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幼馴染は3時間に一回キスをしないと意識がなくなるらしい。って、俺とするの!?  作者: 冷泉七都
第一章

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第6話 学校では、隠れて〈1〉

 昨日は昼過ぎまで荷物運びをして、残りはまさに怠惰な時間を過ごした。

 キスを六回ほどしていくと、だんだん慣れていって、今では恥ずかしさも少なくなってきている。

 それとともに、なぜか心の距離が近づいていく気さえしてしまう。

 柚奈と二人で、そんな一日を送った。


 そして2度目の夜を明かし、今日から高校2年生の生活が始まる。



 ダイニングテーブルから、キッチンの方を眺める。

 さっき座ってて良いよと強く言われて、少しでも手伝いたかったけれど、俺は諦めて大人しくその通りにしている。

 制服姿で鼻唄を歌いながら朝ごはんを作っている柚奈に、淡い新妻感を感じた。


 柚奈の髪は後ろで結ばれて、中ぐらいの高さのポニーテールになっている。

 家での髪を下ろしている柚奈とは違い、学校では、いつもこの髪型をしているのだ。

 どちらも柚奈に似合っている。


「悠太、できたよ」


 そう言いながら、テーブルに朝食が並べられた。

 昨日も食べたが、やはり朝に白米と味噌汁を食べることができるのは嬉しい。

 温かい朝食に感動しながら、手を合わせて「いただきます」と言う。

 もちろん、柚奈に対しての感謝の意も入っている。


 一口、二口と食べすすめていく。

 俺の箸は止まりそうにない。


「どう?」

「美味しいよ。作ってくれてありがとう」

「どういたしまして」


 毎回柚奈はちょっと不安そうにそう聞いてきて、毎回俺は正直に美味しいと伝える。

 この(くだり)はずっとするのだろうか。

 俺からすれば、感想とありがとうを言える良い機会だし、いつまでもしたいのだが――。


「今日から学校だね」

「あぁ」

「わたし、悠太の制服姿しっかり見るのは初めてかも」

「確かに、俺もそうだな。クラスが違うかったら、あんま合わないもんな」

「そうそう」


 すると柚奈は軽く握った手を顎に当てた。

 なんだか悩んでいるように見える。


「どうしたんだ?」

「悠太と同じクラスになれるかなって思ってさ」

「同じ……」


 柚奈は同じクラスになりたいと思ってくれているのか……。

 俺はとても嬉しくなった。

 だが――。


「だって、学校の中でも悠太と会ってキスしないといけないじゃん。いつも近くにいてくれたら助かるなって――」


 俺を求めているが、俺自体を求めているわけではなかった。


「確かに、それはそうだ。一緒のクラスになれればいいな」

「うんっ」


 俺も柚奈も、新しい環境になるのは楽しみにしている。

 どんなクラスになっても、柚奈を助けながら、楽しく過ごしていこう。


「悠太――」

「ん? なんだ?」

「学校では隠れて――だよね」

「あぁ。そりゃあ、もちろん」



   / / / / /



 学校は、俺の家から徒歩で10分と少しぐらいの距離にある。

 だから遅刻ギリギリに出ても間に合うのだけど、今日からは柚奈もいるし、そういうわけにはいかない。


 というより、そもそも柚奈が学校に行く準備が終わってすぐに出発できる格好なのに、ソファに座って俺を待っていてくれているのに驚く。

 いや、待っていてくれているというのは、ただの俺の淡い期待で、本当は全然そんなことがなかったり……。


「柚奈は俺と一緒に学校行くんだよな」

「うん。そうだけど……」

「いや、ちょっと聞いてみただけ」

「……? そう」


 俺の予想は間違っていなかったらしい。

 なにか変なことでも――? という風に返してくるし、柚奈はこういうのをあまり気にしないのだろう。

 まぁ、男女二人で通学してるだけで付き合ってるとか邪推する人は、学校にそんなにいないと思うしな、大丈夫か。


 俺は急いで残りの用意を済まし、リビングへと戻った。

 俺が目線を送ると、柚奈はソファから立ち上がって、俺の隣へやって来た。


「それじゃあ行こっ、悠太」

「あぁ」


 玄関を出て、いつも通りの通学路を歩く。

 柚奈はここから通学するのが初めてだからか、周りをちらちらと見ながら進んでいる。


 学校に近くなっていくたびに、人が少しずつ増えていく。

 そして最寄り駅からの道と合流するところで、一段と人が多くなった。


「なんか、周りに見られてる気がするんだけど……気のせいかな?」

「――あー、そうじゃないか」


 柚奈は鈍感で、みんなの視線の意味を分かっていない。

 本当を伝えてしまってはいけないと思い、俺は適当に返事を返した。


 しかし、周りからの視線はやまない。

 そりゃあ、学年3位の可愛さを誇る(とある人が学年男子全員に聞いた結果)柚奈が、全然聞いたこともない男子と一緒に通学しているんだから、不思議に思われるのも仕方ない。

 俺だって他の人がそんなことをしているのを目撃したら、同じように見てしまうだろう。

 だから、誰も責めることができない。


 もし、なんであの子と二人でいたのか、と聞かれたら、幼馴染と答えればいい。

 それを言えば、少しは納得してくれると思う。


 それにしても、キスをするのは隠れるのに、仲良くするのは隠さないんだ――秘密じゃないんだ。

 と、俺は柚奈のことを考える。


 まだまだ俺は、柚奈に関して分からないことが多い。

 もっと知っていきたいと思った。


 当たり障りのないことを話しながら、しばらく歩くと、高校に到着した。


「新しいクラスって、校舎の壁に貼られてるんだよね」

「確か、春休み前に先生がそう言ってた気がする」


 校門をくぐると、昇降口の隣に人だかりができていた。

 多分、あそこにクラス分けが貼られているのだろう。


 俺たちはその集団に向かっていき、背伸びをしたりして、貼られている紙を見ようとした。

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