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「ブロー」

私は一般人ではない。一般人のフリをして生きているカメレオンだ。社会に適合しているように見えてまるでできていない欠陥品だ。しかしその欠陥品は宇宙で製造されたため、中途半端だが不思議な力を持っていたのだ。


私はさっそく上司である三木元課長へ報告に向かった。これまでトラブルになっていた冷却水のスケールの原因がわかったのだ。きっと解決まで辿り着くのは時間の問題だろう。


「三木元さん、冷却水のスケールの件で報告があるのですが。」


三木元課長は面倒臭そうに頭を描き、私に向き直った。


「何だい、葛木さん。話は短めで頼むよ。」


「はい。スケールの件ですが原因がわかりました。溶解度です。」


三木元課長はこれでもそれなりの理系の国立大卒である。溶解度と聞くと目の色を変えて話を真剣に聞いてくれた。


「なるほど、ありがとう。スケールの件、いい話を上にできそうだ。」


「それはよかったです。私は導電率の管理値を保つため、どのような方法が良いか検討してみます。」


三木元課長は少し渋い顔をして私にこう言った。


「実は私の方で既に考えがあってだね。よかったら葛木さんも一緒に話を聞いてもらいたいんだけど、いいかな?」


「はあ、わかりました。」


一体何だろう。


数日後、私は三木元課長と部長の3人で会議室である設備業者を待っていた。


「お待たせしてしまい申し訳ございません。」


「いえ、私達も今来たところですから。」


三木元課長はそう言い、簡単に挨拶を交わし、名刺交換を済ませた後、本題に入るよう設備業者、栄光電気株式会社、高橋主任に勧めた。


「我々が設計したスケールを電気分解する設備を導入することで、これまで配管やポンプに溜まっていたスケールを除去し、さらに新しく発生するスケールもただちに除去できます。つまりスケールの発生を予防し堆積も除去でき、一定期間後、スケール問題を永久に根絶できます。」


三木元課長は頷き、納得しているように説明を聞き終えた後、にこやかに高橋主任を帰し、部長と別室で話し合うから、と会議室から出ていった。


取り残された私は電気分解でスケールを除去できる装置があったのか、と疑問に思った。もともと私は水処理出身のエンジニアである。なんとなくスケール除去装置は砂濾過をはじめとする濾過装置が主流だったような、最近はそういうのが主流なのか、私も勉強不足だったのかもな、と少し調べてみることにした。


「うーん、やっぱりないぞ。」


私はつい独り言を言った。それを聞き、先輩で同僚の橋木は気になったようだ。


「どうした、悩みごとか?葛木さんにしては珍しいね。」


「いえ、ただ少し気になることがあって。スケール問題の件で、三木元さんが電気分解を利用したスケール分解装置の導入を検討してるみたいなんですよ。」


橋木はやれやれ、とため息を吐いた。


「実は前任者も同じような装置を別の冷却水設備に導入しててね。運用の仕方がわからず、今はもうただの置物さ。」


「そうだったんですか。三木元さんは知ってるんですか?」


「知ってたらやらないだろ。あの上ばかり気にして実力不足の超保守派がさ。」


「まあ、それもそうですね。私も電気分解を用いたスケール除去装置はこれまで聞いたことがなくて、テキストに無かったので技術論文を漁ろうか、業者に聞こうか悩んでいたんです。論文があれば根拠もちゃんとありますし、長期的な運用は可能かと思いまして。」


「やめとけやめとけ。葛木さんは勉強熱心なところが長所だけど、真面目過ぎるのは少し良くないな。」


「そうですか。話の流れで私が担当になりそうなので少しはやっておかないと後が怖そうで。」


橋木はあちゃー、と頭を掻いた。


「貧乏くじを引いたな。せいぜい頑張ってくれ、俺も応援するからな。」


「ありがとうございます。何か困ったことがあれば真っ先に橋木さんに相談しますよ。」


気は進まないが、三木元さんにこの件は言っておかないとな。


午後、三木元課長の手が空いたタイミングで、私は相談してみることにした。


この時はまだ、原因がわかっただけでは全ては解決しないのだ、ということを私は全く考えていなかった。


今日も一ミリだけ世界は回った。

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