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女の髪の毛を集めるカルマ君と、親がブログにあげた写真のせいでネットのおもちゃにされたマイちゃん  作者: 津山 まこと
第1章 女の髪の毛を集めるカルマ君

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第11話 ねえ。相手のことたいして知らないのに好きになるって変だと思わない? 変よね?

 昇降口で土足から上履きにはきかえてるとドアガラスに映る自分の顔が目に入り、目の隈がヤベーことになってるのに気づいた。

 昨夜は眠れなかった。

 思考がぐるぐると回り続け、答えの出ない問題を考えつづけていたら朝になっていた。

 そもそも考えたってしかたないのにな。




 付き合ってもなければLINEも知らないレベルのクラスメイトだ。

 完全なる早とちり。

 なにも始まってなければ、始まることすら無い可能性さえある。

 色事もろもろを考えるほうがおかしいんだって。

 セックスなんて今の状況の俺には無縁なんだから、この問題は先延ばしでいいだろう。






 チャイムが鳴る前に教室に滑り込んだ。

 担任も教室に入ってきて、それに気づいた生徒たちが自分の席につこうとしている。

 稲森を見つけた。

 友人の席から自分の席に戻ろうとしていて

 ――――目が合った。






 「おはーっ。いつもギリギリでよく間に合うねぇ」

 





 あの睫毛や息づかいを思い出し、頭がカーッと熱くなる。

 ああどうしよう。

 『よう』だの『おう』だけでも言いたいのに、口を開くと俺のこの感情がダダ漏れしてしまうんじゃないか、クラスの連中にバレてしまうんじゃないかと錯覚するほど、今俺の体内では感情の洪水がおこっていた。

 嬉しくてハイテンションで恥ずかしすぎた。

 俺は会釈だけしてそこを通り過ぎた。

 今の俺絶対キョドッてる。

 最悪だ。




 ちょうどチャイムが鳴り、担任の「席つけよー」の声に急かされる形で自分の席についた。

 ホームルームが始まり冷静さを取り戻したあとも、つい稲森の姿を探してしまう。

 稲森は隣の席の女子となにやら小声で話し、くすくす笑ってる。





 はっきりしてしまった。

 俺はあいつが好きなんだ。

 どこが好きとかあいつがどんな奴とかわかんないけど体中があいつのこと好きだって感覚に溺れていることはよくわかった。

 俺はどうしたらいいんだろう。

 一生セックスできないわけで……いや、子作りでするのは許されるはずだろう。

 それは加害にはならないはずだ。




 てかなんでセックスの話になる。

 そうだ、セックスしなきゃいいんだ。性欲をむけるから加害になる。

 ならばセックスなしの純愛。プラトニックなやつにすればいいんじゃん。

 そうすれば加害にならずにすむはずだ。

 問題は解決した。





 ***





 夕飯はスーパーの惣菜だった。

 自分の分の酢豚と竜田揚げをあらかた食べおえた。

 おかずばっか食べてて白米がまだ半分残ってる。

 ひじきの煮物もテーブルに並んでいて、そんな好きじゃけど白米だけ食べててもしゃーないし食べるかと手を伸ばす。




 目の前にいる母さんはもくもくと食べている。

 母さんは明日仕事が休みだから幾分機嫌良さそうだった。

 聞くなら今だろう。

 別に関係が近づいたわけでもないが、気になったから。

 将来のことをふまえると聞いておいて損はないだろうし、母さんのお墨付きを得て安心したかった。

 大丈夫なはず。

 あまたのフィクションでいいものとして描かれてるじゃないか。

 純愛って。

 それとなく聞いてみよう。

 これは俺の話じゃなくて友人の話だから。

 そんな真面目に答える必要ないよ、たわいのない話だからって空気をだすようつとめて。





「――――例え話だけどさ」


「なによ」

 母さんがこちらに顔を向ける。


 俺は唾を飲んだ。


「…………好きな子ができたとして、その子と…………性的な関係にならなければ傷つけることには、ならない、よね?」






 母さんが俺を見つめる。

 なんだ。

 間違ったのか。

 地雷踏んだか。

 内心ビクビクしてるのを表情にださないよう堪える。

 たった数秒の沈黙が無限に思えた。

 母さんは少しの間をおいてから言った。






「相手のこと、どう好きなの?」






 まさかそんなこと聞かれるとは思わなかった。


「ど、どうって言われても…………わかんない、な」


「相手のことどれぐらい知っているの?」


 探られてる。

 これはテストか?


「これから詳しくなる、感じ――――」






 母さんが箸を机に叩きつけた。

 俺はビクンッと体が跳ねる。

 母さんの睨むような目つきに俺は震え上がった。



「ねえ。相手のことたいして知らないのに好きになるって変だと思わない? 変よね?」

 同調をもとめるような圧があったが、その考えには一理あった。



「…………たしかに」




 母さんは当てつけのようなため息をついてから言う。

「それはね、性欲なのよ」



 俺はなにも言えなくなった。


 母さんは続ける。

「性欲がそうさせるの。動物の頃の習性が残ってるせいよ」


「……………………」


「私はそれでお父さんと失敗したの」


「……………………………………………………そっか」


 形だけの返事をした。

 俺は空っぽになってしまって感情とかもう無かった。







 母さんは一旦お茶を飲み感情を切り替えると、今度は優しく諭すような口調で言う。


「――――――教えてくれて有り難う」


「……うん」


「私も学生時代に友人から同じような指摘を受けたの。その時の私は恋の熱に浮かされててそれを無視してしまった。そのせいでこんな目に合ってしまった。

あんたには同じ失敗してほしくないのよ。

まぁ…………一度失敗してしまったけれど、それでも最近はよくなったじゃない。このまま続けて。私も支えるから」






「……うん」


 俺はその後もロボットみたいにただ同じ返事を繰り返すだけになっていた。





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