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クロードの没落

 マリナがパリを去って数年後、コロナやウクライナ戦争によって世界経済が激変し大きな不況が先進国を襲った。フランスも例外ではなく、クロードが経営する企業群は、強引な戦略で急拡大し、無理な経営を続けていたので、瞬く間に資金繰りに行き詰まった。その結果クロードのほとんどの事業がうまくいかなくなり、倒産か廃業に追い込まれていった。すると当然のことのように、クロードのお金に群がっていた人達は次々と彼を裏切り、会社の資産や情報を持ち逃げしては彼の元を去り、お金目当ての愛人たちも手のひらを返したように彼の元を去っていった。

 クロードは、「あれだけお金をあたえて目をかけてやったのに」と裏切った人達を激しく憎んだが、裏切りは後をたたず、誰一人彼の元に残る人はいない。マスコミも一斉にクロードの没落を書き立てて彼を叩いた。クロードの事業はすべて債務超過となって倒産し彼自身もあっけなく破産してしまった。こうして時代の寵児ともてはやされた彼は滅んだ。

 絶望の中で初めてクロードが気づいたことは家族の有り難さだった。すべてを失ったかに思えたクロードだったが、家族だけは彼のそばを離れなかった。クロードは、妻を裏切り子供達に冷たくしていた自分を恥じた。そして彼は「これからは家族のために頑張ろう」そう決意をすると、彼はこれまで以上に知恵を絞り資金作りに奔走した。

 こうしてクロードは再起を計ろうとしたのだが、その矢先、首の後ろあたりに違和感があった。健康でほとんど病気もしたことがなかったクロードは、疲れのせいだろうとあまり気に留めなかったのだが、その首の後ろの違和感は日増しに激しくなり、ある日気がつくと、首の後に大人の握りこぶし大の大きな腫れ物が出来ていることに気づいた。恐ろしくなったクロードはあわてて病院に行き検査を受けたが、原因はわからず、短期間の入院でその大きなこぶを切除した。担当の医師はさらに精密検査を受けて病の原因を突き止めたほうがいいと説得したが、憎悪と悔しさと焦りと恐怖のかたまりのようになった彼を説得することは出来なかった。

 クロードは退院するとすぐに事業再建のため昼夜を惜しまず働いた。ところが一ヶ月もたたないうちにまた首の後ろ側に違和感が有り、数日のうちにあの大きなこぶが首の後ろにできていた。しかも今度はかなりの高熱がクロードを襲い、彼は事業再建半ばで再入院しなければならなくなった。首の腫れ物は、切除しても切除しても傷口がふさがるとまた膨らんだ。精密検査でも原因がわからず、クロードは日増しに衰弱していった。医師も為す術もなく。家族が見守る中、クロードは高熱にうなされながら意識が遠のき、生死の境をさ迷い続けた。



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