「電磁弁」
諦めたくない。諦めたくない。私はこんなところで終わるのか?もっと、、もっと頑張らないと、、、。
「、、、ダメだな、追い込みすぎてる。」
私は少し疲れているな、と感じ、コーヒーを淹れに行った。
、、、別に上手くいかなくてもいいじゃないか。お前には才能が無いのだから。
今でも時々考える。私は何者なのだろう。一体何のために生まれて何で生きているのだろう、と。ひょっとすると意味などないのかもしれない。でも考えずにはいられないのだ。
私は擬態するカメレオンだ。普通の人とは違う。でも私には一体何がある?特殊能力なんて何一つないじゃないか。できるのはただ一つ、この場に最も合う正しいと思われる答えを出すだけだ。そのために努力はしたし、それが今の私を作っている。
「そうだったな。いったん落ち着こう。」
あれから冷却塔のブローの自動化の件で、冷却塔内の導電率を常時計測し、それと連動して電磁弁が開いてブローできる装置があるとわかった。そしてそれが既に一部の冷却塔に設置されていて、それが活用されず眠っていることを橋木さんが教えてくれた。
問題はそれを更新・追加で実装する際に電気設備の図面が少々不足していて、施工業者も担当者が世代交代してしまい、どうなっているのかがわからない、ということだ。
「やれやれ、気長にやるしかないか。」
私は図面と現場を行ったり来たりしつつ、概要を掴めるように取り組んだ。
「葛木さん、相談があるんだけど。」
数日後、急に三木元課長に呼び出された。
「何でしょうか?」
嫌な予感がする。
「今回導入するスケールの除去装置、ほら電気分解のやつね。君が担当でお願いしたいんだけど、いいよね?」
「、、、はい、わかりました。」
正直、引き受けるのは非常に不本意だが、もう一度課長と対立はしない方がいいだろう。二度目はどうなるかわからない。
こうなるとブローの自動化を進めるより、スケール除去装置のしくみの理解、運用方法の習熟、適用できる範囲の把握、最悪のケースでどこまで対応できるのか、について勉強しないといけないだろう。やむを得ないが、最新技術の勉強や活用については多少興味はあったので、これも経験だろう、と少しこじつけで自分を納得させた。
それから導入工事の件について高橋主任と連絡しつつ、それとなく疑問点について聞いていった。導入工事についてある程度固まったあたりでマニュアルが届いた。
どうやら設計上は、うちの冷却水設備の導電率を管理値まで下げられるようになっているようだな。ただやはり実際に運用しないと本当のところ、わからないところは多いように感じた。
「この場合は、栄光電気がどこまでアフターフォローでき、責任を持てるかどうかの問題だろうな。」
高橋主任に連絡し、スケール除去装置の運用方法について確認しつつ、アフターケアサービスについての話を聞いた。
ざっくりだが、やはり中小企業特有の曖昧さのようなものを感じた。
「これはあまり期待しない方がいいかもな。」
とりあえず三木元さんには設計値を元にした冷却水設備の導電率低下度合いをシミュレーションして渡しておいて。まあこれで私もある程度はやっていることにはなっているだろう。
「少し疲れてきている気がするな。」
、、、そろそろここも離れる潮時かもな。
そう心の中で呟きつつ帰路ついた。
今日も一ミリだけ世界は回った。




