第三話 天使の家で
「ここがミシェルの家?」
「そうだ」
いくつかの低木と、一本の背の高い木が生えた下に彼の家はあった。緑に囲まれていて、一目見ただけでは家があるとは分からない。
元は正方形だったのだろうが、今は家の三分の一程が綺麗に消し飛び、他はかろうじて残っている状態だった。天井は少し削れていて横から見ると三角形のような形になっているが。
ハクマは慣れた様子で屋根の下に入ると端に寝転んだ。
「雨漏りとか、寒いとかないの……?」
「寒い時は布に包まってハクマの隣に行く。雨の日は防水の布で覆う」
ミシェルは端に置いてある厚めの布を指した。よくルーシュの国でも見るものだ。
「人間の国に行くの?」
「極偶にな。生活に役立つものだけ買って帰る」
「バレないの?」
「厚着してリュックでも背負ってればバレない。翼が短いから」
ミシェルはパタパタと翼を動かしてみせた。
「じゃあ飯作るから、お前はハクマと一緒に待っとけ」
「え、ぼくも手伝うよ」
「……じゃあ、そこの棚から果物出してくれ。赤紫のデカいの。房から六つ程取ってハクマにあげて」
「はーい!」
ルーシュは元気よく返事をすると、壁際にあった棚から果物を探り出す。中には他にも色々と果物や木の実が入っていた。取り出したのは拳より一回り小さい赤紫の果実だ。皮はそれなりの固さに見える。言われた通り、ぷちぷちと六つ実を取ると残りは棚にしまった。ハクマの元へ……と振り返ると、足元に既にもふもふが。
「うわぉっ、来たんだ。どうぞ」
「一個ずつあげろよ」
「うん」
トントンと野菜を切る小気味好い音を聞きながら、ルーシュはハクマにゆっくりと果実をあげる。ふわっとした口元が手に当たって少しくすぐったい。果実の甘い匂いと、その内ミシェルの作るスープの匂いもしてきた。
「もうすぐ出来る」
「えっ早いね?」
「普通だ。ハクマが食べるの遅いからそれに比べると早いけどな。……飯あげてて遅いと思わなかったか?」
ルーシュはぱちぱちと瞬きするとハクマの口元を見る。もっしゃもっしゃと食べているが、確かにのんびりで果実はまだ二つ残っている。
「そう言われたらそうかも。美味しそうに食べてるし、可愛くて見つめてたから全然気付かなかった」
ミシェルは少しだけ息を吐くと呟いた。
「お前らそっくりだな」
「え? ぼくあんまり可愛いって言われたことないけど」
「マイペースの方だよ」
「あぁ〜なるほど」




