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女の髪の毛を集めるカルマ君と、親がブログにあげた写真のせいでネットのおもちゃにされたマイちゃん  作者: 津山 まこと
第1章 女の髪の毛を集めるカルマ君

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第3話 修羅場

 張り裂けるような愛川の悲鳴にも動揺せず、水田は、

「土まみれの汚い手で悪りぃなぁー。お前の藁みたいな髪の毛で拭かせてもらうわ!」


「やだ!! まじやめて!! 痛い痛い無理いいいぃ!! こいつまじなんとかして!! もうやめて!!」


「止めて欲しいなら謝れ」


「それは嫌! 絶対やだ! なんで私が謝らなきゃなんないわけ? 謝るのはお前だろ――って痛ぁああ!!」 


 愛川の髪は所々抜け落ちみすぼらしくなる。

 周囲は巻き込まれないように視線をそらしつつ聞き耳を立ててる奴と「女こえー」って教室の隅で笑ってる奴ら。

 例外が一人だけいて――――。






「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って!」

一人の女子が、修羅場とかした戦場に乗り込んでいった。






「邪魔すんな稲森!」

「助けてぇ稲森ちゃ~ん」


 稲森という女子は、クラスの上層から下層まで自由に行き来する明るい奴だ。

 あいつの肩まで伸びた髪も引っこ抜かれたりして、なんて想像してしまう。




「これはよくないって! 一旦落ち着こう? 深呼吸だよ深呼吸。吸って、ほら吐いて。あとさ、手は離そう。ね? もう気が済んだんじゃない? てかさてかさ、会話だけでバトルしようよ。これはダメだって。ガチバトルになっちゃってるよ」




「稲森、お前どっちの味方なの?」と水田は髪を離す素振りは見せず、視線で稲森を威嚇する。


「稲森ちゃ~ん」と愛川が涙声を発する。


 稲森は表情に焦りをみせながらも、

「私は両方の味方だよ! どっちにもケンカしてほしくないもん」






 すかさず愛川が、

「これケンカじゃないからね。こいつが全部悪いだけだし」と恨みの籠もった低い声で言う。


 稲森は「えっと、あの、その、うんとー」と、どう収拾を付けるか頭をフル回転してるようだった。

 膠着状態の二人はまたすぐにでも爆発しそうだ。

 そんな時だった。

 怨念が垂れ込める教室に、場違いで暢気な声が登場した。





「なぁー、うちの部長いるー?」





 他クラスの男子が、うちの教室にひょっこり顔を出した。

 サッカー部で顔が中性的ってだけで女にモテまくってる奴。

 渦中の男でもあった。





「未央!」と水田。

「未央君!」と愛川。

 




 未央って奴は二人の荒れ果てた姿を見ても気にもとめず、普通の感じで二人に話しかけた。

「よお。うちの部長今日学校来てる?」


 女子二人は急に態度を変えた。

 サッと表情から情念を消し、ドスのきいた淀んだ声はハチミツみたいな甘い声のトーンに。

 愛川なんて、お前何歳だ? ってぐらい甘えた声を出す。

 不気味すぎて怖い。さっきの感情的なほうが本心なだけ幾分マシに思える。




「未央君、酷いんだよぉこの子がぁ――――」

「こいつが未央のこと勝手に――――」






 媚び売りまくりの二人にモテ男は、

「それあとでもいい? ちょっと今忙しいんだよね」


 素っ気ない言い方だった。

 決して態度は悪くないし一応授業中でもあるからすぐ立ち去るのもわかる。

 だが、どことなく俺が遊びたい時だけ相手してやるよ、そうじゃない時は俺のやること邪魔すんなって圧がプンプンした。






 未央はぐるりと教室を見回し、

「部長いないならいーや。じゃあまたね」

 そう言って教室を立ち去ってく。






「そんな、未央くーん。待ってよぉ」

「なぁ未央」

 あろうことか二人はそいつの後を追いかけて教室を出て行く。

 おいおい、授業サボって行くほど重要か?

 稲森まで二人を心配してか教室を出て行ってしまった。








 嵐が過ぎ去った教室は、息を吹き返したかのように会話の洪水がおきた。


「やっばあぁぁっ」

「モテる男はつらいねぇ。俺も女に取り合いされてーよ」

「そんないいもんじゃないだろあれは。いずれ刺されるぞ」

「未央君はあの二人の本性に気づいてるのかな?」

「サッカーばっかりで女の子に免疫無いんじゃない?」

「なにそれ未央君かわいい」





 今まで静かだった俺の後ろの席に座っているアイドルオタクの女子らも喋りだした。

 前に座ってるせいで聞きたくもない会話がダイレクトに耳に入ってくる。


「あれって男がどっちにもいい顔して態度ハッキリしないのが悪いよね。二人とも遊ばれてる気がする」


「だろうね」


「でもさ、男が悪いのにどうして女同士でキレるかな。男にハッキリしっろって言えば解決じゃない?」


「違う違う。好きだからだよ。好きな人には怒りをぶつけられない。嫌われたくないから」


「そうか?」


「オタクも大体そうじゃん。推しの熱愛がでると、恋愛に揺らいだ推しより熱愛相手を責める人いるじゃん。こいつが推しを盗った。こいつがたぶらかしたに違いない、みたいな」


「あー、はいはい。なんとなくわかる」


「怒りを向ける方向間違えてるんだよ」







 喧騒にまみれながら、俺はある一点に目が釘付けだった。

 見つめすぎて感触さえ想像できそうだ。

 



 床に散らばったエクステの束。




 触りたいな。

 本人が帰ってきたら拾ってしまうだろうか。

 そう思うといてもたってもいられなくなった。 

 ここは学校で衆人環視のなか、どれほどのリスクがあるのか頭ではわかっている。

 なのにその衝動に抗えない。

 いや違うな、抗いたくなかった。

 従いたい。

 いいよな。

 それっぽい言い訳を考えればいいだけなんだから。

 




 俺は勇気をを奮い起こし、席を立ち上がったんだ。



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