表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染は3時間に一回キスをしないと意識がなくなるらしい。って、俺とするの!?  作者: 冷泉七都
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/18

第7話 学校では、隠れて〈2〉

 2年4組のところに、月城悠太の名前はあった。

 少し上に去年からの友人の瀬戸島(せとじま)晴樹(はるき)も書かれてあったが、それよりも、俺はもっと下の方へ目を遣っていく。


 嶺田……嶺田……と、目的の名前を探す。


 ――――あっ、あった。


 嶺田柚奈の名前を見つけて、思わず声を出してしまいそうだった。

 柚奈も4組で、俺は柚奈と同じクラスになることができた。


 隣で背伸びをして掲示を見ようとしていた柚奈を見てみると、にまっとした笑顔をしていた。

 多分、柚奈も気づいたのだろう。

 すると柚奈は俺の左手を両手で掴み、上下に揺らして喜びを表現してきた。


「悠太と同じだね」

「あぁ、本当になれるとは思わなかった」

「えー、わたしはなれるって信じてたのにな」


 そうやって柚奈と話していると、背後からやってきた影が一つ。


「楽しく話してるとこ、ごめんね」


 人違いかと思ったけど、明らかに俺たちに向かって喋っているから、その人の方を向いた。


(ゆず)ちゃん、久しぶりー」


 珍しい柚奈の呼び方で、俺はやっと気づいた。

 一年のとき、柚奈のことをそう呼びながら、仲良しそうに二人でいるのを見たことがある。


心愛(ここあ)じゃん、久しぶり。今日は学校来るの早いんだね」

もち(もちろん)、クラス替えだしね」


 彼女の名前は、梅井(うめい)心愛。

 この高校では、かなりギャルの部類に入るであろう人である。

 それだけが理由ではないけど、スカートの丈は短いし、人との距離感もまさしくそれらしい。


「心愛は何組だったの?」

「あたし? あたしはね、3組だったよ」

「そっかー、わたしは4組だから残念だったね」

「まじ? 柚ちゃんと同じが良かったのにー」

「そうだね」


 梅井さんはアクロバディックに悲しみを表現していた。

 しかしすぐに俺の方を見ながら、声色を変えて再び喋り始めた。


「でも、彼氏とは同じクラスなんじゃないの?」

「え、なんで?」


 柚奈の疑問に、頷いて俺も激しく同意した。

 彼氏なんて、確信を持って言わないでほしい。

 そこまで明らかに付き合っている雰囲気は出していないはずだ。


「だってさ、さっき二人で喜びあってたの見えたし」

「心愛、見てたんだ」

「そりゃあ、ちょっと目立ってたしね。それよりさ、一緒で嬉しかったんじゃないの?」

「いやいや、嬉しかったのはそうなんだけど……。そういうことじゃなくて、わたしたち付き合ってないってこと」


 柚奈がそういう発言をすると、なんだか恥ずかしくて、自然と顔が赤くなっていく気がした。


「えー、ほんとかなー」


 梅井さんは依然態度は変わらず、というか、さっきよりも顔をにやにやさせて揶揄ってきている。

 なんだろう、俺はあまりこういう人を好かないな――。


「そうだ、名前なんて言うの?」


 俺に向かって、梅井さんは聞いてきた。


「月城です。柚奈の彼氏ではないです」

「ちなみに、あたしは心愛っていうよ。心愛下の名前は何なの?」

「悠太です。あと、柚奈の彼氏ではないです」

「それなら、悠太くんって呼ぶね。どうやって柚奈と仲良くなって、付き合い始めたの?」


 怒涛の質問攻めに、俺は少しだけ怖気付いてしまう。

 まぁ、答えられることは答えるべきだろうし、あのこと以外は隠す必要もない。


「小さい頃から幼馴染ってやつで、色々あってまた話すようになっただけです。何回も言いますけど、柚奈の彼氏ではないです」

「へー、そうなんだっ」


 いくら俺が彼氏じゃないと言っても、その部分だけ聞こえない振りをしてくる。

 俺と柚奈が付き合ってないからといって、梅井さんに不利益が生じるわけでもないのに、どうしてそんなに強情なのだろうか。

 俺には分からないし、柚奈も分かっていないようだ。


「じゃあ、お二人で仲良くーっ」


 そう言い残して、校舎の中へと消えていった。

 カップルは二人にしておいてあげる、梅井さんなりの優しさなのだろう。


 やっぱり、あんまり好みではない性格だな――。

 自分の心の中で、そう思った。


「心愛ってば、変なところで意地を張るんだから……」

「梅井さんとは前から仲良いの?」

「入学の日に話しかけてきてくれて、そこから結構仲良いよ。あんな部分もあるけど、一所懸命なところもあるし、優しいし、あと可愛いし」


 確かに梅井さんの顔も整っている。

 学年可愛い女子ランキング(とある男子調べ)では6位をマークしていた覚えがある。

 おそらく、話しやすさも含めればもっと上、トップ3には入ってくるのではないかと思う。


「なるほど」

「あの感じなら、また悠太に話しかけてくるかもだから、そのときは仲良くしてあげてね」

「あぁ、もちろん」


 別に毛嫌いしたいとか話したくないというわけでもないし、もし話しかけられたらそうしよう。

 柚奈のことも色々聞けるかもしれないし。


 俺たちは靴をスリッパに履き替えて、2年4組の教室まで歩いていく。

 同じ階段に同じ廊下、春休み前と全く変わらない校舎なのに、不思議と新鮮な気分がする。

 それは多分、2年生に進級したからだろう。


 そして目的の教室に到着して、俺と柚奈は一緒に教室へ入った。

 教室の中を一瞥すると、去年からの友人である晴樹が、俺を見つけて驚きの表情を浮かべていた。


 やはり、俺の生活は変わってしまうのか――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ