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第9章 ミーティング終了……そして


第9章 ミーティング終了……そして



生徒会室では来月に迫った学園祭に向けてのミーティングがまだ行われていた。といってもほぼ議事進行役の副会長のルイスが概要の説明をしているだけである。

「とりあえずカリキュラムそのものは去年のカリキュラムを踏襲します。出し物は各クラスの自主性に任せますが、あまり常識外れの出し物は控えるよう明日掲示板にて通達をだします。とりあえず1週間後までに各クラスは出し物の概要をまとめて生徒会に提出するようにさせましょう」

 黙ってみんなルイスの話を聞いている。これらの取り決めはほぼ毎年決まっている事で、本音を言えばあまり打ち合わせをする意味などないのだが、それでもこういう形で決まったという事を、形式的ではあるが決めなければならない。 

「まあ大体こんなものですね、皆さん何か質問は?」

 誰も手を上げないと思われたが、なんと会長のユリコが手を上げた。これには副会長も含め皆少々驚いた。

「会長、何かあるんですか」

 ルイスが会長に尋ねる。

「ええ、カリキュラムは去年のものを踏襲すると言っていたけどそれでは面白くないわ。何か今年にしかできない特別なカリキュラムを組んでみたいの。それに今年の学園祭には何かテーマみたいなものを決めたいわ」

「テーマ……ですか」

「ええ、漠然としたものでいいから」

「……」

 会長がこういう発言をすると皆それに従わなければならない。例えそれが先生であってもだ。それくらいアロー家はこの惑星ペペでの権力は強い。

つまり、会長がこういう発言をした時点で今年の学園祭が、何かしらのテーマに基づいて行われる事はもう決まったといっていい。ただ、会長は別に悪気があるわけではない。彼女は本当に今年の学園祭を有意義なものにしたいだけなのだ。

そう、ある人物のために……

「では、会長から指摘のあったテーマについて考えてもらいたいと思います。皆さん、何か良いテーマはありますか」

「はい!」

 元気よくエルが手を上げた。

「エルさん、もう何か提案があるのですか」

「ええ、偶然なんですが私も前から学園祭のテーマについて考えていた事があるんです。それで「平和」というテーマはどうでしょう」

「平和ですか……」

「はい、今我々地球の支配国である帝国はシェルリナ連邦と戦争をしています。そういった事を踏まえて皆に平和について考えてほしいのです」

 実に彼女らしい提案だとカイトは思った。

確かエルの両親は軍人で今も存命しているが、確か彼女の兄は亡くなったと聞いている。だから彼女は戦争について何か思う所があるのだろう。

彼女が学園祭で平和というテーマを提案した気持ちは良く分かる。しかし……

「エルさん。あなたがそのテーマを提案したいという気持ちは良く分かりますが……」

 ルイスもエルの兄が戦争で亡くなっているという事実を知っているのだろう。だからエルの心情は理解できるらしい。ただそれでも副会長は渋い顔をしている。理由はそのテーマを扱うと帝国への批判に繋がるかもしれないと思っているからだ。

「副会長の懸念はわかります。しかし、帝国はたかがこんな学校の学園祭のテーマくらいで何か言ってきたりしないですよ。所詮学校の学園祭ですから」

「はい!」

 すると突然カイトは大声で手を上げた。

「私もエルさんの提案に賛成です。平和というテーマ、いいじゃないですか。ですよね?」

 カイトは皆に同意を求める。

「私は特に反対しません」

「私が興味あるのはいくら費用がかかるかです。私は会計担当ですから」

 ルルとナギはそう答えた。彼らも特に平和というテーマを扱う事に反対ではないようだ。ルイスは会長のユリコに意見を求める。

「会長、どうします」

「私も反対しないわ」

「そうですか、やった」

 会長が賛成したのでエルは喜んだ。会長が賛成した時点でこの意見は通ったとエルは思ったからだ。

「でも一つだけ問題があるわ」

「問題?」

 エルの顔が一瞬曇る。

「さっきのルイス君が言った事と同じ問題よ。平和というテーマを学園祭で扱うこと自体、私は別にいいと思うけど、それは下手をしたら今戦争をしている帝国への抗議と受けとられかねない」

「だからそれは考え過ぎじゃないですか。たかがこんな辺境の星で行われる学園祭ぐらいで……」

「確かに私もそう思うわ。でもね、帝国が問題視しない可能性が全くないわけじゃないわ。ましてやこの学園の生徒会長を務めているのが私、つまりアロー家の人間だから余計問題がややこしくなるの」

 なるほど、そういうことか。

カイトは会長が何故平和というテーマを学園祭で扱う事を危惧しているのかその理由が理解できた。それは会長がアロー家の人間であることが理由なのだ。

 アロー家は代々この星の星知事を務めている家系だ。事実会長の父であるキャメロン・アローは今この星の星知事を務めており、奥さんのメイア・アローはその秘書を務めている。

つまり、その娘であるユリコが会長を務めているこの学園で、平和という非戦を扱うようなテーマを学園祭で行う事は、この星そのものが帝国を批判していると、帝国に受けとられかねない可能性があるからだ。

そうなれば確かに困った事になる。たかが学園祭で扱うテーマというわけにはいかない。会長の父や母に多大な迷惑をかける事になる。

会長はそれを懸念しているのだろう。エルも会長の言わんとしている事が理解できたらしい。黙ってしまった。

「誤解しないでエルちゃん。私は絶対駄目だと言っているわけではないの。ただそれを決めるには私達生徒会の一存では決められないというだけ。誰か先生方の了承を得た方がいいわ」

 その時だった。

「おーう、やっとるか」

 ドアを開け1人の先生が入って来た。生徒会顧問のダル・ライト先生だ。

ダル先生はこの学園でスターナイトのパイロット部門を担当している教師の1人で年齢は47歳。兵隊あがりの先生だ。

若いころは名パイロットとして多くの戦場を体験してきたらしい。

 そのダル先生には見た目にある特徴があった。それは彼の左手が義手だったからである。義手である理由は明白だ。戦争で無くしたのだ。

しかし、今の医学では再生治療という治療方法が存在し、例え腕や足、または眼といった体の各部位を失っても、その人自身の細胞からその部位を再生し、拒否反応もなく、再び体に取りつけることが出来る。

つまり、ダル先生の左手は治す事が可能なのだが、彼は敢えてそうしなかった。理由は彼が教師としてパイロットの育成に尽力する事になった際、生徒達にその失った手を敢えて見せることで、戦争に対しての覚悟を植え付けようとしているのだ。

 いくら再生治療で治るといっても、実際に腕などを失うことには変わりはない。その時なって冷静でいられるかどうかという点では、その時になってみなければわからない。

しかし、実際に腕など失った状態の覚悟があれば、例えそのような状況に置かれた時でも冷静に対処できる。戦場で冷静さを失えば死につながる。例え再生治療といえども人の命を再生することは叶わないのだから。

ダル先生はわざと失った左手を生徒達に見せることで、戦争への覚悟を植え付けようとしているのだ。しかし、そうは言ってもやはりその左手を見れば痛々しい。

ちなみにダル先生はこの学園に勤めている先生の中では結構変わった先生で、唯一会長であるユリコに対して先生という立場で接する人物である。

この学園のほとんどの先生が、アロー家を畏怖しており、ユリコに対してはっきりとものを言えないのに対し、ダル先生はだけは教師としてユリコに接した。

そのため、ユリコの性格が今よりかなりキツかったころは、生徒会顧問を担当しているダル先生とはよくケンカをしていたのである。

下手をすればダル先生は飛ばされかねなかったと思うが、ユリコもダル先生の左手などで思う所があったのだろう。どんなに言い争っても飛ばすようなことはしなかった。

しかし、ユリコの性格が丸くなった今では、言い争うというような事はない。むしろ先生方の中では唯一本当に相談できる存在としてユリコはダル先生のことを認めている。

ユリコはそのダル先生に声をかけた。

「ちょうど良かったわ先生、先生にちょっと相談したい事があるんです」

「なんだ、問題でもあったか」

「いえ問題という程ではないのですが、先ほどの話し合いで今度の学園祭では何かテーマを決めて、それに則して行うという話になりまして」

「いい事じゃないか」

「はい。それ自体は良い事なんですが、そのテーマでエルさんから平和というテーマを扱いたいという提案がありました」

「なるほど、平和とは非戦をテーマにしているようなものだから、戦争をしている帝国批判に繋がるかも知れない事を懸念している訳か」

「そうです」

 さすがはダル先生だ。テーマを聞いただけでこちらが危惧している内容まで分かったようだ。

「構わんよ」

「え?……」

 即答されたのでそこにいる全員が驚いた。もしかしたら他の先生とも相談してくるくらいは言うと思ったからだ。

「平和というテーマを扱いたいのならそれでいい」

「……でもそれで帝国は大丈夫なんですか」

「帝国はそれどころじゃないよ。シェルリナとの戦争だけでも大変なのに、今は帝国のやり方に反対する反帝国を掲げたテロ組織の活動も活発になってきてな。それらの対応に追われてとてもじゃないがこんな辺境の星の、学園祭にいちいち文句を言う暇などないだろう」

「しかし、万が一ということも……」

「心配はいらん。なんならテーマの内容をあとから「帝国の勝利の上での平和」という感じにつけ足してもいい」

「なるほど」

 これには皆が納得した。

「ものは言い様でなんとでも出来る。他の先生方のことも気にするな。私が説得する。お前達は自分達の好きなように学園祭を運営すればいい」

「ありがとうございます。ダル先生」

 エルは立ち上がると頭を下げてダル先生に礼を言った。ダル先生は手でそれに答えると窓際の椅子に座った。

「それじゃあ会議を進めてくれ、俺はここで見ているから」

「わかりました。それでは学園祭のテーマを平和にするということは決定事項でいいですね」

 最後に副会長のルイスがユリコに確認を取る。

「ええいいわ。皆もそれでいいわね」

 ユリコが皆に聞くと全員頷いた。

「それでは今年の学園祭は平和というテーマを扱う事にします。それぞれのクラスの出し物にはそのテーマを加味したものを出すように通達します。書記のエルさんとルルは後で各クラスに配る学園祭のしおりにその内容を付け足しといてください」

「わかりました」

「後は……ああ、忘れるところでした。もう1つ会長から提案があった今年だけの特別なカリキュラムについて話し合わなければなりませんね。何か良い案があるでしょうか」

「その件についてなんだけど……」

「何ですか会長?」

「その件は私に一任してほしいの」

「どういう意味です」

「つまり、全て私に任せてほしいという事よ。新しいカリキュラムに関しては本当の意味でサプライズイベントにしたいの。つまり、あなたたちにも詳細を秘密にしたいのよ。駄目かしら」

「いや、駄目というわけではありませんが、それではもしもの時に学園祭の運営に支障が……」

「だから私に全て一任してほしいと言っているの。責任は全部私が持つから」

「しかし……」

「いいじゃないですか」

 会長と副会長のやり取りにカイトが割って入った。

「会長が全て任してほしいと言っているんです。この際全て任してみては?私たちにも秘密なサプライズイベント。私は楽しみです」

「カイト君、君は生徒会の仕事を甘く見ているよ。学園祭の運営を行う生徒会が、例え一部とはいえ学園祭の中身を知らないなんて困るだろう。もし何か万が一の事が起きたら我々では責任が持てない」

「だから会長が責任を全部持つと言っているんじゃないですか。副会長は相変わらず気が小さいというか心配性だなあ」

「なんだと!貴様にそんなことを言われる筋合いはない」

「そう言って反応するのは図星を突かれた証拠」

「まだ言うか!」

「よしなさい!」

 副会長とカイトの間で険悪なやり取りになった所を会長が止めに入った。

まあカイトの言葉にも非がある事には違いないが、ルイスはいちいちその言葉に突っかかる。そこが彼らしいといえばそれまでだが。

「しかし会長……」

 間に割って入ったユリコに何か言いたそうな表情をルイスは向ける。

「いいから少し黙っていなさいルイス君。カイトもあまり副会長を挑発しないように、ルイス君はあなたより先輩なのだから」

「へいへい」

「それでさっきの話に戻すけど、今回の学園祭のサプライズイベント、なんとか私に一任させてくれないかしら」

「……」

「ルイス君の心配はわかるわ。何か不測の事態が起こった時に、学園祭の運営を任されている生徒会が事情を知らないというわけにはいかないものね。それを理解したうえでお願いしているの。大丈夫、この学園には迷惑はかけないわ。もちろんあなた達にもね、ダメかな?」

「私は別に構わないと思います」

 ルルが手を上げて答えた。

「私は会長の事を信頼しています。その会長が任してほしいというのなら信頼しますよ。賛成します」

 続いてエルとナギも手を上げる。

「私も賛成」

「経費が予算を超えなければ、私は別にいいです」

 2人とも特に反対ではないようだ。となると1人渋い顔をしているのは副会長のルイスだけということになる。皆ルイスの方を見る。

「わかった、わかりましたよ。私も賛成します」

 仕方がないと言った感じでルイスが賛成した。これで一応満場一致となったわけだ。

「それじゃあそのサプライズイベントとやらは会長に一任します」

「ありがとう、楽しみにしていてね」

「後は何かありますか、何か質問は」

 皆手を上げない。

「それじゃあ今日のミーティングはお開きにしましょう。あとはおいおい臨機応変に対応していくという事で、とりあえず明後日にでもまた確認のために簡単なミーティングを行います」

「わかりました」

「それじゃあ書記のエルさんとルル君、そして庶務のカイトは近日中に配る学園祭のしおりの作成に入ってください」

「え、俺も?」

 意外な所で名前を呼ばれてカイトは少し驚いた。

「庶務を担当している者は基本どんなことにも関わるものです」

「えー」

「何か不服でも?」

「いいえ」

「それじゃあ解散しましょう。おつかれさまでした」

「おつかれさまでした」

 皆が頭を下げて最後の挨拶をする。そこへダル先生が声をかけてきた。

「終わったようだな」

「はい」

「学園祭のしおりは先生方の分もコピーするのを忘れるなよ」

「大丈夫です」

 エルが答えた。エルはもうすでにノートを開いて学園祭のしおりの作成に入っている。

 会長のユリコと副会長のルイス、そして会計のナギはとりあえず、する事はないので帰り支度をはじめていた。

ルイスは剣道部とかけ持ちなので、これからそちらの方に行くつもりなのだろう。ナギはおそらく家に帰るはずだ。

ユリコは一応帰り支度をしてはいるが、今はまだ帰るつもりはないようだ。エル達のしおりの作成が終わった後、カイトと一緒に病院に行くつもりだからだ。

 ふとカイトが席を立ち、ユリコの方に近づいていく。そして耳打ちする。

「会長、ちょっと聞きたい事があるんですが……」

「なに?あらたまって」

「今回の学園祭、サプライズイベントとか用意するのはミルのためですか。思い出深い学園祭にさせてあげたいという……」

「……」

 カイトはユリコが去年までのカリキュラムと違う、真新しいイベントを用意すると言ったのは、カイトの妹であるミルの為ではないかと思ったのだ。

その勘は当たっていた。

ユリコはミルの事を気に入っており、学園祭に遊びに来る彼女のために何か特別なイベントを用意してあげたいと考えたのだ。

「あなたが気に病む事はないわ、これは私自身がやりたくて決めた事なんだから」

「やっぱりミルのためなんですね」

「いいえ、違うわ。私自身のため。私がやりたかったの。私自身が思い出深い学園祭にしたかったのよ」

「……」

 ユリコは否定したがカイトはそのことに気づいているようだ。深く頭を下げた。

「ありがとうございます会長」

「だから礼なんて必要ないわよ」

「いえ、それでも言わせてください」

「……まあいいけど。それより早くしおりの作成を終わらせてね、ミルのお見舞いに行くんでしょ。これから」

「そうでしたね」

 その時だった。


(早く逃げて……)


 カイトの頭に突然謎の声が響いた……それも聞いた事もない女の声だ。

 カイトは辺りを見回す。周りは帰り仕度をしているルイスとナギ、そしてしおりの作成をしているエルとルル、そして窓際で椅子に座っているダル先生とあとは会長がいるだけだ。彼らは何の声も聞こえていないようだ。

「会長、今私に何か話しかけてきましたか?」

「だから早くしおりの作成を終わらせてねって」

「いや、そうじゃなくて……」


(ここは危険よ……早く逃げて……)


また聞こえてきた。辺りをまた見回す。生徒会のメンバー以外は誰もいない……と思ったら、カイトはある事に気がついた。なんと窓の外に10歳ぐらいの女の子が立っていたのだ。

いや、立っていたという表現はおかしい。なぜならここは3階だからだ。つまり空中に浮かんでいるのだ。

しかもカイトはその少女に見覚えがあった。今朝、ミルの病院に行った際に、病院の前でミルの病室を見ていたあの少女だ。しかしいずれにしても空中に浮かんでいるなんてことはありえない。

カイトは目を凝らしてもう一度窓の外を見ると、次の瞬間その少女は消えていた。

カイトは窓の近くに行き窓の外を見る。さっきまでそこにいた少女はどこにもいない。グラウンドでは多くの学生がクラブ活動をしており、普段の放課後の光景だ。何も変わったところはない。

「どうした?」

 その窓際で椅子に座っていたダル先生が話しかけて来る。

「ダル先生……」

「ん?」

「ここって3階ですよね」

「当たり前だろ」

「窓の外に人がいるなんてことありえませんよね」

「?……何を言っているんだ。お前は」

「……」

(さっき見たのは幻覚?じゃあ声も幻聴?)

「どうしたの、カイト」

 ユリコが怪訝な顔して話しかけてきた。

「いや、なんか俺今日は疲れているみたいで、病院に行って早めに帰ります」

「そう……」

 カイトは自分が疲れているために幻覚や幻聴を見たり聞いたりしたと思い。今日は早めにミルのお見舞いに行き、今日は早く家に帰って寝ようと考えた。

だがその時だった。

 カイトは意味もなく得体のしれない不安を感じた。いや、恐怖といった方がいいかもしれない。何か恐ろしい事が起きる。彼はそんな予感を感じた。

 カイトは再び窓の外を見る。何かが起きる。それもとんでもなく悪い何かが、そんな確信めいた恐怖が彼を襲っていた。

「カイト……?」

 カイトの様子が変だという事にユリコも気が付いた。しかしカイトはユリコに話しかけられた事にも気づいていない。ただ窓の外を凝視する。

ふとその時カイトは空を見上げた。何かが空から来る。そしてカイトはある一点の空が歪んでいるのに気づく。

(あれは何だ……)

 その空は何となく歪んで見える。陽炎のような感じだ。初めはそれが何なのか、カイトにはわからなかったが……

(あそこに何かがいる!)

 カイトがそう思ったのと同時だった。その歪んだ空が一瞬光る。その瞬間カイトは本能的に叫んだ。

「みんな伏せろ!」

カイトは傍にいたユリコを庇いながら床に伏せた。と、次の瞬間、ものすごい轟音と衝撃波が彼らを襲った。


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