私にその才能は全くありませんが考え方などに刺激を受けて実際に触れてみたくなったんです。

このときは中学の時のようにはいきませんでした。

奨学金制度はありましたが、その他の生活費面で家族が絶対に助けないと言い切ってきたからです。アルバイトということも考えましたが、兄と弟、2人にお前には絶対に無理だと一蹴されて流石に心折れました。

そして、強制的にこの金持ち高校を受験させられました。目の届く範囲にいろと。


「高校生になったら少しは落ち着くかと思ったら自由度が増して、日本の歴史に直に触れたいって長期休みになるたび、貯めた小遣いで1人で全国各地を回ろうとする。」


自分が今この時代を生きている上で、どのような過程を経てこの時代になったのか本だけではなく自分の目で見て感じてみたくなったんです。その土地の資料館や博物館に行きたかったんですよ。

ちなみに1度も実現出来ていません。


「まだまだあるぞ。だいたいほぼ全部俺は関わってきてるからな。詳細も言える。」


「...そうだったんですか?」


「っ!おまっ!

......いや、お前はそういうヤツだよ。」


私の発言に息を飲んで再度諦めたようにうなだれた彼。


そう、ですね...。


遭難未遂のとき彼も隣にいました。

中学受験のとき彼も受験会場にいて驚きましたね。

失踪未遂のとき、私を真っ先に見つけたのは彼でした。

高校受験のとき家族に混ざって止めて、目の届く範囲にいろと言ったのは彼です。

全国旅行のときも行こうとすると何かと用事に付き合わされて彼に阻まれていました。


あれ?


思い出すと必ず彼がいます。

その他の今までの出来事にも気付いたら彼がいつもいたような気がします。


…なぜ、気付かなかったんでしょう?


「なぁ、小さい頃からほぼ毎日のように一緒にいたのに、幼馴染みですらなかったのか?俺とお前は親しくなかったのか?」


矢継ぎ早に質問してくる彼。


「...俺はお前にとって赤の他人なのか?」


苦しそうな顔、です...。


そんな彼と目が合うと急に私の胸が苦しくなります。


「...だって、だってあなたはいつか離れていくじゃないですか。」


私の口から自然と零れる。


「だからあなたは家が隣同士のただのご近所さんで、住む世界が違う赤の他人じゃないと駄目なんです。」


そうです、そうじゃないと困るんです。


「だってそう思わないと、あなたが私から離れた時、寂しくても悲しくても仕方ないって!…思えないじゃないですか!」


幼馴染みだったら親しく思っていたら裏切られたと感じてしまう。必ず私は傷ついてしまいます。ですが、きっと彼が離れるのは私のせいだと思うんです。


私が彼を嫌う理由なんてないですから。

私のせいなのに責めたくないです。


「あの時みたいに辛い思いしたくないんです。あんな思いはもう沢山なんです...。」


彼を見ることができなくなって今度は私が目をそらし、下を向きました。


走馬灯のように幼い頃のことが思い出されます。あの時のことです。


いつだったか彼の家に遊びに行った時にたまたま居た彼の親類が話している声が聞こえてきました。


隣の娘は育ちの悪いおかしな子供。あんな子が幼馴染みで、しかも振り回されていて優しい彼が可哀想だと。


今なら“庶民だから”と暗に見下された事に対して反論できますが、その当時はそんな力があるはずなく、その悪意のある言葉は幼心に深く刺さりました。


それを聞いた後日、学校で今日のように呼び出されクラスメイトに言われました。


彼が私に構ってくれているのは、私が幼馴染みで彼が優しいから。でも、実は迷惑している。...解放して、と言われました。


それを聞いてどうやって家に帰ったか覚えてないません。

あの後、気付いたら部屋にいました。


そして、いろんなことに気付いて、わかってしまって、涙が止まらなくなってしまいました。


彼は私の幼馴染みで優しいから相手を仕方なく相手してくれていて、本当は迷惑しているのだと。


彼に確認することは怖くてできませんでした。直接、そのような内容の言葉を彼から言われたらきっと立ち直れないと思いましたから。


そして、周りのいう彼の枷になっている、“幼馴染み”について調べました。


『幼いときに“親しく”していたこと。また,その人 』


親しくしていなかったら“幼馴染み”じゃない。この意味を見た私はそう思いました。

親しくしていなかったら、その枷は少なくなるはずだと幼心に考えたんです。


“幼馴染み”に振り回される彼は居なくなるのだと思ったんです。


この時だったと思います。

“彼を親しい人として見ない”そう決意し、いつかは必ず離れていく人で、仕方なく私に付き合ってくれている住む世界の違う赤の他人だと思うことにしたのは。


態度も改めました。彼との時間が少なくなるよう行動しました。


それでも、彼との関係を“幼馴染み”だという人は減りませんでした。


それに、したいことをしようとする、周りから見れば奇行と言われる行為も止められませんでした。

気を引くためにしている、と言われたこともありますが、どれも私がしたいことだというのは本当です。ですが、気付いたら彼が傍に居てくれました。

迷惑をかけたくない気持ちも嘘ではないですが、気を引くためにしている、という言葉もあながち嘘ではなかったと今となっては思います。


だって、気付かなかったと言いながら、本当は彼を探していて気付くたびに嬉しかったんですから。


...矛盾していますね。


本当は全部全部覚えてます。彼がずっと一緒にいてくれたことなんて知ってます。

忘れられるわけないんです。気付かない振り、していただけです。


でも、自分の心に嘘ついて、気付いていないふりをして、知らないふりしないと、忘れたことにしないと溢れてしまうんです。



だから、これ以上はもう駄目です。



「もう、構わないで...ください。」


「無理。」


.........なんと?


ありったけの勇気を詰め込んだ言葉を即効で一蹴されてしまいました。


「そんな顔であんなこと言われて、はいそうですかなんて簡単に引き下がれるか。」


「え?っ!」


意味がわからなくて顔を上げようとしたら強く引き寄せられ、彼の腕の中にいた。


え?なんで?どうして?


「あーもう!やっちまった。

...これくらい許せバカ。んな告白まがいな発言とか、マジで反則だろ。」


何をやってしまったんですか?

最後の方が小さすぎて近くに居るのに聞き取れないです。悪態つかれているのだけはなんとなくわかりますけど。


「な、なんて言ったんですか?」


「…何でもねぇ。いや、何でもなくはないけど…。いいからちょっとそのまま黙ってろ。」


スーハーと私を抱きしめたまま深呼吸を繰りかえる彼。


...って!ちょっとこの状態は駄目です!ただえさえ男の人に免疫がないんです!心臓が持ちません!速すぎる心音が聞こえてしまいます!あぁ!でも今離れると顔が赤いのがバレて…!


「くくっ。お前も落ち着け。」


「っ!」


頭上から彼の声が聞こえる。

低くて甘くて優しい彼の声。


とっくにバレてるみたいです…。


「...お前、俺がいつか俺が離れると思ってたのか?」


咄嗟に声が出なくて頷く。


「あの時みたいっていうのを俺は知らないけど、離れると辛いって思ってくれて、悲しいとか寂しいとか感じてくれるのか?」


再度頷く。


やめて欲しいです…。これ以上、聞かないてください…。


「俺が離れたら、幼馴染みじゃないとか親しくないとか、あんなわけわからないこと考えていないと保てないと思ったのか?」


あの時の痛みを思い出してまた苦しくなります。


「...そう、です。似たようなことを思いましたから。」


だんだん声が小さくなってしまいました。

質問するごとに彼の声音が硬くなってきている気がして...。


「...な、なんか怒っていますか?」


「怒っては...いや、怒ってるかも。」


「ご、ごめんなさい。」


「だから、何に対しての謝罪だよ。」


「わ、わかりません。」


「くくっ。怒ってるけど今スゲー嬉しいからいいよ。」


?怒ってるのに嬉しい、ですか?

矛盾していて理解出来ないです。


「...なぁ。」


「はい。」


「なんで俺とお前は親しくないって考えてたのに、俺との関わりを完全に切らなかったんだ?」


「っ...。」


彼の雰囲気が変わり、ストレートな質問に言葉に詰まる。


「答えて。」


ギュッと抱きしめる力が強くなりました。


「...私から離れることが出来なかったんです。」


「なんで?」


間髪入れずに急かすよう質問してくる彼。


「あなたの傍に居たかったから、です。」


「過去形?今は?」


ズルイです。逃げさせてくれません。


「い、今も...です。」


意を決してそう答えました。


なんですかこの羞恥プレイ...。な、泣きそうです。


「...俺はお前から離れない。ずっとだ。」


「え?」


呟くように伝えられた言葉に驚いて思わず聞き返してしまいました。


「訳のわからねぇ心配するな。俺はお前から絶対に離れていかない。」


「っ!」


再度伝えられた力強いその言葉に、涙が次々と勝手に溢れてきます。


「だいたい俺くらいしかいないだろ、お前の奇行に付いていけるヤツ。理解できる男も俺だけだ。」


「き、奇行ではないです!私にとってはちゃんと意味のある行動で...!」


「わかってるよ。お前にとってその時のその行動が大切なのは知ってる。お前はただいろんな意味で真っ直ぐなだけだ。…それくらいで嫌いになんてならねぇよ。」


馬鹿にされてるような気がしなくもありませんが、涙が止まらない。次から次へととどめなく流れ、彼の制服を濡らしてしまいます。


「迷惑じゃ、ないですか?」


「迷惑なわけない。」


「きっと奇行は続きますよ?」


「くくっ。お前も奇行って言ってんじゃねぇか。まぁ、面倒臭い時もあるが、なんだかんだ結構面白いから構わねぇよ。むしろ、それをしないお前はお前じゃねぇ。」


「あ、あなたのこと、私の“幼馴染み”って思っていいんですか?」


「あぁ。」


「本当に?」


「お前は俺の大切な幼馴染みだ。何があっても誰がなんと言おうと変わらない。」


どうしよう、とてつもなく嬉しいです...。


ゆっくりと彼が私を離しました。


真剣な顔...。


「俺はお前のこと、ずっと前から...。」


何かを言いずらそうに言葉を切る彼。


...いえ、その何かを私はわかっています。


「あなたはずっと前から私のこと幼馴染みだと思っていてくれていたんですね。」


彼が言うはずだった言葉を先に答えます。


私だってそこまで鈍感ではありません。

彼の言いたかったことはわかります!


「は?」


「なのに、私は聞けば解決するような簡単なことでウジウジと。いや、私にとってはそれが難しいことだったんですが。」


「ちょっと、待て…」


「...私はあなたに嫌われることが何より怖かったんです。」


今まで思っていたことを、何があっても離れないと言ってくれた彼に向かって今度は私が伝えます。


「自分が普通の子と少し違うのはわかっています。あなたは優しいから私に付き合わされているのだと指摘されて、そうかもしれないと思ったんです。そう考えたらあなたがいつか愛想尽かされて離れるということがすごく現実的に見えて...。」


だから、すごく怖くなって彼と距離をおこうとしました。彼の言うわけのわからないことを考えて、思い込んでいましたから。

…あまり、効果はなかったですが。


「...私はあなたがとても大切です。あなたの言う通り私を理解してくれるのは家族以外できっとあなただけだと思います。」


「っ!そんなの俺だって、お前のこと...」


「親しくないとか幼馴染みじゃないとか酷い事言ってごめんなさい。これからはあなたに相応しい幼馴染みになるよう、精進します!」


「……あ?」


「自慢の幼馴染みになれるよう最大限の努力は惜しみません!」


「…いや、違うって…」


「今度読む本は“幼馴染み”について描かれているものにしますね!どんなものがいあでしょうか...。あ、自慢の幼馴染みになるには礼儀作法必要ですかね。そういう本もいいかもしれません。」


あなたの隣で堂々と並べるよう、今日みたいに相応しくないと呼び出されないような立派な女性になりましょう!


「なぁ、人の話を..。」


「待っていてくださいね!早速、書店に行って吟味してきます!では、明日!」


彼に詰め寄られた時に落としたカバンを拾い、走ってその場を去ります。だって、時間がもったいないじゃないですか。


早くしないと、彼の隣にいるのが私じゃなくなってしまう気がして、気が気じゃないんです。


少しでも早くあなたの隣に居れるような幼馴染みになるので、それまでその場所はもしよかったら開けといてくださいね。



『幼馴染みの定義』を私は『幼い頃、または幼い頃からその人と“親しい”か“親しくない”か』それだと私は思っていました。


結局のところいくら私だけが否定したって彼が“幼馴染み”だという事実は消えず、彼はこんな薄情な私のことを“幼馴染み”だと言ってくれました。


私が執拗に執着し、思い込んでいた『幼馴染みの定義』には明確なものなんてなかったみたいです。


私のせいで遠回りしましたが、やっと本当の意味で“幼馴染み”になれた気がします。


自他ともに認める素敵な“幼馴染み”を目指してこれからはあなたの傍で頑張りますよ!



「...あのバカ!タイミング悪く奇行に走るなよ!

言いたい事、言うだけ言って翻弄するだけして無視か!お前らしいけど頼むから俺の話、最後まで聞けよ...。」



私は集中以外で、自ら何か行動する際も周りが見えない、聞こえないという状態になるそうです。

所謂、奇行と言われる類いの行動のときですね。


その上とてつもなく思い込みが激しいと。


だから、彼が私に何か言いかけていたこととか、私の発言に対し彼の顔が真っ赤に染まっていたこととか、他にもいろいろやらかしてしまったことを教えられたのはまだ先のお話です。


そして、彼への本当の気持ちに気付くのも先のお話です。


ご静観ありがとうございました。

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