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女の髪の毛を集めるカルマ君と、親がブログにあげた写真のせいでネットのおもちゃにされたマイちゃん  作者: 津山 まこと
理解ある稲森ちゃん

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第17話 血だらけの落ち武者――女が――飛び出してきたんだけど

「どこにする?」


 私たちはラブホの部屋選びのタッチパネル前にいた。

 ラブホの部屋の写真ってただの室内写真で、よくいえばインテリア写真と変わらないのになぜかギトギトしてるように見えるんだよね。

 中華屋の床のギトギト感に似てる。





 彼はなんでも私に決めさせる。

 最初は私を配慮してくれてるんだと思ったけど、実際はあとで文句言われたくないから相手に決めさせてるだけなんだろうな。

 彼の代わりに決断をくり返してると、彼が背負うべき責任まで背負わされてる気がしてくる。

 生きる活力がなさそうな人を選んだわけだけど、その不の部分をダイレクトに受けている。

 生きる活力がないってことは、決断するエネルギーもないってことだ。



 私は「じゃ――ここにしよ」と一番安い部屋のボタンを押した。







 エレベーターに乗り込む。

 沈黙のなかエレベーターのモーター音だけ小さく響く。





 三ヶ月付き合ってすでにセフレ状態。

 彼からしたらこれは通常の恋愛なのかもしれない。

 会話なんかしなくたってお互いわかり合ってるよな系のカップルはいるし、それって心地良い関係性のはずだよね。



 でも私に言わせれば付き合って三ヶ月でもうマンネリで、冷め切ってるけどお互いに別れるのが面倒でたまにセックスして私たちは恋人だよね? って形だけ取り繕って、ハリボテの恋人を延命してる。

 これが私から見たこの関係だ。



 彼は楽しいのかな。

 たとえ聞いたとしても「うん。楽しいよ」だろうから、聞かないけど。







 どうしてこんなに恋愛をくりかえすんだろう。

 高校までは彼氏ゼロだったんだけどな。

 恋愛なんかする必要ないんだよ。

 恋愛なんかしなくたって人生は楽しいはず。

 …………家に帰らない口実が欲しいのか。



 両親に対して、出来の悪い姉だけ残って申し訳ありません弟のSOSを見逃して申し訳ありませんと心のなかで謝罪する日々の反動で、こんな私だけど誰か肯定してくれませんかお役に立ちますからと誰かしら求めてるのかな。

 その欲求を埋めるのに都合がいいのが”恋人”か。

 ――――キモ。






 エスカレーターから降りて廊下を歩く。

 自分たちの部屋は一番奥だ。

 こういう場所ってちょっぴり怖いんだよなぁ。

 扉を隔てた先で欲望渦巻く交尾が開催されているわけでしょう。

 強い感情って怖いなぁ。




 どこかの部屋が激しく交尾しているのかガタガタうるさい。

 激しく乳繰り合ってるのかSMとやらなのか。ラブホの外では大人しそうな顔してても、皮を剥がすとこれなんでしょう?

 やぱり怖いな、こういう場所。





 突然、部屋の扉が開いた。

 ガタガタ物音が聞こえてきた部屋だった。

 他の客と鉢合わせか気まず――――い。






 え……。

 なにこれ。






 血だらけの落ち武者――女が――飛び出してきたんだけど。






「助けてぇぇ!!」







 下着姿の落ち武者女が私たちを見て助けを求めてきた。

 

 私たちはビックリして身構えた。

 二十歳前後の女の子がなんで落ち武者なの!?

 胸元までのびた髪の毛はきれいに巻かれているのに、その女の子の頭頂部は無残にバリカンで剃られていた。

 顔を殴られたのか片目が腫れてて口からは血が絡んだ涎がこぼれている。



「え……っ……」



 私は震えながらも、なんとかしなきゃなんとかしなきゃと頭をフル回転するんだけど体がちっとも動かず立ち尽くしていた。

 にわかに隣の彼氏が素早く動いたので助けに入るんだと思ったら

 ――――体をひらりと翻し、






 私と女の子を置いて一目散に――――逃げた。






 え、待って、違うよね?

 店員を呼びに行った……んだよね?

 でも私を置いてくもんなの?

 いつも私に決めさせるのに逃亡は自分の意志ひとつで決断ですか。

 生きる活力が沢山おありだこと。

 あ、冷めた。

 一瞬で冷めた。






 その時、部屋から一人の男が出てきた。

 パンツ一丁の二十代男性だった。

 バリカンを手にしてる。

 女の子をこんな酷い目にあわせた張本人だろう。

 私はぶるりと全身が戦慄いた。鳥肌で全身をうめつくされそうだ。

 やばい。

 やばい。

 やばい。




 男は部屋に女の子を連れ戻そうとしてるのか、ふらふらとこっちに逃げてくる女の子の髪の毛を引っ掴んだ。



「痛っぁああ!! 離せ!! 死ねよクソが!! ちょっと、そこのアンタ!! 突っ立ってないで助けろよ!! おい、役立たずがよ!!」





 私のことだ。

 暴れる女の子を取り押さえようと躍起になっていた男が

 ――――こっちを見た。

 私のこと、気づかれてしまった。

 やばい。

 次の狙いは私だ。

 殺される。

 でも体が動かない。

 私は男の顔をじっと見る。

 男のほうも、じっと私を見つめてくる。

 私たちは見つめ合い、お互いを確かめた。

 胸が締めつけられる思いだった。

 私は確証を得た。

 口に出す。




「カルマ君、久しぶり」



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