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幼馴染は3時間に一回キスをしないと意識がなくなるらしい。って、俺とするの!?  作者: 冷泉七都
第二章

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第18話 無邪気な、キスを〈1〉

 平日の真ん中に休みがあった次の日の学校は、登校中から憂鬱だ。


 柚奈と並んで歩いていると、初々しい顔ぶれが目についた。

 高校の授業は難しいのかな――。

 可愛い/かっこいい先生はいるのかな――。

 などと会話をしていて、その人たちが一年生なんだと分かった。


「わたしたち、もう二年生なんだね」

「あぁ、そうだな。こうやって一年生を見ると、なんか実感する」

「そうそう。わたしも部活に入ったし、後輩と仲良くしていかないとダメだし」


 優しい子が良いけど、少し生意気そうな子も可愛いよね……と呟いて、柚奈は想像を膨らませている。

 俺もどんな後輩がやって来るのか、変に考えすぎるのは良くない気がしたが、少し考えてみた。


「でも文芸部、入ってくれるかどうかも怪しいくらいだぞ」


 二年生はもともと俺と韮沢の2人だけだったし、一つ上は幽霊部員の1人だけだ。

 今年がゼロとなっても、全然不思議なことはない。

 しかし、柚奈は妙に自信を持っていた。


「大丈夫だよ。入ってくれる、入ってくれる」


 自分に言い聞かせているようだったが、俺も杞憂で終わると根拠もなく思った。



 1時間目の授業が終わると、柚奈が俺の肩をトントン――と叩いた。

 アイコンタクトだけで、キスということが分かった。

 俺と柚奈は廊下に出る。


 向かう場所も言わずに歩いていく柚奈に、俺はついて行く。

 到着した場所は、特別な教室がある校舎の最上階だった。

 一昨日も一度、ここに来た覚えがある。


「やっぱり、ここが一番誰も来ないと思うんだよね」

「確かにな――、そこの部屋とか、一回も授業で使ったことないかも」

「うんうんっ。だからね、これからは基本的に、ここで良いんじゃないかな?」

「良いと思う」

「でしょ。わたし昨日から考えてたんだ」


 そういうところはちゃんとしていて、俺は柚奈のことを頭ごなしに否定できない。


「すごいな、ありがとう」

「どういたしまして」


 照れたように言うのも愛嬌があって、純粋な良い人だと思わせられる。

 それも、否定できない一つの要因である。

 最後には、はい――と言って認めてしまう。


「もう休み時間半分過ぎてるし、早くしよっか」

「だな――」

「じゃあ、悠太、目つぶってくれる?」


 つまり、柚奈からするということだ。

 昨日の映画後のキスから、寝ている柚奈を起こすとき以外はずっと、柚奈が俺にする形な気がする。

 それまでは俺からするのが大半だったはずだが、柚奈の考えのどこかが変わったのだろう。


「柚奈がしてくれるんだな――」


 言うつもりはなかったのに、思わずそう呟いてしまった。

 気持ち悪い言い方になっていなかったか不安になったけど、柚奈の顔を見る限り大丈夫そうだ。


「ん? 悠太がしたいの? 別に良いけど――」

「いや、そう言う訳じゃ……」

「なんだ、そう。もしそうなら、言ってくれて良いからね」

「あぁ」


 柚奈がいつの間にか、キスがプラスの行為として話しているのに気づいた。

 なにが柚奈をそうさせたのか、分かりたくなかったが、分かってしまう。


 善意のところ申し訳ないが、俺からそんなことを言うことはない。

 恥ずかしくて言えやしない。


「目つぶって」


 俺は柚奈に言われた通りに目をつぶる。

 口か頰かを聞こうと口を開いた。

 しかしその瞬間に――。


 あ……。


 柔らかい何かによって、喋るのを遮られた。

 明らかにそれは、柚奈の唇に間違いなかった。


 昨日2度したというのに全く慣れない。

 不思議な感覚が俺を襲う。


 昨日と違うかったのは、すぐに離れてくれたことだ。

 さすがに、学校でロングキスをするわけにはいかないと思ったのだろう。


 しかし、あっさりとしたキスが、俺の脳を刺激してくる。

 柚奈に振り回されてこんなキスをして、いくらダメだと抑えようとしても、癖になってしまいそうだ。


 諦めて欲に忠実になれば、楽なのかもしれない――。


「悠太、何か話そうとした?」

「いやまぁ、なんでもないよ」

「ふーん、そう」


 適当な相槌のあと、柚奈は階段の方向に体を向け、首だけ俺を振り返った。


「戻ろっか、みんなに怪しまれちゃうよ」

「……あぁ、早く戻ろう」


 すでに梅井さんには怪しまれているし、韮沢には怪しまれているどころではない。

 頭の中でだけそう思って、口には出さずに、ただ歩く柚奈の隣をついて行く。


「3時間に一回、キスしなくても良くなったら、柚奈はどうするんだ?」

「どうするって、そりゃあ……」


 柚奈が立ち止まって、顎に手を当てて悩む。

 とんでもないことを聞いてしまったのだろうか。


 俺は『わたしたちはただの幼馴染で、キスはしなくなる』とでも言って欲しかった。

 でも、柚奈の答えは沈黙で――。


「ごめん、変なこと聞いちゃったかも。忘れて」

「うん」


 煮え切らない様子で、軽く頭を縦に振った。

 柚奈は少し下を向いて、まだ悩んでいるようだ。


 そして、静かな廊下じゃなければ聞こえないほどの声を出した。

 わたし、どうするんだろ――という小さい声での呟きが、変に頭に残る。


 今の柚奈と俺のしていることは、義務でもなんでもないと思ってしまった。

 だから聞いたのだけれど、聞くべきではなかった。

 後悔が胸の奥に残った。

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